- 更新日 : 2025年6月23日
ボーナス(賞与)の前に退職したらもらえない?退職を伝えるタイミングと3つの注意点
基本的にボーナスの支給は、支給日に企業や職場に在籍していることが条件です。そのため、支給日前に退職したらもらえない場合がほとんどです。
実際に、大きな業績を上げて職場に貢献したにもかかわらず、退職の意思を伝えた途端、ボーナスが減額されるどころか一切受け取れなかった事例もあります。
ボーナスが支給される前に退職する旨を伝えた場合、支給されるケースと、減額または支給されないケースについて解説します。
目次
法律・就業規則におけるボーナス(賞与)の取り決め
従業員の賃金については、おもに労働基準法で細かく定められています。しかし、ボーナス(賞与)の支給に関しては法律上の義務とされているわけではなく、制度を設けるか否かは会社の自由です。ただし就業規則に明記されている場合は、就業規則に沿ってボーナスが支払われます。
法律や就業規則におけるボーナスが支給される決まりについて解説します。
法律ではボーナスについての決まりがない
ボーナス(賞与)の支給については、法律上での取り決めがありません。そのため、制度を設けていない企業や職場は従業員に対してボーナスを支給する義務はないとされています。
労働基準法では、ボーナスは賃金の一部として扱われるものの、支給するかどうかは企業や職場の自由とされています。法律における取り決めがないため、企業や職場は、ボーナスを支給するか否か、またボーナスの金額や支給対象者を独自に決められます。
ただし、企業や職場の就業規則や労働契約書に、ボーナスの支給について明記されている場合は、必ず規則に沿って支払われます。
実際に、多くの企業や職場で支払われているボーナスの平均金額や金額を決める方法などについて、以下の記事で詳しく解説しているため、あわせてお読みください。
就業規則で定められているボーナスの決まり
企業や職場によっては、就業規則にボーナスの支給に関する内容が明記されていることがあるでしょう。
ボーナスの支給は法律で義務付けられているわけではないため、企業や職場ごとに支給の有無や金額、支給基準を決められます。
ボーナスの支給について取り決める際は、おもに以下を定めましょう。
- 支給の有無について
就業規則のなかに「賞与を支給する場合がある」といった曖昧な表記のみの場合、企業や職場は支給の有無を自由に決められます。そのため、ボーナスが支給されないこともあります。 - 支給額の決定について
多くの場合、企業は業績や従業員への評価にもとづいてボーナスの支給額を決定します。客観的な基準や計算式が用いられたり、裁量的に支給額が決められたりします。 - 支給タイミングについて
ボーナスの支給日は通常、年に2回(夏季と冬季)支給されるケースが多く、企業や職場によっては四半期ごとに支給するところもあります。 - 対象者
基本的には支給日に在籍している従業員が対象となり、退職予定の社員は対象外とされる場合があります。
ボーナスを受け取ってから退職したい場合、退職するタイミングの見極め方や、就業規則の見方について以下の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
ボーナス支給前に退職を伝えると減額される?
ボーナスが支給される前に退職を伝えると、ボーナスが一切もらえなくなるのではないかと心配な人もいるでしょう。
ボーナスの支給においては、基本的には就業規則に沿って金額が決定されたり支払われたりします。ボーナスが支給される前に退職を伝えた場合の、ボーナスの支払いの有無について解説します。
ボーナス支給日に職場に在籍している場合
ボーナス支給日にまだ職場に在籍しており、かつボーナスが支給される前に退職を伝えた場合、ボーナス支給の有無は以下のとおりです。
- ボーナスが受け取れるケース
就業規則に明記された「賞与の支給日在籍要件」に該当している場合 - ボーナスが受け取れない、または減額される可能性があるケース
就業規則に賞与や「賞与の支給日在籍要件」についてとくに明記されていない場合
上記はあくまで可能性であり、基本的には職場の就業規則に準じます。ただし、有給休暇の取得を理由としてボーナスを不支給とすることは許されません。
ボーナス支給日に職場に在籍していない場合
ボーナス支給日に職場に在籍しておらず、かつボーナスが支給される前に退職を伝えた場合、ボーナス支給の有無は以下のとおりです。
- ボーナスが受け取れるケース
