• 更新日 : 2025年3月27日

労災の休業補償の振込が遅い!時期の目安や遅れる理由、対応方法を解説

労災によるケガや病気で働けなくなったとき、頼りになるのが「労災保険の休業補償」です。しかし、いざ申請しても「なかなか振り込まれない」「どのくらいで支給されるのか分からない」と不安になる方は少なくありません。

本記事では、休業補償金が振り込まれるまでの流れ、振込が遅れる主な理由、その対処法を解説します。初めて労災申請に取り組む方も、正確な情報を知ることで、焦らず安心して対応できるでしょう。

労災の休業補償とは

労災の休業補償は、業務中や通勤途中に起こったケガや病気により働けないときに、労働者が一定の収入を得るための制度です。これは、労働基準法に基づき、労働者が経済的に困難な状況に陥らないよう支援するために設けられています。

労災の休業補償の対象となる条件

労災の休業補償を受けるためには、以下の条件を満たさなければなりません。

  • 業務や通勤が原因でのケガや病気であること
  • 療養のために4日以上働けない状態であること

労災の休業補償の給付内容

通常、労災の休業補償は、給料の80%が支給されます。内訳としては、労働基準監督署を通じて休業補償給付として60%、そして特別支給として20%が支給されます。この合計で、元の賃金の80%を受け取ることができるのです。

具体例として、月収が30万円の場合、18万円が休業補償給付、6万円が特別支給され、合計24万円を受け取ることになります。

この制度は、事故や病気による不意の収入減少をサポートするために非常に大切な役割を果たしています。理解を深めておくことで、実際に困った状況にも落ち着いて対処できるでしょう。

労災の休業補償の振込時期の目安

労災の休業補償の振込時期は、通常は申請を行ってから約1ヶ月後が目安です。しかし、場合によってはもっと早く振込まれることもあります。

まず、労災申請は、企業側と労働者双方の確認が必要で、基本的には会社が書類を整え労働基準監督署へ提出します。申請書類が整い、必要な書類がすべてそろった状態で、通常、監督署は1ヶ月程度で審査を行い、振込手続きに移ります。

また、労働基準監督署での処理が完了した後、実際に振り込まれるまでの銀行手続きにも数日かかることがあります。ですので、具体的な振込日は申請手続きが完了し次第、確認することが大切です。

一方で、書類に不備があった場合や、内容に疑問が生じた場合は追加の確認が必要となり、振込が遅れる可能性があります。このような遅延を避けるためには、申請に関する情報を詳しく確認し、不明な点があれば事前に問い合わせを行うことが推奨されます。

労災の休業補償の振込が遅い理由

休業補償給付の申請をしたにもかかわらず、なかなか振り込まれないというケースには、いくつかの代表的な理由があります。ここでは、主な理由をそれぞれ詳しく見ていきます。

申請書類に不備や誤記がある

最も多い原因が、申請書類に記入漏れや誤記、添付書類の不足があるケースです。労働基準監督署は、労災認定の公平性を保つため、書類を非常に慎重に審査しています。そのため、記載された日付が実際の休業期間と合わない、金額の計算が間違っている、押印が抜けているなどの細かなミスでも、確認や訂正が必要になります。

2024年4月以降は一部書類に押印が不要となったものの、申請書全体の記載内容の整合性や正確性はこれまで通り厳しく確認されます。金融機関の口座番号の間違いなども、申請後の振込エラーに繋がる原因の一つです。

申請者側でできることとしては、提出前に記入漏れやミスがないかを入念に確認すること、必要な添付書類がすべてそろっているかをチェックすることが重要です。

会社側の対応が遅れている

休業補償給付の申請には、原則として会社による証明が必要となります。具体的には、請求書の中に「事業主証明欄」があり、そこに会社が記入しなければ、申請が完了しません。

労働者が必要書類を準備しても、会社側の事務手続きが遅れることで、監督署への提出が遅れ、結果として支給が先延ばしになることがあります。特に中小企業などでは、担当者が限られているために事務処理が滞るケースもあります。

また、稀ではありますが、会社が労災申請に消極的な姿勢をとる場合もあります。例えば、労災申請によって保険料が上がるのを避けたい、あるいは労災隠しのために申請を妨げるといったケースです。

