• 更新日 : 2025年4月4日

外国人労働者を受け入れた際に起こりうる5つの問題|原因・解決策・事例も紹介

外国人労働者を受け入れると、主に5つの問題やトラブルが発生する可能性があります。

「どのような問題が実際に起こっているの?」「トラブルが発生したときの解決策はある?」など気になっている人もいるでしょう。

そこで本記事では、外国人労働者に関連する5つの問題、解決策や実際にあった事例などを解説します。

外国人労働者の現状

外国人労働者の現状について、人口・国籍・業種別の割合の3つの観点で紹介します。

外国人労働者の人口

厚生労働省の調査によると、令和4年・5年・6年の外国人労働者の人口は、以下のように推移しています。

年度外国人労働者の総人口
令和4年1,822,725人
令和5年2,048,675人
令和6年2,302,587人

令和5年の時点で外国人労働者の総人口は、200万人を超えていました。

また、ここ3年で約50万人近くも人口が増えており、今後も外国人労働者は増えると考えられます。

参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)|厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)|厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)|厚生労働省

外国人労働者の国籍

令和6年の厚生労働省の調査によれば、外国人労働者の国籍の割合は以下のようになります。

国籍人口
ベトナム570,708人
中国408,805人
フィリピン245,565人
ネパール187,657人
インドネシア169,539人

※その他を除く

アジア圏の外国人労働者が非常に多いことが分かります。中でもベトナム出身の労働者数が、全体の約4分の1を占めています。

対して欧米出身の労働者は少なく、アメリカが34,459人でイギリスが13,017人です。フランスやドイツ出身の労働者数を含めても、全体の5%にも届きません。

参考:「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和6年10月末時点)|厚生労働省

外国人労働者の業種別の割合

令和6年の厚生労働省の調査によると、外国人労働者の業種別の割合は以下のようになります。

国籍割合(人口)
製造業26.0%
(598,314人)
サービス業15.4%
(354,418人)
卸売業、小売業13.0%
(298,348人)
宿泊業、飲食サービス業11.9%
(273,333人)
建設業7.7%
(177,902人)

同時期に帝国データバンクが調査した「人手不足に対する企業の動向調査」によると、「建設」「飲食店」「飲食料品小売」などが人手不足に陥っているようです。

人手不足が顕著な業種に、外国人労働者が流れていると考えられます。

参考:「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和6年10月末時点)|厚生労働省人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)|株式会社 帝国データバンク

外国人労働者を受け入れた場合に起こりうる5つの問題

外国人労働者を受け入れた場合に起こりうる問題を5つ解説します。

問題が積み重なった場合、定着率が低下したり、取引先や顧客を巻き込んだトラブルに発展したりする可能性があります。問題が起こる原因や解決策についても後述しているため、ぜひ参考にしてください。

1、不法就労

外国人労働者の受け入れに際して起こりうるのが不法就労です。以下のケースが不法就労に該当します。

不法就労に該当するケース主な例
不法滞在している外国人が就労した・在留資格を持っていない外国人が働いた場合

・在留期限が切れている外国人が働いた場合

就労不可の外国人が働いた・就労の許可を得ていない外国人が働いた場合

・旅行で入国した外国人が働いた場合

在留資格で定められた活動から
外れた業種・職種で就労した
「介護」の在留資格を持つ外国人が医療関係の職種で働いた場合

不法就労をすると本人が処罰の対象となるだけでなく、雇用した側も不法就労助長罪に問われるため不法就労は必ず防いでください。

不法就労助長罪になると入管法の第73条の2により、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または両方が科せられます。

参考:出入国管理及び難民認定法 | e-Gov 法令検索

2、コミュニケーションの問題

コミュニケーションや意思疎通に関連した問題として、以下のような状況になる可能性があります。

  • 業務に関する説明が伝わらない、事業主側も上手く伝えられない
  • 勤務時間や報酬などの基本的なルールを理解してもらえない
  • 他の従業員と馴染めずに、壁ができたり孤立したりする

外国人労働者とコミュニケーションを上手く取れないと、業務に支障が出たり労働条件に関してトラブルに発展したりすることが懸念されます。

2019年に内閣府が発表した「企業の外国人雇用に関する分析」によれば、企業が考える課題として「日本語能力に問題がある」という回答の割合が最も高いようです。次いで「日本人社員とのコミュニケーションに不安がある」という回答が多いことが分かっています。

