- 更新日 : 2025年4月9日
日本で働く外国人労働者でもベトナム人が多いのはなぜ?日本で働く理由を解説
日本で働く外国人労働者のなかでも、ベトナム人が最も多いのは、高い賃金水準や技能実習制度の影響、日本の技術習得への関心などが主な理由に挙げられます。近年、日本企業の人手不足を背景に、ベトナム人労働者の受け入れが急増しており、今後の企業成長においても外国人労働者の雇用が重要です。
本記事では、日本で働くベトナム人の増加理由や、企業が採用時に注意すべきポイントについて詳しく解説します。
目次
日本で働く外国人労働者のなかでもベトナム人が最多
日本で働く外国人労働者のなかで最も多いのは、ベトナム人です。2024年10月末時点の外国人労働者数は230万2,587人で、過去最高を更新しました。
国籍別では、ベトナムが最多の57万708人となり、外国人労働者全体の約4分の1を占めています。なかでも「技能実習」の在留資格を持つ人が22万3,291人と最も多く、母国で得た知識や技術を日本で活かしています。
他にも研修生やエンジニア、技術者、通訳など、多様な職種や在留資格で働いているのが特徴です。ベトナム人労働者の増加は、日本の労働力不足を支える重要な存在となっています。
外国人労働者の雇用を検討している方は、ぜひ下記の記事もあわせてご覧ください。
日本で働くベトナム人が増えている背景
ベトナム人労働者数が増加している背景には、ベトナムと日本の経済的な関係や制度の変化が大きく関係しています。
ベトナム人がどのような目的や制度で来日し、どの分野で活躍しているのかを把握することは、今後の人材活用や共生社会の形成においても重要です。
以下では、在留資格別にベトナム人労働者が増えている理由を紹介します。
技能実習生制度
技能実習生制度は、発展途上国の人材に日本の技術を習得してもらうことを目的に1993年に制度化されました。
2017年には介護職の追加や、優良な監理団体・実習実施者に対する実習期間の延長、受け入れ枠の拡大など制度が拡充されています。エン・ジャパン株式会社が運営する「人事のミカタ」で実施されたアンケートでは、88%の企業が人材不足を実感しており、技能実習生の需要の高まりがうかがえます。
当初は中国人の受け入れが多くを占めていましたが、経済成長により減少し、代わってベトナム人の受け入れが進みました。
上記のような背景から、日本で働くベトナム人は今後も増加する可能性があるといえるでしょう。
参考:2024年「企業の人材不足」実態調査ー人事・採用担当者向け情報サイト『人事のミカタ』アンケートー|エン・ジャパン株式会社
留学生のアルバイトと就職
日本で働くベトナム人が増えている背景には、留学生のアルバイトや就職のしやすさも挙げられます。
2008年7月29日に日本政府が「留学生30万人計画」を発表し、大学の情報発信強化や入国審査等の簡素化などに取り組んだことにより、ベトナムを含む多くの国から留学生が来日するようになりました。
留学生の増加に伴い、日本語教育機関や専門学校の整備も進み、2019年には計画を上回る31万人以上の留学生を受け入れています。日本では、資格外活動の許可を得ることで、週28時間までのアルバイトが可能で、教育機関の長期休暇中は週最大40時間まで働けます。
アメリカやヨーロッパと比べて働きやすい環境が整っており、学びながら生活費を補える点が大きな魅力です。さらに、日本企業のベトナム進出も活発なことから、日本での留学経験を母国での就職に活かすケースも増えています。
就労可能な在留資格を持つ人材(技術・人文・国際業務)
日本で働くベトナム人が増えている背景には、「技術・人文知識・国際業務」など、就労可能な在留資格を持つ人材の増加があります。
以前は在留資格の取得が難しく、日本に働きに来る人材は限られていました。しかし、外国人労働者への需要が高まるなか、留学生が卒業後に資格を取得して日本企業へ就職するケースが増えています。
近年では、現地法人が採用したベトナム人を日本に転勤させたり、日本企業が技術力のある人材を直接採用したりする動きも広がっています。
外国人労働者のなかでもベトナム人が多い理由
日本で働くベトナム人が増えている背景には、制度や経済的な要因など、いくつかの理由があります。増加の背景を理解することは、企業がベトナム人材を受け入れる際に、円滑な採用や定着支援につなげるうえで大きなメリットです。
