• 更新日 : 2025年3月3日

エクセルで15分単位の給与計算をするには?関数や無料テンプレートを紹介

表計算ソフトのエクセルは、給与計算にも活用できます。関数の使用により、15分単位の勤怠管理や日をまたぐ勤務時間なども迅速な計算が可能です。しかしエクセルでの給与計算には注意点もあります。本記事では、エクセルを使った給与計算シートの作り方、よく使われる関数、エクセル利用時の注意点などを解説します。

▼15分単位の給与計算表(エクセル)テンプレートをダウンロードいただけます。

エクセルで15分単位の給与計算をするには?

エクセル(Excel)を使って15分単位の給与計算をする方法があります。ここでは、給与計算にエクセルを使うメリットや15分単位の給与計算の合法性、無料でダウンロードできるテンプレートなどを紹介します。

給与計算にエクセルを利用するメリット

エクセルは広く使われている表計算ソフトで、給与計算にも利用できます。

給与計算にエクセルを利用する主なメリットは、次の2点です。

  • 導入コストがかからない
  • カスタマイズしやすい

エクセルは大抵の事務用パソコンにインストールされているため、新しくソフトを購入する必要がありません。更に多くの従業員が操作方法を知っていることから導入時の研修等の必要がなく、人的コストも抑えられます。

また、所定労働時間や賃金割増率、給与項目などを自由に設定できるため、会社にとって利用しやすい給与計算シートが作成できるでしょう。

15分単位の給与計算は合法か

勤怠管理は1分単位で行うことが原則です。15分単位や30分単位で労働時間の「切り捨て」を行うと、労働基準法第24条「全額払いの原則」に違反します。

しかし15分単位で労働時間を「切り上げる」処理をすれば、労働基準法に抵触しません。9:12に出勤した場合は「9:00」に出勤したものとして計算するのです。

なお、1ヶ月単位で残業時間を計算する場合、月の合計時間に1時間未満の端数が出たときに、30分未満を「切り捨て」、30分以上を切り上げることは認められています。

15分単位の給与計算にはテンプレートが便利

15分単位の給与計算をするには、各出勤日の出退勤時刻を次のように設定します。

  • 15分単位で出勤時刻を切り捨てる
  • 15分単位で退勤時刻を切り上げる

しかしタイムカードや出勤簿から15分単位で逐一入力すると、時間がかかるだけでなく、ミスも起きやすいものです。

手早く正確に計算するには、あらかじめ計算式が入力されているエクセルのテンプレートを利用するとよいでしょう。

15分単位の給与計算表(エクセル)ひな形・テンプレート

給与計算ができるエクセルのテンプレートは、インターネット上の様々なサイトから入手可能です。

マネーフォワード クラウド給与でも「給与計算 15分単位(エクセル)」のテンプレートを無料で提供しています。

このテンプレートを利用すれば、毎日の出勤時刻と退勤時刻をタイムカードどおりに入力するだけで、自動的に15分単位の勤務時間が集計されます。

15分単位でのエクセル給与計算表の作成方法

エクセルでの給与計算に必要な項目は、日付・曜日・出退勤の時刻・実働時間・時給・支給額などです。先ほど紹介したエクセルのテンプレートをもとに、それぞれの項目の設定方法を説明します。

給与計算 15分単位(エクセル)

給与計算 15分単位(エクセル)

日付や曜日

「日付」の一番上のセルには、給与計算期間の初日を入力します。給与計算期間が毎月21日から翌月20日までの場合、最初のセルに入力する日付は期間の「21日」です。

日付に対応する「曜日」は、TEXT関数を使って入力しましょう。

=TEXT(日付のセル,”aaa””)

「aaa」と入力すると「火」、「aaaa」と入力すると「火曜日」と表示されます。

時給

時給を入力します。時給額を入力するセルを右クリックし「セルの書式設定」を選択、「表示形式」のタブから「通貨」を選びます。記号に「¥」のマークをつけておくと、金額であることがわかりやすいでしょう。

勤務時間(出勤・退勤・休憩時間)

出勤時刻・退勤時刻・休憩時間を入力するセルを、時刻を入力できるように準備します。

「出勤時刻・退勤時刻・休憩時間」を入力するセルを選択し、下までドラッグした状態で「セルの書式設定」を開きます。「表示形式→ユーザー定義」を選び、「h:mm」を選択しておきましょう。

「15分単位」にする

出勤と退勤の時刻を15分単位にするセルを準備しましょう。

出勤時刻の切り下げには、FLOOR関数を使います。

=FLOOR.MATH

数値 対応する出勤時刻のセル

基準値 ”0:15”

