- 更新日 : 2025年4月2日
外国人労働者が増えると起こる影響は?メリットとデメリットを解説
外国人労働者が増えると起こる影響については、よい影響と悪い影響があります。労働者人口が増加したり過疎地の人口が増えたりする反面、地元住民とのトラブルや国内労働者の仕事が奪われるなどの懸念もあります。
外国人労働者が増えることで起こる、よい影響と悪い影響、および問題点と課題についてみていきましょう。
目次
日本における外国人労働者の推移
厚生労働省が公開しているデータによれば、令和6年10月時点において、日本で働く外国人労働者の数は過去最多の約230万人に達したとのことです。
【外国人労働者の人数の推移と対前年増加率】
令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | 令和6年10月 | |
---|---|---|---|---|---|
外国人労働者数 | 172万4,328人 | 172万7,221人 | 182万2,725人 | 204万8,675人 | 230万2,587人 |
対前年増加率 | 4.0% | 0.2% | 5.5% | 12.4% | 12.4% |
引用:厚生労働省「外国人雇用状況」 の届出状況表一覧(令和6年10月末時点)
前年より約26万人増加し、増加率は12.4%です。多くの企業が積極的に外国人労働者を雇用しており、雇用するハードルが下がってきていることがわかります。
国籍別では、ベトナムが最も多く57万人を占め、ついで中国が約40万人、フィリピンが約24万人です。
外国人労働者の受け入れの背景には、少子高齢化に伴う労働力不足があり、日本経済の活性化や持続可能な成長を目指す政府の方針が影響しています。また、東南アジア諸国からの移住希望者が、日本を選ぶ傾向にあるようです。
外国人労働者が増えると起こるよい影響
外国人労働者の受け入れは年々増加しており、新しい労働力やアイデアの誕生、地域や企業の活性化など、実際によい影響がもたらされています。
外国人労働者が増えると起こる影響について、メリットやよい影響について解説します。
労働力不足が緩和される
外国人労働者の受け入れは、日本において深刻な労働力不足の緩和につながります。
日本は少子高齢化が進行しており、生産年齢人口の減少は、社会的に大きな課題です。とくに、地方や特定の業種(農業・建設・介護・飲食業など)では人手不足が深刻化しています。
外国人労働者を採用することで、上記の職種において必要な労働力を確保でき、事業が持続可能になります。
保持している在留資格によっては、外国人労働者は高いスキルや専門性があるため、企業の競争力強化にもつながるでしょう。たとえば、IT業界ではとくにインドや中国からの専門人材が求められ、技術革新を進めるきっかけにもなります。
外国人労働者は、日本の経済成長と労働市場の活性化につながる重要な存在です。
過疎地の人口が増加する
人口減少が進む地方では、外国人労働者を受け入れることで地域社会を活性化させる効果があります。
多くの地方自治体で地域の人口減少と高齢化が進行しており、地域経済の活力が失われつつあります。外国人労働者の受け入れで地域に新たな労働力が加われば、商業活動や地域サービスが支えられるでしょう。
たとえば、地方の農業や観光業に外国人労働者が従事することで、地元の産業の維持および発展につながります。
受け入れた外国人が地域住民と交流し多様性がうまれることで、地域の魅力が向上し、さらに新たな移住者を呼び込めるでしょう。
海外に市場が広げられる
外国人労働者が増えることで、彼らが持つ文化的背景や語学能力を活用し、海外市場への展開をスムーズに進められます。
とくに、外国人労働者が自身の母国の文化やビジネス慣行に精通しているため、現地のニーズや嗜好を正確に理解できる点が強みです。結果、日本の企業は新しい市場ニーズに応じた製品やサービスを提供しやすくなります。
また、外国人労働者との接触を通じて日本企業内部に国際的な視点がもたらされ、グローバルな戦略の立案・実施に役立つ情報収集が行えます。
