- 更新日 : 2025年4月4日
外国人労働者の受け入れ制度の種類とは?雇用までの流れもあわせて解説
人手不足により、外国人労働者の受け入れを検討している企業もいるでしょう。
令和6年10月時点では、外国人労働者が過去最多の230万人を超え、今後もますます外国人労働者が増加し、雇用するハードルが下がる見込みです。
そのため、早急に外国人労働者の受け入れ制度について理解を深める必要があります。
国内で定められている外国人労働者の受け入れ制度の種類や、雇用までの流れと注意点について解説します。
外国人労働者の受け入れ制度とは?
日本の外国人労働者の受け入れ制度は、外国人が就労するための法律や条件をまとめた制度です。
外国人労働者は、おもに本人が所持している「在留資格」によって就労の可否が判断されます。在留資格はおもに以下に分類されます。
- 身分に基づく在留資格
- 専門的・技術的分野の在留資格
- 技能実習
- 資格外活動
- 特定活動
国内の労働力不足の解消を目指して「特定技能」という新しい在留資格が2019年に導入されました。導入以降、介護や建設、農業など人手不足が深刻化している分野で、専門的な技能をもつ外国人を受け入れられるようになりました。
外国人労働者数は年々増加しており、令和6年には約230万人に達し、日本の経済や社会にとって不可欠な存在となっています。
外国人労働者の主な受け入れ条件5つ
外国人労働者を受け入れる条件のひとつに、在留資格の有無があります。在留資格のなかには、長期間働ける資格と短期間のみでしか働けない資格のほか、ある程度定められた範囲での仕事しかできない資格などがあります。
日本における、外国人労働者の受け入れ制度および在留資格の種類をみていきましょう。
1.就労が認められる専門的・技術的分野の在留資格がある
外国人の在留カードおよびパスポートを確認したうえで、以下の在留資格をもっているかどうか判断する必要があります。
【就労資格】
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道
【就労資格,上陸許可基準の適用あり】
高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習
上記の在留資格をもっていない、または「短期滞在」や「研修」などの外国人を雇用すると、不法就労に該当する可能性があるため注意が必要です。
2.日本への定住および永住する資格がある
就労資格のある在留資格の保持者以外でも、定住者および永住の資格を保持した外国人であれば、日本人と同様にさまざまな仕事に就けます。定住者および永住の資格とは、おもに以下があります。
【入管法別表第二の上欄の在留資格(居住資格)】
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
一方で留学生やワーキングホリデーの外国人など、就労が制限される資格をもつ外国人は、特定の条件の範囲内でしか働けません。
外国人労働者を雇用する際の入社手続きや注意点について、以下の記事で解説しています。外国人労働者の雇用を検討している人は、あわせてお読みください。
外国人の入社手続きについて徹底解説!注意点や入社後のフォローも解説
3.資格外活動の許可を得ている
資格外活動の許可は、外国人が現在保有する在留資格とは異なる活動で、臨時で収入が発生する業務に就くために必要です。
資格外活動は、日本国内で就労できない在留資格(たとえば「留学」や「家族滞在」)をもつ外国人が、学費の補填として報酬を受けたいときに就きます。
資格外活動許可の種類には、包括許可と個別許可があります。
包括許可では、勤務先や業務内容の指定なく包括的な資格外活動が可能ですが、個別許可においては勤務先や業務内容を指定したうえで、個別の許可を受けることが必要です。
許可を受けるには、申請者が在留資格にもとづく活動を妨げないことや、法令違反に該当しないことが求められます。また、風俗営業などは禁止されています。
4.外国人技能実習制度を利用している
外国人技能実習制度は、日本が開発した技術や技能を外国人に伝え、帰国後に自国の発展につなげることを目的とした制度です。
外国人技能実習制度は1993年に創設され、2017年11月に「外国人の技能実習の適正な実務及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行されました。
技能実習生は、実習期間が最長5年と定められており、受け入れ方法には企業単独型と団体監理型の2種類があります。
企業単独型は、企業が直接外国人を受け入れる方式で、団体監理型は専門の監理団体を通じて受け入れる方式です。受け入れた実習生は、日本での生活や仕事を通じて技能を習得し、母国で知識を活かすことが期待されています。
5.特定活動を行っている
特定活動は、法務大臣が指定した、上記の在留資格には該当しない特定の活動を指し、特定の条件を満たす外国人に対して柔軟に在留を認めるために設けられました。
特定活動に該当する例としては、ワーキングホリデー・特定の研究活動・インターンシップ・経済連携協定にもとづく調整作業などがあります。また、戦争や新型コロナウイルスの影響を受けた帰国困難者に対する特例措置として、就労が許可されることもあります。
特定活動を利用する外国人は、多様な理由で日本に滞在しながら活動できますが、各活動の詳細や条件は随時変更されるため、最新情報の確認が大切です。
外国人労働者を受け入れるまでの6ステップ
現状では、外国人労働者を受け入れる際、自社の業務に就ける在留資格の有無を確認したうえで、日本人の従業員と同様に雇用契約の締結が必要です。雇用契約の締結後は、日本人の従業員とは異なり、外国人雇用状況の届出をハローワークに対して提出することが必要となります。
外国人労働者を受け入れるまでの流れについて解説します。
1.外国人労働者に任せたい業務を決定する
外国人労働者を雇用する際には、まず任せたい業務や役割を明確に定義しましょう。
具体的な職務内容、求めるスキルや経験、業務の目的をはっきりさせます。とくに、外国人労働者は特定の在留資格にもとづいて就労の可否が決まるため、在留資格の専門性や能力を活かせる業務の設定が大切です。
また業務の内容が多文化的な視点を必要とする場合、外国人労働者の独自の知識や技能が企業に新たな価値をもたらすことが期待できます。
2.求人の広告を出す
