- 更新日 : 2025年3月19日
外国人雇用労務士の年収や資格取得のメリットを解説
外国人労働者の雇用は今後も増えることが予想されるため、外国人雇用労務士は将来性のある資格だといえるでしょう。
しかし、外国人雇用労務士は比較的新しい資格なため、情報が少なく資格を取得すべきか悩む方もいるでしょう。
この記事では、外国人雇用労務士の年収や資格取得のメリット、活かせる仕事、試験概要などを解説します。
目次
外国人雇用労務士とは
外国人雇用労務士とは、外国人の雇用に関する包括的な知識や実務スキルがあることを証明できる資格です。外国人雇用労務士について、資格概要や活かせる仕事などを解説します。
外国人雇用労務士は国家資格ではなく民間資格
外国人雇用労務士は国家資格ではなく、一般社団法人全国外国人雇用推進機構が実施する民間資格です。2022年に誕生した比較的新しい資格で、外国⼈雇⽤に関する専門的な知識と実践的な能力があることを証明できます。
日本では少子化による労働人口不足の影響で、外国人を積極的に採用する企業が増加しており、外国人雇用に関する知識のニーズが高まっています。今後も外国人雇用は増えると予想されるため、外国人雇用に関する専門知識を持つ人は、企業にとって貴重な人材です。
そのため、外国人雇用労務士は、外国人雇用に関する課題解決やトラブル防止にも役立つ資格として注目されています。
外国人雇用労務士と外国人雇用管理主任者の違い
外国人雇用労務士に似ている資格として、外国人雇用管理主任者が挙げられます。
外国人雇用管理主任者は、2019年に誕生した民間資格です。どちらも外国人雇用に関する専門知識があることを証明できる資格ですが、認定団体や試験方法などに違いがあります。
外国人雇用労務士と外国人雇用管理主任者の違いは、以下のとおりです。
資格 | 外国人雇用労務士 | 外国人雇用管理主任者 |
---|---|---|
認定団体 | 一般社団法人全国外国人雇用推進機構 | LEC東京リーガルマインド |
試験方式 | IBT方式 (自宅のパソコンで受験) | CBT方式 (全国のテストセンターで受験) |
出題形式 | 四肢択一方式/80問 | 四肢択一方式/50問 |
更新頻度 | 2年 | 3年 |
参考:
外国人雇用労務士(外労士)資格試験
外国人雇用管理主任者
外国人雇用労務士の資格が活かせる仕事
外国人雇用労務士の資格が活かせる仕事として、以下が挙げられます。
- 人事労務担当者
- キャリアコンサルタントやコーチ
- 人材サービスのスタッフ
- 教育機関や日本語学校の職員や教師
- 自治体や国際交流の促進に携わるNPO職員
- 社会保険労務士
- 行政書士
外国人雇用を行う企業の人事労務担当者が資格を取得すると、履歴書の内容から在留資格や就労可能な業務などを予測できるメリットがあります。専門的な知識により、不法就労や手続き漏れなどのトラブルも防げます。
資格を取得することで、外国人雇用に強い専門性をアピールできるため、キャリアアップにも効果的です。
国際情勢や語学に興味がある大学生や専門学校生も、資格を取得できます。そのため、就職活動で、外国人雇用に関する幅広い知識があることを企業にアピールするためにも役立ちます。
外国人雇用労務士の年収
外国人雇用労務士は新しい資格なので、年収に関する情報はまだ少ないです。会社によっては資格手当が支給される可能性があります。資格自体による年収の目安は明確ではありませんが、スキルアップによる年収アップが期待できるでしょう。
たとえば、企業の人事担当者が資格を活かすことで、外国人雇用の実務責任者として高評価を得られる可能性があります。フリーランスやコンサルタントとして活動したり、他の専門資格と併用したりすれば、さらに年収アップを図れます。
外国人雇用労務士の資格取得のメリット
外国人雇用労務士の資格を取得する主なメリットについて解説します。
専門性をアピールしてキャリアを広げられる
外国人雇用労務士の資格は、外国人雇用に関する専門性をアピールできます。特に、外国人の採用や労務管理に関わる仕事をしている方は、キャリアアップや社内評価の向上につながる可能性があります。
たとえば、社労士や行政書士、司法書士、中小企業診断士などの専門家業の方は、取引先の企業に対して専門性をアピールすることも可能です。
資格認定後は履歴書にも記載できるため、外国人雇用に強い人材として注目されやすく、就活や転職でも有利になる可能性があります。近年は業界を問わず外国人労働者の雇用が増加しているため、専門性を高めることでキャリアを広げるチャンスにつながるでしょう。
外国人雇用をスムーズに進められる
外国人雇用労務士の資格取得により、外国人雇用をスムーズに進められる点もメリットです。
資格を取得するうえで、外国人雇用における重要な法令や注意点など、包括的な知識が身に付きます。外国人労働者を受け入れるための手続きや、雇い入れた後に必要な届け出など、実践的なスキルも習得可能です。
在留資格や労働関連法令の理解があることで、外国人雇用に関する一連の手続きを正確に効率よく進められます。外国人雇用に対しての知識がないと、雇用開始までに時間がかかるため、専門知識を持った人材は貴重な存在となるでしょう。
外国人労働者とのトラブルを回避できる
外国人雇用労務士の資格は、外国人労働者とのトラブルを回避するためにも役立ちます。在留資格で認められていない業種での就労や、許可された時間数を超えて働くことは不法就労となり、トラブルになりやすいポイントです。不法就労させた事業主も処罰の対象になる可能性があるため注意が必要です。
外国人雇用労務士の専門的なノウハウにより、法律問題や不法就労などのトラブルを回避できます。外国人の採用は、人手不足の解消などのメリットも多くありますが、文化や習慣の違いなどからトラブルが発生しやすいデメリットもあります。
