• 更新日 : 2025年3月18日

外国人介護士を採用するメリット・デメリット|採用方法や注意点も解説

人手不足による外国人採用の検討にあたって、さまざまな不安や疑問を抱く介護施設もあるでしょう。

本記事では、介護業界における外国人介護士の受け入れ状況やメリット・デメリット、採用方法について解説します。

介護業界における外国人介護士の受け入れ状況

公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」によると、9,077事業所のうち64.7%が人手不足に悩んでいます。介護を要する人が増える一方で、業界の人材不足は深刻な状況です。

参考:公益財団法人 介護労働安定センター|令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について

こうした背景を踏まえて、介護士の待遇改善や人材育成・確保など、国は受け入れ環境を整備する取り組みをおこなっています。その中で、在留資格「特定技能」の受け入れ数が拡大されています。

「特定技能」とは、人手不足が深刻な産業分野における外国人を対象とした在留資格です。介護分野では、2024年4月から5年間で135,000人を受け入れる見込みであり、外国人介護士の活躍が期待されます。

参考:出入国管理庁|特定技能制度の受入れ見込数の再設定

外国人介護士を採用するメリット

外国人介護士を採用することで、さまざまなメリットを享受できます。具体的には以下のとおりです。

  • 人手不足を解消できる
  • 長期的に雇用できる
  • 異文化交流により活気が生まれる
  • 国際貢献できる

人手不足を解消できる

外国人介護士の採用によって、人手不足の解消につながります。とくに常時、人手不足に悩んでいる施設にとっては、大きなメリットになるはずです。

人手不足が解消されれば、時間外労働の削減や、休暇取得しやすくなる可能性があります。その結果、一人ひとりが働きやすい職場へ改善できるでしょう。

長期的に雇用できる

外国人介護士は在留資格の種類によって、長期的に働けます。たとえば、在留資格「介護」は、在留期限をくり返し更新できます。本人と雇用する側の同意があれば永続的に働くことが可能です。

また、介護施設の利用者に、継続的なケアを提供できます。安定的な人材確保が可能になり、人手不足の解消にもつながるでしょう。

異文化交流により活気が生まれる

外国人介護士を採用することで、お互いの国の文化や生活習慣を教え合うなど、交流機会も増えます。職員同士、頻繁にコミュニケーションをとれるようになるでしょう。

職場に活気が生まれ、周囲の雰囲気も明るくなります。皆が楽しく働けるようになるかもしれません。

国際貢献できる

外国人介護士の採用は、国際貢献にもつながります。なかには、日本の介護技術を母国に持ち帰り、役立てたいと願う人もいるでしょう。

そのような外国人介護士を採用することで、他国の介護技術を発展させるとともに、介護水準の向上に寄与できる可能性があります。

外国人介護士を採用するデメリット

外国人介護士の採用には、デメリットもあります。具体的には以下のとおりです。

  • 指導に時間がかかる
  • 職員や利用者とのコミュニケーションに支障が生じる
  • 契約書の内容を精査する必要がある
  • 在留資格の申請や手続きに手間がかかる

指導に時間がかかる

外国人介護士を採用するデメリットに、指導に時間がかかることが挙げられます。日本語で仕事をしなければならず、指導内容の理解に時間を要します。

指導の際は、なるべく簡単な日本語を用いることを心がけましょう。また、指導に使用する資料やマニュアルは、母国語で作成するなどの工夫も必要です。

職員や利用者とのコミュニケーションに支障が生じる

職員・利用者とうまく意思疎通ができないシーンも出てくるでしょう。また、「言葉の壁」によって、コミュニケーションを取りづらいと感じる場合も考えられます。

丁寧に接することや、理解しやすい日本語を使うなど、既存職員のフォローも大切です。

契約書の内容を精査する必要がある

契約書の内容を精査する必要もあるでしょう。海外は契約書の内容のみを重要視する傾向があり、契約書にない仕事は避けられる可能性があります。

業務上のトラブルを防ぐためにも、採用時にお互いの認識を擦り合わせておく必要があります。必要な場合は、雇用契約書を母国語で作成してもよいでしょう。

在留資格の申請や手続きに手間がかかる

外国人介護士が日本で働くために必要な在留資格は、手続きに手間と時間がかかります。取得手続きは原則本人がおこないますが、雇用側でおこなう場合もあります。

きちんと手続きをしておかないと、採用した外国人介護士が働けなくなります。もし、手続き方法が不明な場合は、専門家に相談してもよいでしょう。

外国人介護士を採用する方法

外国人介護士を採用する際は、以下のいずれかの制度を利用します。

  • EPA介護福祉士候補者
  • 在留資格「介護」
  • 技能実習
  • 特定技能1号

EPA介護福祉士候補者

EPA介護福祉士候補者は、就労と研修をしながら、日本の介護福祉士の資格取得を目指す制度です。候補者は、EPA(Economic Partnership Agreement:経済連携協定)を結んでいるインドネシア・ベトナム・フィリピンの3か国から受け入れています。