任せたい業務が明確になったら、求人を出します。
求人広告は、募集する職種に適した言語で作成する必要があり、わかりやすく具体的な内容を記載します。ハローワーク・外国人労働者紹介サイトなどを活用することで、広範な応募者層にアプローチできるでしょう。
また、求人掲載時には給与や待遇、雇用形態などの労働条件をしっかりと明記し、応募者の誤解を避けることも重要です。
最後に応募する方法や応募フローを明確にすることで、外国人労働者によい印象をもってもらえやすく、かつ応募につなげやすいでしょう。
3.在留資格を確認する
外国人労働者を採用する場合、所持している在留資格を必ず確認しましょう。
外国人は特定の業務に応じた在留資格をもっていなければ採用できないため、応募者がどのような在留資格をもっているのか、自社の業務が適合しているかを確認する必要があるのです。
たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格であれば、システムエンジニアやプログラマー、営業、通訳などの仕事に従事できます。
在留カードをチェックし、在留資格の範囲内で就労が可能であることを確認したら、雇用契約が締結できます。
4.雇用契約の締結
外国人労働者とも、必ず雇用契約を締結します。雇用契約書は、雇用者と労働者との間で合意された労働条件を明確にするための文書です。また、外国人労働者であっても日本人と同様に労働条件通知書の交付が義務付けられていますが、雇用契約書と兼用することも可能です。
契約には、以下を含む、労働者にとって重要な詳細が記載されます。
- 労働時間
- 給与
- 業務内容
- 業務場所
- 福利厚生
- 試用期間
- 解雇条件など
とくに、外国人労働者の場合は契約書を母国語で作成することが望ましいでしょう。言語の壁を考慮し、労働者が内容を正確に理解できるよう配慮しましょう。訴訟リスクの軽減やのちのトラブル防止につながります。
また契約の締結時には、法律にもとづいた手続きの遵守が必要です。労働基準法や外国人雇用管理規程などに従った契約内容を確認し、両者が納得したうえで署名します。
5.社会保険へ加入する
外国人労働者を雇用する際は、日本人労働者と同様に、健康保険や厚生年金保険などの社会保険への加入が必要です。
雇用主は、社会保険の資格取得届を提出し、労働者の情報を適切に登録する必要があります。また、外国人労働者が来日した際の保険説明や加入手続きについても、十分な説明が必要です。
加入手続きが完了したあとは、定期的に保険料を支払い、労働者の健康管理や労働条件の適正化に努めます。
厚生年金含め、外国人労働者を雇用する際の社会保険への加入方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。
6.ハローワークへ外国人雇用状況を届け出る
外国人労働者を雇用した場合、雇用者はハローワークに外国人雇用状況の届出を行う義務があります。
外国人労働者が雇用保険の被保険者となる場合は、雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)の提出をもって、外国人雇用状況を届け出たことになります。その場合の届出期限は、雇用保険被保険者資格取得届と同様に、翌月10日までです。なお、雇用保険に加入しない場合には、雇い入れの翌月末日が外国人雇用状況届出書(様式第3号)の提出期限となります。
正確な情報の届出は、不法就労防止や労働市場の透明性の向上につながります。怠ると罰則の対象となる場合もあるため注意が必要です。
外国人労働者の雇用方法について解説しました。雇用する際のメリットとデメリット、そのほかの採用方法について以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。
外国人労働者を受け入れる際の注意点
外国人労働者であっても、日本人の従業員と同等の権利が保障されており、違反すると罰則が科される可能性があります。
外国人労働者のみ賃金を下げる、および福祉制度を利用させないといったことはできません。外国人労働者を雇用する際、企業や職場の担当者は、外国人労働者への就業環境整備が求められます。
最低賃金を下回ることは認められない
日本において、外国人労働者も日本人と同様に最低賃金法の適用を受けます。
つまり、外国人労働者は最低賃金を下回る給与で働かせることはできません。技能実習生や特定技能をもつ外国人などすべての外国人労働者に適用されます。
もし最低賃金に満たない賃金を支払った場合、雇用主は法律違反となり、罰金や行政処分を受ける可能性があります。
最低賃金は地域ごとに異なり、業種によっても変動するため注意が必要です。したがって、雇用主は雇用契約を結ぶ際、外国人労働者にも適用される最低賃金を十分に確認して遵守する責任があります。
同一労働同一賃金は外国人労働者にも適用される
外国人労働者にも同一労働同一賃金が適用されます。
同一労働同一賃金は、正規雇用の労働者と非正規雇用の労働者間での、不合理な待遇差の是正を目的とした決まりです。たとえば、外国人労働者が日本人労働者と同じ仕事をしている場合、同じ賃金を支払う必要があります。
また、同一労働同一賃金は国籍に関係なく適用されるため、外国人も日本人同様にこの制度の保護が受けられます。業務の内容が異なる場合は賃金差を設けられますが、単に国籍の違いを理由に待遇差を設けた場合、違法とみなされる可能性があるため注意が必要です。
賃金差を設ける場合は、合理的な理由と差を明確に示しましょう。
そのほか外国人労働者を雇用する際の注意点について、以下の記事で詳しく解説しているため、あわせてお読みください。
外国人労働者を受け入れる場合は在留資格の確認を!
日本には外国人労働者受け入れ制度があり、おもに外国人がもつ在留資格の有無または種類により、就ける仕事や期間が異なります。
就労資格がないにもかかわらず特定の業務に従事させたり雇用したりすると、不法就労にあたり罰則が科される可能性があるため注意が必要です。
外国人労働者を雇用することで補助金が受け取れる制度もあるため、企業や職場は、ルールを理解したうえで外国人労働者を積極的に受け入れましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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