- 更新日 : 2025年3月13日
人事評価にAIは活用!プロンプト集・メリット・デメリット、企業のツール導入事例など
近年、多くの企業が人事評価にAI(人工知能)を活用し始めています。AIは大量のデータ分析やパターン認識が得意のため、人間では難しい公平かつ迅速な評価ができます。この記事では、人事評価にAIを導入することは可能なのか、メリットやデメリットを含めて詳しく解説します。AIツールを導入づる時の注意点まで網羅していますので、AIによる人事評価に関心のある人事担当者の方はぜひ参考にしてください。
目次
人事評価にAIは活用できる?
AIはデータにもとづく客観的な分析ができるため、人事評価プロセスの一部を担うことが可能です。例えば、以下のような業務にAIを活用できます。
- 人事評価データの集計・分析
従業員の業績データや目標達成度、360度評価のコメントなど、膨大な情報を素早く処理できる - 人事評価のパターン検出
過去の人事評価データから傾向を分析し、見落とされがちな成果を発見できる - 人事評価のバラつき補正
評価者ごとの偏りを分析し、より公平な評価をサポートできる
しかし、人事評価をすべてAIに任せることは難しく、AIの限界を正しく理解することが重要です。
AIは過去のデータを学習して判断を行うため、学習データに偏りがあると、評価結果にも偏りが生じる可能性があります。また、創造力やチームワーク、人間関係などは数値化しにくく、AIだけで適切に評価するのは難しい部分があります。そのため、これらの要素は引き続き人間の判断に頼る必要があるでしょう。
人事評価にAIを導入するメリット
人事評価にAIを導入することで得られるメリットは数多くあります。ここでは、主なメリットを3つ解説します。
評価の公平性が向上する
AI導入の大きなメリットの一つは、評価の公平性が向上することです。人間の評価者は無意識の偏見や感情に左右されることがありますが、AIはデータにもとづいて評価するため、偏った評価を防ぐことができます。例えば、特定の社員ばかりを高く評価してしまうといった評価のバラつきをAIが調整することで、公平性を確保できます。
このように、AIを導入することで「評価が適正に行われている」という信頼感が向上し、従業員の納得感も高まります。その結果、社員のモチベーション向上や会社への愛着心の強化につながります。
人事担当者の業務を効率化できる
人事評価のプロセスには、評価シートの配布や回収、評価データの集計、評価会議の準備など多くの時間と労力がかかります。AIを活用したシステムを導入すれば、これらの作業を自動化・簡略化できるため、人事担当者や評価者の負担が大幅に軽減されます。
例えば、AIが各部門の評価データをリアルタイムで集計し、自動でレポートを作成すれば、これまで手作業で数日かかっていた業務が瞬時に完了します。その結果、評価者は浮いた時間を従業員との面談やフィードバックの提供など、より価値のある業務に充てることができます。
人事評価のコストを削減できる
評価業務の効率化はコスト削減にも直結します。人事評価に関わる人件費や紙資料の印刷コストが削減できるだけでなく、評価プロセスのスムーズな運用により、人事部全体の生産性向上にもつながります。さらに、適正な評価が行われることで、社員の定着率が向上し、結果的に採用コストの削減など、長期的なコストメリットも期待できます。
データを活用して評価の精度を向上できる
従来の人事評価は、評価者の記憶や主観に頼る部分が多く、評価の正確性にばらつきが出ることが課題でした。しかし、AIは過去のデータを統計的に分析し、客観的な人事評価が可能です。
具体的には、以下のようなデータを総合的に分析できます。
- 定量データ
売上数値、KPI達成度、プロジェクト完了数など - 定性データ
上司や同僚からのフィードバック、お客様の声など
さらに、AIは過去の評価データと業績の推移を学習することで、将来の評価予測や見落とされがちな問題の発見も可能です。例えば、「過去3年間の評価データと比較して、今年の評価が極端に低い社員」を検出し、評価の見直しや改善の必要性を示唆することができます。
また、企業全体のデータを分析することで、部署ごとの評価傾向や組織の課題を可視化し、人事戦略の立案にも役立てることができます。
人事評価にAIを導入するデメリット
AIの活用は多くの利点をもたらしますが、一方で注意すべきデメリットやリスクも存在します。ここでは、AI導入による代表的なデメリットを3つ解説します。