調査の結果をもとに、コミュニケーションが容易となる職場環境を整えることが定着率の向上に繋がるとまとめられています。

参考:企業の外国人雇用に関する分析|内閣府

3、文化や慣習の違いに起因する問題

日本と外国の双方の文化や慣習に対して理解が不足していると、以下のような状況が起こり得ます。

日本人には宗教への馴染みがない人が多いため、外国人が宗教の関係で食べられないもの・できないことを強要してしまうことがあるでしょう。また、海外では仕事と私生活を明確に区別する傾向にありますが、ワークライフバランスを重視する姿勢を受け入れられず残業を無理に押し付けてしまうこともあり得ます。

反対に、海外では日本よりルーズな国もあるため、母国の習慣が抜けずに遅刻を繰り返す人もいるでしょう。日本の典型的な挨拶やビジネスマナーを知らないせいで、取引先に失礼な態度を取ってしまうことも考えられます。

4、低賃金や賃金の未払い

賃金に関しては、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • 最低賃金よりも低い賃金を設定する
  • 本来払うべき賃金や手当を支払わない
  • 昇給の対象であるが賃金を上げない

外国人だからという理由で賃金を低く設定したり、賃金を払わなかったりすることが実際にあるようです。事例については、本記事の「外国人労働者の問題に関する事例」でまとめています。

5、劣悪な労働環境

人手不足の職場は、以下のような劣悪な労働環境に陥りやすいです。

  • 月45時間、年360時間を超えた残業を行わせる
  • 休憩を与えない、休日にも労働させる
  • 重労働を強いる、危険を伴う仕事を押し付ける

人手不足が原因となって、法定労働時間を守らなかったり休憩・休日を与えなかったりすることが考えられます。

また、外国人労働者を勝手に安価な労働力として扱い、外国人だけに重労働を強いるケースもあります。

外国人労働者に関する問題やトラブルが起こる原因

前述の問題やトラブルが起こる原因として、主に以下の3つが考えられます。

  1. 外国人の差別意識が根底にある
  2. 文化や慣習への理解が浅い
  3. 法律をあまり把握していない

一つ目の原因は、差別意識が根底にあることです。過酷な業務の押し付けや賃金の未払いなどは、差別意識が起因している可能性があります。

二つ目の原因は、文化や慣習への理解が浅いことです。理解が浅いと、宗教・外国人の価値観・コミュニケーションの取り方などを受け入れられず、日本の文化や慣習を押し付ける場合があります。結果として、定着率の低下を招いたり、業務上でトラブルが発生したりすることもあるでしょう。

三つ目の原因は、法律をあまり把握していないことです。勤務時間や賃金などの法律を把握し切れていないせいで、法外な業務時間になったり最低賃金を下回ったりする場合があります。外国人だけでなく、日本人の労働者にも同様のことが起こり得ます。

問題やトラブルが起こった場合の解決策

実際に問題やトラブルが起こった場合の解決策を紹介します。

文化や慣習の違いによる誤解を解消する

文化や慣習の違いによる誤解を解消しましょう。具体的には以下の方法があります。

  • 採用した外国人の出身国の文化や慣習を調べてみる
  • 海外の人の仕事への向き合い方を知る
  • 採用した外国人の価値観に理解を示す

海外の文化や慣習について調べてみるだけで、誤解を解消できる可能性があります。現在はインターネットが非常に普及しているため、海外の文化をまとめているサイトや動画なども簡単に見つかるでしょう。

また、日本とは全く異なる価値観を持つ外国人を採用したときも、すぐに否定せず理解を示すことが大切です。知識不足・認識不足によって相手に不快感を与えたり、無理な業務を押し付けたりすることを防げます。

労働・外国人雇用の法律に基づき対応する

労働関連の法律や外国人雇用の法律に基づき対応することも、解決策として挙げられます。労働基準法や入管法を再確認し、法律に則っていないことがあれば直ちに対処してください。

労働基準法で定められた基本的な法律を以下にまとめました。

項目内容
勤務時間について
労働基準法 第32条
労働時間は1日8時間・週40時間を超えてはならない(休憩時間を除く)
残業時間について
労働基準法 第36条
36協定の締結と労働基準監督署長への届出により、月45時間・年360時間まで時間外労働ができる
休憩時間について
労働基準法 第34条
・労働時間が6時間を超える場合は最低45分の休憩を労働時間の途中に与える必要がある