就業規則に明記されている「賞与の支給日在籍要件」に該当している場合 - ボーナスが受け取れない、または減額される可能性があるケース
就業規則に明記されている「賞与の支給日在籍要件」に該当していない場合
一般的にボーナスが支給されるのは、ボーナス支給日に企業や職場に在籍している従業員が対象です。就業規則に具体的な明記がない場合は、ボーナス支給前に退職を伝えることで、受け取れないまたは減額される可能性があります。
ボーナスの算定期間や、休業・休暇がボーナスに与える影響など、ボーナスの支給における細かい取り決めについて以下の記事で解説しています。あわせてお読みください。
ボーナスを満額もらう退職のベストタイミング
ボーナスを満額受け取ってから円満退職したい場合は、ボーナスが自身の口座に振り込まれたことを確認してから退職を伝えましょう。
企業や職場の就業規則にボーナスの支給に関する具体的な記載がない場合、ボーナスの算定期間や金額決定後であっても、振り込み時に減額または支給がストップになる可能性があります。
ボーナスが振り込まれたことを確認するまでは、退職する意思を企業や職場に伝えないよう注意が必要です。
ボーナスの支給にともない、賞与支給通知書を受け取ることがあります。賞与支給通知書に記載される内容について以下の記事で解説しているため、あわせてお読みください。
ボーナス支給日前に退職する際の注意点
転職活動に専念したり現在の職場に不満があったりする場合、できるだけ早く退職したいと思うでしょう。ボーナス支給日前に退職する場合、よくある質問や注意点について解説します。
1. 退職後にボーナスが請求できる場合がある
退職後にボーナスを請求できる場合があり、おもに以下が該当します。
- 就業規則の「賞与の支給日在籍要件」に該当している
- 会社都合による退職
就業規則に明記されている、ボーナスが支給されるための条件に該当していれば、退職後でも請求できる場合があります。自己都合による退職であればボーナスが不支給の場合もありますが、会社都合での退職であれば退職後でもボーナスが受け取れる可能性があります。
退職後におけるボーナス請求の可否は、就業規則の内容と退職理由により大きく左右されるのです。
2. ボーナスの支給日在籍要件に該当してももらえないことがある
就業規定に明記された「ボーナスの支給日在籍要項」に該当しているにもかかわらず、場合によってはボーナスが減額されたり受け取れなかったりします。
下記の場合は、ボーナスが減額されたり支給されなかったりする可能性があります。
- ボーナス支給日前に退職する意思を伝えた場合
- 職場が業績不振の場合
- 懲戒解雇の場合
ボーナスの支給においては法的な取り決めがあるわけではないため、支給の有無においては企業や職場が自由に決められます。就業規則に記載された「ボーナスの支給日在籍要件」に該当しても、退職する意思を聞いた時点で取り消される可能性があります。
ボーナスを満額もらって円満退職するには?
最も理想的な退職は、ボーナスを満額受け取ってから円満退職することです。ボーナスを満額受け取るには、退職を申し出るタイミングが重要で、かつ後任の従業員や周囲の同僚へ感謝と配慮の気持ちが大切です。
ボーナスを満額受け取り、円満退職する方法を紹介します。
引継ぎ・退職スケジュールを立てる
ボーナスの支給日を基準に退職日を決め、逆換算しながら業務の引継ぎスケジュールを立てましょう。スケジュールを立てる際は、以下の手順がおすすめです。
- 引継ぐ業務をリストアップする
- 引継ぎを完了させたい日を決める
- スケジュールを作成する
- 業務マニュアルを作成および整備する
引継ぎスケジュールは余裕をもって組んでおき、職場に対して、感謝の気持ちと後任に対して迷惑をかけないよう心がけます。
遅くともボーナス支給日が過ぎるまでは、職場で退職する意思があることや退職予定があることは決して漏らさないよう注意が必要です。
ボーナス受給後から翌月後くらいに退職する意思を伝える
ボーナス受給後すぐに退職の意思を伝えると、職場の人との間にやや角が立ったり配慮に欠けると思われたりする場合があります。
そのため緊急を要さない場合は、できるだけボーナス受給後から1〜2ヶ月後くらいに退職を申し出ましょう。
退職を申し出る際は、上司や人事担当者へ口頭で伝えます。大切な話なので、あらかじめ上司や人事担当者に時間を確保してもらい、人目に付かない会議室で伝えましょう。
ボーナス支給後に退職した場合、返還義務はある?
