- 更新日 : 2024年4月12日
異文化コミュニケーションとは?企業における課題や成功のポイントを解説!
グローバル化が進展する中、企業においても異文化コミュニケーションの重要性が高まっています。しかし、異文化コミュニケーションには多くの課題があり、ステレオタイプや偏見から生まれる誤解や軋轢が避けられません。そこで本記事では、異文化コミュニケーションの重要性と課題、そして成功のためのポイントを解説します。
目次
異文化コミュニケーションとは?
異文化コミュニケーションとは、文化的背景の異なる人々が互いにコミュニケーションを図ること、そしてそのプロセスを指します。つまり、国籍、民族、宗教、価値観などが異なる人々が、お互いの違いを認識し理解したうえで、効果的にコミュニケーションを行うことが重要となります。
具体的には、以下のような側面が関係してきます。
- 言語の違い:使用言語や言葉の意味合いが異なること
- 非言語コミュニケーションの違い:ジェスチャー、間合い、アイコンタクトなどの解釈が異なること
- 文化的価値観の違い:時間感覚、上下関係、宗教観などが異なること
- 思考パターンの違い:論理的か感情的か、直接的か間接的かなど
このように、文化的背景によってさまざまな違いが生じるため、互いの違いを認識し受け入れる姿勢が不可欠です。単に言葉が通じればいいわけではなく、言外の意味や価値観の違いにも気を配る必要があります。お互いの文化を理解し尊重し合うことが、異文化コミュニケーションの基本となるのです。
企業で異文化コミュニケーションが重視される理由は?
近年、企業においても異文化コミュニケーションが重視される理由は、主に2点あります。
グローバル化の進展
企業活動のグローバル化に伴い、異なる国や地域からさまざまな文化的背景を持つ人材が集まるようになりました。国内でも外国人雇用が増加し、文化の多様性が高まっています。したがって、組織内での異文化コミュニケーション能力が不可欠となってきました。
多様な人材の確保と活用
働き手の多様性が企業の成長に資するとの認識から、女性や高齢者、障がい者など、多様な人材の確保と活用が重視されています。異なるバックグラウンドを持つメンバー同士のコミュニケーションが円滑に行えることが求められます。
つまり、グローバル化と多様性の視点から、これまで以上に異文化コミュニケーション能力の向上が企業の課題となっているのです。
意思疎通やコミュニケーションが円滑に行えないと、チームワークが阻害され業務に支障をきたします。競争力の源泉である多様性を生かすためにも、異文化コミュニケーションの重要性が高まっているといえるでしょう。
企業の異文化コミュニケーションの課題・失敗例は?
異文化コミュニケーションが重視される理由についてみてきました。ここでは、課題を挙げるとともに失敗例を考察してみます。
異文化コミュニケーションの課題
異文化コミュニケーションには、さまざまな課題があります。主なものとして、以下の5点が挙げられます。
(1)言語の違い
言葉の意味や発音の違いは大きな障壁となります。単に単語を知っているだけでは不十分で、それぞれの言語が持つ微妙なニュアンスを理解する必要があります。
(2)非言語コミュニケーションの違い
ジェスチャー、表情、空間の取り方など、非言語コミュニケーションのルールが文化によって大きく異なります。誤解が生じやすく、相手の意図を正しく捉えられないリスクがあります。
(3)価値観や規範の違い
時間感覚、上下関係、個人主義と集団主義など、文化により価値観や規範が異なります。相手の行動や考え方を理解するには、その背景にある価値観を知る必要があります。
(4)アイデンティティーの違い
自分のルーツや所属する集団によって、個人のアイデンティティーも異なります。アイデンティティーに関わる発言は、文化によって受け止め方が大きく異なる場合があります。
(5)ステレオタイプや偏見の存在
無意識のうちにステレオタイプや偏見を持ってしまうと、相手の言動を正しく理解できなくなる恐れがあります。
このように、言語、非言語、価値観、アイデンティティーなど、さまざまなレベルで課題が存在します。お互いの違いを認識し、オープンな心で学び合う姿勢が不可欠といえるでしょう。
異文化コミュニケーションの失敗例
異文化コミュニケーションが失敗すると、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。代表的な失敗例は、以下のようなものです。
(1)ユーモアの違いによるトラブル
ある文化圏では面白いと受け取られるユーモアが、別の文化では不快に感じられるなど、ユーモア感覚にはギャップがあります。ユーモアの失敗は、相手を傷つける恐れがあります。
(2)タブー視される発言による失言
宗教的な理由から特定の食べ物を避けるなど、文化によってタブー視されるものはさまざまです。タブー違反となる発言は、大きな衝突を引き起こしかねません。
(3)非言語コミュニケーションの誤解
親指を立てる「OK」サインは、ある文化圏では不謹慎な意味を持ちます。こうした非言語コミュニケーションの誤解から、誤解や反発を招くリスクがあります。
(4)直接言及と間接言及の違いによる誤解
アジア系の文化は、間接的で控えめな表現を好む傾向があります。欧米系の直接的な表現を無神経だと受け取られるなど、誤解を生む可能性があります。
(5)価値観の違いによる対立
個人主義と集団主義など、価値観のずれから、お互いの行動原理が理解できず、対立が深刻化するケースもあります。
こうした失敗例は、相手を不快にさせたり対立を生んだりする恐れがあります。異文化コミュニケーションでは、常に相手の立場に立って考え、細心の注意を払う必要があるのです。
異文化コミュニケーションを成功させるポイントは?
