- 更新日 : 2025年11月14日
有給の理由を聞かれる場合の対応は?私用じゃダメ?しつこく聞かれるのはパワハラかどうかも解説
有給休暇は労働者の正当な権利ですが、取得時に「なぜ休むのか?」と理由を聞かれた経験がある方も多いのではないでしょうか。実は、労働基準法では有給休暇の取得理由を会社に伝える義務は明確に定められておらず、従業員は「私用のため」とだけ伝えても問題ありません。しかし、会社側が理由を執拗に尋ねたり、納得できる理由でないと認めないといった対応をしたりすることは、法的にも問題がある可能性があります。
この記事では、有給休暇の取得に関する法律の基本を解説しながら、理由を聞かれたときの適切な対応方法や、嘘をつくリスクについても詳しく紹介します。さらに、有給の理由を強要されることがパワハラに該当するのか、どのような行為が違法になり得るのかについても触れています。有給休暇を適切に取得し、職場との関係を円滑に保つための知識を身につけましょう。
目次
有給の理由を伝える義務はない
労働基準法には、有給休暇の取得理由を会社に伝える義務についての規定はありません。そのため、従業員は有給の理由を説明する必要はなく、申請書に「私用のため」と記載するだけで問題ありません。
会社が有給休暇の取得理由を理由に申請を拒否することは、労働基準法違反にあたる可能性があります。有給休暇は労働者に与えられた正当な権利であり、その行使を制限することは許されません。また、会社側が理由を問い詰めることで、従業員のプライバシーを侵害するリスクもあります。
有給の理由を聞かれたらどうする?
とはいえ、実際には会社側が業務調整のためなどの理由で「なぜ休むのか」を尋ねてくることがあります。職場や業種によっては、担当している仕事の進捗や引き継ぎの段取りを把握しておきたいという面もあるでしょう。そうした場合、以下のように対応する考え方があります。
最小限の伝え方で乗り切る場合
理由を深く話したくないときは、極力シンプルな表現に留めるのがおすすめです。たとえば次のような回答であれば、プライベートな内容を守りながら休暇を取得できます。
- 私用のため
- 家庭の事情のため
- 所用を済ませる必要があるため
どの場合も、詳細を問いただされても「私用でして」と繰り返すだけで問題ありません。必要以上に事情を話さなくても、法的には何ら問題ないことを押さえておきましょう。
業務調整をスムーズに進めたい場合
仕事を休むことで同僚に業務の負担がかかる場合は、ある程度の事情を共有したほうがスムーズなケースもあります。たとえば次のように簡潔かつ具体的に伝えると、周囲の納得を得やすいです。
- 通院の予定があり、検査を受けるため
- 子どもの学校行事があるため
- 冠婚葬祭で出席しなければならないため
業務に支障が出そうな場合には、休みの前後で仕事の引き継ぎや調整をしっかり行っておけば、周りとの摩擦も減らせます。
有給の理由を聞くのは違法?
会社が有給休暇の理由を尋ねる行為自体は、違法とは言えません。会社としては、有給休暇を与える際に「時季変更権」という業務都合上の調整権限を行使できるものの、理由の妥当性を判断するためにあるわけではありません。しかし、会社が有給休暇の理由を執拗に尋ねたり、答えないと取得できないような圧力をかけたりすることは、労働環境の悪化につながります。従業員が権利を行使しにくい状況を作ることは望ましくなく、ハラスメントに該当する可能性もあります。
有給の理由をしつこく聞くのはパワハラ?
従業員が「私用のため」と答えているにもかかわらず、会社が執拗に理由を追及することは、パワーハラスメントと見なされる可能性があります。特に、上司が権力を利用して圧力をかける場合、従業員の精神的負担が増すことになります。
また、会社が有給休暇の取得理由によって申請を拒否することは、原則として違法です。例えば、「旅行に行く」といった理由を認めないのは、労働基準法に反する行為です。有給休暇は労働者が自由に利用できる権利であり、その利用目的を会社が制限することはできません。
有給の理由で嘘をつくとどうなる?
有給休暇の理由を聞かれたとき、つい本音を言いづらくて嘘をついてしまうケースもあるかもしれません。会社は有給休暇の理由を厳密に追及できないとしても、明らかに矛盾がある説明をされると不審に思うことがあります。
後から嘘が発覚した場合、上司や同僚からの信頼を失う可能性があります。また「なんとなく誤魔化されている」と周囲に感じさせると、余計な誤解やうわさが広がりやすくなり、結果的に自分も働きづらくなる可能性があります。
有給の権利は正しく行使しましょう
有給休暇の取得は労働者の当然の権利であり、原則として理由を会社に伝える義務はありません。「私用のため」や「家庭の事情」といった簡潔な説明だけで十分であり、詳細を伝える必要はないのです。それにもかかわらず、会社側が執拗に理由を追及したり、取得を制限したりすることは、労働基準法違反やパワハラに該当する可能性があります。
また、有給の理由で嘘をつくことは、法的な問題にはならない場合が多いものの、職場での信頼を損ねたり、人間関係に悪影響を及ぼすリスクがあります。そのため、どうしても伝えたくない場合は、シンプルな理由を伝えるか、業務への影響がないように調整をするのが望ましいでしょう。
有給休暇は、心身のリフレッシュや生活の充実のために不可欠なものです。職場の状況や上司との関係に配慮しつつ、適切に権利を行使し、働きやすい環境を整えていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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