- 更新日 : 2025年3月5日
無期雇用なのに職場でクビ!?不当でないか確認する方法と対処法
無期雇用契約を締結した従業員は、簡単に解雇できません。無期雇用の従業員を解雇するには、正当性かつ常識的に妥当と思われる理由が必要です。
無期雇用契約であるにもかかわらずクビを言い渡され、職場や企業の違法性について知りたい人もいるでしょう。
当記事では、無期雇用の従業員をクビにできる条件および不当な理由で解雇された場合の対処法について解説します。
目次
【雇用形態別】企業は従業員をクビにできる?
正社員や派遣社員など、雇用形態にかかわらず、ほとんどの従業員を企業は簡単にクビにはできません。解雇の可否やクビにできるケースについて、雇用形態別に解説します。
正社員(無期雇用)をクビにできる?
日本において、無期雇用契約を締結した正社員を解雇することは難しく、解雇する場合は以下のケースが考えられます。
- 勤務態度の不良:
従業員が業務に対して真剣に取り組まない場合。 - 勤怠不良:
再三改善指導したにもかかわらず、無断欠勤や遅刻が繰り返された場合。 - 能力不足:
非常にまれだが、従業員が期待される業務を遂行できない場合。(改善の機会を与えたうえで、なおかつ業務に支障をきたすほどの能力不足である場合に認められることがある) - 懲戒解雇:
重大な規律違反(例:セクハラ、パワハラ、金銭の横領など)があった場合。
解雇が不当な場合、従業員は労働基準監督署に相談でき、場合によっては裁判に発展する可能性もあります。
従業員の解雇の制限については以下の記事で詳しく解説しているため、あわせてお読みください。
派遣社員(無期雇用)をクビにできる?
無期雇用契約を締結した派遣社員を解雇するには、正社員と同様に正当性かつ常識的に妥当と思われる理由が必要です。また派遣社員を解雇する権利があるのは、派遣先ではなく派遣元の企業です。
無期雇用契約を締結した派遣社員をクビにできる理由としては、以下が考えられます。
- 勤務態度の不良:
従業員が業務に対して真剣に取り組まない場合。 - 勤怠不良:
再三改善指導したにもかかわらず、無断欠勤や遅刻が繰り返された場合。 - 能力不足:
非常にまれだが、従業員が期待される業務を遂行できない場合。(改善の機会を与えたうえで、なおかつ業務に支障をきたすほどの能力不足である場合に認められることがある) - 懲戒解雇:
重大な規律違反(例:セクハラ、パワハラ、金銭の横領など)があった場合。
また派遣先で派遣契約が中途解約されても、派遣元は即座に派遣社員を解雇できません。
アルバイト・パート(無期雇用)をクビにできる?
アルバイトやパートにおいても、無期雇用契約を締結した場合、正当性があり常識の範囲内で妥当とされる理由が必要です。一般的に認められる理由には以下があります。
- 勤務態度の不良:
従業員が業務に対して真剣に取り組まない場合。 - 勤怠不良:
再三改善指導したにもかかわらず、無断欠勤や遅刻が繰り返された場合。 - 業務上の問題:
スキル不足やパフォーマンスの低下、業務に対し不適合と判断された場合。 - 就業規則違反:
職場の就業規則に違反する行為があった場合、または改善命令に従わなかった場合。
多くの場合、従業員に過失があったとしても、すぐに解雇できるわけではありません。まず職場が改善指導や改善努力をする必要があります。
有期雇用の従業員をクビにできる?
