- 更新日 : 2025年3月5日
新卒で雇用保険被保険者証は受け取れる?発行条件や必要なタイミングを解説
新卒の入社手続きで「雇用保険被保険者証」という言葉を初めて聞く方も多いでしょう。雇用保険の加入を証明する大切な書類の1つで、転職時や教育給付金の申請手続きを行う際に、提出を求められます。
本記事では、雇用保険被保険者証の概要や加入条件について解説します。また、新卒で雇用保険被保険者証を持っていない方に向けて、取得方法も解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
雇用保険被保険者証とは?
雇用保険被保険者証とは、雇用保険に加入していることを証明する書類です。一般的に、事業主を通じてハローワークから交付されます。
発行された際に付与される「雇用保険被保険者番号」は、一度取得すると退職後も引き継がれるため、転職先での雇用保険加入手続き時に必要です。
加入条件や記載内容について、次項で解説していきます。
以下の記事で、雇用保険被保険者証について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
雇用保険の加入条件
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入している従業員に対してのみ発行されます。加入条件は、下記のとおりです。
- 週に20時間以上働いている
- 31日以上継続して雇用される見込みがある
条件を満たせば、正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員でも加入可能です。
また、雇用主は、該当する労働者を適切に雇用保険に加入させる義務があります。加入させなかった場合は、雇用保険法違反となります。
企業に対して罰則が科される可能性もあるため、注意しましょう。
雇用保険に一定期間加入すると、失業時の給付や教育訓練給付金などのサポートを受けられる場合があります。これらの支援制度を利用するためにも、雇用保険に加入しておくことが大切です。
参考:
厚生労働省|雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!
厚生労働省|人を雇うときのルール
雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)
雇用保険被保険者証の記載内容
雇用保険被保険者証には、下記の情報が記載されています。
- 雇用保険被保険者番号
- 資格取得日
- 従業員の氏名
- 生年月日
- 事業所名
これらの情報は、雇用保険の加入状況を証明するために必要です。発行場所によって記載内容が異なる場合もあるため、受け取った際に確認しておきましょう。
また、雇用保険被保険者証の左側には、ミシン目で区分された「雇用保険被保険者資格等確認通知書」がつながっています。雇用保険被保険者番号は、勤務先が変更したり氏名が変わったりした場合も引き継がれるため、紛失しないように注意しましょう。
健康保険証・離職票との違い
雇用保険被保険者証は、ほかの保険証類と混同されやすい傾向があります。とくに、健康保険証と離職票は名前が似ているため、違いを理解しておくことが大切です。
それぞれの違いは、下表のとおりです。
項目 | 健康保険被保険者証 | 雇用保険被保険者証 | 離職票 |
---|---|---|---|
特徴 | 健康保険の加入証明 | 雇用保険の加入証明 | 退職を証明するもの |
取得方法 | 企業の健康保険加入時に発行 | 雇用保険の加入時に発行 | 退職後にハローワークから発行 |
必要なタイミング | 病院・薬局での診察時 | 転職時、雇用保険の給付申請時 | 失業給付申請時 |
健康保険証の正式名称は「健康保険被保険者証」で、健康保険に加入していることを証明するものです。
業務外や通勤外で負傷・疾病になった場合は、健康保険証の提示によって、原則として医療費の自己負担が3割になります。なお、2024年12月2日に現行の健康保険証は廃止され、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に移行しています。
このように、雇用保険と健康保険はいずれも国の社会保険制度ではありますが、目的と内容が異なるため注意しましょう。
また、正式名称が「雇用保険被保険者離職票」である離職票は、雇用保険に加入していた方が退職したことを証明する書類です。失業保険(基本手当)を受給するために、必要とされます。
事業主がハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を提出すると、ハローワークから発行される仕組みです。離職票は、退職後に事業主を通じて受け取る方法が一般的です。
2025年1月20日から、希望者にはマイナポータルを通じて送付される仕組みも整備されるので、失業給付を受ける予定がある方は、必ず受け取りましょう。
このように、雇用保険被保険者証・健康保険証・離職票は、それぞれ役割が異なります。そのため、用途に応じて適切に管理することが大切です。
参考:
全国健康保険協会|健康保険証(被保険者証)
厚生労働省|離職票をマイナポータルで受け取れるようになります!
厚生労働省|国民向けマイナンバーカードの利用案内サイト
離職証明書について、以下の記事でも解説していますので、参考にしてください。
新卒の入社手続きに雇用保険被保険者証は必要?
