- 更新日 : 2024年12月10日
中抜けとは?テレワークや勤怠管理のルール設定と注意点
中抜けとは、業務時間内に一時的に仕事から離れて再度仕事に戻るまでの時間のことを言います。
私用によるものと会社都合によるものがあるので、勤怠管理上の扱いに注意が必要です。
この記事では、業務時間内の中抜けや勤怠管理上の中抜けの扱いと例、中抜けに関する注意点について解説します。
目次
業務時間内の中抜けとは?
中抜けには、個人的な都合によるものと、会社都合によるものがあります。それぞれの違いについて確認しておきましょう。
個人的な都合における中抜け
子どもの送迎や自身の通院、役所での所用など労働者のプライベートな理由で業務時間内に一時的に仕事から離れることです。「私用による離席」とも言い換えられるでしょう。
近年はテレワークの普及によって、個人的な都合における中抜けがより身近なものになりました。従業員のワークライフバランスが実現できる一方で、「無断の中抜け」が起きるリスクもあります。
無断の中抜けとは、会社に申告をせずに業務時間内に家の用事を済ませることです。無断の中抜けが続けば、適切な勤怠管理ができなくなってしまいます。テレワーク中は従業員の働いている様子が確認しづらいことから、無断の中抜け、いわゆる「サボり」に注意しなければなりません。
会社都合による中抜け
1日のなかで忙しい時間帯とそうでない時間帯の間の時間が中抜けとして扱われます。観光業界や医療業界、飲食業界などによく見られる勤務形態です。会社都合の中抜けであっても、ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、中抜け時間に対する賃金の支払い義務はありません。後ほど詳しく解説しますが、時間単位の年次有給休暇として扱う場合は時間に応じた賃金を支払う必要があります。
勤怠管理上の中抜けの扱いと例
中抜けの勤怠管理はどのように行うことが適切なのでしょうか。扱い方として「休憩時間とする」「時間単位の年休とする」「1日2回の勤務とする」これら3種類の方法があります。適切な勤怠管理を行うためにも、それぞれの特徴や注意点を把握しておきましょう。
中抜けを休憩時間として扱う
個人的な都合による中抜けは休憩時間として扱うことが一般的です。この場合、1日の労働時間が中抜けしている分だけ短くなるので、始業時間の繰り上げ、もしくは就業時間の繰り下げを行います。たとえば、就業時間が9~18時、休憩時間が12~13時の場合で15~16時まで中抜けしたとしましょう。この場合、始業時間を9時から8時に繰り上げ、もしくは終業時間を18時から19時に繰り下げます。
個人的な都合による中抜けを休憩時間とすることで、本来の労働時間を確保できて生産性の低下の予防が可能です。従業員にとっては年次有給休暇を使わないで済むというメリットがあります。一方で始業時間や終業時間の変更があることで生活リズムが崩れてしまう点はデメリットに感じられるかもしれません。
参考:テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン|厚生労働省
中抜けを時間単位の年休として扱う
中抜けを時間単位の年次有給休暇(年休)として扱う場合、中抜け時間は「休暇」となるので始業時間や終業時間の変更は行いません。この場合、企業側は年次有給休暇の消化を促進でき、従業員は生活リズムを崩すことなく中抜けできるというメリットがあります。時間単位の年次有給休暇制度を導入するためには、就業規則への記載と労使協定の締結が必要です。労使協定では、以下の項目を定めます。
- 時間単位年休の対象者の範囲
- 時間単位年休の日数
- 時間単位年休1日分の時間数
- 1時間以外の時間を単位として付与する場合の時間数
労働基準法に基づき、雇用主は法定の年次有給休暇付与日数が10日以上のすべての従業員に対し、年5日の年次有給休暇を確実に取得させることが義務付けられています。時間単位年休の取得分をこの5日から差し引くことはできません。また、会社側が従業員に中抜けを時間単位の年次有給休暇を取得するよう強制することもできないので注意しましょう。
参考:テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン|厚生労働省
参考:「時間単位の年次有給休暇制度導入促進リーフレット」|厚生労働省
中抜けを1日2回の勤務として扱う場合
朝と夜が忙しい業種では、中抜けを1日2回の勤務として扱うことも少なくありません。この場合の中抜けは休憩時間ではないので、労働時間に応じて適切な休憩時間を従業員に付与する必要があります。労働基準法による休憩の付与の規定は以下のとおりです。
- 労働時間が6時間を超える場合は少なくても45分の休憩時間を労働時間の途中に付与
- 8時間を超える場合は少なくても1時間の休憩時間を労働時間の途中に付与
あらかじめ定めた総労働時間の範囲内で従業員が日々の始業・終業時刻や労働時間を自由に決められるフレックスタイム制では、フレキシブルタイムの途中で中抜けが可能です。
