就業規則を変更する前に知っておくべき手順と2つの注意点

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労働基準法第89条によれば、常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に申し出る必要があります。

この就業規則に変更を加える時にも、実は法律に従い手続きをする必要があることをご存知でしょうか。ここでは就業規則変更の手順や、その際に注意すべき点について解説します。

就業規則変更の手順

就業規則の変更方法

就業規則の変更は全部で5つのステップに分けることができます。

1.就業規則に加える変更について、検討・決定する。
2.代表取締役社長や取締役会など、就業規則の変更の権限を持つ人の決裁を受ける。
3.決裁を受けた変更内容について労働者の過半数が加入する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する人)に意見を聞く。
4.変更内容についての意見を「意見書」としてまとめてもらう。
5.意見書、変更後就業規則、就業規則変更届を所轄労働基準監督署長に提出する。

※法的に必要な手続きは3以降の手続きのみです。

変更の際の注意点

この5つのステップの中で注意しなければならないのは3点です。

1つ目は原則的に就業規則の変更は企業単位ではなく、事業場単位である点です。

例えば本社と実店舗10店を経営している場合、本来は本社と各店舗で個別に就業規則を所轄労働基準監督署長に提出しなくてはなりません。ただし本社と店舗の就業規則がまったく同じ内容の場合だけ、本社の所轄労働基準監督署長を経由して、一括して届け出ることも可能とされています。

2つ目と3つ目はどちらも「労働者の過半数を代表する人」にもとめられる条件です。

第一にその人は労働基準法第41条第2号に規定されている、監督または管理の立場にある人でない必要があります。

第二に使用者側から就業規則の変更内容についての意見を聴く目的を明らかにしたうえで、挙手や投票で選ばれた人でなくてはなりません。

就業規則の変更は労働者に有利か?不利か?

労働者に不利な変更も可能

労働基準法をはじめとする法令に抵触しなければ、就業規則の変更が労働者にとって不利な内容になる可能性もあります。例えば賃金水準の引き下げや休暇の削減などです。

このような変更は今後の企業運営の観点から特に労働組合や労働者代表との意見交換が重要になります。使用者側は労働者側の意見に十分耳を傾けると同時に、変更の理由や内容についてしっかりと説明する必要があるでしょう。

不利な場合でも「労働者の合意」は必要ない?

ここでの注意点は労働基準法第90条の内容にあります。

使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

(引用:労働基準法

ポイントは最後の「意見を聴かなければならない」の部分です。これはあくまで「どのような意見があるかをきちんとヒアリングした」という意味です。そのため労働者側の同意や、労働者側との協議や話し合いは、法律上義務付けられていません。

したがって労働組合や労働者代表が「今回の変更については断固反対である」という内容の意見書を提出したところで、使用者側はそれを無視することもできます。

この場合でも使用者は「断固反対」と記載された意見書と、変更後就業規則、就業規則変更届を所轄労働基準監督署に提出すれば、就業規則の変更手続きを終えることができるのです。

就業規則の変更は合理的か?非合理的か?

「非合理的」な就業規則の変更とは?

労働契約法第10条には就業規則変更の合理性の基準を次の5つの観点から検討されるべきとされています。

1.労働者の受ける不利益の程度はどれくらいか?
2.労働条件の変更の必要性はどれくらいあるか?
3.変更後の就業規則の内容は社会通念上適切か?
4.労働組合や労働者代表との交渉の状況はどのようなものか?
5.その他の就業規則の変更に関連する事情はどうか?

これらの観点から妥当であると判断されれば就業規則の変更は「合理的である」とされ、不適切であると判断されれば「非合理的である」とされます。

就業規則を「周知する義務」とは?

労働契約法第10条はこれ以外にも「変更後の就業規則を労働者に周知させ」ることを求めています。

この場合の周知とは、事業場の掲示板などに就業規則の変更を知らせる書面を掲げたり、労働者に対してコピーを配布するといった手続きです。

就業規則の拘束力が発生するには、周知のための手続きが必要不可欠とする最高裁判例も出ています(フジ興産事件・最二小判平15・10・10)。

まとめ

就業規則の変更内容が労働者にとって有利であったり、合理的であれば、変更手続きはスムーズに終わります。しかし労働者にとって不利であったり、労働者からすれば非合理的な場合は違います。

変更後もスムーズに仕事をするためにも、使用者側は労働者側とじっくり話し合ったうえで、慎重な決断が求められるでしょう。

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※掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:加地 延行 (公認会計士 / 税理士)

税理士法人ゆびすい
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