以下では、ベトナム人が日本を選ぶ理由について解説します。
日本の賃金の方が高いため
ベトナム人が日本で働く理由の一つは、賃金水準の高さです。
2024年のベトナムの平均月収は約850万VND(約4万9千円)と見込まれています。一方、日本の一般労働者の平均月収は33万200円と大きな差があります。
日本とベトナムの収入格差を背景に、日本での就労に関心を持つベトナム人は少なくありません。日本語能力試験N2以上を求める企業も多く、取得すれば高収入の仕事に就ける可能性が広がるでしょう。
ベトナム国内では、大学進学率が42.22%(2022年)に上る結果となっていますが、卒業後に就職先が見つからない若者も多くいます。しかし、日本では特別な資格がなくても働ける職種があり、賃金も数倍になるため、多くのベトナム人にとって魅力となっています。
ただし、在留資格を得るには一定の日本語能力や技能が必要であり、すべての業種で簡単に働けるわけではない点には注意が必要です。
日本に興味があるため
ベトナム人が日本で働く理由には、日本への関心の高さがあります。
ベトナムではアニメや漫画をはじめ、日本文化が広く親しまれており、多くの若者が日本に興味を持っています。2023年の外務省の調査では、ベトナム人の74%が「日本とはとても友好関係にある」と回答し、日本への好印象が強い結果となりました。
さらに、ベトナムでは日本製のバイクや家電、化粧品などが高品質な製品として人気です。したがって、日本での生活や労働を通じて日本文化や技術を直接体験したいと考える人が増えています。
日本への関心の高さそのものが、日本で働く一つの目標となっている背景から、ベトナム人労働者の増加を後押ししています。
技術力の高い日本で知識を得るため
日本の高い技術力を学べることも、ベトナム人が日本で働く理由の一つです。
外務省の調査では、ベトナム人の約60%が「日本についてもっと知りたい分野」として「科学・技術」と回答しており、日本で技術を学びたいという意欲がうかがえます。実際に、日系企業はベトナム国内にも多く進出しており、世界中から部品を調達してベトナム工場で製品の組み立てを行っています。
日本で働くことにより、高度な技術や専門知識を直接学び、将来的に母国で活かせる点も魅力です。また、ベトナムとは異なる職場環境で自分のスキルを磨きたいと考える人も多く、日本は理想的な学びの場として注目されています。
そのため、日本での就労は単なる収入手段ではなく、将来のキャリアや成長につながる貴重な経験と捉えられています。
生活環境が良いため
生活環境の良さも、ベトナム人労働者が日本を選ぶ理由です。
日本は社会保障制度や企業の福利厚生が整っており、労働環境もベトナムより良い場合があります。とくに健康保険制度は、安心材料の一つです。
在留期間が3ヶ月以上の外国人労働者は、健康保険に加入する義務があり、企業には加入手続きを行う責任があります。一方、ベトナムでは制度が発展途上にあり、適切な手続きが行われないケースもあります。
さらに、日本は医療・教育・治安などの生活基盤が安定しており、将来を見据えて安心して暮らせることが魅力です。そのため、多くのベトナム人にとって、日本は魅力的な就労先であるといえるでしょう。
ベトナム人が仕事を選ぶ際に重視するポイント
ベトナム人労働者は、日本で仕事を選ぶ際に重視するポイントがいくつかあります。
労働者の希望する条件を事前に理解し、受け入れ環境を整えておくことは、ベトナム人にとって魅力的な職場づくりにつながります。また、円滑な定着や長期的な雇用にも良い影響を与えるでしょう。
以下では、ベトナム人が重視する具体的なポイントについて紹介します。
1. 給与や福利厚生
ベトナム人労働者は、給与や福利厚生を重視する傾向があります。
技能実習生は、最低賃金に近い水準で雇用されることもあります。一方、留学生や就労可能な在留資格を持つ外国人を正社員・契約社員として採用する場合、日本人と同じ給与水準で対応しなければいけません。
