- 更新日 : 2021年11月29日
介護保険料の計算方法
介護保険法では、介護保険被保険者のうち、65歳以上の方を「第1号被保険者」、40歳から64歳以下の公的医療保険加入者を「第2号被保険者」と定めています。第1号被保険者と第2号被保険者とでは介護保険料の決定方法や納付方法が異なります。
本稿では、介護保険料の決定方法や納付方法について解説します。
目次
第2号被保険者の介護保険料
第2号被保険者の介護保険料は、国民健康保険加入者については世帯ごとに決められ、職場の健康保険加入者については給与や賞与から天引きされることになっています。
給与にかかる介護保険料の計算
給与より天引きされる介護保険料は、次のように決定します。
標準報酬月額とは、毎年4~6月に支払った給与の平均額を報酬月額(通勤代や残業代を含み、税金を引かれる前の給与)とし、「標準報酬月額表」のテーブルに当てはめてたものです。例えば、以下のようになります。
報酬月額が19万5,000円以上21万円未満の人
→標準報酬月額表の「健康保険・介護保険の17等級」:標準報酬月額は20万円
報酬月額が21万円以上23万円未満の人
→標準報酬月額表の「健康保険・介護保険の18等級」:標準報酬月額は22万円
以下の3つの場合を除き、標準報酬月額が変更されることはありません。
定時決定:標準報酬月額と実際の収入に乖離がないか確認するために毎年1回、標準報酬月額を報告し決め直す。毎年9月給与から適用され改定される。
随時改定:固定給料部分が大きく増減した場合に、標準報酬月額変更を届出する。
産休・育休終了改定:産前または産後の休業、もしくは育児休業が終了した場合に標準報酬月額変更を届出する。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の介護保険料率は都道府県により異なります。
例えば東京都の場合、令和3年3月分以降の介護保険料率は1.80%です。属する健康保険組合ごとに、異なる介護保険料率を設定していますので、各健康保険組合に照会が必要です。
具体的な計算としては、協会けんぽに加入している人で標準報酬月額が20万円の場合、1カ月当たり3,600円(20万円×1.80%)が給料から徴収されます。
賞与にかかる介護保険料の計算
賞与から天引きされる介護保険料は、以下の式で計算します。
標準賞与額とは、賞与の総額から1,000円未満を切り捨てた額のことを指します。ただし、標準賞与額上限は、年度総計を573万円としています。
例えば、6月に250万円の賞与、12月に500万円の賞与を受けたとします。この場合、標準賞与額は、6月は250万、12月が323万円になります(6月と12月の標準賞与額と合わせると、573万円の限度額になります)。
具体的には、上記の賞与を受けた人が協会けんぽ加入の場合、6月の賞与では45,000円(250万円×1.80%)、12月の賞与では58,140円(323万円×1.80%)が介護保険料となります。
また、原則として、保険料の半額は事業主が負担します。
第2号被保険者の介護保険料の徴収法
第2号被保険者の介護保険料は、職場の健康保険に加入している場合、健康保険料に加算して、給与等から天引きされます。保険料は会社と被保険者が半額ずつ支払います。会社は労働者負担分の介護保険料を計算し、その額を給与や賞与から差し引き、その旨を給与明細や賞与明細に記載します。
国民健康保険に加入第2号被保険者の介護保険料
健康保険加入の第2号被保険者の介護保険料は、以下の式で計算されます。
所得割:前年分の世帯所得から基礎控除額33万円を控除した金額に税率を乗じた
もの。この計算方式は「旧ただし書き方式」と呼ばれています。
均等割:所得が0円でもかかる最低限の保険料負担。加入者×均等割で求めます。
平等割:1世帯を1つの課税対象として課税される均等割。
資産割:固定資産税の金額に税率を乗じたもの。
第2号被保険者の介護保険料計算は居住地である市区町村によって異なり、上記の4項目を組み合わせて市町村独自の計算基準で計算されています。
そもそも料率が異なりますし、課税する項目も資産税割や平等割がないところもあります。
具体的な計算方法は、居住している市区町村に確認しましょう。
第1号被保険者の介護保険料
第1号被保険者の介護保険料は、各市区町村毎に計算された「基準額」か、本人や世帯の所得状況に沿って計算します。第1号被保険者の場合、世帯の課税状況を勘案し、標準9段階により保険料率を計算します。
具体的には、本人の所得の他に世帯の扶養の有無、住民税(市町村民税)の課税状況などを総合評価し料率を決定していきます。
基準額から介護保険料の決定方法は、市区町村によって基準が違うので、具体的な算出方法は各市区町村に確認が必要です。
国民健康保険加入の第2号被保険者の介護保険料の納付方法
国民健康保険に加入する第2号被保険者の介護保険料は、国民健康保険料に上乗せする形で国民健康保険税と合わせて居住している市区町村が徴収しています。
第1号被保険者の介護保険料の徴収方法
第1号被保険者は、年金年額が年間18万円未満の場合、市区町村から届く納付書で払いします(普通徴収)。年金の年額が18万円以上の時は、介護保険料は年金から自動的に天引きされます(特別徴収)。
被保険者の立場により変わる介護保険料の仕組み
健康保険組合等に加入している第2号被保険者の保険料は、標準報酬月額を基に算出され、毎月変動するものではありません。また、健康保険料と合わせて給与から控除します。国民健康保険加入者や第1号被保険者の介護保険料は、各市区町村で基準額が違うため確認が必要です。
よくある質問
介護保険料とは何か?
40歳以上の方が、介護サービスを受けるため必要な財源を確保する保険制度です。詳しくはこちらをご覧ください。
第1号被保険者と第2号被保険者の違いは?
65歳以上の被保険者のことを「第1号被保険者」40歳から64歳未満の被保険者のことを「第2号被保険者」と呼びます。詳しくはこちらをご覧ください。
介護保険料の計算方法は?
被保険者の年齢や介護保険制度の運用者である市町村によって課税基準や金額が変わってきます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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