- 更新日 : 2025年4月4日
飲食店で外国人を採用する方法とは?飲食店で就労できる在留資格も紹介
飲食店で外国人を採用するには、条件に合った在留資格を持っている人でなければなりません。
ただ「飲食店で採用できる在留資格の種類は?」「採用するときに必要な手続きはある?」などと疑問に思っている人もいるでしょう。
そこで本記事では、飲食店で採用できる在留資格や採用に必要な手続き方法などを解説します。
目次
外国人を採用するには在留資格が必要
飲食店に限らず外国人を採用するには、外国人が在留資格を取得していなければなりません。在留資格がなければ日本に滞在できず、就労もできないためです。
在留資格がない・在留期限が切れていると、懲役刑や罰金刑が科されたり出国命令が出されたりする可能性があります。飲食店側も不法就労助長罪に問われるため、在留資格の有無は必ず確認してください。
なお、在留資格は全29種類あり、一部の在留資格は就労できる業種・職種も決まっています。飲食店が採用できる在留資格の種類については、本記事の「飲食店で採用できる外国人の在留資格」をご確認ください。該当する在留資格以外は飲食店で採用できないため、注意しましょう。
在留資格とは?
在留資格とは、外国人が日本に滞在するために必要な資格のことです。
在留資格と混同されがちですが、ビザ(査証)はパスポートが有効であり、入国に問題がないことの証明です。入国許可証のようなものと考えて良いでしょう。日本に入国するときに必要なのがビザで、日本に滞在するために必要なのが在留資格です。ビザは入国時のみ使用しますが、在留資格は日本にいる間は常に保持していなければなりません。
在留資格の種類や在留期限などは「在留カード」で確認できます。外国人を採用する際は、必ず在留カードを確認してください。在留カードの見方については「飲食店で外国人を採用するまでの3つのステップ」で紹介しています。
飲食店で採用できる外国人の在留資格
一部の在留資格は就労できる業種・職種が決まっており、雇用形態が制限されている場合もあります。飲食店で採用できる在留資格を、正社員・アルバイト・雇用形態の制限なしの3つに分けて紹介します。
正社員として採用できる在留資格
正社員として採用できるのは、以下の在留資格です。
種類 | 可能な業務 | 在留期間 |
---|---|---|
技術・人文知識・国際業務 | 経営や管理部門など | 3ヶ月~5年 |
技能 | 調理(外国料理) | 3ヶ月~5年 |
特定活動46号 | 接客や調理などの日本語を 使用する業務 | 3ヶ月~5年 |
特定技能 | 業務全般 | 1年を超えない範囲もしくは 6ヶ月~3年 |
「技術・人文知識・国際業務」は、高度な技術を使用したり、外国の文化を基盤とした思考を必要としたりする業務に従事できます。「技能」に関しては、飲食店で可能なのは外国料理の調理のみで、ホールスタッフの業務はできません。
「特定活動46号」は、日本語を使った円滑な意思疎通が必要な業務に従事できます。飲食店のマネージャー・ホールスタッフ・調理などの業務は任せられますが、皿洗いといった単純作業は任せられません。
「特定技能」は、飲食店のジャンルの中でも外食分野の業務に従事できます。ひと通りの業務が可能であるため、ホールスタッフ・調理・店舗管理などの業務を任せられます。
なお、上記4つ以外の在留資格を持つ外国人を採用したい場合は「在留資格変更許可申請」をすれば問題ありません。在留資格の変更の申請については、「外国人を採用する際に必要な手続き」で詳しく解説しています。
参考:在留資格一覧表 | 出入国在留管理庁、留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学等卒業者)についてのガイドライン|出入国在留管理庁
アルバイトとして採用できる在留資格
アルバイトとして採用できるのは、以下の在留資格です。
種類 | 可能な業務 | 在留期間 |
---|---|---|
留学 | 業務全般 | 4年3ヶ月を超えない範囲 |
家族滞在 | 業務全般 | 5年を超えない範囲 |
