退職後の健康保険 国民健康保険と任意継続保険を比較

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会社員の場合、事業主の手続きにより健康保険に加入していますが、退職した場合の健康保険はどうなるのかご存知でしょうか。
「そのうち再就職するのだから国民健康保険には加入しない」と考える人もいるかもしれません。

実際は転職が決まっていたとしても、1日でも勤めていない日=健康保険に加入していない日があれば、切り替えを行い、国民健康保険に必ず加入しなければいけません。日本は「国民皆保険」のため、国内に住所があれば年齢や国籍に関係なく健康保険への加入が義務付けられています。

会社を辞めてフリーランスになった場合、以前勤めていた会社の健康保険を任意継続するか、国民健康保険に直ちに切り替えるか、2つの選択肢があります。
国民健康保険と任意継続保険、それぞれのメリットとデメリットを比較し、切り替えの手続き方法を見てみましょう。

国民健康保険について

国民健康保険は、加入者の病気やケガ、出産に際する医療費や死亡時の葬祭費用などが支給される制度です。日本の健康保険制度は「国民皆保険」が原則のため、国内に住所があれば年齢や国籍に関係なく必ず健康保険に加入しなくてはいけません。
なお、外国籍の方は在留期間が3か月以上の場合、加入が義務付けられています。
ただし、以下の国民健康保険除外要件のいずれにも該当しない場合は、加入しません。

  • 健康保険に加入している方とその扶養家族(任意継続含む)
  • 船員保険に加入している方とその扶養家族
  • 国民健康保険組合に加入している方とその世帯家族
  • 75歳以上の方(後期高齢者医療制度の対象者)
  • 生活保護を受給している方

つまり、会社を退職した方は、以上のいずれにも該当しないので、切り替え手続きをして、国民健康保険に加入しなければいけません。
ただし、健康保険の任意継続の手続きをした場合や配偶者などの被扶養者になる場合は、退職日の翌日付でその手続きを行えば、国民健康保険に加入する必要はなくなります。

また、国民健康保険料の額は、前年度の所得をもとに計算されます。

そのため退職後に国民健康保険料をいくら支払わなければならないのかは、前年度の所得を証明する源泉徴収票に記載されている金額を使用して概算金額を知ることができます。国民健康保険料の概括的な金額は居住地の市区町村の健康保険課などで確認できる以外にも、市区町村のサイト上で国民健康保険料の概算金額を自動計算してくれることもあります。

後述する任意継続保険料は原則として2年間変更されることはありませんが、国民健康保険料は減額申請できる場合があります。
退職後ただちに国民健康保険を選択することによって、フリーランス2年目以降に国民健康保険料の減額申請を利用できる可能性を、選択肢として持つことができます。

一方で、国民健康保険は「出産手当金」が支給されないため、出産予定のある場合はデメリットとなり得ます。

任意継続保険について

任意継続保険では、社会保険の資格を失っても、喪失日の1日前までに継続して2か月以上の被保険者期間があり、喪失日から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出することで、勤務していた会社が加入する健康保険組合を、退職後2年に限り継続することができます。

いったん任意継続被保険者になると、2年間は、国民健康保険への加入、もしくは健康保険の扶養者になるために資格を失うことは認められません。また、保険料を1日でも滞納した場合は資格を失います。実際には、保険料を滞納することで国民健康保険に切り替えができるということになります。
退職後の任意継続中もまったく同じ給付を受けることができるため、保養所などの各種施設を利用できる他、一定の条件を満たすことで出産手当金も支給されます。

ただし健康保険組合の所在地と退職後の居住地が遠方になる可能性があるため、書類の送付に時間がかかったり、頻繁に手続きする場合は不便に感じたりすることがあるかもしれません。加えて、傷病手当金は支給されないため注意が必要です。