資格を通じて、外国人労働者との円滑なコミュニケーション方法や労務管理スキルを習得することで、労働条件の誤解などによるトラブルの防止も可能です。
外国人雇用労務士資格の試験について
外国人雇用労務士資格の試験について試験概要や受験資格、難易度などを解説します。
試験概要
外国人雇用労務士試験は、完全オンラインで受験できます。安定したインターネット通信環境とカメラ付きのパソコンがあれば、自宅でも海外でも受験が可能です。
試験合格後に、外国人雇用労務士登録講習を受講することで、外国人雇用労務士の資格が付与されます。
外国人雇用労務士試験の概要は、以下のとおりです。
試験概要 | 内容 |
---|---|
試験方式 | IBT方式(自宅で受験可能) |
出題形式 | 四肢択一式(80問) |
試験時間 | 2時間30分(試験120分・本人認証30分) |
受験料 | 8,900円(税込) |
試験合格後の登録講習 | 5,000円(税込) |
支払方法 | クレジットカード決済 |
試験時間は2時間30分となっていますが、30分は本人認証や動作確認の時間になるため、問題の解答に使えるのは2時間です。
試験に合格し、登録講習を受講すれば、2年間有効の登録証が発行されます。資格を継続して所有するためには、更新講習の受講が必要です。
受験資格
受験に必要な資格や実務経験はないため、特別な学歴や職歴がなくても誰でも受験可能です。実務経験なしでも受験できるので、これから外国人雇用に関わりたい方でもチャレンジできます。
社会人はもちろん、学生や主婦、転職を考える方にも開かれた資格です。ただし、以下に該当する場合は受験ができないため注意しましょう。
- 成年被後見人または、被保佐人
- 禁固以上の刑に処され、刑の執行が完了または刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない方
申し込みから資格認定までの流れ
外国人雇用労務士試験は、申し込みから資格認定まですべてオンラインで行われます。流れは、以下のとおりです。
- 会員登録
- 試験申し込み
- 試験当日(オンライン受験)
- 登録講習(オンライン視聴)
- 資格認定
試験は年2回(春・冬)実施され、試験の日程や申し込み日は公式サイトで公開されます。
試験当日は、公式サイトのマイページから受験が可能で、合格発表は約1ヶ月後です。会員登録したメールアドレスに試験結果の案内が届き、マイページから合否を確認できます。
合格後は、資格認定のための登録講習(オンライン)の受講が必要です。登録講習の受講後、資格が付与され、登録した住所宛に資格証が郵送されます。
試験問題の内容
試験問題は、外国人雇用労務士公認テキストブックに記載されている範囲で出題されます。主な試験の内容は以下のとおりです。
- 外国人雇用総論
- 外国人労働者の人権
- 外国人労働者の採用と入管法
- 外国人労働者の労務・法務
- 人事制度と人事管理
公認テキストブックを中心に試験対策を進めましょう。問題集や過去問は販売されていませんが、2020年11月に実施されたウェビナーでサンプル問題が公開されています。試験実施2週間前から「直前対策講座」が配信されることもあるため、公式サイトを確認することをおすすめします。
難易度
外国人雇用労務士資格は、対策をすれば合格可能な難易度です。近年の試験合格率は以下のとおりです。
試験開催年月 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
---|---|---|---|
2024年11月24日 | 244人 | 165人 | 67.6% |
2024年5月26日 | 200人 | 135人 | 67.5% |
2023年11月26日 | 141人 | 102人 | 71.33% |
外国人雇用労務士資格の合格率は、60〜70%前後となっています。高い難易度ではないものの、外国人雇用に関する包括的な知識が求められるため、事前知識がない方は難しく感じる場合もあります。
合格のためには、公認テキストブックを活用して事前学習をしっかり行うことが重要です。
外国人雇用労務士資格の注意点
外国人雇用労務士資格の注意点として以下が挙げられます。
- 外国人雇用労務士資格の有効期限は2年間
- 試験に合格しただけでは外国人雇用労務士を名乗れない
外国人雇用労務士資格の有効期限は2年間
外国人雇用労務士資格の有効期限は2年間です。2年ごとに更新講習を受講することで資格を保持できます。更新講習を受講しないと資格が失効し、外国人雇用労務士を名乗れなくなるため注意しましょう。
外国人雇用関連の法律や制度は頻繁に改正されているため、更新講習により最新の知識を習得することが大切です。更新講習には5,000円(税込)の費用がかかります。
試験に合格しただけでは外国人雇用労務士を名乗れない
外国人雇用労務士の資格は、試験に合格した後に登録講習の受講が必要です。試験に合格しただけでは外国人雇用労務士を名乗れないため注意しましょう。
試験に合格した方には、資格認定のためのオンライン登録講習の案内が届きます。指示に従って、マイページから登録講習を受講しましょう。
外国人雇用労務士登録講習を受講し、認定されれば、外国人雇用労務士を名乗ることが認められます。
外国人雇用労務士の資格を取得して外国人雇用に役立てよう
外国人雇用労務士は、外国人雇用における実践的な知識やスキルがあることを証明できる資格です。履歴書や名刺にも記載でき、専門性の高い人材としての信頼性を高められます。
業務の幅を広げたい方やキャリアアップを目指す方におすすめの資格です。外国人雇用の専門知識を身に付けて、業務や就職活動に役立てましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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