「留学」とは、名前の通り留学生が取得できる在留資格です。一方「家族滞在」とは、特定の在留資格を持つ外国人によって扶養されている配偶者や子どもが取得できる在留資格です。どちらの在留資格も任せられる業務に制限はありません。
ただし「留学」と「家族滞在」は資格外活動の許可を得ている必要があります。許可がなければ働けませんが、許可があればアルバイトとして就労できます。正社員としては採用できないため注意してください。
また、就労できるのは週に28時間までです。一つのアルバイト先で28時間以内という意味ではなく、全てのアルバイト先で28時間以内に収めなければなりません。28時間を超えて働かせると、飲食店側が不法就労助長罪に問われる可能性があります。
参考:在留資格一覧表 | 出入国在留管理庁、資格外活動許可について | 出入国在留管理庁
雇用形態の制限なしで採用できる在留資格
雇用形態の制限なしで採用できるのは、以下の在留資格です。
種類 | 可能な業務 | 在留期間 |
---|---|---|
永住者 | 業務全般 | 無期限 |
日本人の配偶者等 | 業務全般 | 6ヶ月~5年 |
定住者の配偶者等 | 業務全般 | 6ヶ月~5年 |
定住者 | 業務全般 | 6ヶ月~5年 (5年を超えない範囲) |
上記4種類の在留資格は、正社員やアルバイトなどの雇用形態は関係なく採用できます。また、任せられる業務にも制限がありません。
中でも「永住者」の在留資格を持つ外国人は、在留期間が無期限です。在留の期限が切れる心配もなく、日本人と同様に無期雇用で契約できます。
飲食店で外国人を採用するまでの3つのステップ
飲食店で外国人を採用するまでの3つのステップを解説します。
1、採用活動をする
最初に、在留資格を持った外国人の採用活動を実施しましょう。例として、以下の採用活動の方法があります。
- 求人サイトに出稿する
- 人材紹介会社と契約する
- 店舗に求人広告を掲載する
- SNSに求人広告を投稿する
- 大学や日本語学校と提携する
求人サイトに出稿したり、人材紹介会社と契約したりすると費用が発生します。採用活動に使用できる予算を踏まえて、どのような方法を取るか決めましょう。
店舗に求人広告を掲載する方法やSNSに求人広告を投稿する方法なら、手間も費用もあまりかかりません。なるべくコストを抑えたい飲食店におすすめです。手始めに費用がかからない方法で採用活動をしてみて、応募がなかったらコストをかけた採用活動を実施するのも一つの手です。
2、書類選考や面接を行う
外国人の応募があったら書類選考や面接を行い、お店に合った人材かどうかを判断します。選考の段階で、日本語能力や任せられる業務なども見定めましょう。
また、在留資格についても必ず確認してください。在留資格に関する情報は「在留カード」に記載されています。
表面には在留資格・就労制限の有無・在留期間などが、裏面には資格外活動許可の有無が記載されています。
飲食店で採用できる在留資格であるか、資格外活動の許可を得ているか、などを見ておきましょう。また、在留の期限と在留カード自体の期限が切れていないことも確認してください。
もし、飲食店で就労できない在留資格の外国人や在留期限が切れている外国人を採用してしまうと、不法就労助長罪に当たります。入管法の第73条により、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられる(併科可)ため、在留資格に関する確認は慎重に行ってください。
なお、不法就労助長罪の罰則は2025年6月から厳罰化されると決定しており、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金(併科可)に引き上げられます。
3、雇用契約を締結する
お店に合う人材が見つかり採用が決定したら、雇用契約を締結してください。
雇用契約書は日本人と同様の契約書を使い回すのではなく、簡単な日本語を使ったり英語を併記したりして、外国人用に新しく作成し直すと親切です。また、労働条件通知書も日本人労働者と変わらず交付が必要となります。
勤務時間や給与といった基本的な事項も通常より丁寧に説明しましょう。出勤時・退勤時のルール、一時帰国したいときの休暇の使用についてなども、入社時に細かく伝えておくのがおすすめです。日本の就労に関する決まりを全く知らない人もいると考えられるため、最初に丁寧に教えた方がトラブルを防止できるでしょう。