EPAは経済関係の強化を目指し、貿易や投資の自由化や円滑化を図る協定です。したがってEPA介護福祉士候補者は、介護分野の人手不足を解消するためではなく、経済活動の連携を強化することを目的としています。

日本に滞在できる期間は4年間です。滞在4年目までに介護福祉士国家試験を受験し、介護福祉士の資格取得を目指します。なお、言語の違いを理由に、EPA介護福祉士候補者には以下の特例が設けられています。

  • すべての漢字にふりがなを付記した問題用紙を配布
  • 試験時間を通常の1.5倍に延長

参考:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター|介護福祉士国家試験 よくあるご質問

在留資格「介護」

在留資格「介護」は、日本の介護福祉士養成施設を卒業し、国家資格である介護福祉士を取得した留学生が、日本で介護福祉士として働くために創設された在留資格です。2017年9月11日に施行され、2020年4月1日より実務経験を経て介護福祉士の資格を取得した人も対象になっています。

参考:厚生労働省|介護福祉士資格を取得した外国人の方に対する在留資格「介護」の付与について

在留資格「介護」を取得した外国人介護士は、日本の介護福祉士養成施設を卒業しています。そのため、高い日本語能力を有しており、会話による問題は少ないといえるでしょう。また、介護関連施設でアルバイト経験がある人もおり、即戦力としても期待できます。

在留資格「介護」は在留期限をくり返し更新できます。そのため、本人と雇用側の同意があれば、長期的に働くことも可能です。

技能実習

技能実習は、日本で培われた技能等を開発途上地域に移転し、発展を目指す制度です。具体的には、技能実習生の出身国で修得が難しい技能の修得・習熟・熟達などを図る目的があります。

技能等の修得は、技能実習計画に基づきおこなわれます。なお、日本に滞在できる期間は最長で5年間です。

技能実習生は以下いずれかの方式によって受け入れられます。2023年末では団体監理型による受け入れが98.3%に達しており、監理団体を通じての採用が一般的です。

  • 企業単独型:日本の企業が海外の現地法人や、取引先企業の職員を受け入れる
  • 団体監理型:監理団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業で技能実習を実施する

参考:公益財団法人 国際人材協力機構|外国人技能実習制度とは

監理団体とは、技能実習生の来日手続きや、受け入れ先に対する指導・監査などをおこなう非営利団体です。監理団体を通じて技能実習生を採用する場合は、監理団体の会員になる必要があります。

特定技能1号

特定技能は、人材不足が深刻な産業分野で働く外国人向けの在留資格です。2019年4月より受け入れが開始されています。特定技能は1号・2号に分類され、介護分野で働けるのは特定技能1号です。

【特定技能1号で働ける16の産業分野】

介護 ビルクリーニング 工業製品製造業 建設 造船・舶用工業 自動車整備 航空 宿泊 自動車運送業 鉄道 農業 漁業 飲食料品製造業 外食業 林業 木材産業

引用:出入国在留管理庁|特定技能総合支援サイト 在留資格「特定技能」とは

特定技能1号の場合は、合計5年間を日本で働けます。技能実習のように監理団体の会員になる必要がなく、採用ハードルは低いです。

しかし、採用の条件に出入国時の送迎・住居の準備・各種手続きへの付き添いなど、さまざまなサポートを求められます。これらのサポートが難しい場合は、登録支援機関へ委託可能です。

登録支援機関については、出入国在留管理庁の「登録支援機関(Registered Support Organization)」のページより確認できます。

外国人介護士を採用する際の注意点

つづいて、外国人介護士を採用する際の注意点について解説します。具体的には以下のとおりです。

  • 「外国人雇用状況の届出」が必要
  • 宗教や文化の違いに配慮する

「外国人雇用状況の届出」が必要

外国人介護士を採用する際は、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」をおこなう必要があります。「外国人雇用状況の届出」は全事業主に対し、外国人を雇い入れる際や離職時に義務付けられます。

届出を怠ったり、虚偽の届出であった場合は、30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。注意しましょう。

宗教や文化の違いに配慮する

外国人介護士を採用する際は、宗教・文化の違いに配慮することも大切です。たとえば宗教上、食べられないものを勧めることは避けましょう。

ヒンドゥー教では牛肉や豚肉など、肉類全般を食さない傾向にあります。イスラム教では、豚肉・アルコール(飲用、調味料を含む)を食べません。歓迎会など、会食を設ける際は気をつけましょう。

また宗教上の理由でお祈りの習慣がある場合もあります。このような外国人介護士へは、お祈りのスペースを確保するなどし、働きやすい職場をつくりましょう。

外国人介護士を積極的に採用し、人手不足の解消を図ろう

外国人介護士の採用によって、人手不足の解消につながります。採用する際は、EPA介護福祉士候補者や在留資格「介護」、技能実習や特定技能1号といった制度を利用します。くわえてハローワークへ届出をおこないましょう。

また、宗教や文化の違いに配慮することも大切です。外国人介護士も働きやすい環境をつくりましょう。


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