- 更新日 : 2025年2月21日
アルバイト・パートの有給は何日もらえる?半年の取得条件や最大付与日数を解説
アルバイト・パート従業員の有給日数は、勤続年数や週の勤務日数によって異なります。
また、アルバイト・パートなら誰でも有給が取れるわけではありません。有給の付与には条件があります。
この記事では有給日数の計算方法や、付与の条件、有給の最大日数などについて解説します。
有給を上手に使い、仕事の疲れをリフレッシュしましょう。
目次
アルバイトの有給休暇は何日ある?付与の2つの条件
有給休暇は正社員やアルバイト・パート従業員など、雇用形態に関わらず付与される休暇です。
ただし、無条件で付与されるわけではなく、2つの条件を満たす必要があります。
①入社から半年以上継続して勤務している
有給付与のための1つ目の条件は、入社から半年以上続けて勤務していることです。
有給付与の条件を満たしたあと、会社から有給を付与されるタイミングも、この半年経過時点であることが一般的です。
参考:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。│厚生労働省
②全労働日の8割以上出勤している
有給付与のための2つ目の条件は、全労働日の8割以上の出勤です。
「全労働日」とは会社と労働者が契約時に決めた出勤日数のことです。
たとえば、半年で100日間出勤する契約であれば、80日出勤した時点で有給付与となります。
出勤として認められる範囲は幅広く、通常の出勤以外に下記の場合も出勤のあつかいになります。
|
出勤途中の事故など、「通勤災害」は出勤日には含まれないためその点は注意が必要です。
アルバイトの有給休暇の付与日数ルール
アルバイトの有給休暇の付与日数は勤続年数や週の労働日数によって異なるため、詳しく解説します。
正社員など「週30時間以上、または5日以上勤務」の場合
まずは正社員やフルタイムで働く従業員は、週30時間以上、または週5日以上勤務すれば、下記の表のように有給が付与されます。
継続勤務年数 | 付与日数 |
---|---|
6ヶ月(半年) | 10日 |
1年6ヶ月(1年半) | 11日 |
2年6ヶ月(2年半) | 12日 |
3年6ヶ月(3年半) | 14日 |
4年6ヶ月(4年半) | 16日 |
5年6ヶ月(5年半) | 18日 |
6年6ヶ月以上 | 20日 |
※通常上限は20日ですが、アルバイトやパート従業員などは「比例付与」の対象となり、上限15日になります。
比例付与とは、出勤日数に応じた有給休暇の付与の制度で、アルバイトなどの短時間労働者へこの規則が適用されます。
アルバイト・パートなど「週30時間未満かつ週4以下の勤務」の場合
週30時間未満かつ週4日以下の労働をする従業員にも、有給休暇が付与されます。
アルバイト・パート従業員の場合は比例付与が適用され、有給付与の日数は下記のようになります。
勤続勤務年数 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
週所定の労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
4日 | 169日~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121日~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73日~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48日~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
これらの有給付与日数は、法律で決められた日数になります。
また、例外になりますが、会社によっては上記日数以上の有給の付与や、有給付与日数を満たしていない中での有給付与も可能です。
ただし、通常は認められていません。
アルバイトの有給休暇は何年・何日で消える?
有給休暇は、付与から2年を超えたら消滅します。
ただし、年度内に使い切れなかった有給休暇は、翌年度に繰り越しが可能です。
また、前年度から繰り越した有給と、その年に付与された有給を持っている状態で有給を取得した場合、前年度の古い有給から使われていきます。
▼有給取得の例
年度 | 付与日数 | 昨年からの繰り越し日数 | 使用日数 | 残りの有給日数 |
---|---|---|---|---|
2025年 | 15日 | 0日 | 5日 | 10日 |
2026年 | 15日 | 10日 | 10日 | 15日(付与時点では25日)
※2025年分は消滅 |
2027年 | 15日 | 15日 | 5日 | 25日(付与時点では30日)
|
比例付与の対象となるアルバイト・パート従業員の有給は、6年半以上勤務で最大15日付与されます。
ただし、後述する消化義務の関係上、仮に一切有給を取得していなくても、そのままの日数を繰り越すことはできないことに注意が必要です。
年10日以上有給を付与される場合は取得が義務化されている
働き方改革により2019年4月から、年10日以上の有給を付与される従業員は年5日の有給取得が義務になりました。
このルールは正社員だけではなく、アルバイト・パート従業員も対象となります。
もし年10日以上の有給を付与されている状態で、年5日以上の有給を取得していない場合、事業主は違反者1名につき30万円以下の罰金や指導を科せられるおそれがあります。
そのため、アルバイト本人が有給を取りたくない場合も、会社に迷惑を掛けないため有給を取得するようにしましょう。
関連記事:「有給休暇の義務化とは?5日が最低?中小企業が取るべき対策」
アルバイトの有給休暇の申請方法
アルバイトが有給休暇を申請する場合は、職場の上司へ申告し有給申請の書類を提出する流れが一般的です。