異文化コミュニケーションを成功させるためには、相手の文化的背景を理解し尊重する姿勢が何より重要です。具体的には、以下の5つのポイントが挙げられます。
文化の違いを認識し、学ぶ姿勢を持つ
自分の文化を絶対視せず、相手の文化にも開かれた姿勢で接することが大切です。言語、価値観、慣習などあらゆる面で違いがあることを前提に、相手の立場に立って理解を深めることが必要不可欠です。
ステレオタイプにとらわれない
特定の国や民族に対するステレオタイプな見方は危険です。一人ひとりが異なる個性を持っていることを認識し、先入観を持たずに個別に対応することが求められます。
非言語コミュニケーションにも注意を払う
言葉だけでなく、ジェスチャーや表情、距離感覚なども文化により異なります。こうした非言語コミュニケーションのサインにも気を配り、誤解を生まないよう心がける必要があります。
傾聴力を高め、共感する
相手の話をよく聞き、背景にある文化的な意味合いを理解しようと努力することが大切です。相手の立場に立って考え、共感する姿勢を持つことで、コミュニケーションの質が高まります。
ユーモアは慎重に
ユーモアは文化によって受け止め方が大きく異なるため、使い道には細心の注意を払う必要があります。状況に応じて、ユーモアを控えるなど、相手への配慮が求められます。
このように、異文化コミュニケーションを成功させるには、お互いの文化を理解し尊重し合うオープンな姿勢が不可欠です。そのためには、学ぶ姿勢、ステレオタイプに捉われない心構え、非言語も含めた幅広い観察力、傾聴と共感の力が求められます。
多様性を力に変えて異文化コミュニケーションを成功させよう!
企業が異文化コミュニケーションを円滑に行うことは、多様な人材が力を発揮するためにも欠かせません。しかし、言語や価値観、非言語コミュニケーションの違いから生じるさまざまな課題があり、ステレオタイプや偏見から生まれる誤解や軋轢が起こりがちです。そうした課題を乗り越えるには、まず異文化に対する理解を深め、お互いの立場に立って考えることが重要です。
積極的に学び、ステレオタイプにとらわれず一人ひとりの個性を尊重することが求められます。そして非言語コミュニケーションへの配慮、傾聴と共感の心構えを持つことで、異文化コミュニケーションは成功するでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
役職定年(やくてい)とは?実態や事例をもとに解説
役職定年(やくてい)とは、あらかじめ定めた年齢に達した社員が部長・課長などの役職から退く制度のことです。大企業で多く採用されており、組織を活性化させるというメリットがあります。 本記事では、役職定年のメリット・デメリットや上手に活用する方法…
詳しくみるミッションステートメントとは? 役割や企業・個人の作り方、事例を解説
ミッションステートメントとは、企業理念を実現する判断基準となる行動指針です。従業員が同じ方向性で行動するための指針となり、経営の意思決定の基準を明確にする役割もあります。顧客や株主など、外部に向けた企業のアピールにも役立つでしょう。 今回は…
詳しくみる相対評価とは?絶対評価との違いや具体例、人事評価の採用方法を解説
相対評価とは、評価対象の従業員を他の従業員と比較ACする評価方法です。評価がしやすい、あるいは人件費のコントロールが容易といったメリットがあります。しかし近年では、相対評価を「時代遅れ」として、絶対評価を導入する会社も少なくありません。本記…
詳しくみる目標管理とは?目標管理シートの無料テンプレートを基に例文、書き方を解説
目標管理とは、社員それぞれが設定した目標について、目標達成までのプロセスや達成度について分析や管理をすることです。企業が目標管理を導入して社員一人ひとりが目標達成のために努力をすることで、企業の目標達成につながっていきます。本記事では、目標…
詳しくみる労働契約法19条の「雇止め法理」の法定化とは?ポイントをわかりやすく解説
非正規社員を期間の定めがある契約(有期労働契約)で雇用している企業は多いでしょう。非正規社員は人手不足に悩む企業にとって貴重な戦力と言えます。しかし、有期契約の社員だからといって、簡単に雇止めで退職させることができるわけではありません。 こ…
詳しくみる声が小さいと指摘するとパワハラ?上手な伝え方や指摘された場合の対処方法を解説
仕事先で声が小さいメンバーがいると、声を大きくしてほしいと思う人もいることでしょう。しかし、声を指摘する口調が強引で、かつ従業員にとって過重とも言えるトレーニング方法を強要した場合、パワハラ扱いになる可能性があります。 本記事では、パワハラ…
詳しくみる