社会保険料率・社会保険料額の決定方法

社会保険料率・社会保険料額の決定方法
社会保険料率の水準は、物価や賃金水準をふまえ、財政のなかで給付と負担を調整できるよう、計画して決められていました。しかし、現在では急激な少子高齢化が進み、社会補償と負担する社会保険料額の見直しが行われ、厚生年金保険料は平成29年度に1000分の183で固定となりました。(私学教職員・公務員の場合は平成39年までに1000分の183へ段階的に上がる予定となっています。)
ここでは、社会保険料率と社会保険料額の決定方法について説明します。
対象となる社会保険料
社会保険料と呼ばれるものには、以下の種類があります。
1.健康保険料(国民健康保険、協会けんぽ、健康保険組合)
2.介護保険料
3.厚生年金保険料
4.国民年金保険料
5.雇用保険料
6.労災保険料
対象となる社会保険は、法人や個人経営の事務所と、個人事業主や無職の人とでは異なります。
社会保険の種類 | 会社員やパートなどの従業員 | 個人事業主や無職の人 |
---|---|---|
健康保険 | 協会けんぽや健康保険組合の健康保険 | 国民健康保険 |
介護保険(40~65歳対象) | 協会けんぽや健康保険組合の介護保険 | 国民介護保険 |
年金 | 厚生年金保険 (国民年金保険) | 国民年金保険 |
労働保険 | 雇用保険および、労災保険 | なし |
社会保険の種類による料率の考え方
社会保険の種類によって、料率の基準が自治体や組合ごとに異なるものと、国で一律に統一しているものがあります。
例えば、会社員やパートなどの従業員が負担する協会けんぽの健康保険料率は、「協会けんぽ」はそれぞれの都道府県において、健康保険組合の場合は組合で基準が異なります。「協会けんぽ」の場合は健康保険料の料率が各地域の医療費にもとづいて決められているからです。
一方、国で統一している社会保険料率は、「厚生年金保険料」「国民年金保険料」「労働保険」です。
各社会保険料の料率
社会保険料は会社員やパートなどの従業員と、個人事業主や無職の人とでは、社会保険料率と社会保険料額も異なります。「国民年金保険料」を除く社会保険料は、所得にあわせて率や金額が決定します。
また、従業員の場合「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」は会社と本人で負担します。「労災保険料」は事業主の負担が義務付けられています。
会社員やパートなど、従業員の健康保険料および、介護保険料、厚生年金保険料の料率
介護保険を含む「健康保険料」と「厚生年金保険料」は、標準報酬月額と標準賞与額に、下記の社会保険料率をかけて計算されます。標準報酬月額と標準賞与額は、収入額平均を決められた方法で算出したものです。
都道府県ごとや組合ごとに定められた健康保険料率と介護保険料率、全国統一の厚生年金保険料率を含めて、一覧表にしたものが、「健康保険・厚生年金保険の社会保険料額表」です。
平成30年4月分からの東京都の社会保険料率は下記の通りです。
介護保険の該当 | 介護保険を含む健康保険料率 | 厚生年金保険料率 |
---|---|---|
介護保険該当者(40~64歳) (健康保険料率 + 介護保険料率) | 11.47% (9.90% + 1.57%) | 全国一律 18.300% |
介護保険に該当しない人(40歳未満) | 9.90% 介護保険料率はなし | 全国一律 18.300% |
「厚生年金保険料」について、将来にわたって持続可能な年金制度を構築するため、最終的な保険料率を固定し、法律に明記されました。(これを保険料水準固定方式といいます。)
個人事業主(無職の人を含む)の健康保険料および、介護保険料の料率
介護保険を含めた国民健康保険料は、毎年の所得金額と国民健康保険の加入する人数によって、自治体ごとや都道府県知事の認可を受けた国民健康保険組合で定められた計算方法にもとづいて保険料が決められます。
国民健康保険は世帯ごとに加入することになっているため、世帯主が会社員で国民健康保険の加入者でなくても、世帯のなかに加入者がいる場合、世帯主に保険料の納付義務があります。
自治体ごとに国民健康保険料の料率が異なるのは、協会けんぽの保険料と同様に、各地域の医療費にもとづいて決められているからです。
各自治体では国民健康保険料の計算ができるサイトを用意しているところもありますので、そちらを参考になさるといいでしょう。
個人事業主(無職の人を含む)の国民年金料率
国民年金は20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する制度であり、「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」の3種類があります。国民年金の保険料を納付する義務があるのは「第1号被保険者」のみです。
「第1号被保険者」は日本国内に住所を有する個人事業主や学生、無職の人で納付書や口座振替で保険料を納める義務があります。
「第2号被保険者」は会社員やパートで社会保険の健康保険料・厚生年金保険料を給与から天引きされている人です。国民年金の保険料は厚生年金保険料の中に含まれており、厚生年金制度から国民年金制度に基礎年金拠出金として交付しています。そのため、国民年金保険料の納付義務はありません。
「第3号被保険者」は「第2号被保険者」の配偶者で、健康保険の扶養でもあります。国民年金の保険料は配偶者が加入する年金制度が一括負担しているため、保険料の納付義務はありません。
国民年金保険料は、全国一律同じ金額です。平成16年度の保険料額である月額13,300円を基準に、平成17年度から毎年280円ずつ(平成28年度から平成29年度にかけては240円)引き上げられ、平成29年度以降は月額16,900円となりました。また、平成31年度以降は産前産後期間の保険料免除制度の施行に伴い、100円引き上げられ月額17,000円となります。この保険料額は平成16年度の水準なので、物価や賃金の変動をもとにした「改定率」をかけて毎年度ごとに保険料が決定されています。
したがって、デフレによる物価や賃金の下落により改定率が1を下回り、予定保険料額よりも下がる場合があります。
実際に平成30年度は前年の16,490円よりも150円低い16,340円に下がりました。
このように国民年金保険料は物価や賃金に連動していますが、厚生年金保険料は平成29年まで、最初の決定どおり引き上げが行われました。(私学教職員・公務員は平成39年度までに1000分の183まで段階的に引き上げられます。)
一口に公平な社会保険料率・社会保険料額を決定することは、なかなか難しい問題です。
まとめ
社会保険料率・社会保険料額は、国民全員が適切に社会保障を受けられるよう、公平に決定されることが原則です。社会保険料率や社会保険料額を全国で一律にするということは、地域差や医療費負担の差を考えると公平な負担とは言えないことがあります。
自治体ごとに違う料率や、従業員と従業員でない人との違いなど、さまざまな用件を考慮して考えられています。現在はかなり難しい仕組みにも思えるのですが、なるべく国民一人ひとりが安易に理解でき、納得ができる社会保険料率や社会保険料額になる事を願います。