退勤時刻を切り上げるときは、CEILING関数を用います。

=CEILING.MATH

数値 対応する退勤時刻のセル

基準値 ”0:15”

実働時間・労働時間

1日の実働時間を表示するセルを選択し、次の計算式を入力します。

実働時間=15分単位で切り上げた退勤時刻-15分単位で切り下げた出勤時刻-休憩時間

次に、SUM関数を使用して、1ヶ月の総労働時間を計算しましょう。

=SUM(給与計算期間初日のセル:末日のセル)

支給額・支給額総額

1日分の支給額を計算します。「支給額」のセルに次の計算式を入力しましょう。

給与支給額=(時給×実働時間)×24

24を掛けるのは、60進法である「時間(0:00)」を10進法に変換するためです。計算式中の「時給」のセルは「絶対参照」にしておきます。

オートフィル機能で給与計算期間の末日までの支給額を算出した後、SUM関数を使って1ヶ月の「支給総額」を算出しましょう。

15分単位のエクセル給与計算表のアレンジ

残業や夜勤がある会社では、給与計算も複雑になります。ここでは、残業や日をまたいだ夜勤などに対応できる計算方法をみていきましょう。

残業時間の計算

1日8時間・1週40時間を超えて労働させた場合は、1.25倍の割増賃金を支払わなければなりません。そのため残業時間は、法定労働時間とは別に把握する必要があります。

1日ごとの残業時間を把握するために、エクセルに「残業時間」の列を追加しましょう。

給与計算 15分単位(エクセル) _残業時間の計算

給与計算 15分単位(エクセル)

残業のある日とない日を区別できるように、IF関数を使用して残業のない日は空欄にします。

=IF  実働時間>8/24

TRUE 実働時間-8/24

FALSE ” “

8/24は「24時間中の8時間」という意味です。FALSEの場合は「” “」(空白のセル)を返す設定にしています。

これで、残業がある日のみ、残業時間が表示されるようになりました。

休憩時間を一定にする

実労働時間の正確な把握のため、実際の休憩時間を入力する方法が原則ですが、休憩時間が固定されている場合は、エクセルでの自動計算が可能です。

下記条件のパート従業員を想定して、休憩時間を自動入力してみましょう。

  • 火曜日と木曜日は7時間勤務(うち休憩45分)
  • 土曜日は5時間勤務(休憩なし)

IF関数を使います。

論理式(退勤時刻-出勤時刻)×24<=6

TRUE  “0:00”

FALSE “0:45”

これで、火曜日と木曜日の休憩時間が”0:45”、土曜日の休憩時間が”0:00”と表示されます。

日付をまたいだ勤務時間

日をまたいだ夜勤の場合、「退勤時刻-出勤時刻」で計算すると、勤務時間がマイナスになり、計算ができません。

この場合は、IF関数を使って実働時間を計算します。

=IF 退勤時刻-出勤時刻-休憩時間<0

TRUE (退勤時刻-出勤時刻-休憩時間)+1

FALSE 退勤時刻-出勤時刻-休憩時間

日をまたぐ場合、勤務時間に「1」を足すことで、勤務時間が計算できます。

なお、22時から翌朝5時までの時間帯に勤務させた場合は、1.25倍の深夜割増賃金の支払いが必要です。

エクセルで15分単位の給与計算表を作成する注意点

エクセルは便利なツールですが、注意点もあります。ここではエクセルでの給与計算時に押さえておきたい事項を紹介します。

残業時間の換算

エクセルで給与計算をすると、残業時間が「1:45」のように60進法で表示されます。これでは残業手当の計算時に不便なため、10進法(1.75)に変換しておきましょう。

60進法を10進法にするには、10進法に換算するセルの表示形式を「数値」にした上で、「24」を乗じます。

表示形式の「小数点以下の桁数」は「2」と設定しておきましょう。

給与計算ミスをしない

エクセルにあらかじめ入力した計算式が間違っていると、思わぬ計算ミスが発生することがあります。また最初は正しくても、法改正などにより計算式が変わることもあり得るでしょう。

例えば、猶予期間の経過により中小企業でも2023年4月1日から大企業同様、月60時間超の時間外労働には「50%」の割増率が適用されています。こうした情報を知らないでいると、間違った給与計算をし続けるリスクがあります。

エクセルで正確な給与計算をするには、労働法令の基礎知識や法改正のフォローが必要です。

バックアップをとる

エクセルのデータを保存しないまま作業を続けているときにパソコンの不具合などが起き、何時間も入力したデータが消えてしまうこともあり得ます。

被害を最小限に留めるためには、自動回復用データを作っておくことが有効です。

自動回復用データを作るには、エクセルで「ファイル→オプション→保存」を選択し、「次の間隔で自動回復用データを保存する」にチェックを入れた上で、何分ごとに保存するかを設定します。

間隔が短いほど、頻繁に自動回復用データが作られます。

エクセルでの給与計算に役立つ便利な関数集!