偏った評価のリスクがある
AIは過去のデータを学習して評価を行うため、データに偏りがあると、評価結果も偏るというリスクがあります。例えば、過去の評価データが特定の属性(性別・年齢・学歴など)の社員に対して一貫して低評価だった場合、AIもその偏った傾向を引き継いでしまう可能性があります。
また、AIのアルゴリズム自体に無意識のバイアスが入り込むこともありえます。その結果、表面的には客観的な評価に見えても、実際にはバイアスを含んでいるという危険性があります。例えば、特定の大学出身者を過大評価したり、特定の職種の評価が一貫して低くなるといった問題が生じることがあります。
このような偏った評価を放置すると、社員の不満を招くだけでなく、企業の人材活用にも悪影響を与える可能性があります。そのため、AIを導入する際は、評価データに偏りがないかを定期的にチェックし、AIの出した評価を人間が適切に監視することが重要です。
社員の不安や反発を招く可能性がある
AIによる人事評価は従業員にとって新しい仕組みであるため、不安や反発を招く可能性があります。特に、AIの評価基準がブラックボックス化していると、「なぜ自分の評価がこうなったのか分からない」といった不満が生じやすくなります。
こうした問題を防ぐためには、AIの評価プロセスを社員に分かりやすく説明することが重要です。評価の透明性を高め、社員が納得できるように、AIの評価結果だけでなく、人間の目で最終判断を行う仕組みを取り入れることが望ましいでしょう。
導入コストと運用負担が発生する
AIを人事評価に導入する際には、導入コストと運用負担が発生する点にも注意が必要です。
まず、AI搭載の評価システムを導入するコストとして、ソフトウェアのライセンス料やシステム開発費用が発生します。市販のクラウドサービスを利用する場合でも、利用人数に応じた月額費用や初期設定費用がかかることが一般的です。特に高度なカスタマイズが必要な場合や、自社独自のAIモデルを構築する場合は、多額の投資となる可能性があります。
また、システム導入後の運用負荷も考慮すべき点です。AIシステムを適切に機能させ続けるためには、データのメンテナンス、モデルの定期的な再学習やアップデート、システムの保守・サポートなど継続的な取り組みが必要です。さらに、評価者や従業員への使い方の教育、運用ルールの整備といった社内対応も求められます。
特に、中小企業やAIの知識が少ない企業にとっては、これらのコストや運用負担が大きなハードルとなることがあります。そのため、導入前に費用対効果をしっかり見極め、小規模なトライアル導入から始めることが推奨されます。
人事評価でAIを導入した企業事例
実際に、人事評価へAIを取り入れている企業や組織の事例を紹介します。
三井住友信託銀行
三井住友信託銀行は、AIを活用した360度評価ツール「GROW360」を導入しています。GROW360は、社員の業務遂行能力や行動特性などを測定し、同僚や上司・部下などの360度評価が可能です。これにより、社員の能力を見える化し、優秀な社員の特徴をデータから抽出することで、人材育成や配置など科学的根拠にもとづくタレントマネジメントを支援しています。また、三井住友信託銀行では、GROW360を自社の人事領域に活用するだけでなく、提携を通じて取引先企業への提供も開始し、顧客企業の人材可視化・分析サービスとして役立てています。
明治安田生命
大手生命保険会社の明治安田生命では、約13,000人の職員を対象に、電通国際情報サービス(ISID)の統合HCMソリューション「POSITIVE」を導入し、人事情報を一元管理できるタレントマネジメントシステムを構築しています。職員一人ひとりのキャリア、研修履歴、保有資格、評価内容といったデータがすべて集約されており、社員の適性や実績をデータで把握できるます。
東洋建設
東洋建設では、AIによる「能力評価システム」を導入し、技術者一人ひとりのスキルを見える化する取り組みを開始しました。この評価システムでは、技術者に求められる能力要件を職位ごとの達成レベル別に細分化し、合計172項目の評価基準を設定しています。上司が人材管理システム上で評価を行うと、その評価結果をAIが分析し、個々の「能力評価シート」を自動作成。能力評価シートには、自分自身のスコアや同じ職位の社員の平均値・偏差値、スキルの強み・弱みといった情報が一覧化されて示されます。これにより技術者は自分の現在地を客観的に把握でき、次の目標設定をより的確に行えるようになります。
