• 更新日 : 2025年3月5日

労働基準法で定められた休憩時間の与え方は?9つのパターン別に解説

業務内容が特殊な場合、休憩時間の与え方について迷う人も多いでしょう。

休憩時間の与え方については労働基準法で細かく定められており、違反した場合の罰則も設けられています。

労働基準法における休憩時間、分割で与える場合や残業が発生した場合など、9つのパターン別に、休憩時間の与え方について解説します。

労働基準法における休憩時間の与え方

労働基準法34条では、従業員に与えるべき休憩時間に関する基本的なルールが定められています。具体的には、労働時間の長さに応じて下記の最低限の休憩時間を与えることが義務づけられています。

  • 労働時間が6時間を超える場合、最低45分の休憩を与えなければならない
  • 労働時間が8時間を超える場合、最低1時間の休憩を与えなければならない

正社員だけでなくアルバイトやパートなど、雇用形態に関係なくすべての従業員に上記の休憩時間を与えなければなりません。

労働時間が6時間ぴったりの場合や5時間勤務など、さまざまなパターンにおける休憩時間について、以下の記事で解説しています。あわせてお読みください。

労働基準法における休憩の3原則とは?

休憩時間は、従業員が業務から完全に離れてリフレッシュするための時間です。労働基準法では、休憩時間を与える必要性の有無だけではなく、与え方や考え方についても定められています。休憩時間における3つの原則について説明します。

原則1. 労働時間の途中に与えること

休憩時間は、労働時間の途中に与えなければなりません。労働者が業務から離れる時間として、有効にリフレッシュできるよう、労働の合間に配置することが求められます。

そのため、始業前や終業後のタイミングで休憩時間を設けることは許可されておらず、必ず労働時間内に休憩を取らせる必要があるのです。

労働時間の途中に休憩時間を設けることを「途中付与の原則」と呼びます。

原則2. 一斉に与えること

同一の職場で働くすべての労働者に、原則として一斉に休憩を与えなければならないとされています。労働者が互いに気兼ねなく休憩を取り、適切にリフレッシュできるよう「一斉付与の原則」が定められました。

具体的には、同じ業務を行うすべての従業員が同時に休憩を取ることにより、業務の円滑な運営が確保されるとともに、安全面での配慮も行われています。

ただし一部の業種や業務内容については、従業員が一斉に休憩を取ることでサービスの提供が滞る場合があるため、除外されています。

原則3. 労働者の自由にさせること

労働者は与えられた休憩時間を自由に利用する権利があり「自由利用の原則」といいます。

休憩時間中は、労働者が自らの選択で休息やリフレッシュを行うことが保障されていなければなりません。さらに、休憩時間と手待時間の混同に注意が必要です。

手待時間とは、従業員が業務に従事していないが、使用者の指示があればすぐに仕事をはじめる準備ができている時間を指します。手待時間は、労働者が完全に作業から解放されているわけではなく、即座に指揮命令に従える状態で待機しているため、労働時間としてカウントされます。

一方で休憩時間は、労働者が自由に利用できる時間であり、通常は業務から完全に離れてリラックスできる時間です。労働者は休憩時間に社外へ出たり、自分の好きなことをしたりすることが可能で、休憩時間中は労働者が業務に従事する義務はありません。

そのため、休憩を取りながらの来客対応や電話対応は休憩とは認められず、手待時間にあたります。従業員には別途、休憩時間の付与が必要です。

従業員に与える休憩時間の3原則について、以下の記事でも詳しく解説しているため、あわせてお読みください。

休憩の適用から外れる職種とは?

休憩時間の与え方や使い方については、労働基準法で定められています。しかし利用客の便宜という観点から、労働時間及び休憩の特例として、適用しなくてもよい業種があります。

労働基準法第40条において定められている、労働時間及び休憩の特例にあたる業種は以下のとおりです。

一斉休憩が適用されない
  • 運送業
  • 商業
  • 金融・保険業
  • 映画・演劇業
  • 郵便・電気通信業
  • 保健衛生業
  • 接客娯楽業
  • 官公署の事業
休憩時間を与えなくてよい
  • 法41条該当者
  • 高度プロフェッショナル制度の対象労働者
  • 運送・郵便事業の下記に該当する従業員

- 長距離(6時間を超える乗務のもの)乗務員

- 従事する業務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合において、その勤務中における停車時間、折返しによる待合せ時間その他の時間の合計が労働基準法34条1項に規定する休憩時間に相当する場合

- 屋内勤務者30人未満の郵便局において郵便等の業務に従事する者

休憩時間自由利用が適用されない
  • 警察官
  • 消防吏員、常勤の消防団員
  • 准救急隊員
  • 児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
  • 乳児院、児童養護施設及び障害児入所施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者(ただし、この場合は労働基準監督署長の許可が要件)

- 児童福祉法第6条の3第11項に規定する居宅訪問型保育事業に使用される労働者のうち、家庭的保育者として保育を行う者(同一の居宅において、一の児童に対して複数の家庭的保育者が同時に保育を行う場合を除く。)

上記の業種においては、あくまでほかの業種とは異なる方法で休憩を取ることを意味しています。「休憩時間を与えなくてよい」とはいえ、出勤から退勤まで一切休まずに労働するわけではありません。たとえば長距離トラックの運転手には、4時間以内の運転につき30分の休憩を取るよう改善基準告示に示されています。

休憩についてよくある9つの質問

休憩時間の与え方や休憩時間の内容については、労働基準法で細かく取り決めがなされています。しかし業務内容や業務形態によっては、取り決めに当てはめることが難しかったり、判断に迷ったりする場面もあるでしょう。9つのパターン別に、休憩の取り方についてQ&A形式で解説します。

Q1. 休憩中に電話対応や来客対応を依頼しているが問題ない?

