• 更新日 : 2025年7月25日

月平均所定労働時間160時間は適正?計算方法や残業代の仕組みを解説

「自分の会社の月平均所定労働時間は160時間だけど、これって普通なの?」「もしかして、他の会社より多く働かされているのでは?」

ご自身の労働時間について、このような疑問や不安を感じていませんか?月平均所定労働時間160時間は、日本の多くの企業において比較的よく見られる範囲です。しかし、年間休日や残業代の計算方法によっては、注意が必要なケースも存在します。

この記事では、平均所定労働時間160時間の基本的な考え方から、労働時間が適正かを確認する計算方法、残業代との関係性までわかりやすく紐解いていきます。

そもそも所定労働時間とは

所定労働時間とは、会社(使用者)と労働者の間で結ばれた労働契約(就業規則や雇用契約書)によって定められた、休憩時間を除く労働時間のことです。

例えば、あなたの会社の定時が9時から18時で、休憩が1時間なら、1日の所定労働時間は8時間となります。

法定労働時間との違い

一方、法定労働時間は、労働基準法第32条で定められた労働時間の上限です。国が「これ以上働かせてはいけません」と定めた絶対的なルールであり、原則として1日8時間・1週40時間と定められています。

会社が定める所定労働時間が、この法定労働時間を超えて設定されている場合、その部分は無効となります。

月平均所定労働時間160時間の計算根拠

月平均所定労働時間160時間という数字は、どこから来るのでしょうか。週休2日制の企業を例に、具体的な計算根拠を見ていきましょう。

月平均所定労働時間の計算方法

月によって労働日数は変動するため、正確な月平均所定労働時間は、以下の計算式で算出するのが一般的です。この方法は、残業代の基礎単価を計算する際にも用いられる重要な計算式です。

月平均所定労働時間 =(暦日数 – 1年間の休日合計日数)× 1日の所定労働時間数 ÷ 12ヶ月

例えば、年間休日が125日、1日の所定労働時間が8時間の会社の場合、

月平均所定労働時間 =(365−125)× 8 ÷ 12 ≒ 160時間

となります。

年間休日と月平均所定労働時間の関係

ご自身の会社の立ち位置を把握するために、1日の所定労働時間を8時間とした場合の、年間休日数ごとの月平均所定労働時間を表にまとめました。

年間休日数月平均所定労働時間
(1日8時間勤務の場合)
備考
125日160.0時間土日祝休み・夏季休暇・年末年始休暇をそれぞれ5日程度
120日163.3時間
115日166.6時間隔週休2日制や一部土曜出勤など
110日170.0時間土日休み・祝日は出勤(一部代休あり)・年末年始休暇あり
105日173.3時間ほぼ法定労働時間の上限

月平均所定労働時間160時間は適正なのか

計算方法がわかったところで、160時間は適正なのかを様々な基準と比較して検証します。

法定労働時間の上限との比較

労働基準法で定められた1週40時間という上限を月単位に換算すると、約173.8時間となります。

月平均法定労働時間 = 365日 ÷ 7日 × 週40時間 ÷ 12ヶ月 = 約173.8時間

つまり、月平均所定労働時間が173.8時間を超えている場合、その会社は法定労働時間を超える労働を常態的に課している可能性があり、注意が必要です。

あなたの会社の月平均所定労働時間が160時間であれば、この法定労働時間の上限をクリアしているため、法律的に見て健全な範囲内と言えます。

月の労働時間200時間は危険信号

もし月の労働時間が200時間に達している場合、内訳を詳しく見る必要があります。所定労働時間が160時間だと仮定すると、200時間 – 160時間 = 40時間が残業(時間外労働)となります。

これは、国の過労死ライン(月80時間超)には達していないものの、決して少ない残業時間ではありません。常態化している場合は、心身の健康やワークライフバランスに影響を及ぼす可能性があり、注意が必要です。

所定労働時間160時間と残業代の仕組み

所定労働時間が160時間の場合、それを超えた労働時間はどのように扱われるのでしょうか。

残業には2つの種類があります。

  1. 法定内残業
    所定労働時間は超えているが、法定労働時間(1日8時間・週40時間)の範囲内に収まっている残業のことです。例えば、会社の所定労働時間が7時間で1時間残業した場合、合計8時間となり法定労働時間の範囲内です。この場合、割増賃金の支払いは法律上義務付けられていませんが、会社によっては通常の賃金と同額か、独自の割増率で支払われることがあります。
  2. 時間外労働
    法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて行われた労働のことです。月平均所定労働時間が160時間の会社(1日8時間・週40時間)の場合、月160時間を超える労働は、週40時間超をベースにした時間外労働となる場合が多いですが、変形労働時間制を導入している職場では所定内調整が可能です。この時間に対しては、25%以上の割増賃金(深夜労働や休日労働が重なるとさらに割増率が上がります)を支払うことが法律で義務付けられています。

変形労働時間制を採用している場合の注意点

企業によっては、変形労働時間制を導入している場合があります。これは、月や年単位で労働時間を調整する制度で、「今週は忙しいから45時間働く代わりに、来週は35時間にする」といった柔軟な働き方を可能にします。

この制度下では、特定の日に8時間、特定の週に40時間を超えても、月や年単位で平均して法定労働時間内に収まっていれば、時間外労働とは見なされない場合があります。ご自身の会社がどの制度を採用しているか、就業規則で確認することが重要です。

月平均所定労働時間160時間についてよくある質問

ここでは、月平均所定労働時間160時間について、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式で解説します。

月平均所定労働時間173時間は違法?

ただちに違法とは言えません。年間休日105日〜110日の企業では、月平均所定労働時間が約173〜168時間になりうるため、170時間を超えることはあります。法定労働時間の上限である月173.8時間以内に収まっていれば、設定自体は違法ではありません。重要なのは、この時間を超えた分について、正しく時間外労働として扱い、25%以上の割増賃金が支払われているかという点です。

みなし残業(固定残業代制)が含まれている場合の注意点は?

固定残業代制度は、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度です。例えば「月20時間分の固定残業代を含む」といった契約です。この場合でも、固定残業として設定された20時間を超えて残業した分については、別途、追加で残業代を請求する権利があります。「固定残業代を払っているから、いくら残業させても良い」というのは間違いです。

自分の労働時間を正しく理解し、健全な働き方を

今回は、平均所定労働時間 160時間をテーマに、その妥当性や計算方法、残業代との関係について詳しく解説しました。

ご自身の労働時間について正しく理解することは、会社との健全な関係を築き、長く健康に働き続けるための第一歩です。この記事を参考に、ぜひご自身の就業規則や給与明細を改めて確認してみてください。もし、計算が合わなかったり、疑問が解消されなかったりする場合は、会社の担当部署や、必要に応じて労働基準監督署などの専門機関に相談することも検討しましょう。


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