退職後すぐに国民健康保険に加入すれば手続きは1度で済みますが、任意継続する場合は、
・任意継続加入手続き
・任意継続保険証の返送手続き
・国民健康保険加入手続き
という手続きをすべて行なう必要がある点で、デメリットになることもあります。

国民健康保険と任意継続保険のメリットデメリット比較表

 国民健康保険任意継続保険
メリット
・退職後2年目以降は減額申請できる場合がある
・市区町村の健康保険課が問い合わせ窓口となるため、近くて安心できる
会社に勤務していたときと同じ給付内容を受けることができる
デメリット
出産一時金は支給されるが、出産手当金は支給されない
・原則として2年間保険料は変わらない

・問い合わせ窓口である健康保険組合が遠方にある場合、書類到達まで時間がかかることがある

国民健康保険はいつでも加入できることを考えたとき、健康保険料がどちらも同じくらいであれば、任意継続保険料を2年間支払った後に国民健康保険料を支払うという方法がもっとも一般的な方法だと考えられます。

会社員とフリーランスの健康保険料のもっとも大きな違いは、「会社が半分負担してくれるかどうか」という点です。

給与支払者つまり会社が、健康保険の適用を義務付けられている強制適用事業所に該当する場合は、健康保険組合へ加入することになっています。会社が健康保険組合へ加入した場合は、従業員の健康保険料の半分を支払うことになっているため、退職後に任意継続保険料を支払う場合は、それまで会社が負担してくれていた額をすべて個人が負担することになります。

たとえば退職後に任意継続する場合は、会社員だったときの毎月の健康保険料が2万円程度であれば、全額の4万円を毎月支払うことになります。しかし厚生年金保険料や雇用保険料を支払う必要はなくなるため、社会保険料全体でみるとそれほど大きな差にはなりません。
任意継続の保険料や必要となる手続きについては「社会保険の任意継続について」をご参照ください。

もちろん支払った健康保険料や介護保険料、国民年金は、確定申告で社会保険料控除として申告することによって所得税の負担を軽減することができますが、フリーランスの売上が不確定で安定していないという性質を考慮すると、上記例の場合だと退職後の健康保険料だけで年間約50万円の支出から免れることはできません。

国民健康保険への切り替えの手続き方法

会社を退職した際、退職日の翌日に社会保険の健康保険の資格を失います。
転職先が決まっており、退職日の翌日に就職し、社会保険資格を取得するのであれば国民健康保険に加入する必要はありませんが、1日でも社会保険に属していない日があれば、切り替え手続きをして、国民健康保険に加入する必要があります。

国民健康保険は各市町村が運営しているため、住所のある市町村役場で加入手続きを行います。手続きは退職した日から2週間以内に行う必要があります。また、手続きに退職したことがわかる書類(離職届など)も求められます。
国民健康保険に加入後、就職して社会保険の資格を取得した場合は、脱退の手続きを行う必要があります。必要なものは、新たに入った社会保険の保険証もしくは社会保険の資格取得証明書、国民健康保険の保険証です。
なお、加入時も脱退時も申請に必要な書類のほか、本人確認書類(免許証等)やマイナンバーが必要となります。

まとめ

国民が皆、保険に加入することを原則としている日本においては、1日のあきもなく、いずれかの健康保険に入っていなければなりません。
国民健康保険料と任意継続保険料それぞれにメリットデメリットがあります。
フリーランスとしてずっとやっていくのか、会社員に戻る可能性があるのかなど、将来どのように事業活動を行なっていくのかを判断基準にしてみるのもひとつの方法かもしれません。

また、注意しておきたいのが転職、退職する場合の切り替えです。手続きをするタイミングや必要書類などは事前に確認して、速やかに行うようにしましょう。
手続きが面倒、再就職するまでの短い間だから、という理由で健康保険の切り替えを怠っていると、いざというとき困るのは自分です。便利で安心の基本となっている健康保険の制度を利用するために、決められた手続きは滞りなく済ませたいものです。