外国人だからといって低賃金で雇用できるという考えは誤りであり、労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令は外国人にも適用されます。給与面だけでなく、寮や家賃補助、交通費補助、日本語学習制度、各種手当などの福利厚生が充実している企業は、ベトナム人からの評価が高く、応募も集まりやすくなります。
外国人労働者を雇用する際は、労働基準法を遵守することが重要です。下記の記事では、労働基準法について解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
2. 労働環境
多くのベトナム人が仕事を選ぶ際、労働環境を重視します。
とくに初めて日本で働く場合は、安心して働ける職場かどうかがベトナム人にとって重要なポイントです。快適な労働環境とは、主に以下のような要素を指します。
作業環境 | 作業環境の空気の汚れや臭い、温度などを適切に管理し、不快感を与えないように保つ |
作業方法 | 筋力や身体への負担が大きい作業を見直し、負担を軽減する |
疲労回復支援施設 | 疲労やストレスを効果的に和らげるための休憩室を設置・整備する |
職場生活支援施設 | 洗面所やトイレなど、職場生活に欠かせない設備を清潔に保つ |
スキルや技術があっても、言語の壁やサポートの不足が離職につながる場合があります。
また、ベトナム人は家族を大切にする文化があり、職場でも信頼されていると感じることで、意欲的に働く傾向があります。
3. 会社の将来性
ベトナム人は、仕事を通じて成長したいという意欲が高く、会社の将来性を重視する傾向があります。
新しい技術を学ぶ姿勢やキャリアアップへの関心も強く、長期的に働ける環境を求める人が多いことが特徴です。そのため、企業は明確なキャリアプランや昇進制度、評価基準などを丁寧に説明し、ともに成長していける姿勢を示すことが重要です。
会社のビジョンや将来の目標、事業の展望を具体的に伝えることで、安心して働ける職場として信頼を得やすくなります。会社のビジョンがわかるような情報があることで、ベトナム人労働者の定着やモチベーション向上にもつながります。
4. 日本語の学習環境
ベトナム人は、仕事を選ぶ際に日本語の学習環境への関心が高いです。
在日留学生であれば日本語を理解できる人も多いですが、海外から直接雇用する場合は、日本語での意思疎通が難しいこともあります。とくに、ビジネスで使う日本語は難易度が高く、戸惑うことも珍しくありません。
そのため、日本語を学べる環境を整えている企業は、ベトナム人労働者にとって安心感のある職場といえます。実際に、日本語研修を提供する企業は高く評価される傾向にあります。
自社で日本語クラスを開いたり、外部講師を招いて学習機会を提供したりすることで、定着や意欲向上にもつながるでしょう。
ベトナム人や外国人労働者を雇用する際の注意点
ベトナム人や他の外国人労働者を雇用する際には、いくつか注意すべきポイントがあります。
注意点を事前に理解しておくことで、雇用後のトラブルを防ぎ、外国人労働者が安心して働ける職場環境を整えられます。結果として、定着率の向上や企業との信頼関係の構築にもつながるでしょう。
以下では、具体的な注意点について紹介します。
在留資格を確認する
ベトナム人に限らず、外国人労働者を雇用する際は、必ず在留資格を確認する必要があります。
外国人が日本で就労するためには、出入国管理及び難民認定法に基づき、在留資格の範囲内で活動が認められている必要があります。就労が可能な在留資格は以下のとおりです。
- 外交
- 公用
- 教授
- 芸術
- 宗教
- 報道
- 高度専門職
- 経営・管理
- 法律・会計業務
- 医療
- 研究
- 教育
- 技術・人文知識・国際業務
- 企業内転勤
- 介護
- 興行
- 技能
- 特定技能
- 技能実習
- 特定活動(ワーキングホリデー、EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士、ポイント制等)
参考:在留資格一覧表|外務省
一方、「留学」「文化活動」「短期滞在」「家族滞在」「研修」は原則として就労が認められていません。ただし、「留学」「文化活動」「家族滞在」の場合、資格では、資格外活動の許可を得れば一定の範囲での就労が可能です。
また、「永住者」「日本人の配偶者等」などの在留資格は、就労に制限がありません。
