- 更新日 : 2025年3月7日
有給を使いまくる人は迷惑?使いすぎと言われた場合の対応や使い切るコツを解説
有給休暇を使いまくる人には、生産性向上やメンタルヘルスの改善、法律で認められた権利を十分に行使できるといった多くのメリットがあります。一方で、職場での印象悪化や業務調整の難しさなど、取得しすぎによるデメリットを心配する声も少なくありません。本記事では、企業の人事担当者と従業員の双方の視点から、有給休暇をしっかり取得することのメリットと、逆に取得しすぎることによるデメリットを公平に解説します。さらに、有給を上手に活用する方法や、企業が知っておくべきポイントについても紹介します。
目次
有給を使いまくる人は迷惑?
有給を使いまくる人に対する印象は、職場や世代によって様々です。
有給休暇を積極的に取得することは、法律で認められた正当な権利であり、決して悪いことではありません。2019年の法改正では、年5日の有給取得が義務化され、「働き方改革」の一環として休暇取得を促進する動きも強まっています。その結果、以前に比べ「有給をすべて使う」ことは珍しくなくなりつつあり、従業員の意識も変化してきました。
しかし、職場の雰囲気や世代の違いによっては、まだ「取りづらい」と感じるケースもあります。その結果、積極的に有給休暇を取得する人が悪く思われることも少なくありません。
つまり、有給を使いまくる人に対する見方は一様ではなく、職場環境や世代によって異なるのが現状です。
有給を使い切るメリット
有給を使い切ることには、従業員にとってのメリットだけでなく、企業にとってのメリットもあります。適切に有給を取得することで、生産性向上やメンタルヘルスの改善といった恩恵が得られ、企業側にも離職率の低下や職場の活性化といったプラスの影響をもたらします。以下で、有給を使い切ることの主なメリットを詳しく解説します。
生産性が向上する
有給を使い切る最大のメリットは、休息をしっかり取ることで生産性が向上することです。長時間働き続けると、集中力や判断力が低下し、ミスが増える可能性があります。適度に休むことで、脳がリフレッシュされ、仕事に対するモチベーションも高まり、結果的に業務効率が上がるのです。
また、海外の調査では、休暇をしっかり取る従業員の方が、創造性が高く、仕事の成果も良いという結果が出ています。休みを取ることは決してサボりではなく、むしろ質の高い仕事をするために必要な投資と言えるでしょう。
メンタルが改善する
休みなく働き続けると、ストレスが蓄積し、うつ病やバーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクが高まります。有給を計画的に取得することで、仕事から一時的に離れ、心身の健康を回復させる時間を確保することが可能です。
特に、長時間労働が常態化している職場では、意識的に休むことが重要です。十分な休息を取ることで、仕事に対する前向きな気持ちを維持しやすくなり、結果的に職場の人間関係も良好に保つことができます。
従業員の定着率が向上する
有給を取得しやすい環境を整えることは、従業員満足度を向上させる重要な要素の一つです。有給が取りにくい職場では、「この会社は働きづらい」と感じる従業員が増え、優秀な人材が離職しやすくなります。
反対に、有給取得が推奨される職場では、従業員のエンゲージメントが向上し、定着率も上がる傾向があります。長期的に見れば、人材の流出を防ぎ、採用コストの削減にもつながります。
有給を使い切るデメリット
有給休暇を積極的に取得することには多くの利点がありますが、有給を使い切るデメリットを指摘する声も存在します。ここでは、有給を頻繁に取得することが職場においてどのような影響を及ぼすかを見ていきましょう。
同僚や上司に負担がかかる
チームで仕事をしている場合、自分が有給を取ることで他のメンバーの負担が増える可能性があります。例えば、「〇〇さんがまた休んだから、その分の仕事を自分がやらなければならない」など、休みが続くことで、他のメンバーが自分の負担を不公平だと感じる可能性があります。
こうした問題を防ぐためには、事前に業務の引き継ぎをしっかり行い、周囲と協力しながら有給を取得することが大切です。
仕事の意欲が低いと思われる
有給休暇を頻繁に取得すると、一部の上司や同僚から「仕事への意欲が低いのでは?」と思われる可能性があります。特に、古い価値観が残る職場では、「仕事を優先しない=やる気がない」と誤解されやすいため注意が必要です。
有給を取ることは従業員の権利ですが、周囲の印象を気にするのであれば、適切なタイミングを見極めるようにしましょう。
有給を使い切るのは当たり前?
