• 更新日 : 2025年3月6日

退職代行を使っても有給消化はできる?退職金・ボーナスや有給買取についても解説

退職代行サービスを利用すれば、残っている有給休暇をしっかり消化して退職することも可能です。とはいえ、状況によっては有給消化が難しいケースもあるため、不安に感じている方も多いでしょう。本記事では、退職代行を使って有給消化を行う方法を詳しく解説します。有給消化ができる場合と難しい場合の違いや、退職代行利用時の具体的な手続きの流れ、有給消化のメリット・注意点、さらに退職金やボーナスへの影響や有休の買取の可否、退職代行サービスの選び方のポイントまで、法的な観点や実例を交えてご紹介します。退職代行の利用を検討している方はぜひ参考にしてください。

退職代行を使っても有給消化はできる?

結論、退職代行を利用しても有給休暇の消化は可能です。有給休暇(有休)は労働者の正当な権利であり、退職時であっても残っている日数をすべて取得することが法律上認められています。会社は労働基準法により労働者の有給取得を拒否できず、退職前の有給消化も原則として可能です。

ただし、すべてのケースで必ず有給消化できるとは限らない点に注意が必要です。以下では、有給を消化できない場合の代表的なケースを説明します。

有給休暇の残日数がない場合

当然ながら、手元に残っている有給の残日数がゼロの場合は有給消化できません。また、有給休暇には取得期限もあるため、残日数があっても期限切れになった分は行使できません。事前に自分の有給残高と有効期限を確認しておきましょう。

退職日までに有給を使い切れない場合

有給の残日数が多く、退職予定日までに消化しきれないときもあります。例えば、退職日を転職先の入社日に合わせた結果、有給が余ってしまうケースです。このように退職日までに残有給を消化できない場合、その分の有給は原則として無効となってしまいます。対策としては、退職日を有給消化が終わる日まで延ばしたり、有休買取ができないか検討したりする必要があります。

退職代行業者に有給交渉の権限がない場合

退職代行サービスは、運営会社によって対応範囲に差があります。民間企業が運営する退職代行の場合、有給消化の交渉権限がなく、会社に有給取得を拒まれた際に対処できない場合があるため注意が必要です。労働組合や弁護士が運営する退職代行であれば、代理人として会社と交渉できますが、一般企業の代行サービスはあくまで「連絡代行」であり、有給取得の主張交渉までは法律上できません。そのため、会社側が違法に有給消化を渋るケースでは、交渉権のない業者だと有給を消化できない恐れがあります。

有給申請のタイミングが適切でない場合

有給休暇は基本的に事前申請が必要であり、過去の日付にさかのぼって申請することや、退職後に取得することはできません。退職代行を通じて有給消化の意思を伝える場合も、連絡を入れた日より前の欠勤日に有給を充当しようとすると会社に拒否される可能性があります。また、退職日を過ぎてしまえば有給の権利自体が消滅します。したがって、有給消化の意思表示は速やかに行い、退職日までの残期間で消化する必要があります。

以上のようなケースを除けば、退職代行を利用する場合も有給休暇を消化することは可能です。有給休暇は法律で守られた権利ですので、適切な手続きで残りの有給を取得しましょう。

退職代行を使って有給消化する流れ

退職代行を利用する際は、退職日までのスケジュールを自分でも把握しておくことが大切です。ここでは、退職代行を利用して有休消化する場合の一般的な手続きの流れについて説明します。

退職代行業者に相談・依頼する

まずは信頼できる退職代行サービスを選び、相談します。多くの業者は無料相談を受け付けているため、電話やメール、チャットなどで連絡を取りましょう。相談時には「退職希望日」や「有給休暇の残日数と消化希望」などを具体的に伝えます。有給を何日消化していつ退職したいかを明確に伝えることで、業者側も会社への連絡内容を正確に把握できます。また、会社から受け取りたい離職票、源泉徴収票などの書類や、返却すべき物品の有無も業者に伝えておくとスムーズです。依頼を正式に決めたら、所定の依頼料を支払い、契約を結びます。

退職代行業者が会社へ退職の意思を連絡する

依頼が完了すると、退職代行業者があなたに代わって会社に連絡を入れます。内容は「退職の意思」と「有給休暇消化の希望」です。通常、この連絡をもって最終出勤日とします。退職代行業者は会社に対し、即日で退職する旨と残有給を退職日まで充当する旨を伝達します。この段階から基本的にあなたが出社する必要はなくなり、会社との直接のやり取りも業者が代行します。会社から直接連絡しないよう求めてくれる業者も多く、精神的負担が一気に軽減されます。ただし、万一会社から本人宛に連絡が来た場合は、業者に報告して指示を仰ぎましょう。

有給休暇を消化する

退職代行連絡後、正式な退職日までの期間は有給休暇の消化期間となります。会社との契約上は在職中ですが、出勤する必要はありません。例えば、「2週間後に退職する」という連絡をして、有給が残り10日分ある場合、その10営業日分はすべて有給休暇となります。有給消化中は転職活動や副業を行うこともできますが、就業規則で在職中の副業禁止規定がある場合は注意が必要です。なお、有給消化中に退職代行業者経由で離職票や健康保険証の返送依頼の連絡がある可能性があります。退職代行業者からの連絡には随時確認してください。