外国人を採用する際に必要な手続き
外国人を採用する際は、以下の手続きが必要です。
手続きが必要なタイミング | 手続きの種類 |
---|---|
国内の別の会社で働く外国人を中途採用したとき | 就労資格証明書交付申請 |
留学生を社員登用したり、 飲食業ではない会社で働いていた外国人を中途採用したりしたとき | 在留資格変更許可申請 |
在留期間を更新するとき | 在留期間更新許可申請 |
外国人を雇い入れたとき および離職したとき | 外国人雇用状況届出 |
上記のうち「外国人雇用状況届出」のみハローワークに提出してください。ほかの3種類の申請は出入国在留管理庁で行います。
また「外国人雇用状況届出」は、採用した外国人が雇用保険に加入する場合は、資格取得届や喪失届の提出をもって代えられるため、提出する必要がありません。雇い入れたときも離職したときも不要です。
なお「特定技能」の在留資格を持つ外国人を採用した際は、上記の書類に加えて支援計画や活動状況に関する届出なども提出しなければなりません。詳しくは、出入国在留管理庁の公式ページをご確認ください。
飲食店で外国人を採用する際の注意点
飲食店で外国人を採用する際の注意点をいくつか紹介します。
偽造された在留カードに気を付ける
偽造された在留カードに気を付けてください。偽造・変造された在留カードが出回っているため、本物かどうか見極める必要があります。選考の段階で在留資格の情報を確認するのと同時に、偽造されていないかどうかも確かめてください。
厚生労働省が紹介している、在留カードの真偽を見極める4つのポイントを以下にまとめました。
- 「MOJ」の周囲にある絵柄の色が変化するか確認する(正:グリーン→ピンク)
- 顔写真の下にあるホログラムが変化するか確認する(正:変化あり)
- 在留カードの左端にある縦型模様の色が変化するか確認する(正:グリーン→ピンク)
- 在留カードの裏面に透かし文字があるか確認する(正:「MOJMOJ」の文字あり)
上記のうち、該当しない・判別できない箇所が一つでもあれば、偽造されている可能性があります。偽造が疑われる場合は、出入国在留管理庁へ通報しましょう。
また、出入国在留管理庁が「在留カード等読取アプリケーション」を無料で配布しているため、ぜひご活用ください。こちらからダウンロードできます。
在留カードの偽造に気づいたかどうかに関わらず不法滞在する外国人を雇っていると、不法就労助長罪に問われて処罰の対象になる可能性があります。
日本人と同様に社会保険と労働保険に加入させる必要がある
外国人を採用した場合も、日本人と同様に社会保険と労働保険に加入させる必要があります。各種保険に加入する条件を、以下にまとめました。
保険の種類 | 加入条件 |
---|---|
健康保険 |
5,2ヶ月を超える雇用見込みがある A,B,Cのいずれかに該当する外国人は健康保険に加入する |
厚生年金保険 |
5,2ヶ月を超える雇用見込みがある A,B,Cのいずれかに該当する外国人は厚生年金保険に加入する |
雇用保険 |
A,B,Cを全て満たしている外国人は雇用保険に加入する |
労災保険 (会社単位) | 原則として労働者を1日でも1人でも雇った場合 |
介護保険 |
A,Bのいずれかに該当する外国人は介護保険に加入する |
上記の加入条件に当てはまっている人は、国籍に関わらず各種保険に加入させてください。なお、労災保険のみ会社単位で加入する保険であるため、二人目以降を採用しても手続きする必要はありません。
また、採用した外国人が雇用保険に加入しない場合は、「外国人雇用状況届出」をハローワークに提出する必要があります。採用時と離職時に提出するため、覚えておきましょう。
参考:労働保険・社会保険(厚生年金・健康保険)への加入手続きはお済みですか?|厚生労働省、労働保険適用促進パンフレット|広島労働局労働保険徴収課、介護保険とは | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
教育に時間がかかる可能性がある
