- 更新日 : 2025年5月27日
介護保険料の計算方法
介護保険法では、介護保険被保険者のうち、65歳以上の方を「第1号被保険者」、40歳から64歳以下の公的医療保険加入者を「第2号被保険者」と定めています。第1号被保険者と第2号被保険者とでは介護保険料の決定方法や納付方法が異なります。
本稿では、介護保険料の決定方法や納付方法について解説します。
目次
第2号被保険者の介護保険料
第2号被保険者の介護保険料は、国民健康保険加入者については世帯ごとに決められ、職場の健康保険加入者については給与や賞与から天引きされることになっています。
給与にかかる介護保険料の計算
給与より天引きされる介護保険料は、次のように決定します。
標準報酬月額とは、毎年4~6月に支払った給与の平均額を報酬月額(通勤代や残業代を含み、税金を引かれる前の給与)とし、「標準報酬月額表」のテーブルに当てはめてたものです。例えば、以下のようになります。
報酬月額が19万5,000円以上21万円未満の人
→標準報酬月額表の「健康保険・介護保険の17等級」:標準報酬月額は20万円
報酬月額が21万円以上23万円未満の人
→標準報酬月額表の「健康保険・介護保険の18等級」:標準報酬月額は22万円
以下の3つの場合を除き、標準報酬月額が変更されることはありません。
産休・育休終了改定:産前または産後の休業、もしくは育児休業が終了した場合に標準報酬月額変更を届出する。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の介護保険料率は都道府県により異なります。
例えば東京都の場合、令和3年3月分以降の介護保険料率は1.80%です。属する健康保険組合ごとに、異なる介護保険料率を設定していますので、各健康保険組合に照会が必要です。
具体的な計算としては、協会けんぽに加入している人で標準報酬月額が20万円の場合、1カ月当たり3,600円(20万円×1.80%)が給料から徴収されます。
賞与にかかる介護保険料の計算
賞与から天引きされる介護保険料は、以下の式で計算します。
標準賞与額とは、賞与の総額から1,000円未満を切り捨てた額のことを指します。ただし、標準賞与額上限は、年度総計を573万円としています。
例えば、6月に250万円の賞与、12月に500万円の賞与を受けたとします。この場合、標準賞与額は、6月は250万、12月が323万円になります(6月と12月の標準賞与額と合わせると、573万円の限度額になります)。
具体的には、上記の賞与を受けた人が協会けんぽ加入の場合、6月の賞与では45,000円(250万円×1.80%)、12月の賞与では58,140円(323万円×1.80%)が介護保険料となります。
また、原則として、保険料の半額は事業主が負担します。
第2号被保険者の介護保険料の徴収法
第2号被保険者の介護保険料は、職場の健康保険に加入している場合、健康保険料に加算して、給与等から天引きされます。保険料は会社と被保険者が半額ずつ支払います。会社は労働者負担分の介護保険料を計算し、その額を給与や賞与から差し引き、その旨を給与明細や賞与明細に記載します。
国民健康保険に加入第2号被保険者の介護保険料
健康保険加入の第2号被保険者の介護保険料は、以下の式で計算されます。
所得割:前年分の世帯所得から基礎控除額33万円を控除した金額に税率を乗じた
もの。この計算方式は「旧ただし書き方式」と呼ばれています。
均等割:所得が0円でもかかる最低限の保険料負担。加入者×均等割で求めます。
平等割:1世帯を1つの課税対象として課税される均等割。
資産割:固定資産税の金額に税率を乗じたもの。
第2号被保険者の介護保険料計算は居住地である市区町村によって異なり、上記の4項目を組み合わせて市町村独自の計算基準で計算されています。
そもそも料率が異なりますし、課税する項目も資産税割や平等割がないところもあります。
具体的な計算方法は、居住している市区町村に確認しましょう。
第1号被保険者の介護保険料