例外を除いて原則的に取得のタイミングは自由であり、上司も取得の申請を断ることはできません。
ただし、急な有給の取得はシフトの関係などで周囲に迷惑を掛けてしまう場合もあります。
そのため、有給取得の日にちはなるべく早めに伝えることが社会人としてのマナーです
また、「野球を観に行くので有給が取りたいです」など取得の理由を伝える必要も法律上なく、単に有給取得の旨を伝えるだけで問題ありません。
関連記事:「有給休暇の取得理由は私用でいい?よくある取得理由も紹介!」
有給が希望通りに通らない場合もある
有給休暇の申請をしても、例外として有給が希望通りに使えない場合があります。
それは会社が「時季変更権」を行使したときです。
時季変更権とは、従業員から申請のあった有給休暇の取得時季を変更できる権利のことです。
▼時季変更権が適用される状況の例
状況 | 例 |
---|---|
繁忙期で人手が足りない | クリスマスシーズンのケーキ屋さんや、年末年始のスーパー |
取得申請をした本人がいないと 仕事が回らない | 特定のお客様を担当していたアルバイトが休み、対応が滞る |
人員の補充が難しい | 有給申請が急であったためシフトが組めず、業務に支障が出る |
有給の取得日が上記のような状況に当てはまる場合、会社には有給の日にちをズラす権利があります。
よく話し合って、有給の取得日を決めましょう。
アルバイトが有給取得したときの給料はいくら?3つの計算方法
有給取得時は無給になるのではなく、給与が発生します。
この章では3つの計算方法を解説します。
①通常の賃金から計算する
決まった時間で働いているアルバイト・パート従業員の場合、有給取得日の所定労働時間に時給を掛けて賃金を計算する方法が一般的です。
▼計算例
時給:¥1,000
勤務時間:1日5時間
¥1,000 × 5時間 =¥5,000を支給
曜日によって勤務時間が異なる場合も、上記の例と同じく有給取得日のシフト時間に応じた計算となります。
たとえば火曜日が5時間のシフト、金曜日が3時間のシフトである場合、火曜日に有給を取得すれば5時間分、金曜日であれば3時間分の賃金が支給されます。
②平均賃金から計算する
シフトが不規則であったり、勤務時間が変動するアルバイト・パート従業員の場合は、「平均賃金方式」で計算することが可能です。
平均賃金方式では直近3ヶ月の賃金の実績をもとに計算をします。
具体的な計算方法は2つありますが、金額が高い方を採用します。
▼計算例
①直近3ヶ月間の賃金総額 ÷ 3ヶ月間の総日数
②直近3ヶ月間の賃金総額 ÷ 実労働日数 × 0.6
たとえば、特定の3ヶ月間の賃金総額が35万円、実労働日数が40日だった場合
①35万円 ÷ 90日 = 3,888.89円
②35万円 ÷ 40日 × 0.6 = 5,250円
※1ヶ月は30日と仮定。ボーナスや労災は除外する。
この場合、2つ目の計算結果の方が高くなるため、有給取得日には¥5,250が支給されます。
③標準報酬月額から計算する
最後は、健康保険の「標準報酬月額」を使用する方法です。
標準報酬月額は健康保険と厚生年金保険で等級が異なります。
健康保険では1~50級、厚生年金保険では1~32級に区分されており、都道府県ごとに金額が異なる点が特徴です。
また、等級は正社員・アルバイトなどの雇用形態に関わらず、4~6月の3ヶ月間の勤務実績によって決定されます。
この計算方法では、標準報酬月額を30(日割り)で割って計算し、算出された「標準報酬日額」が有給取得日の支給額になります。
標準報酬月額を使った計算方法は、下記の条件を満たしていなければ使えないため、注意しましょう。
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標準報酬月額は年1回の定時決定で見直されます。
詳細が気になる方は、協会けんぽ公式サイト「都道府県ごとの保険料額表」を確認してみてください。
「有給はない」と言われた場合は?
「うちの会社に有給の制度はない」というようなことを、経営者や人事担当者に言われる場合があるかもしれません。
しかし、これまで説明した通り下記2つの条件を満たしていれば、アルバイト・パート従業員など雇用形態に関係なく有給は付与されます。
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有給休暇の付与は労働基準法で決まっている義務であり、「有給がない」ということは通常あり得ず、労働基準法に違反しているおそれがあります。
まずは話しかけやすい同僚がいればその人に相談したり、厚生労働省の労働条件ホットラインを使い、相談員に話を聞いてみましょう。
また、有給取得をかたくなに拒まれトラブルに発展するようであれば、労働基準監督署への相談も視野に入れた方がよい場合もあります。
ただし、労働基準監督署へ相談するとより大きなトラブルに発展し、何かしらの嫌がらせなどを受ける可能性もゼロではありません。
相談をする際は、先ほどご紹介した労働条件ホットラインの相談員にも意見を仰いだり、慎重な判断をするようにしましょう。
下記の関連記事も参考にしてみてください。
関連記事:「アルバイト・パートでも有給休暇を取れる – 拒否された場合は?」
アルバイトも有給休暇を効果的に活用しよう
有給休暇は心と身体をリフレッシュできる大切な制度で、アルバイト・パート従業員であっても、所定労働日数や勤続年数に応じて、所定の日数が付与されます。
しかし、アルバイトをして間もない頃は基本的に有給を取得できません。
また、取得の際は事前に上司へ日にちを相談するなど、職場への配慮も必要です。
有給休暇を上手く使って、より一層仕事へ集中できる環境を整えましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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