外国人を採用すると、教育に時間がかかる可能性があります。たとえば、メニューの内容を覚えたり、注文や会計などの細かい作業手順を教えたりするときです。飲食店で使用する基本的な挨拶を知らないことも考えられます。
日本語の能力が上達したら徐々に任せる業務を増やす、英語でマニュアルを作成するといった対応を取って、じっくり時間をかけて教育しましょう。
また、国によって食事に関する慣習や文化が異なる場合もあります。相手の価値観も理解しつつ、日本の食事マナーや慣習も伝えるのがおすすめです。
飲食店で働く外国人の国籍の割合
飲食店で働く外国人の国籍の割合を紹介します。令和6年の厚生労働省の調査によると、宿泊業・飲食サービス業に従事する外国人労働者の国籍別の割合は以下のようになります。
国籍 | 人数 |
---|---|
ベトナム | 59,679人 |
ネパール | 55,730人 |
中国 | 53,270人 |
ミャンマー | 24,196人 |
フィリピン | 15,333人 |
※その他を除く
飲食店で働く外国人は、ほとんどがアジア圏の出身であることが分かります。欧米やアフリカ出身の外国人は、あまり多くありません。アジア圏以外で最も多いのはブラジル人で、4,440人です。
参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)|厚生労働省
飲食店で就労できる在留資格を持った外国人を採用しましょう
飲食店に限らず外国人を採用するには、本人が在留資格を持っていることが必須です。在留資格がなければ、日本での滞在も就労もできません。
また、在留資格の種類によっては、従事できる業種や契約できる雇用形態などが決まっています。選考の際に、在留資格や在留期間などを在留カードで必ず確認してください。
飲食店で就労できる在留資格を持った、店舗に合う外国人を採用して、貢献してもらいましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
行動指針とは?企業事例や作り方・社内への浸透方法をわかりやすく解説
企業の成功と持続可能な成長は、明確な行動指針によって大きく左右されます。行動指針は、従業員が日々の業務を遂行する際の道しるべとなり、組織の価値観や目指すべき方向性を示します。本記事では、行動指針の定義から、企業がこれを定めるメリット、実際の…
詳しくみる外国人パート雇用時の確認事項と注意点|手続きや在留資格も解説
外国人パートを雇用するには、在留資格が必要です。雇用主は事前に在留資格を確認し、違法雇用を防ぐ責任があります。また、在留資格によっては、就労ができなかったり制限があったりするため、ルールを正しく理解しておくことが大切です。 本記事では、在留…
詳しくみる労働条件通知書とは?書き方・雇用契約書との違いや記載事項【テンプレートつき】
会社で人を雇う際、必要となるのが労働条件通知書です。労働条件通知ではなく、雇用契約書または労働契約書を取り交わす場合もあるようですが、問題はないのでしょうか?この記事では、労働条件通知書と雇用契約書(労働契約書)の違いを確認し、労働条件通知…
詳しくみるストレス耐性とは?高い人・低い人の違いやチェック方法、高め方を解説!
ストレス耐性は個々人が持つストレスに対する抵抗性のことで、ストレス耐性が高い人もいれば低い人もいます。ストレス耐性を高めるために、個人や企業ができることがあります。 本記事では、ストレス耐性をチェックする方法やストレス耐性を高める方法、従業…
詳しくみる1年未満の育休期間を延長する方法は?給付金はもらえる?
育休期間を1年未満から延長するには、会社へ申請し、承認を得る必要があります。また、条件を満たせば、延長後も育休給付金も継続して受け取れます。 ただし、延長申請の手続きや給付金の支給状況には細かいルールがあるため、事前にしっかり確認することが…
詳しくみる労働者派遣法とは?改正の歴史や禁止事項、違反した場合の罰則などを解説!
労働者派遣法とは、派遣労働者を保護することなどを目的に定められた法律。 1986年の制定依頼、規制の緩和や強化など、当時の社会的背景に応じて改正が行われてきた。 守るべきルールも多く、違反すると罰則を受けるものもあるため、派遣事業を行う場合…
詳しくみる