第1号被保険者の介護保険料は、各市区町村毎に計算された「基準額」か、本人や世帯の所得状況に沿って計算します。第1号被保険者の場合、世帯の課税状況を勘案し、標準9段階により保険料率を計算します。
具体的には、本人の所得の他に世帯の扶養の有無、住民税(市町村民税)の課税状況などを総合評価し料率を決定していきます。
基準額から介護保険料の決定方法は、市区町村によって基準が違うので、具体的な算出方法は各市区町村に確認が必要です。
国民健康保険加入の第2号被保険者の介護保険料の納付方法
国民健康保険に加入する第2号被保険者の介護保険料は、国民健康保険料に上乗せする形で国民健康保険税と合わせて居住している市区町村が徴収しています。
第1号被保険者の介護保険料の徴収方法
第1号被保険者は、年金年額が年間18万円未満の場合、市区町村から届く納付書で払いします(普通徴収)。年金の年額が18万円以上の時は、介護保険料は年金から自動的に天引きされます(特別徴収)。
被保険者の立場により変わる介護保険料の仕組み
健康保険組合等に加入している第2号被保険者の保険料は、標準報酬月額を基に算出され、毎月変動するものではありません。また、健康保険料と合わせて給与から控除します。国民健康保険加入者や第1号被保険者の介護保険料は、各市区町村で基準額が違うため確認が必要です。
よくある質問
介護保険料とは何か?
40歳以上の方が、介護サービスを受けるため必要な財源を確保する保険制度です。詳しくはこちらをご覧ください。
第1号被保険者と第2号被保険者の違いは?
65歳以上の被保険者のことを「第1号被保険者」40歳から64歳未満の被保険者のことを「第2号被保険者」と呼びます。詳しくはこちらをご覧ください。
介護保険料の計算方法は?
被保険者の年齢や介護保険制度の運用者である市町村によって課税基準や金額が変わってきます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
社会保険における「130万円の壁」とは?扶養条件や103万円の壁との違いを解説
会社員などの扶養家族となっている配偶者でも、一定金額を超えなければ扶養のまま、パート収入などを得ることができます。しかし、定められている金額を超えてしまうと、扶養から外れなければなりません。 扶養といわれているものには「税の扶養」と「社会保…
詳しくみる教育訓練給付金とは?種類や支給要件、手続き方法を解説
教育訓練給付金とは、スキルアップや資格取得などを目的に対象となる講座を受講した際、受講費用の一部が支給される国の制度です。リスキリングや再就職支援にも活用できる制度であり、年収や年齢などに関係なく、雇用保険に加入していた期間など一定条件を満…
詳しくみる社会保険の標準報酬月額・標準賞与額とは?保険料を求める計算方法
給与や賞与にかかる社会保険料は、実際に支給された金額ではなく、標準報酬月額および標準賞与額に基づいて決定されます。それぞれに計算方法が異なるため、対象となる報酬の範囲や、保険料の徴収が免除される条件など、正しく理解した上で処理することが重要…
詳しくみる年金から住民税は引かれる?課税・非課税の条件や金額を解説
2009年10月から、公的年金から住民税が引かれる特別徴収が行われるようになりました。特別徴収の対象は、4月1日時点で65歳以上の公的年金受給者のうち、住民税を納税する義務がある人です。 特別徴収対象年金額や特別徴収される住民税額は、毎年6…
詳しくみる社会保険(健康保険・厚生年金保険)加入におけるメリット
社会保険に加入していることで保障される内容やメリットについての説明をします。 社会保険の加入義務 社会保険への加入義務がある事業所は、以下のとおりです。 強制適用事業所 事業所が次のいずれかに該当する場合は、社会保険の強制適用事業所になりま…
詳しくみる退職時に会社側が行う社会保険手続きは?離職票と離職証明書の違いも解説!
従業員が退職する際には、決められた期限までに健康保険や雇用保険の喪失届を提出する必要があります。また、従業員が退職後にハローワークに基本手当など失業時に受け取れる給付を申請することを踏まえ、離職証明書も作成しなければなりません。 ここでは、…
詳しくみる