たとえば、東南アジア市場に進出したい企業にとっては、現地の文化や商慣習を熟知した外国人スタッフに橋渡し役として活躍してもらうことで、より効率的なマーケティングや顧客対応が可能です。
外国人労働者の増加は新しい市場開拓の強力な推進力となり、企業の成長を促進させます。
外国人ならではの発想やアイデアがうまれる
外国人労働者は、企業内に多様な視点や発想をもたらします。
異なる文化的背景を持っているため、問題解決や製品開発において革新的なアイデアがうまれやすくなります。多様性が新たな発想の基盤となり、競争力の向上につながるでしょう。
たとえば、外国人労働者が製品開発に携わる場合、特定の市場に特化した機能やデザインを提案してもらえる可能性があります。日本人だけでは気づかない、ユニークなニーズに応える製品がうまれるでしょう。
また、外国人労働者による視点や発想は、企業内における既存の文化やルールを改変するきっかけにもなります。
実際にとある食品業界の企業では、南米出身の社員が地元のスパイスを使った新しい調味料を提案したところ、顧客のなかで評判をよび、売り上げ向上につながりました。またイギリス出身のホテル従業員が、日本の礼儀正しさと英国式のナチュラルな接客を組み合わせたところ、顧客からの評判が改善された例もあります。
外国人労働者が提供してくれる斬新なアイデアは、マーケットでの差別化につながるのです。
外国人労働者を雇用する際のメリットについては、以下の記事でも詳しく解説しています。採用方法もあわせて解説しているため、外国人労働者の雇用を検討している人は、あわせてお読みください。
外国人労働者が増えると起こる悪い影響
外国人労働者が増加することで、悪い影響がもたらされる可能性もあります。
外国人労働者の雇用の増加に伴い、人材確保への価格競争がうまれ、国内における賃金に影響を与えるおそれがあります。また、外国人労働者への理解と認知の低さから、トラブルが生じる場合もあるでしょう。
外国人労働者を受け入れることによるデメリットや悪い影響について、解説します。
国内労働者の仕事が奪われる可能性がある
外国人労働者が増加することで、とくに賃金が低い傾向にある業種や単純作業の場合は、日本人にとっての雇用減少につながる可能性があります。
たとえば農業や建設、サービス業では、外国人労働者が安価な労働力として雇用されることが多く、日本人労働者が競争により職業を失うリスクが高まります。
外国人労働者が増加することで労働市場の需給バランスが変わる可能性があり、日本人労働者が優先的に雇用されなくなるおそれもあるでしょう。とくに地方の中小企業では、外国人労働者を雇用することで人件費を削減しようとする動きもあり、日本人の雇用機会が減少することが懸念されています。
日本の賃金が上昇しにくくなる
外国人労働者が増加すると、単純労働や低賃金の傾向にある業務およびポジションでの、人材コストにおける価格競争が激化します。結果、企業はコスト削減のために、賃金水準をおさえがちになるでしょう。
賃金水準がおさえられた状況が続くと、日本人労働者全体の賃金の上昇が妨げられ、労働市場全体に負の影響を与える可能性があります。外国人労働者を雇用している企業側では、低賃金での雇用が一般化し、日本人労働者が求める賃金に応えられなくなるでしょう。
外国人労働者の受け入れが、賃金上昇の抑制要因となることが懸念されています。
国内産業の生産性が低下する
外国人労働者の受け入れは、労働力不足を補う手段として有効ですが、場合によっては国内産業の生産性を低下させる要因にもなります。
賃金コストが高ければ、設備投資などにより生産性を向上させ、高いコストを補おうとする動きも出てくるでしょう。しかし、外国人労働者を低賃金で雇用できる場合には、本来であれば置き換えられるべき生産性の低い工程や設備が残ったままともなりかねません。また企業が短期的なコスト削減を追求するあまり、業務改善や技術革新への投資を怠り、長期的な成長が損なわれるケースも考えられるでしょう。
