- 更新日 : 2025年3月18日
代休と有給休暇の違いとは?給与計算の方法や運用のポイントを解説
休日出勤をした場合、代わりの休日として代休を取得してもらうことがあります。しかし、従業員が代休ではなく有給休暇を申請するケースもあり、どのように対応するべきか迷う担当者の方もいるでしょう。
そこで本記事では、代休と有給休暇の違いや給与計算の方法について解説します。
目次
代休と有給休暇の定義
代休と有給休暇の定義について、以下4つの項目に沿って解説します。
代休の定義
代休とは、休日労働を行わせた代わりに、後日、別途休日を与えることです。代休を与えることは法律上の義務ではないため、企業ごとに規定を決められます。
ただし、労働基準法により、週に1回または4週に4回の法定休日の付与が義務付けられています。法定休日の付与に違反しないよう、また、従業員が十分な休息を取れるように休日を設けることが大切です。
有給休暇の定義
有給休暇とは、正式には「年次有給休暇」という名称であり、給与の支払いを伴う休暇のことです。労働基準法第39条で定められた労働者の権利でもあり、6ヶ月間継続して勤務し、かつ、全労働日の出勤率が8割以上である従業員に付与されます。
付与のタイミングや日数は業務形態と勤続年数によって異なり、たとえば正社員であれば、半年の勤務で10日、1年半の勤務で11日といった具合に増えていく仕組みです。アルバイトやパートにも付与され、有給休暇を取得させないと企業は罰則の対象になります。
代休と有給休暇の違い
代休も有給休暇も、どちらも休暇を取得する点では同じですが、以下4つのような違いがあります。
代休 | 有給休暇 | |
---|---|---|
賃金の発生有無 | 企業の規定によるが原則無し | 有り |
取得義務 | 無し | 有り |
発生条件 | 企業の規定による | 6ヶ月間継続して勤務し、 かつ、全労働日の出勤率が8割以上 |
取得期限 | 企業の規定による | 付与後2年 |
企業の規定によるとはいえ、代休は原則として賃金が発生しない休日であり、取得義務もありません。発生条件や取得期限は法律上で定められていないため、企業ごとのルールによって異なります。
一方、有給休暇は賃金が発生するため、有給休暇として休んだ日は通常の労働日と同様の賃金を支払うのが義務です。また、法律で取得することが義務付けられており、発生条件や取得期限にはどの企業にも共通の規定が定められています。
とくに賃金が発生するかどうかに大きな違いがあり、管理者にも従業員にとっても重要なポイントになるでしょう。
代休と振替休日の違い
振替休日とは、休日出勤するにあたって、あらかじめ休日と別の労働日を入れ替えておくことです。代休と振替休日は「タイミング」と「手当の有無」に違いがあります。
代休は休日出勤をした後に休日を決定し、法定休日の労働に対して休日労働分の割増賃金を支払う必要があります。一方、振替休日は事前に休日を決めており、労働日と休日を入れ替えているだけのため、法定休日に労働させても休日手当は不要です。
企業としては、割増賃金を支払う必要がない振替休日のほうがコストを抑えられることになります。
代休・有給休暇・振替休日における給与計算の違い
休日出勤の代わりに休む日は、取得方法が代休・有給休暇・振替休日のどの方法を取るかによって、給与計算のやり方が異なります。以下では、1時間あたりの賃金が2,000円の従業員が、法定休日である日曜日に8時間の休日労働を行うケースについて、それぞれの計算例を紹介します。
休日出勤後に代休を取得するケース
代休を取得する場合は、休日出勤した分について法定の割増賃金(35%)を支払う必要があります。一方で、代休によって本来の労働日は働いていないため、通常その時間分は控除されるのも特徴です。具体的な計算式は以下のとおりです。
- 休日出勤手当:2,000円×8時間×1.35=21,600円
- 代休日の賃金控除:2,000円×8時間=16,000円
- 差し引き支給額=5,600円