・労働時間が8時間を超える場合は最低1時間の休憩を労働時間の途中に与える必要がある

賃金について

労働基準法 第24条

・通貨で直接労働者に全額を支払わなければならない

・毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない

外国人だけでなく、日本人の労働者に対しても法律を守っているか確認してください。

また、外国人雇用に関しては入管法によりさまざまな規制が設けられています。在留資格を持っていない外国人は日本に滞在できず、就労もできません。それぞれの在留資格に応じた活動のみ認められています。

業務課題に対応するマニュアルを作成する

外国人向けに業務課題に対応するマニュアルを作成するのも一つの手です。

出勤・退勤の決まりや休憩の取り方といった、業務における基本的なルールをマニュアルとしてまとめましょう。簡単な日本語で作成したり英語を併記したりすると、外国人でも理解しやすいです。

また、日本では常識的な挨拶のルールやビジネスマナーなどを外国人は知らない可能性があります。よって、誰でも知っていそうな内容でも、丁寧にマニュアルに記載するのがおすすめです。

外国人労働者の問題に関する事例

外国人労働者の問題に関連した事例をいくつか紹介します。

賃金の一方的な引き下げに関する事例

一つ目は、賃金の一方的な引き下げに関する事例です。

飲食店のアルバイトとして時給1,000円の約束で働き始めた外国人がいましたが、退職を申し出ると経営者の判断で最後に支払われた賃金は時給739円でした。

東京労働相談情報センターで実際にあった相談です。結果として、賃金を一方的に引き下げられないため全額支払う必要があるとセンターの職員が説明し、給料日に当初の契約通りの給与が支払われました。

上記の通り、会社側は賃金を勝手に引き下げられません。労働者と合意することなく賃金を引き下げることは、労働契約法の第8条への違反となります。

出典:外国人労働者の雇用をめぐる相談事例
参考:労働契約法 | e-Gov 法令検索

試用期間後の解雇に関する事例

二つ目は、試用期間後の解雇に関する事例です。

海運業に従事していた外国人が試用期間の満了日に社長に呼び出され、解雇通告を受けました。外国人は、解雇予告手当を請求しましたが拒否されました。

一つ目と同様に、東京労働相談情報センターで実際にあった相談です。会社側は「試用期間の満了であり解雇の考えはないはずだ」と主張していました。ただ、センターの職員が試用期間も雇用契約の一部であるため解雇に該当すると説明したところ、法律に則った解雇予告手当が支給されたそうです。

試用期間という名目でも雇用契約が締結された以上は、契約を切ると解雇に該当します。試用期間であっても14日を超えて勤務しているのであれば、解雇する場合は最低でも30日前に予告する必要があります。また、予告しない場合は解雇予告手当が必要です。前述した内容は、労働基準法の第20条で規定されています。

なお、試用期間後に本採用をする基準や本採用をするかどうかなど、雇用契約書に記載するのが望ましいです。

出典:外国人労働者の雇用をめぐる相談事例
参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

自宅待機中の給与未払いに関する事例

三つ目は、自宅待機中の給与未払いに関する事例です。

菓子製造販売会社が88人のベトナム人と雇用契約を締結しましたが、諸事情により本来勤務するはずの工場で働けなくなり自宅待機を命じました。会社側が自宅待機を命じたにも関わらず、待機中の給与は支払われませんでした。

2024年に実際に起きてニュースになっていた出来事です。自宅待機は解消され、休業手当も支給する方針とのことです。

会社都合で業務ができなくなった場合は、平均賃金の60%以上の手当を休業期間中に支払わなければなりません。労働基準法の第26条によって定められています。

出典:シャトレーゼ、外国人88人に休業手当支払わず 事務の不手際と釈明 [山梨県]|朝日新聞
参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

外国人労働者に関連する問題を把握し、未然にトラブルを防ぎましょう

外国人労働者を受け入れると、法律を把握していない・文化や慣習への理解が浅いことなどが原因となり、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。

起こりうる問題・トラブルや解決策を知っておけば、未然に防げるでしょう。もし実際に問題やトラブルが起こっても、何も知らない場合よりスムーズな対応が可能です。

会社に貢献してもらうためにも、双方が気持ちよく働ける職場を目指してください。


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