A1. いいえ。

日本の労働基準法では、休憩時間は労働者が労働から完全に解放されるべき時間と定義されています。

このため、休憩中に電話や来客の対応を要求することは原則として法律違反にあたります。具体的には、休憩時間中に業務を行っている時間は手待時間であり「労働時間」とみなされ、労働者は与えられた休憩を享受していないことになるのです。

したがって、従業員に休憩中の作業を強制する場合、職場はさらに休憩時間を別途設ける必要があります。

休憩時間が取れない場合の対処法や、職場が実施すべき対応について、以下の記事で詳しく解説しているためあわせてお読みください。

Q2. 8時間労働で30分ずつ分割で休憩時間を与えているが問題ない?

A2. はい。

労働時間が6時間を超え8時間以内の場合、最低45分の休憩が必要です。30分ずつの分割休憩でも問題はありません。

ただし、分割する際に休憩時間が極端に短い場合は従業員が労働から十分に解放されず、休憩時間と認められないことがあるため注意が必要です。

以下の記事で、15分間の分割休憩の場合は違法ではないのか、分割休憩についてパターン別に解説しているためあわせてお読みください。

Q3. 8時間労働で1時間の仮眠時間を与えているが問題ない?

A3. いいえ。

仮眠時間については、法律による明確な決まりがありません。しかし、仮眠が使用者の指揮命令下にある場合、労働時間に含まれる可能性があります。

6時間を超え8時間以内の労働の場合は45分以上の休憩が必要です。したがって、仮眠時間とは別に45分以上の休憩時間の付与が必要です。

Q4. タバコ休憩が多い場合はその分休憩時間を減らしてもよい?

A4. はい。

タバコ休憩の頻度が多い場合、従業員に対する休憩時間の調整は問題ないと考えられます。

労働基準法では、労働時間における休憩時間の長さや回数について明確な決まりがある一方で、タバコ休憩に対する取扱いについては明記されていません。

ただし、業務時間中の喫煙が休憩として扱われるかどうかは、使用者の指示下にあったかどうか、業務に支障をきたしているかにより左右されます。

もしタバコ休憩の回数が多く業務に悪影響を与えている場合、休憩時間を制限することは問題ありません。

Q5. 残業の場合は残業時間に対する休憩は与えなくてもよい?

A5. はい。

残業時間を含め、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分以上、労働時間が8時間を超えた場合には、少なくとも1時間の休憩が必要です。

すでに1時間の休憩を与えている場合、残業により労働時間が8時間を超えても、再度の休憩を与える必要はありません。

また残業をしたうえで労働時間が6時間未満の場合は休憩を与える必要はなく、6時間を1分でも超えた場合には45分以上の休憩が必要です。

Q6. パートやアルバイトに対しては休憩時間を与えなくてもよい?

A6. いいえ。

パート・アルバイトであっても、労働基準法で定められた以下の休憩時間が適用されます。

  • 労働時間が6時間を超える場合、最低45分の休憩を与えなければならない
  • 労働時間が8時間を超える場合、最低1時間の休憩を与えなければならない

雇用形態にかかわらず、労働時間及び休憩の特例に該当しないすべての従業員に、上記の休憩時間を付与しなければなりません。

Q7. 従業員から休憩時間は不要といわれたので与えなくてもよい?

A7. いいえ。

従業員から不要と伝えられた場合であっても、休憩時間は労働基準法に沿って適切に与えなければなりません。

ただし、労働時間が6時間を超えない場合は、休憩時間を与えなくても問題ありません。6時間を1分でも超えた場合、たとえ従業員が休憩を不要だと主張しても、休憩時間を与える必要があります。

Q8. 休憩時間を最後に設定して早く帰宅させることはできる?

A8. いいえ。

労働基準法第34条により、休憩時間は労働時間の「途中」に与えなければならないとされています。

したがって8時間労働の場合、勤務時間内の最後の1時間を休憩時間に設定して早く帰宅させることは違法にあたります。休憩は労働時間の中で適切に配置されるべきであり、始業直後や終業直前に設けることは認められません。

Q9. 夜勤の従業員に休憩時間をどれだけ与えればよい?

A9. 夜勤の従業員に対しても、通常通り以下の休憩時間が適用されます。

  • 労働時間が6時間を超える場合、最低45分の休憩を与えなければならない
  • 労働時間が8時間を超える場合、最低1時間の休憩を与えなければならない

とくに夜間勤務の場合は体内時計が乱れやすく、適切に休憩を取ることが重要です。夜勤が長時間におよぶ場合、休憩のタイミングについて、仮眠を含めた計画を立てることが推奨されています。

夜勤の従業員に対する仮眠時間の設定や、仮眠時間の設け方について、以下の記事で詳しく解説しています。仮眠時間が労働時間に含まれるかどうかもわかるため、あわせてお読みください。

手待時間を休憩時間に含めないよう注意が必要

労働基準法では、労働時間が6時間を超えて8時間以下なら45分以上、8時間を超える労働には1時間以上の休憩時間を与えるよう定められています。

また休憩時間の与え方においても、休憩中は電話対応や来客対応などの業務を与えてはならないとされています。休憩時間と手待時間を混同させないよう注意が必要です。

休憩時間は従業員にとって、労働から離れてリフレッシュするための時間なので、適切に与えて働きやすい職場環境の維持を心がけることが大切です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事