有期雇用とは、雇用期間をあらかじめ定めた状態で雇用する雇用形態を指します。有期雇用契約において、契約期間の途中で従業員を解雇することは原則として認められていません。
ただし労働契約法第17条により、使用者は「やむを得ない事由」がある場合に限り、契約期間中の解雇が可能です。やむを得ない事由はおもに以下などが挙げられます。
- 勤務態度が著しく悪い
- 無断欠勤や無断遅刻が多い
- 全体の業務が滞るほどの重大な能力不足が見受けられる
- 重大な規律違反を犯した
期間を定めたうえでの雇用契約のため、無期雇用の解雇理由よりも厳格に判断されます。
職場が無期雇用の従業員を簡単にクビにできない理由
雇用形態にかかわらず、企業や職場は従業員を簡単には解雇できません。簡単にクビにできない理由は、おもに以下のとおりです。
- 日本の法律では労働者の権利を守ることが優先されるため
- 日本の法律では企業や職場が従業員に対して安定的な雇用を提供することを求めているため
- 雇う側の解雇権の濫用を防ぐため
法的な規制・従業員の権利の保護・社会的責任などにより、職場や企業は、従業員の解雇が難しいのです。
企業が無期雇用の従業員をクビにするには?
従業員の勤務態度の悪さや経営の悪化など、職場や企業側にとって、やむを得ない理由で従業員を解雇したい場合もあるでしょう。無期雇用の従業員を解雇するための条件について解説します。
法律で禁止されている解雇にあたらないこと
職場や企業が従業員を解雇するには、正当性があり、かつ常識的に妥当とされる理由が必要です。しかし理由の内容以前に、法律で禁止されている解雇にあたらないことが前提です。法律で禁止されている解雇とは、以下などがあります。
- 業務上災害のための療養中による解雇
- 産前産後の休業による解雇
- 労働基準監督署に報告したことを理由とした解雇
- 労働組合の一員であることを理由とした解雇
- 性別を理由とした解雇
- 結婚・妊娠・出産・産前産後の休業による解雇
- 育児や介護の休業による解雇
すべて従業員自身の力では変えられない、またやむを得ない事情にあたるため、上記を理由とした解雇は禁止されています。
正当性があり常識的に妥当だと考えられる理由があること
無期雇用の従業員を解雇するには、正当性があり常識的に妥当な理由が必要です。日本の労働基準法では、解雇についてのルールは厳格に決められており、正当な理由がない場合は不当解雇とみなされる可能性があります。
一般的に、正当性があり常識的に妥当とされる理由は、以下のようなケースが考えられます。
- 能力不足
- 勤務態度の不良
- 協調性の欠如
- 業務命令違反
- 重大なミスや刑事罰に相当する不正行為
上記の理由のなかでも、社会通念上、解雇が相当であると認められる必要があります。つまり、解雇の理由が客観的に見て合理的であり、かつその行為が解雇に値するものであると判断されなければなりません。
正当性がある理由かどうかの判断に迷う事例として、休職と復職の繰り返しがあります。休職と復職を繰り返す社員・公務員を解雇することの可否について、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
解雇予告を行っていること
法律で禁止されている解雇にあたらず、かつ正当性があり常識的に妥当な理由がある場合は、従業員を解雇できます。
ただし労働基準法により、従業員を解雇するには、原則として解雇の30日前までに解雇予告を行う必要があるため注意が必要です。解雇予告は、従業員に対して解雇の意向を伝えるものであり、解雇日を特定して通知しなければなりません。
解雇の予告が30日未満の場合、職場は不足する日数分の解雇予告手当を支払う義務があり、一般的には不足日数に相当する賃金を支払います。
例外として、重大な規律違反や刑事罰に相当する違反、業務上の必要性がある場合などは、30日前の予告が不要な場合もあります。ただし即時解雇するためには、労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けることが必要です。
契約社員の無期転換を認めずクビにするのは違法?
かつて、契約社員の無期転換を認めたくないがために、4年ほど勤務した契約社員の雇用契約を解除してしまう事態がありました。有期雇用の従業員がもつ権利のひとつ、無期転換について、および無期転換を認めずクビにすることの可否について解説します。
契約社員の無期転換とは?
契約社員の無期転換とは、有期雇用契約を結んでいる従業員が、同一の使用者(企業)との間で通算5年を超える期間を務めた場合、無期雇用契約に転換できる制度です。
労働契約法第18条で定められた権利で、従業員が希望すれば、企業は無期雇用契約に切り替えなければなりません。
無期転換は、同一の雇用主のもとで有期労働契約が通算5年を超えて更新されていることと、従業員が無期転換を希望する申し出を行うことで可能です。
また無期転換は、契約社員・アルバイト・パートタイマー・派遣社員など、さまざまな有期雇用の従業員に適用されます。
契約社員の無期転換は必須?