このような場合は、労働者本人が直接労働基準監督署に申請することができます。会社の対応に不安を感じたら、監督署に相談することが大切です。

労働基準監督署の審査に時間がかかっている

労災の内容によっては、認定までに時間がかかることがあります。例えば、転倒や機械によるケガなど明確な業務災害であれば比較的早く認定される傾向にありますが、ストレスによる精神疾患や脳・心疾患などのケースでは、業務との関連性の有無を慎重に判断する必要があるため、審査に時間を要します。

また、労働基準監督署には多くの労災申請が寄せられており、地域や時期によっては処理件数が非常に多くなります。特に人口の多い都市部や、年度末・年度始めなどの繁忙期は、審査が通常よりも遅れることがあります。

申請者としては、申請後にしばらく経っても支給決定通知が届かない場合、管轄の労働基準監督署に連絡し、審査の進行状況を確認することができます。

金融機関の振込処理に時間がかかっている

労働基準監督署で支給が決定されたあと、実際に振込が完了するまでは金融機関のシステムに依存します。通常は数日以内に処理されますが、金融機関側のシステム障害や手続きの関係で、若干の遅れが生じる可能性もあります。

特に、月末・月初など銀行業務が集中する時期や、祝日が重なる時期などは、通常よりも処理に時間がかかることがあります。

このような場合、監督署側ではすでに振込処理が完了していても、実際の入金が1~2営業日遅れることもあるため、通知を受け取った後も口座への入金がすぐに反映されないことがあります。

特別な事情がある

申請の内容が特殊な場合や、事故や疾病の状況が複雑な場合は、労災としての認定に通常よりも多くの時間がかかることがあります。例えば、通勤災害か業務災害かの判断が難しい、職場以外で起きた事故に業務との関連性があるか判断する必要があるなどのケースです。

また、本人が療養中で外出が困難な場合などは、書類の作成や提出にも時間がかかることがあります。家族が代理で対応する場合でも、記入や証明に手間取ることも少なくありません。

このような状況では、時間的な余裕を持って対応し、早めに必要書類の準備や関係機関への連絡を行うことが望まれます。

労災の休業補償の振込が遅い場合の対処法

休業補償給付の申請後、なかなか振込がされないと不安になるのは当然のことです。振込の遅れには様々な理由が考えられますが、状況に応じて適切な行動を取ることで、不安を軽減し、早期の解決につなげることが可能です。ここでは、振込が遅れていると感じたときに取るべき対処法を、順を追って詳しく紹介します。

申請書類や手続きの状況を確認する

最初に行うべきことは、自分自身の申請状況の確認です。提出した申請書類の控えを見直し、記入漏れや添付書類の不足がなかったかを確認しましょう。日付や休業期間、銀行口座の情報などが正確に記載されていたかどうかも重要なポイントです。

さらに、会社に対して「事業主証明欄の記入が完了しているか」「労働基準監督署に申請書を提出したか」など、手続きの進行状況を確認する必要があります。会社側の手続きが完了していない場合は、速やかに対応を依頼しましょう。

また、労働基準監督署から「支給決定通知」が届いているかどうかも確認します。通知が未着であれば、審査が完了していない可能性があります。通知が届いているにもかかわらず、期日を過ぎても振込がない場合には、金融機関や監督署への確認が必要です。

労働基準監督署に問い合わせる

申請から1か月以上経過しても通知が届かない、あるいは通知が届いたにもかかわらず振込が確認できない場合は、労働基準監督署に直接問い合わせましょう。担当部署に連絡を取り、自身の申請がどの段階にあるのかを確認することで、遅延の原因が明確になることがあります。

監督署では、申請が受理されたか、現在どのような審査状況にあるのか、支給決定がいつごろ出る見込みかなどの情報を教えてくれる場合があります。申請者本人であれば、電話での問い合わせや、窓口での相談も可能です。

また、厚生労働省では全国共通の「労災保険相談ダイヤル」も設けています。このダイヤルでは制度に関する一般的な相談も可能です。具体的な審査状況は管轄の監督署でしかわかりませんが、制度の仕組みについて不明点がある場合には役立ちます。

弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談する

自分で確認しても原因がわからない、または会社が申請に協力してくれないといった場合は、労災に詳しい専門家に相談することを検討しましょう。特に、会社が非協力的な姿勢をとっていたり、労災隠しの疑いがある場合には、法律の専門知識を持つ弁護士のサポートが有効です。

弁護士は、労働者に代わって会社との交渉を行ったり、必要であれば法的手続きを進めることも可能です。労災に関する経験が豊富な弁護士を選ぶことで、状況に応じた具体的なアドバイスを受けることができます。

また、社会保険労務士も労災保険の申請手続きに精通しており、煩雑な書類作成や提出のサポートを受けることができます。専門家に依頼することで、手続きがスムーズに進み、早期の振込につながる可能性が高まります。

他の相談窓口を活用する

上記以外にも、相談できる公的な機関があります。例えば、各都道府県の労働局には「総合労働相談コーナー」が設置されており、労働者の立場から無料で相談に応じています。会社とのトラブルや手続きの遅れに関して、第三者的な立場からのアドバイスを受けることができます。

また、労働組合に加入している場合は、組合を通じて会社に対して対応を促すことも可能です。労働組合は労働者の権利を守るために活動しており、労災に関する相談にも対応しているケースがあります。

公的な窓口を活用することで、個人では対応が難しい問題に対しても、支援を受けながら進めることができるようになります。

労災の休業補償をスムーズに受け取るためのポイント

休業補償給付の申請では、多くの書類を正確に記入・提出する必要がありますが、初めて手続きする方にとっては不慣れな点が多く、思わぬミスが発生しやすいものです。申請内容の間違いや誤解は、給付金の振込遅延や減額、最悪の場合は不支給につながることもあります。ここでは、申請時に特に注意すべき代表的なポイントについて、具体的に解説します。

医師の診断書との整合性

申請書には、医師の診断および労務不能期間の証明が求められます。本人の記入内容と医師の証明が食い違っていると、労働基準監督署の審査において不審点とされ、確認のために手続きが中断される可能性があります。

たとえば、申請者が休業期間を4月1日から5月31日と記載しているにもかかわらず、医師の診断では4月15日からの労務不能とされている場合、給付対象期間が一致しないため、審査が保留となるケースがあります。

このような不一致を防ぐためには、申請前に必ず医師の証明書と自身の記載内容を照らし合わせ、矛盾がないかを確認することが必要です。

待期期間の考え方

労災による休業補償は、休業の初日から支給されるわけではありません。休業開始から最初の3日間は「待期期間」とされ、この期間については労災保険からの補償対象外です。この待期期間中に発生する賃金については、原則として会社側が補償する義務を負っています。

この仕組みを知らずに、休業初日から労災補償が出ると誤解しているケースも少なくありません。給付対象日数や金額を過大に見積もってしまうと、審査段階で差し戻される可能性があります。

申請前に、待期期間に関するルールを確認し、対象となる日数を正しく理解することが大切です。

添付書類の提出漏れ

請求書本体の提出だけでなく、補足資料として求められる添付書類にも注意が必要です。労働基準監督署では、提出された書類の内容をもとに支給の可否を判断するため、必要な添付資料が欠けていると審査が保留されることになります。

必要に応じて提出すべき書類には、賃金台帳、出勤簿、事故報告書、医療機関の領収書などがあります。特に、労災指定外の医療機関を利用した場合や、治療内容が通常と異なる場合には、追加の証明書類が必要になることがあります。

提出前にチェックリストを用意して、提出物の過不足を確認する習慣をつけることが、ミスを防ぐ上で効果的です。

労災の休業補償の内容を正しく理解しましょう

労災による休業補償給付は、働く人の生活を守る大切な制度です。申請後の振込が遅れる背景には、書類の不備や会社側の対応遅れ、審査の複雑さなど様々な要因があり、それぞれに応じた適切な対処が求められます。本記事でご紹介した申請の流れ、注意点、そして相談先などの情報を活用することで、不安を最小限に抑え、スムーズな給付を受けることができるでしょう。制度を正しく理解し、備えておくことは、いざという時の大きな安心につながります。労災申請に関する疑問や不安がある場合は、一人で抱え込まず、専門機関や専門家に相談することを強くおすすめします。


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