フレキシブルタイムとは、いつ出退勤をしても良い時間帯で、必ず勤務しなければならない時間帯であるコアタイム以外の時間帯となります。
なお、フレキシブルタイムやコアタイムの設定は義務ではないので、コアタイムを設けずに従業員が働く日を自由に決められるようにすることも可能です。なお、フレックスタイム制においても前述した休憩時間は付与しなければなりません。
参考:e-Gov|労働基準法
中抜けに関する注意点
中抜けを導入するにあたっていくつか注意点があります。トラブルを予防するためにも、中抜けを導入するための土台作りをしっかり行っておきましょう。
移動時間は中抜けではない
注意したいのが、会社都合による移動時間は中抜けではないという点です。使用者の明示または黙示の指示によって指揮命令下に置かれている時間は労働時間となります。たとえば、移動中にパソコンやスマホなどを用いて業務を行っている場合は中抜けにはなりません。会社への通勤時間や、テレワークで中抜けをしている時間であっても、使用者の明示または黙示の指示によって指揮命令下に置かれている時間は労働時間となることに注意しましょう。
中抜けや休憩時間中は従業員は完全に業務から離れて自由な状態でなければならないのです。会社の都合によって何らかの業務を行っている場合はすべて労働時間となります。特に、会社から直接指示があったわけではないものの、業務せざるを得ない状態とする「黙示の指示」には気を付けなければなりません。
一方、午前中は自宅でテレワークを行い、午後からは出社して業務を行うケースで、会社から移動の命令がなく、従業員の都合で出社した場合の移動時間は休憩時間として扱います。この移動時間中にパソコンやスマホで業務を行っていた場合は中抜けや休憩時間にはなりません。このように、テレワーク時に移動時間が発生することも想定しておきましょう。
参考:労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
中抜けのルールを設定しておく
中抜けを導入する前に、あらゆるケースに対応できるルールを設定しておきましょう。中抜けのルールを設定しておかないと、給与計算に影響を及ぼしたり、人事担当者の業務が煩雑化したりするためです。場合によっては給与を巡って従業員とトラブルに発展する可能性もあります。
より適切な勤怠管理を行うのであれば、勤怠管理システムを活用すると良いでしょう。勤怠管理システムであれば、パソコンやスマホ、タブレットなどあらゆる端末から打刻できるのでテレワークにも適しています。
中抜けを時間単位の年次有給休暇として扱う場合、年間上限日数を超えないようにしなければならず、残業時間中の中抜けの場合は休憩時間として扱う必要があります。勤怠管理システムで年次有給休暇の取得実績の管理や残業時間中の中抜けの扱いの設定を行うことで適切かる効率的な勤怠管理が期待できます。
労使協定の締結、就業規則への明記について
中抜けを休憩時間として扱い、始業時間の繰り上げや終業時間の繰り下げを許可する場合は、その旨を就業規則に明記しなければなりません。
この場合、労使協定の締結は不要です。時間単位の年次有給休暇を導入する際は、中抜けに限らず、労使協定の締結と就業規則への明記が必要になります。就業規則の記載例については、厚生労働省の「時間単位の年次有給休暇制度導入促進リーフレット」を確認してください。
就業規則に中抜けの扱いを明記したら、すべての従業員に周知します。就業規則はすべての従業員がいつでも閲覧できるように、掲示する、書類で配布する、データ化するなどの方法で周知を徹底しましょう。周知を怠った場合、就業規則自体が無効になる可能性があるので注意が必要です。
参考:テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン|厚生労働省
「時間単位の年次有給休暇制度導入促進リーフレット」|厚生労働省
在宅勤務中のルール周知文のテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
中抜けの扱い方について就業規則に明記しておきましょう
ここまで、中抜けの扱い方について解説しました。従業員がテレワーク中にスムーズに中抜けできるように中抜けのルールを設定し、就業規則に明記しておきましょう。就業規則の周知も徹底してください。
中抜けのルールが曖昧な場合、無断の中抜けが起こったり、トラブルに発展したりする可能性もあるのです。中抜けに関する正しい知識を身に付け、適切な勤怠管理を行いましょう。
よくある質問
中抜けとは何ですか?
業務時間内に一時的に仕事から離れて再度仕事に戻るまでの時間のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
中抜けはどう扱えばいいのでしょうか?
「休憩時間」「時間単位の年休」「1日2回の勤務」いずれかの扱いとなります。中抜けの扱いについては、就業規則に明記しておく必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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