休日出勤後に代休を取得した場合は、通常通りに働いた場合に比べて5,600円多く賃金を支払うことになります。
休日出勤後に有給休暇を取得するケース
有給休暇を取得する場合は休日出勤手当が必要であり、かつ、有給休暇分の賃金も支払う必要があります。具体的な計算式は以下のとおりです。
- 休日出勤手当:2,000円×8時間×135%=21,600円
- 有給休暇取得日の賃金:2,000円×8時間=16,000円
有給休暇は賃金が発生する休暇のため、従業員が働いていなくても通常の労働日と同じ賃金を支払うことになります。不就労日分の控除はしないため、通常通りに働いた場合と比べて、休日出勤手当分の21,600円多く支払うことになります。
休日出勤前に振替休日を決めておくケース
振替休日は、法定休日と入れ替えを行うだけなので、別途賃金が発生することはありません。
- 休日出勤手当:0円
- 振替休日取得日の賃金:0円
つまり、通常通りに働いた場合と比べて、給与に変わりはありません。ただし、週に40時間を超えて働いたり、さらに休日出勤したりする場合は割増賃金が必要なため注意しましょう。
代休や有給休暇を運用する際のポイント
代休や有給休暇を運用する際は、以下5つのポイントを抑えておくと良いでしょう。
代休よりも有給休暇のほうが優先順位が高い
従業員から休日出勤に代わる休日として、有給休暇を消化したいと申し出があった場合は、有給休暇を優先させる必要があります。代休の取得は義務ではない一方で、有給休暇を取得させることは使用者の義務として規定されているためです。
会社としてはコストがかかりにくい代休や振替休日を優先させたいと考えるかもしれませんが、従業員からの有給申請は原則拒否できません。また、一定日数の有給休暇の消化は義務付けられており、消化できなかった場合は企業にペナルティが科される可能性があります。
会社としても積極的に有給休暇の消化をしてもらったほうがいいでしょう。
代休を有給休暇に変更できない場合もある
主に以下2つのケースであれば、会社は従業員からの有給申請を拒否できます。
- 有給休暇が付与されていない場合
- 時季変更権を行使できる場合
有給休暇の取得は従業員の権利である一方で、取得条件に該当しない場合は付与されず、もちろん利用することもできません。たとえば、雇用日から6ヶ月が経過していなかったり、全労働日の8割以上出勤していなかったりすれば、有給は付与されません。
また、該当従業員が休むことによって事業の運営に支障をきたす場合は、従業員が希望した日の有給申請を拒否することも可能です。
所定休日出勤は有給休暇で相殺できる
法定休日に出勤した場合は、35%以上の割増賃金の支払い義務が発生しますが、所定休日であれば有給休暇と相殺できます。所定休日は、法定休日以外に企業が独自に定めている休日のことです。週40時間以内の労働では割増賃金の対象外となるため、所定休日の出勤は有給休暇で相殺可能です。
ただし、週40時間を超えたタイミングから残業扱いとなり、割増賃金率25%が適用されます。所定休日に出勤した場合は、週40時間を超える労働かどうかも確認したうえで、給与計算をしましょう。
月跨ぎで代休を取得する場合には注意が必要
休日出勤をした月を跨いで代休を取得する場合は、以下のように賃金計算をする必要があります。
- 休日出勤した月に割増賃金を含めた賃金を支給する
- 代休を取得した月の給与から代休分の基本賃金を控除する
たとえば、3月30日(日)に休日出勤をし、4月1日(火)に代休を取得したら、月跨ぎの代休取得となります。休日出勤手当を支給するのは3月分の給与であり、代休日の賃金控除をするのは4月分の給与です。
また、代休を取得した翌月やそれ以降に休日出勤の賃金を支給するのは違法となるため、注意しましょう。
欠勤を無断で代休に置き換えることはできない
休日出勤をした従業員が欠勤した場合、欠勤日を会社都合で代休として扱うことは禁止されています。従業員の申し出や同意があった場合にのみ、欠勤を代休として扱うようにしてください。ただし、欠勤を代休にした場合も変わらず、休日出勤分の手当の支払いは必要なので注意しましょう。
