- 更新日 : 2025年3月18日
所定休日とは?法定休日や有給との違い、割増賃金率について解説!
企業における休日には「所定休日」と「法定休日」の2種類が存在します。これらの休日は、出勤させた場合の取り扱いや割増賃金率が異なるため、人事・労務担当者はそれぞれに合った対応が必須です。
そこで本記事では、所定休日に出勤した場合の対応について解説します。
目次
法定休日と所定休日の違い
「法定休日」と「所定休日」について、それぞれの違いを紹介します。
法定休日とは労働基準法で定められた休日
法定休日は、労働基準法第35条で定められた休日です。使用者は、従業員に対して週に少なくとも1日の休日か、4週間に4日以上の休日を付与することが義務付けられています。法定休日を満たさない従業員がいた場合、使用者は労基法第119条により、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
所定休日とは主に土曜日に設定される法定休日以外の休日
所定休日は、法定休日以外に企業が独自に定めている休日です。労働基準法第35条では、最低週1回の休日を付与していれば基準を満たしていることになりますが、労働基準法第32条により労働時間の上限が決まっています。
使用者は従業員に対して1日8時間、週40時間を超えた労働をさせてはいけない決まりです。そのため、1日8時間で週5日働くと40時間労働となり、法定休日だけでは労働基準法に反するため、所定休日を別途設ける必要があります。法定休日も所定休日もカレンダーどおりに設定する義務はありませんが、日曜日を法定休日にし、土曜日を所定休日にする企業が一般的です。
所定休日に出勤したら残業扱いになる?
所定休日に出勤した場合は、所定労働の一部とみなされるため、残業扱いにはなりません。ただし、1日8時間もしくは週40時間の法定労働時間を超過している場合は、残業扱いになります。
たとえば月曜日から金曜日までの合計労働時間が30時間のみだった場合、所定休日に5時間働いたとしても、週の合計労働時間は35時間となり、法定労働時間内になるため残業扱いにはなりません。一方で、月曜日から金曜日までの合計労働時間が40時間以上だった場合、所定休日に働けばその分は40時間を超えているため、残業扱いになります。
法定休日の出勤は残業ではなく休日労働になる
法定休日に働いた場合は、何時間働いても残業扱いにはならず「休日労働」という扱いになります。たとえば、月曜日から金曜日まで働いた時間の合計が40時間以上だった場合に、法定休日に働いてもそれは残業ではなく、休日労働です。法定休日に8時間を超過して働いたとしても、超過分も含めて休日労働の割増賃金が支払われます。
法定休日や所定休日出勤した場合の賃金支払い
法定休日や所定休日出勤をすると、割増賃金が支払われます。それぞれの割増率が異なるため、具体例とともに支払い額の計算方法を確認しておきましょう。
法定休日に出勤した場合の割増率
法定休日に出勤した場合は、休日労働扱いとなり、35%の割増賃金率が適用されます。たとえば、1時間あたりの賃金が2,000円の従業員が、法定休日に6時間働いた場合に支払うべき金額は以下のとおりです。
また、法定休日で深夜帯に勤務した場合は、深夜の割増賃金率25%を合算した60%が割増賃金率となります。たとえば、法定休日の18時から24時まで6時間働いた場合、18時から22時までの4時間は35%、22時から24時までの2時間は60%の割増賃金率が適用されます。
深夜に働いたほうが支払う金額が高いです。これは、従業員の休日の保護はもとより、日勤よりも負担の大きい深夜労働に対する補償や、割増賃金の支払いによる時間外労働の抑制が背景に存在します。
所定休日に出勤した場合の割増率
所定休日に出勤した場合は、週40時間以内の労働では割増賃金の対象外となります。週40時間を超えたタイミングから残業扱いとなり、割増賃金率は25%です。出勤日が所定休日と法定休日では、人件費が大きく変わってくるため注意しましょう。
たとえば、週の合計労働時間が35時間の場合、所定休日に5時間出勤しても週40時間以内に収まるため、割増賃金率は適用されません。しかし、法定休日に5時間出勤すると、割増賃金率35%が適用されるため、賃金コストに与える影響は大きいです。従業員の休日を確保することが前提ですが、もし休日出勤が余儀なくされる場合は、人件費削減を考慮して所定休日に出勤してもらうなどの工夫をするといいでしょう。
法定休日と所定休日以外の休日|振替休日と代休の違い
以下では、法定休日と所定休日以外の2種類の休日について解説します。
振替休日とは
振替休日とは、本来定められている出勤日と休日を事前に入れ替えることによって設定された休日です。入れ替えているだけなので、休日出勤扱いにならない点がポイントです。また、振替休日を設定するのであれば、就業規則に休日を入れ替える可能性がある旨を記述する必要があります
代休とは
代休とは、休日出勤した後に、代わりの休日を付与することです。振替休日と代休は、休日を定めるタイミングに大きな違いがあり、代休の場合の出勤日(本来休日だった日)の労働は、休日労働として扱います。
先に述べたとおり、所定休日であれば所定労働時間を超えた分の時間に割増賃金率25%が適用され、法定休日であれば35%の割増賃金率が適用されます。代休を設定する場合は、就業規則に代休制度の詳細を明記しましょう。
所定休日と有給休暇の違い