外国人の在留資格や在留期間は、在留カードや旅券、各種許可証などで確認できます。就労不可の在留資格で働かせた場合、事業主は不法就労助長罪に問われ、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があるため、注意が必要です。
在留資格に関する情報は、下記の記事で詳しく説明しているため、ぜひ参考にしてみてください。
外国人雇用状況の届出を提出する
ベトナム人に限らず、外国人労働者を雇用する際には「外国人雇用状況の届出」を提出する義務があります。
届出書は、在留資格「外交」「公用」および特別永住者を除くすべての外国人労働者が対象で、雇用時と離職時の両方で提出が必要です。
厚生労働省は、届出書をもとに雇用環境の改善や、離職した外国人への再就職支援などを行っています。提出を怠った場合や虚偽の内容を提出した場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
雇用保険の被保険者となる外国人の場合は、資格取得届または資格喪失届を提出し、雇用時は翌月10日まで、離職時は翌々日から10日以内が提出期限です。一方、被保険者とならない外国人については、様式第3号の外国人雇用状況届出書を使用し、雇用・離職の翌月末日までに提出する必要があります。
適切に届出を行うことで、企業としての責任を果たし、安心して外国人を受け入れる体制を整えられます。
特定技能外国人の雇用は駐日ベトナム大使館の「推薦者表交付申請」が必要
特定技能外国人としてベトナム人を雇用する場合は、駐日ベトナム大使館で「推薦者表交付申請」の手続きが必要です。
推薦者表交付申請は、本人または受け入れ機関が行うもので、ベトナム政府が海外での就労を承認したことを証明する書類となります。日本に在留している技能実習生や留学生を特定技能に切り替えて雇用する際も、推薦者表の取得が必要です。
日本とベトナムの二国間の協力覚書では、「日本が受け入れるのは推薦者表に記載された者のみ」と定められており、ベトナム政府が就労管理を行い、違法なブローカー行為を防ぐ目的があります。推薦者表は在留資格認定や変更許可申請時に、他の必要書類と一緒に出入国在留管理庁へ提出します。
特定技能でベトナム人を雇用する際は、手続きを確実に行うことで、適正な雇用と信頼関係の構築が可能です。
日本人と考え方が違うことを理解する
ベトナム人と日本人では、仕事に対する考え方が異なるため、雇用側は違いを理解することが重要です。
たとえば、ベトナムでは昼休みが長く、昼寝をする文化があり、残業もほとんどありません。残業が発生する場合には、高い割増賃金が支払われるのが一般的です。
そのため、日本で残業が常態化している職場では、ベトナム人労働者が早期に離職する可能性があります。
日本人の働き方を一方的に押し付けるのではなく、文化や価値観の違いを尊重しながら柔軟に対応することが重要です。
労働時間が超過していないか確認する
「留学」や「家族滞在」などの在留資格を持つベトナム人を雇用する際は、労働時間が資格外活動の許可範囲内に収まっているか確認することが重要です。
留学生は資格外活動許可を受けていれば、週28時間以内でのアルバイトが認められています。長期休暇中は、週40時間まで労働が可能ですが、1日8時間以内という制限があります。
ダブルワークをしている場合は、雇用先ごとではなく全体で週28時間以内に収めなければいけません。たとえば、2つの職場で合計30時間働いた場合、資格外活動の範囲を超えた違法労働となり、本人だけでなく雇用主も処分の対象となる可能性があります。
適正な労働時間の管理は、トラブル防止のためにも重要です。
ベトナム人を含む外国人労働者を雇用して企業の成長につなげよう
ベトナム人を含む外国人労働者の雇用は、企業の人手不足解消や多様性の促進につながります。ベトナム人は、日本の賃金や技術習得に魅力を感じ、積極的に働く意欲があります。
適切な採用とサポートを行えば、企業の成長に貢献する貴重な人材となるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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