退職日当日に手続きが完了する

有給消化後、退職日当日を迎えると正式に退職となります。退職代行業者が最終的な確認を行い、会社から退職後に必要な書類が郵送されてくる段取りになります。社員証、制服、パソコン、携帯電話など、会社から貸与されていた物がある場合は、退職日までに郵送等で返却します。退職代行サービスによっては、会社への返却物の送付も指示・代行してくれる場合がありますので、指示に従いましょう。退職月の給与や残業代の精算、退職金の支給、社保の切り替え等の手続きも順次行われます。事前に依頼していた書類が無事に受け取れたか確認し、退職代行業者とのやりとりがすべて完了すれば、一連の退職手続きは終了です。

退職代行を使って有給消化するメリット

退職代行を利用して有給休暇を消化すると、多くのメリットがあります。

退職手続き全般がスムーズに進む

退職代行業者は退職手続きのプロです。退職届の提出方法から会社への連絡タイミング、貸与品の返却や書類の受け取りまで、一連の流れを熟知しています。そのため、有給消化も含め退職に関する段取りが滞りなく運びます。自分では見落としがちな細かい手続きについてアドバイスをもらえることもあり、初めて退職する方でも安心です。結果的に、退職後のトラブルを未然に防ぎ、円満に退職しやすくなります。

精神的負担を軽減できる

退職意思の表明や有給消化の交渉を自分で行う必要がなく、会社とのやり取りはすべて代行業者が引き受けてくれます。上司に退職を言い出しにくい、人手不足で有給を取りづらいといった状況でも、直接対峙せずに手続きが進むため安心です。嫌がらせや引き止めにも合いにくく、ストレスなく退職準備ができます。

即日出社不要になる

有給休暇を活用することで、即日出社不要になります。例えば、残り2週間分の有給休暇があれば、退職の意思を伝えた翌日から出社不要となり、そのまま有給消化で契約上の在職期間を満了すればよいわけです。仕事から解放される時間を確保できるため、心身のリフレッシュや転職活動、各種手続きに専念できます。

有給休暇を無駄なく消化できる

自分で退職を切り出すと、有給消化の話題を出しづらかったり、会社から「有給消化は困る」と圧力をかけられたりする場合があります。しかし、退職代行を利用すれば、法律に則った有給消化の権利を主張してもらえるため、自身の有給をきちんと使い切って退職することが可能です。有給を消化せずに退職すると、本来もらえたはずの給与相当額を捨てることになってしまいます。有給消化により金銭的な損失を防ぎ、働いた対価をきちんと得られるのは大きなメリットです。

トラブル時も専門家が対処してくれる

労働組合や弁護士が運営する退職代行サービスであれば、会社が有給消化を渋ったり違法な圧力をかけてきたりした場合でも、専門家が法律に基づいて対抗してくれます。自分一人では対処が難しい労務トラブルも、プロに任せることで安心して退職手続きを進められます。万一会社が退職金の支払いを渋る、離職票を出し渋るといった事態になっても、弁護士等が介入できる体制なら適切に対応してもらえるでしょう。

退職代行を使って有給消化するときの注意点

便利な退職代行サービスですが、利用にあたって注意すべきポイントもあります。トラブルを避け、スムーズに有給消化退職を成功させるために、以下の点に気を付けましょう。

有給日数と就業規則を事前に確認する

いざ有給を消化しようとして「有給が残っていなかった」「すでに時効消滅していた」ということがないよう、事前に有給残日数を確認しておきましょう。給与明細や勤怠システムで有給の残りがわかる場合があります。不明な場合は、退職代行業者を通じて会社に確認してもらうことも可能です。また、会社の就業規則に有給休暇の取得手続きや期限がどう定められているかも知っておくと安心です。稀に「有給取得は◯日前までに申請」などの規定がある場合もあります。こうした社内規定を把握しておけば、会社側と言い分が食い違った際も冷静に対処できます。

有給日数に合わせて退職日を設定する

有給休暇の残日数と退職日希望日との兼ね合いをしっかり計算しましょう。法律上は退職の意思表示から2週間で退職できますが、有給がその期間を超えて残っている場合、すべて消化できるように退職日を延ばす必要があります。例えば、有給が20日残っているのに「明日から出社せず2週間後に退職する」と決めてしまうと、6日分の有給が未消化で残ってしまいます。逆に、有給が少ないのに退職日を先延ばしにすると、残りの期間は無給で過ごすことになりかねません。退職代行業者と相談し、自分の有給日数に合わせた退職日を設定することが大切です。

有休消化の交渉が可能な退職代行業者や弁護士を選ぶ

前述の通り、退職代行サービスは運営会社によって対応範囲に差があります。確実に有給休暇を消化したいなら、労働組合や弁護士が運営する退職代行サービスを選ぶことが重要です。労働組合に加入していれば、比較的安価に交渉代行が可能で、弁護士が運営している場合は、万が一裁判沙汰になっても対応できます。反対に、交渉権のない業者に依頼してしまうと会社から有給取得を拒否された際に打つ手がなくなる恐れがあります。有給取得の交渉も可能など明記されたサービスかどうか、事前によく確認しましょう。