さらに労働力の質が低下すれば、企業全体の競争力にも悪影響をおよぼす可能性が懸念されます。
地域住民とのトラブルが発生する
外国人労働者の増加に伴い、地域住民とのトラブルが発生する可能性があります。
国籍や文化が異なる外国人労働者が地域社会に溶け込めない場合、住民との間に摩擦や誤解が生じるケースがあるのです。
たとえば、言語の問題からコミュニケーションが不足すると、誤解や不安を引き起こします。また、違った文化や習慣にもとづく行動が周囲の人々の価値観に合わない場合、地域住民からの反感を招くこともあります。
地元でのトラブルが多発すると、外国人労働者にとって住んだり働いたりしにくい環境となり、職場でのパフォーマンスにも悪影響をおよぼすでしょう。
外国人労働者を受け入れる際の問題点と課題
外国人労働者の受け入れ人数が増加し、ある程度の体制が整ってはいるものの、外国人労働者に対する差別や待遇差を完全になくすことは難しいでしょう。
外国人労働者は、日本とは異なる言語と文化のなかで生活してきました。そのため、コミュニケーションのすれ違いや仕事に対する考え方の相違から、トラブルが発生することもあります。
外国人労働者の受け入れに伴い、現状の問題点と課題について解説します。
安価な労働力として利用されるケースがある
外国人労働者は、企業によって安価な労働力として扱われる場合があります。賃金の最低水準が日本人労働者よりも低く設定されれば、労働環境の悪化につながるでしょう。
実際、外国人労働者が安価に雇用されることで、日本人の労働市場に悪影響をおよぼす場合があります。また外国人労働者が最低賃金法に反して低賃金で働かされたり、労働時間が長く環境が不適切な職場での就業を強いられることも起きています。
外国人労働者の権利が侵害されているにもかかわらず、取り締まりを逃れている企業や職場が後を絶ちません。
外国人労働者への理解や認知が少ない
外国人労働者を受け入れる際、企業の従業員側において理解不足や認知不足がある場合、受け入れを反対される場合があります。反対する理由のひとつに、業務の説明や引継ぎによる負担が大きいことがあります。
外国人労働者の雇用をスムーズに進めるには、既存の従業員の不満や負担を減らすための理解と協力が必要です。
また文化や習慣の違いに対する理解が欠如していると、職場でのコミュニケーションに支障をきたし、摩擦や誤解を生むことがあります。日本人社員が外国人労働者との接し方を知らなかったり、優遇すべき点を理解していなかったりする場合、外国人労働者が孤立感を抱くこともあるでしょう。
賃金の低さから優秀な人材確保が難しい
海外諸国に比べて日本での賃金が魅力的でない場合、優秀な人材確保が困難な場合があります。
また、日本以外における外国人労働者の賃金水準が上昇した場合、現在日本で働いている人が多いベトナムやインドネシアなどでも、出稼ぎ先として日本を選ばなくなる可能性があります。
日本の施策により外国人労働者に対する待遇が改善されつつありますが、実際の労働市場では依然として低賃金で働く外国人労働者が多く、結果的に優秀な人材を逃すことになるでしょう。
外国人労働者を雇用する際は、お互いにとって働きやすい環境構築が不可欠です。外国人労働者を雇用する際、把握しておきたい注意点や手続き方法について、以下の記事で解説していますので、あわせてお読みください。
外国人労働者を誘致するために早急な課題解決が必要
外国人労働者が増えると起こる影響には、よい影響と悪い影響があります。
よい影響には、労働力や人口の確保につながることや、外国人ならではの新しいアイデアに触れられるなどがあるでしょう。一方で悪い影響には、国内賃金の低下や、日本人労働者の仕事が奪われるといったことが挙げられます。
外国人労働者の雇用を検討する場合は、メリットとデメリットを理解したうえで体制を整え、適切な労働環境のもと雇用しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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