契約社員の無期転換は必須ではなく、あくまで以下2つの条件がそろったときにのみ実施します。
- 有期雇用の従業員が、通算5年を超えて働いた場合
- 無期雇用への転換の申し出があった場合
自動的に無期雇用に転換されるわけではなく、従業員が希望しない場合は、無期転換を選択しないことも可能です。契約社員が無期転換を希望しない場合、契約はそのまま有期契約として継続できます。
ただし従業員から無期転換への申し出があった場合は、必ず無期転換に応じなければなりません。企業や職場のなかには、従業員の無期転換を防ぐため、勤務期間が通算5年を超えるまえに契約を解除するところがあり問題となりました。
不当な理由でクビを言い渡されたら?
従業員のなかには、不当な理由で解雇された人もいるでしょう。納得がいかない理由で解雇された場合の対処法について解説します。まずは解雇された理由を知り、正当性がありかつ常識的な理由に該当するかの判断が大切です。
業務態度の改善等で交渉する
解雇の理由が経営難によるものや、従業員側に大きな原因がありかつ心当たりがある場合は、業務の改善意思を示して交渉しましょう。交渉する際は、業務態度の改善方法について、具体的に述べるとより効果的です。
交渉の結果、解雇が無効になった際は、復職するまでに支払われなかった賃金を請求する権利が発生します。
解雇理由証明書を要求する
解雇される際に解雇通知書を受け取ることがあります。書類に解雇理由が記載されていない場合は「解雇理由証明書」を要求して内容を確認しましょう。
職場や企業によっては、解雇通知書を発行せず口頭のみで伝えられる場合もあります。しかし、失業手当の早期受け取りにかかわるため、必ず書面での発行を依頼しましょう。
解雇理由証明書は、解雇されたあとに使用するため大切に保管します。解雇により失業した場合、失業手当が受け取れますが、会社都合による失業の場合は早めに受け取れる可能性があります。自己都合による退職と判断されないため、退職理由が確認できる書類が必要です。
また解雇理由証明書は、不当な解雇であるとして訴訟する際、証拠のひとつにもなります。
退職金を受け取る
解雇に同意したら、職場から退職金を受け取ります。
ただし解雇された場合、退職金を受け取る権利の有無は、解雇された理由や職場の就業規則により異なるため確認が必要です。
就業規則に退職金について明記されていない場合は、受け取れない可能性もあります。懲戒解雇の場合は、退職金が支給されないことが一般的です。ただし、懲戒解雇でも就業規則に「すべての従業員に退職金が支払われる」といった決まりがあれば、退職金を受け取れます。
懲戒解雇の退職金の支払いについては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
訴訟を申し立てる
従業員が不当に解雇されたと思った場合、訴訟を申し立てられます。日本では、無期雇用の従業員は強く保護されており、解雇には合理的な理由が必要です。
不当解雇の訴訟を行う際は、まず解雇理由証明書が必要です。解雇理由が不当であると判断される場合、労働者は職場への復帰や損害賠償を求められます。解雇が不当であると認められるには、解雇理由が法律で禁止されている内容であること、または正当性がなく常識的でない理由である必要があります。
訴訟を起こす際は、まず弁護士へ相談しましょう。
無期雇用の従業員は簡単にクビにはできない
無期雇用であるにもかかわらずクビを言い渡された場合、解雇理由によっては不当とされることがあります。
たとえば性別や出産・育児に伴う休業取得、能力不足による解雇などは不当とみなされ、解雇が無効になる場合がほとんどです。
また、有期雇用の従業員が無期転換を申し出た際、企業や職場は原則断れません。無期雇用への転換が必要です。
解雇が不当だと感じたら、解雇理由を明確にして証拠を残したうえで、しかるべき場所へ相談しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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