有給を使い切ることは労働者の正当な権利であり、法律上は当然のことです。企業は特別な理由がない限り、有給取得を拒否できず、適切に消化することが推奨されています。
しかし、日本の職場では、有給を使い切ることが「当たり前」とは言い切れません。業務の繁忙期や、職場の暗黙のルールによっては取得しづらい環境が残っているケースもあります。特に、休みを取ることに対して消極的な上司や同僚がいる職場では、「有給を使い切るのはわがまま」と見なされることもあります。
そのため、有給を取得する際には、業務への影響や周囲とのバランスを考えることが大切です。適切な引き継ぎや計画的な取得を意識すれば、円滑に有給を消化できるでしょう。有給休暇を「当たり前」に取得できる環境を整えることは、企業・従業員双方の課題といえます。
有給を使いすぎと言われたらどうする?
「有給を使いすぎ」と言われた場合、まずはその理由を理解することが重要です。休暇中の業務調整が十分でなく、仕事が滞ってしまった場合や、特定の時期に偏って有給を取得してしまい、他の従業員とのバランスが取れていない場合には、周囲から不満の声が出る可能性があります。また、「有給は最低限にすべき」と考える上司がいる職場では、業務に支障が出ていなくても「有給を使いすぎ」と言われることもあります。
その場合は、感情的にならずに冷静に対応することが大切です。まずは、相手の意見をよく聞き、具体的にどの点が問題視されているのかを確認しましょう。その上で、業務に影響が出ないように調整していることを伝えたり、今後は同僚と協力しながら休暇を取得することを意識している旨を説明すれば、納得してもらえる可能性があります。
職場の文化や上司の価値観が原因で指摘されている場合には、会社のルールや労働基準法に従って有給を取得していることを伝えるのも一つの方法です。有給を適切に取得することが業務の効率向上や従業員の健康維持につながることを説明し、必要に応じて職場全体で休暇取得に対する意識を改善していくことも重要な視点となるでしょう。
有給を使いすぎてクビになる可能性はある?
有給を使いすぎただけでクビになることは基本的にありません。
もし、有給取得を理由に解雇された場合は、不当解雇として法的に争うことが可能です。2019年の法改正で年5日の有給取得が義務化されて以降は、企業側が「取りすぎ」と主張すること自体が難しくなっています。
しかし、有給休暇を取得する際に虚偽の理由を申告し、業務に支障を与えた場合や、就業規則に違反した場合は、解雇のリスクがあります。また、無断欠勤を繰り返したり、職務放棄と見なされるような行動を取った場合は、懲戒処分の対象となることもあります。
そのため、有給を取得する際は、事前に上司やチームと調整し、業務に影響が出ないようにすることが重要です。適切に有給を活用しながら、円滑な職場関係を維持することが理想的でしょう。
有給を上手く使い切るコツ
有給休暇を無駄なく使い切るためには、計画的に取得し、業務に影響を与えない工夫が必要です。適切に有給を活用することで、ワークライフバランスの向上やストレス軽減につながります。ここでは、有給を上手く使い切るコツを紹介します。
計画的に有給を申請する
有給は突発的に取るのではなく、年度の初めや半期ごとに計画的に申請するのが理想的です。繁忙期に有給を取得すると、同僚の負担が増えたり、上司からの印象が悪くなったりすることがあります。そのため、比較的余裕のある時期を狙って有給を申請するとスムーズに休めます。
毎月1日ずつ有給を取る
有給をまとめて使おうとすると、繁忙期と重なって取得が難しくなったり、気づいたら有給が残っていて消化しきれなかったりすることがあります。毎月1日ずつ取得することで、計画的に有給を消化し、ムダなく使い切ることができます。
また、毎月定期的に休みを入れることで、疲労が蓄積するのを防ぎ、ストレスを軽減できます。適度に休息を取ることで、仕事のパフォーマンス向上や集中力維持にもつながります。
業務に支障が出ないよう工夫する
有給を取得する前に、自分の担当業務を整理し、必要な情報を共有しておくことが重要です。引き継ぎメモやマニュアルを作成すると、休暇中に同僚がスムーズに対応できます。
また、休み明けに大量の業務が溜まらないように、優先度の高い仕事は休暇前に片付けておくと、スムーズに業務復帰できます。
有給が取りづらいのはおかしい
「有給を使いまくる人」という言い方にはややネガティブな響きがありますが、有給休暇をしっかり取得すること自体は従業員と企業の双方に大きな恩恵をもたらします。従業員の生産性向上やメンタルヘルス改善につながり、法律で認められた権利の行使として尊重されるべきものです。一方で、周囲の印象や業務調整といった課題もあるため、企業の人事担当者は取得を推進しつつバランスを取り、従業員は事前の準備やコミュニケーションによって円滑な有給取得に努めることが重要です。お互いの立場を理解し協力することで、有給休暇を気兼ねなく取得できる健全な職場環境を築くことができるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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