人事評価にAIを導入する場合の注意点
人事評価にAIを導入する場合は、いくつか注意すべきポイントがあります。
AIによる評価基準を明確にする
AIを人事評価に導入する際に最も重要なのは、どのように評価が行われるのかを明確にし、社員が納得できる形で運用することです。AIが評価のプロセスをブラックボックス化してしまうと、評価結果を伝える上司もなぜこの評価になったのかを説明できず、混乱を招く恐れがあります。そのため、AIがどのデータをもとに評価を算出しているのか、どのような基準でスコアを決定しているのかを可能な範囲で開示することが大切です。
また、社員が人事評価に疑問を持った場合に備え、人事担当者や評価者が適切に説明し、必要に応じて見直しができる仕組みも必要です。AIが提示した評価をそのまま適用するのではなく、人間がその内容を理解し、必要な補足や修正を加えることで、公平性と納得感を確保できます。
さらに、AIに任せる範囲と人間が判断する範囲を明確にし、評価の基準や運用方法を社内で共有しておくことも重要です。たとえAIのアルゴリズムの詳細までは開示できなくても、「評価に使用するデータの種類」「AIの結果をどのように最終評価に反映するのか」といったルールを設定し、社員が理解できる形で説明することで、不安や不信感を和らげることができます。
AIと人間の適切な役割分担をする
AIはデータ分析に優れたツールですが、人間の判断が不可欠な要素も多くあります。そのため、AIはあくまでも評価を支援するツールと位置づけ、最終的な決定権はマネージャーや人事担当者が持つべきです。
例えば、AIが評価スコアを算出したとしても、その数値だけを基に判断するのではなく、評価対象者の意欲やチームへの貢献度といった数値化しにくい要素を人間が補完することが求められます。AIが見逃してしまった貢献や潜在的な可能性を評価者が考慮し、より適切な評価を行うことで、公平で納得感のある評価プロセスを実現できます。
また、AIがどのような情報をもとに評価しているのかを、評価者自身も理解しておくことが重要です。AIと人間の判断を組み合わせることで、データに基づいた客観的な評価と、人間の視点による柔軟な判断を両立させることができます。
自社に適したAIツールを選定する
AIを活用した人事評価システムにはさまざまな種類があり、自社の評価制度に適したものを選ぶことが成功のカギとなります。選定の際には、以下のようなポイントを重視するとよいでしょう。
自社の評価制度に適合するか
AIを活用した評価システムは、それぞれ異なる評価方式や分析機能を持っています。自社の評価制度(MBO、360度評価、コンピテンシー評価など)と相性の良いシステムを選ぶことで、スムーズな運用が可能になります。
AIの機能と精度
システムに搭載されているAIの機能を確認し、自社のニーズに合ったものを選ぶことが重要です。例えば、「評価コメントのテキスト分析」「評価傾向の自動検出」「最適な人材配置の提案」など、どのような機能が搭載されているかをチェックしましょう。また、AIの予測精度や過去の実績についても確認し、信頼性の高いシステムを選ぶことが大切です。
使いやすさと操作性
AIの評価システムは、評価者やマネージャーが日常的に使用するものです。そのため、UIが分かりやすく、直感的に操作できるかどうかを確認しましょう。無料トライアルを実施しているサービスも多いため、事前に試してみるのもよい方法です。
他のシステムとの連携
人事評価システムが、既存の勤怠管理システムや給与計算システム、タレントマネジメントシステムと連携できるかも重要なポイントです。異なるシステム間でデータをやり取りできれば、AIによる評価の精度向上や、HR業務全体の効率化にもつながります。
人事評価にAIを上手く活用しましょう
AIを人事評価に活用することで、評価の公平性や効率性が向上する一方で、導入や運用には慎重な対応が求められます。AIの評価プロセスを透明化し、社員が納得できる形で運用することが成功のカギとなります。また、AIの判断をそのまま適用するのではなく、人間が補完しながら柔軟に運用することで、公平で信頼性の高い評価が可能になります。AIを上手に活用することで、従来の評価方法よりも客観性と納得感を高め、より良い人材マネジメントを実現できるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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