退職の時期によっては、すでに受け取ったボーナスを会社に返還しなければならないのかと不安に感じる方もいます。退職後のトラブルを防ぐためにも、返還義務が発生するケースとそうでないケースの違いを正しく理解しておきましょう。
就業規則や賞与規定を確認しよう
原則として、賞与はすでに支給された時点で従業員の所得と見なされるため、あとから会社が返還を求めることはできません。これは、労働基準法が「賠償予定の禁止」を定めているためです。ただし、例外として、会社の就業規則や賞与規定に「一定期間在籍することを条件に支給する」旨が明記されている場合、その条件を満たさなければ一部または全額の返還を求められる可能性があります。
こうした規定が有効であると認められるには、社員に対して事前に内容が明示され、かつ合理性のある内容であることが前提とされます。
退職を考えている場合には、自社の就業規則や賞与規定を確認しておくことが大切です。
「支給済み」と「確定前」の違いに注意する
賞与の返還義務に関連してよくある誤解が、「賞与がすでに振り込まれていれば返す必要はない」という考え方です。しかし、賞与支給が“仮払”とされている場合や、「支給はするが、退職者は対象外」と規定されている場合、たとえ手元に入金された後でも、返還対象となることがあります。
また、業績連動型の賞与制度や、期末賞与のように評価期間や会社業績に応じた支給となっている場合には、「支給後に退職することで対象外になる」といったケースも存在します。このような事例では、法的な争いになることも少なくありません。
返還を求められた場合の対応方法
万が一、会社から賞与の返還を求められた場合には、まず支給時の条件や、社内規定の記載を冷静に確認することが大切です。不当と思われる請求については、弁護士や労働基準監督署などの専門機関に相談することも選択肢となります。賞与の返還が法的に有効とされるかどうかは、就業規則や労働契約、支給時の通知内容など、複数の要素が総合的に判断されます。
ボーナスを受け取る前に退職したほうがいい場合
就職しながらの転職活動は大変です。緊急を要さない場合は、ボーナス・退職金・失業手当を受け取り、資金にある程度の余裕をもった状態で、じっくり転職活動を続けることをおすすめします。
ただし業務や職場のストレスから、心身ともに疲弊している場合や、そもそも受け取れるボーナスの金額が低い場合は、早期に退職した場合がよいでしょう。
ボーナスを受け取る前に、早期に退職すべきパターンを解説します。
心身ともに大きなストレスを抱えている
職場でのストレスが慢性的であれば、退職が遅ければ遅いほど体調不良や精神的な疾患を引き起こすリスクが高まります。
ボーナスの支給を待つことで一時的な経済的利益が得られるかもしれませんが、心理的および身体的健康が損なわれるリスクも考慮すべきです。とくに、過度の長時間労働やハラスメントによって精神的に疲弊している場合、ボーナスの支給を待たず、即退職して自身の身を守るべきです。
退職後でもボーナスが受け取れることがわかっている
通常であれば、ボーナスを受け取るには支給日に企業や職場に在籍していることが条件です。
ただし、就業規則によっては退職後も受け取れる決まりになっている場合があります。退職後も確実に受け取れることがわかっている場合は、早期に退職して受け取ったほうが、時間の節約につながりお得です。また、ボーナス支給日を考慮せず引継ぎや退職スケジュールが決められます。
受け取れるボーナスの金額が低い
時間は有限なので、転職したい職場や挑戦したい業種があるならば、できるだけ早めに退職したほうが得です。
ボーナス支給日前であっても、受け取れる可能性が低かったり受け取れる金額が少なかったりする場合は、ボーナスの支給日を考慮せず、引継ぎや退職スケジュールを立てましょう。
ただし、少額とはいえボーナスの支給は従業員にとって大変ありがたい制度です。受け取らないよりは受け取ったほうが、経済的に助かる場面もあるでしょう。そのため、心身ともに健康で、かつ急いで転職しなければならない状況でない場合は、極力受け取ってからの退職がおすすめです。
定年退職や会社都合退職の場合、ボーナスはどうなる?
定年退職や解雇、希望退職などによって会社を離れる場合、ボーナスが支給されるかどうかについて不安に思う方は少なくありません。退職理由が本人の意思ではないケースでは賞与の支給条件がどのように扱われるのか見ていきましょう。
支給対象かどうかは「在籍日」による
賞与が支給されるかどうかは、多くの企業において「支給日に在籍していること」を条件としていることがあります。この場合、たとえ評価期間中にしっかりと働いていたとしても、支給日までに退職していると賞与は支給されません。
一方で、「支給対象期間に在籍していたかどうか」に重点を置く企業もあります。このような場合は、退職日が支給日より前であっても、対象期間内に労務を提供していた事実があれば、支給されるケースもあります。定年退職や会社都合退職に際しては、どちらの取り扱いがなされるのか、自社の規程を確認する必要があります。
定年退職者の場合
定年退職の場合には、通常の賞与とは別に、功労金や退職記念としての特別賞与が支給されるケースもあります。これは法的な義務ではなく、会社の任意による支給ですが、長年の勤務に対する感謝の意を込めた制度として多くの企業で導入されています。
また、賞与の規定上は支給日までの在籍が条件となっていても、定年退職など円満な退職である場合には、慣例的に支給する企業もあります。そのため、制度として明文化されていなくても、過去の実績を踏まえて人事部に確認することが有効です。
会社都合退職の場合
会社都合による退職、たとえば整理解雇や早期退職制度などの場合でも、賞与の支給対象となる可能性があります。希望退職制度では、退職に応じてもらう見返りとして、通常の賞与に加え、特別加算金を設けている企業もあります。
一方で、解雇通知と賞与支給時期が近接していると、評価期間中の労務提供に対して適切な支給がされないことが争点となることもあります。
退職理由が本人の意思によるかどうかに関係なく、賞与の支給はあくまで企業の規程と運用によって決まるものであることを踏まえ、退職前に条件を整理しておくことが望ましいといえます。
退職の意思を伝えるならボーナスを満額受け取ってから
ボーナス受給前に退職の意思を伝えることで、ボーナスが減額されたり受け取れなかったりする可能性があります。そのため、できるだけボーナスが振り込まれたあとに退職の意思を伝えたほうがよいでしょう。
ただし、心身ともにストレスを抱えていたり新しいチャンスに恵まれたりした際は、ボーナスの受け取りをあきらめて、即退職の意思を伝えるべきです。
周囲の目や意見よりも、自身の気持ちを最優先に行動しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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