代休を運用する際に就業規則に記載すべきルール
代休を設定する場合は、会社の制度として就業規則に記載して従業員に周知する必要があります。就業規則には、以下3つのようなルールを記載しておくといいでしょう。
代休の申請方法
代休制度を導入する場合は、どのような手続きをすれば代休を申請できるかを従業員が理解している必要があります。フォーマットを用意しておくことで、従業員が代休を申請しやすく、人事担当者も管理しやすくなるでしょう。フォーマットには以下の項目を設けるのがおすすめです。
- 代休申請の年月日
- 提出先の宛名
- 申請者の氏名
- 休日出勤日
- 代休希望日
また、書類を作成したらどのタイミングで誰宛に提出すべきか、明確にしておきましょう。「休日出勤の翌日から2ヶ月以内に人事部に提出する」のように、具体的に定めておくと従業員とのトラブル防止にもつながります。
時間単位による代休取得の可否
代休は1日単位だけでなく、半日または時間単位で取得をすることも問題ありません。時間単位での代休取得を許可する場合は、就業規則に記載してきちんとルール化しましょう。たとえば、休日出勤したのが2時間だけであれば、労働日で2時間早く退勤することで代休とすることも可能になります。
一方、振替休日の場合は時間単位での取得が不可能なため、休日の種類によって扱いが異なる点には注意しましょう。
代休の取得期限
労働基準法では、代休の取得期限について明確な規定はありません。ただし、第115条では以下のとおり災害補償その他の請求権は2年で消滅すると記載があります。
この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によって消滅する。
代休の取得期限は最大2年と考えることもできます。一方で、従業員がきちんと休息を取り、働きやすい環境を維持していくのであれば、代休の取得期限を企業独自で設けて代休取得を促すのも良いでしょう。
代休・有給休暇に関するよくある質問
最後に、代休や有給休暇に関するよくある質問を3つ紹介します。
代休や有給休暇を従業員に強制することはできる?
代休の取得は法律上では義務化されていませんが、就業規則に義務化するルールが記載されていれば、強制することも可能です。反対に、就業規則によって従業員が代休を取得するかどうか選べるルールであれば、強制することは違法となります。
また、有給休暇の場合、消化を強制することはできませんが、従業員から申請があれば承諾するのが義務です。
代休と有給休暇はどちらがお得?
有給休暇は賃金が発生する休日のため、従業員としては有給休暇のほうがお得だと言えます。一方で、代休であれば代休日分の控除ができ、支払い金額が少なくなるため、会社としては代休のほうがお得だと言えるでしょう。
代休と有給休暇は併用できる?
代休と有給休暇の併用は可能です。たとえば、時間単位での代休取得が可能な会社であれば「有給休暇4時間+代休4時間」という取得方法により「8時間=1日」の労働日を休めます。ただし、時間単位での代休や有給休暇の取得が規定されていない企業の場合は、併用ができません。自社の就業規則をよく確認し、併用できるかどうかを判断しましょう。
代休と有給休暇について理解して正しく給与計算をしよう
代休とは、休日出勤をした後日の申請により、代わりとなる休日を付与することです。法律上では付与する義務がなく、企業ごとに独自のルールを定められます。一方、有給休暇は法律上で付与するタイミングや取得についてのルールが定められており、賃金が発生する休日です。
代休の場合は代休日の賃金が控除され、有給休暇では休んだ日も働いたとして賃金が発生する点が両者の大きな違いです。従業員から有給休暇を消化したいと申し出があった場合は、代休よりも有給休暇を優先し、正しく給与計算を行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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