休日と休暇の違いは以下のとおりです。
休日 | 労働基準法によって休むよう定められた日 |
---|---|
休暇 | 従業員の申請によって本来の労働日に休むことを許可された日 |
所定休日は労働基準法によって企業が定めている休息日であり、有給休暇は従業員の申請によって取得できる休息日という違いがあります。また、休暇には法律で義務付けられている法定休暇と、企業が独自に定めている法定外休暇(特別休暇)があります。法定外休暇は夏季休暇や、誕生日などに休めるアニバーサリー休暇などです。一方、法定休暇には育児休業や介護休業などがあり、有給休暇も含まれています。
有給休暇を消化するために、所定休日や法定休日にかぶせて取得することはできません。どうしても本来の労働日に有給休暇を取得するのが難しい従業員には、事前に業務調整を促したり、半日や時間単位の有給休暇制度の導入を検討したりするとよいでしょう。
所定休日を運用する際の4つのポイント
企業で所定休日を運用する際のポイントについて解説します。
休日の単位を暦日に揃える
所定休日や法定休日は、原則として暦日での付与が必要です。暦日とは、0時から24時までの24時間のことを指し、1日単位で休日を付与します。たとえば、所定休日に1時間でも出勤すれば、休日を与えられたことにはなりません。
また、朝9時から夜9時までの24時間は丸1日にはなるものの、0時からではないため、原則として休日とは認められません。ただし、旅館業のように24時間稼働する業種の場合は、条件を満たすことで暦日以外も休日と認める場合があります。
所定休日や法定休日に出勤させる場合は36協定の締結をする
法定休日に従業員を出勤させる場合は、36(さぶろく)協定の締結が必須です。労働基準法第36条に基づいた労使協定であるため、36協定と呼ばれています。
36協定を締結する際は、労働組合と使用者が協定を結ぶか「従業員の過半数の同意」のもと選出された代表者と使用者が協定を結ぶかの2パターンです。いずれにしても協定締結の際は「協定書」に業務内容や従事する人数などの必要事項を記載し、署名・押印を行います。
36協定なしで休日労働をさせた場合、使用者は違反したとみなされ、罰則の対象となるため注意しましょう。
パートや契約社員など雇用形態による所定休日出勤の取り扱いに注意する
企業が抱える従業員の中には、正社員だけでなく、パートや契約社員がいる場合もあるでしょう。パート・アルバイトは正社員と同様に休日出勤手当が支払われ、契約社員の場合は派遣元と36協定を締結する必要があります。また、年俸制であれば「年俸に休日出勤手当を含むか」を定め、フレックスタイム制であれば休日出勤を想定していないため、別途手当を支払う必要があります。
休日の規定を就業規則に記載する
使用者は、休日に関する事項を就業規則に記載し、従業員に明示する義務があります。たとえば、以下のような事項は就業規則を明示しておくことで、従業員とのトラブルを回避しやすくなるでしょう。
- 法定休日・所定休日の日程
- 休日出勤の有無
- 法定休日・所定休日の割増賃金率の違い
- 振替休日や代休の取り扱い
- 自社における所定休日の設定内容
従業員が休日について正しく理解できていないと、休日を取得する日程や給与に対して使用者との認識のずれが発生してしまいます。就業規則に記載するだけでなく、従業員が理解して正しく申請できるようにルールを規定・周知するといいでしょう。
所定休日の出勤に関するよくある質問
最後に、所定休日の出勤に関するよくある質問を3つ紹介します。
所定休日と法定外休日の違いは?
「所定休日」と「法定外休日」は同じ休日を指しています。呼び方が異なるだけで、どちらも法定休日以外に企業が独自に定めている休日です。「法定休日」と「法定外休日」は別物であり、法定休日は労働基準法により、最低週に1回与えるべきと定められている休日です。休日の違いについて混同しないように注意しましょう。
所定休日に出勤したら手当は発生する?
所定休日に出勤した場合、所定労働時間となる1日8時間、週40時間を超えた段階の労働に対して、25%の割増賃金率が適用されます。ただし、所定労働時間内の労働であれば、通常の労働とみなされ、手当は発生しません。
所定休日や法定休日の出勤は拒否できる?
従業員が休日出勤を頼まれた場合は、原則は拒否できません。会社からの業務命令を拒否することになり、場合によっては減給や懲戒処分の対象となるリスクがあります。ただし、体調不良や冠婚葬祭といった出勤できない正当な理由がある場合や、事前に休暇申請して許可を得ている場合は例外です。また、わざわざ休日に出勤する必要性がない場合も、拒否できる可能性があります。
所定休日や法定休日に出勤した場合の賃金を正しく算出できるようになろう
法定休日は法律で定められた休日であり、所定休日は週40時間を超えた労働にならないよう企業が独自に定めている休日です。所定休日に働くと週40時間を超えた分は残業扱いとなり、25%の賃金割増率が適用されます。一方、法定休日に働いた場合は休日出勤とみなされ、35%の割増賃金率が適用されます。
所定休日に出勤するのか、法定休日に出勤するのかによって計算方法が異なるため、休日の取り扱いについて理解し、正しく算出できるようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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