エクセルの関数を使うと、迅速かつ正確な計算ができます。ここでは給与計算によく使われるエクセル関数をみていきましょう。

足し算(SUM関数)

SUM関数は、指定したセルの合計値を算出します。

=SUM(合計したいセルの範囲)

SUM関数には、連続したセルをドラッグして範囲を指定する方法と、複数のセルを個別に指定する方法があります。

切り捨て(FLOOR関数)

FLOOR関数は、指定した基準値で切り捨てた数値を返します。

=FLOOR(数値,基準値)

FLOOR関数は出勤時刻の切り上げをするときに便利です。

15分単位で切り捨てたいときは、基準値に”0:15”と設定し、30分単位で切り捨てたい場合は、基準値に”0:30”と入力します。

切り上げ(CEILING関数)

CEILING関数は、指定した基準値に切り上げる処理をします。

=CEILING(数値,基準値)

CEILING関数は、退勤時刻を15分単位で切り上げたい場合などに利用できます。

四捨五入(ROUND関数)

ROUND関数は、四捨五入ができる関数です。

=ROUND(数値,桁数)

桁数は、四捨五入したい桁を設定します。桁数に「-3」と入力すると、100の位で四捨五入されます。

数値には、計算式を設定することもできます。

曜日の入力(WEEKDAY関数)

WEEKDAY関数を使うと、曜日に対応した数字が返されます。

=WEEKDAY(シリアル値,種類)

シリアル値に入力するのは、日付のセルです。種類の「1」を選択すると日曜始まり(日曜日から何日目か)、「2」を選択すると月曜始まりになります。

曜日の入力には、TEXT関数も利用できます。

休日の表示など(IF関数)

IF関数は、一定の条件を設定し、条件に合致する場合(TRUE)と合致しない場合(FALSE)の結果を返します。

=IF(条件,TRUEの結果,FALSEの結果)

IF関数を使って火曜日のみ「定休日」と表示するには、次のように設定します。

論理式 曜日=”火”

TRUE  ”定休日”

FALSE ””

またOR関数と組み合わせると、1週間に休日が複数ある場合にも対応できます。

エクセルでの給与計算以外に効率よく作成する方法

給与計算をするには、エクセルの他に会計ソフトを利用する選択肢もあります。ここでは、会計ソフトのメリット、ソフト選びの基準などを紹介します。

会計ソフトのメリット

エクセルでの給与計算は、あらかじめ入力する計算式が誤っていると、正確な計算結果が得られません。また基本的な労働法の知識や、法改正などの継続的なフォローも必要です。

一方、会計ソフトを使えば、勤怠など必要データを入力するだけで、誰でも正確な計算ができます。法改正や保険料率の変更があっても、ソフトウェアのアップデートにより適確に対応できるでしょう。

ただし、ほぼ無料で導入できるエクセルに比べ、会計ソフトは初期コストがかかることがデメリットです。

会計ソフト選びの基準

数十人程度の小規模企業では給与計算にそれほど時間がかからないため、コストを割いて会計ソフトを導入する必要性は低いかもしれません。

一方、従業員数の多い大企業では、給与計算に一定以上の人的コストがかかるため、会計ソフトを導入するメリットが大きいといえます。

会計ソフトを検討するときは、以下の点を考慮するとよいでしょう。

  • 価格(本体価格、保守料、買い切りかサブスクかなど)
  • 対応人数(何人までの給与計算ができるか)
  • 勤怠の自動入力は可能か

エクセルは給与計算にも活用できる

エクセルは、給与計算にも活用できるソフトです。導入費用がかからずカスタマイズもしやすいため、特別な費用を掛けることなく、自社の就業規則に合わせた使いやすい給与計算シートが作成できます。

エクセルで給与計算をするときは、入力ミスに気をつけたり、定期的にバックアップを取ったりする必要がありますが、関数を効果的に使うことで、迅速かつ正確な給与計算が可能です。給与計算に、エクセルを活用してみてはいかがでしょうか。


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