会社から直接連絡があっても冷静に対応する

退職代行業者は「本人や家族へ直接連絡しないでほしい」と会社に伝えてくれますが、それでも連絡してくる会社もゼロではありません。上司や同僚が心配して個人的に電話してくるケースや、親族に連絡するケースも報告されています。万が一、会社から直接連絡が来ても慌てず、基本的には対応しないか「退職代行に一任しています」と伝えるようにしましょう。事前に業者から「連絡が来たら教えてください」と指示があるはずなので、その通りに対応します。また、自宅に押しかけてくるような悪質なケースは稀ですが、万が一に備えて家族にも「会社から連絡があるかもしれない」と共有しておくと良いでしょう。多くの場合、退職代行業者が介入していると伝えれば会社も無理な連絡は控えるため、過度に心配する必要はありません。

正式に退職日を迎えるまでは就業規則を守る

退職代行を利用する前提とはいえ、正式に退職日を迎えるまでは一応在職中です。守秘義務や競業避止義務、副業禁止規定などは契約上まだ有効である点に注意しましょう。具体的には、有給消化中に競合他社で働き始めたり、会社の機密情報を持ち出したりすると、就業規則違反として問題視される可能性があります。有給消化期間中に転職先で勤務開始すること自体は本人の自由ですが、就業規則の内容によってはトラブルになる可能性があることを覚えておきましょう。

退職代行を使って有休消化しても退職金は受け取れる?

結論から言えば、退職代行を使った場合でも、支給条件を満たしていれば退職金を受け取れます。退職金は、会社の就業規則や社内制度で定められた福利厚生であり、勤続年数や退職理由に応じて支給されるものです。法律上必ず支給しなければならないものではありませんが、制度として定められている企業では、勤続◯年以上などの条件を満たしていれば受け取る権利があります。退職代行を利用したからといって退職金が減額されたり、無効になったりすることはありません。会社としても、退職代行の利用を理由に退職金を不支給とすることはできません。

なお、退職金が支給されるタイミングは会社によって異なります。退職月の給与と一緒に支払う会社もあれば、退職から数ヶ月後に振り込む会社もあります。退職代行の利用後、退職金の入金まで若干時間がかかる場合がありますが、心配な場合は退職代行業者を通じて人事に確認してもらうとよいでしょう。

退職代行を使って有休消化してもボーナスは受け取れる?

ボーナスに関しては、退職のタイミングによって受け取れない可能性があります。大前提として、退職代行を使ったこと自体は賞与支給の可否に直接影響しません。しかし、多くの会社では賞与について「支給日在籍要件」というルールを設けています。これは「賞与支給日に在籍している社員にだけボーナスを支給する」という社内規定で、就業規則等に定められています。

したがって、確実にボーナスを受け取ってから退職したい場合は、賞与の支給日より後に退職日を設定する必要があります。例えば、賞与支給日が6月30日の会社であれば、退職日は7月1日以降にするのが安心です。退職代行への依頼をする際も、賞与を受け取ってから退職したい旨を伝え、支給日を過ぎてから会社に退職連絡を入れてもらう方が確実でしょう。ボーナス支給前に退職の意思を伝えると、会社によっては賞与額を減額されたり支給対象から外されたりするリスクもあります。実際には不当な減額は法律違反の可能性が高いですが、トラブルを避けるためにも賞与支給前は退職の話を出さないほうが無難です。

退職代行を使って有休買取はできる?

有休買取とは、消化しきれなかった有給休暇を会社に買い取ってもらい、金銭に換えることです。退職時に有給が残っている場合、「全部消化できなかった分はお金で補填してほしい」と考える方もいるでしょう。結論から言うと、法律上、有給休暇の買取は原則として認められていません。労働基準法では「有給休暇は労働者が休息を取るための権利であり、金銭との交換は原則禁止」という考え方があるためです。

したがって、実際に退職代行を利用して退職する場合に有給買取が行われる可能性は低いのが現状です。多くの会社は労働者が希望すれば有給消化自体は認めますが、わざわざお金を払って買い取ることには消極的です。特に退職代行を通じて退職する場合、会社との交渉関係がドライになりがちですので、「残り有給を買い取ってください」と申し出ても応じてもらえるケースは非常に稀でしょう。

退職代行で有給消化できるよう準備を徹底しよう!

退職代行を利用して有給休暇を消化しながら退職することは、適切に準備すれば十分可能です。有給休暇は労働者の権利であり、退職時にも残日数をすべて取得することが法律で認められています。重要なのは、信頼できる退職代行業者を選び、残有給日数に合わせた退職スケジュールを立てることです。退職金やボーナスについても、会社の規定やタイミングを押さえておけば、退職代行利用が不利益になることはありません。本記事で解説したポイントを踏まえて準備を進めれば、退職代行サービスを利用した円滑な退職と有給消化が実現できるはずです。退職を検討中の方は、自分の権利を守りつつベストな方法で新たな一歩を踏み出してください。


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