新卒で雇用保険被保険者証を持っている方は少ないですが、入社時に必要となるタイミングがあります。以下で詳しく解説しますので、発行のタイミングや受け取り方法を事前に確認しておきましょう。
新卒の方は雇用保険被保険者証を持っていない場合が多い
新卒の多くは、雇用保険被保険者証を持っていません。理由は、これまでに雇用保険が適用される仕事に就いたことがないためです。
雇用保険は、一定の条件(週20時間以上の勤務かつ31日以上の雇用見込み)を満たす場合に、加入義務が発生します。そのため、短時間のアルバイトやインターンでは加入していないケースが大半です。
また、下記の条件に該当する場合も、雇用保険被保険者証は発行されません。
- 雇用保険の加入条件を満たしていない
- 会社役員など、雇用保険の被保険者ではない
- 学生(昼間は通学しており、学業時間外に働いている場合)
- 前職が公務員である
- 雇用保険法が適用されない職種に従事している(していた)
新卒入社時に、雇用保険被保険者証の提出を求められても持っていない場合は、企業側が手続きを進めて発行してくれます。
雇用保険被保険者証をもらえるタイミング
新卒の場合、雇用保険被保険者証は入社後に雇用保険へ加入したタイミングで発行され、通常は会社から従業員に渡されます。
しかし、入社からしばらく経っても雇用保険被保険者証を受け取れていない場合は、以下の理由が考えられます。
- 会社側で管理されている:退職時まで会社で保管するケースがある
- 会社側の手続きが遅れている:入社時の手続きが完了していない可能性がある
- 会社側が渡し忘れている:事務手続きの遅れやミスにより未交付の可能性がある
- 雇用保険に加入していない:労働時間や雇用契約が雇用保険の対象外となっている
入社後2ヶ月以上経過しても配布されていない方は、会社の担当部署に確認しましょう。
アルバイトやパート経験がある方は確認が必要
学生時代にアルバイトやパートの経験がある方は、雇用保険被保険者番号がすでに付与されている可能性があります。週20時間以上の労働を31日以上続けた経験がある場合、過去に雇用保険へ加入していた可能性が高いため、入社時に会社へ申告しましょう。
通常は、昼間学生である方は雇用保険に加入できません。しかし、下記に該当する場合は被保険者となる可能性があります。
- 卒業見込証明書を有し、卒業後も同じ事業所で勤務を継続する予定の方
- 休学中の学生(事実を証明する文書が必要)
- 夜間学部・定時制課程・通信制課程の学生
- 企業の承認を受け、雇用関係を維持したまま大学院等に在学する方
- 一定の出席日数が要件とならない学校に在学し、一般の労働者と同等に勤務できると認められている方(事実を証明する文書が必要)
すでに雇用保険被保険者証を持っている場合は、就職先の会社へ提出する必要があります。証書が見つからなくても、被保険者番号が付与されていれば手続きをスムーズに進められるため、事前に確認しましょう。
新卒で雇用保険被保険者番号を確認する方法
過去にアルバイトやパートで雇用保険に加入していた可能性があるものの、雇用保険被保険者番号がわからない場合は、下記の方法で確認可能です。
- 前に働いていた職場に確認する
以前の勤務先で雇用保険に加入していた場合は、雇用保険被保険者証を再発行してもらえる可能性がある - ハローワークに照会してもらう
離職票や雇用保険被保険者証が手元になくても、ハローワークで被保険者番号を照会できます。氏名・生年月日・前職の正式な会社名を伝えることで、調査してもらえます。あわせて、運転免許証やマイナンバーカード等の本人確認書類を窓口に持参しましょう。
被保険者番号が不明でもハローワークで確認できるので、入社手続きの際に雇用保険加入歴があるか確認しておくと安心です。
新卒で雇用保険被保険者証を受け取る方法
新卒で入社した際、雇用保険に加入すると「雇用保険被保険者証」が発行されますが、会社によっては手元に届かないケースもあります。
ここでは、雇用保険被保険者証の受け取り方法について解説します。
以下の記事でも、雇用保険被保険者証をもらっていないときの対処法を解説していますので、参考にしてください。
1. 会社に確認する
入社から2ヶ月以上経過しても、雇用保険被保険者証が手元に届かない場合は会社に確認しましょう。確認すべきポイントは、下記のとおりです。
- 雇用保険の加入手続き:手続きが完了しているかを確認する
- 交付予定時期:会社側で管理している場合、いつ渡されるのかを確認する
- 雇用保険被保険者証の取り扱い:会社が退職時まで保管するケースがあるため、保管方法を確認する
担当部署(総務や人事)へ問い合わせることで、手続きを進めてもらえます。
2. 紛失していた場合は再発行する
会社が雇用保険被保険者証を紛失していた、または会社から受け取ったあとに紛失した場合は、ハローワークで再発行手続きを行う必要があります。
具体的には、ハローワークに「雇用保険被保険者証再交付申請書」を提出すれば、再発行してもらえます。申請には被保険者番号の記載が必要ですが、ハローワークではデータベースで確認できるため、窓口に相談するとスムーズです。
居住地の管轄ハローワークに限らず、全国どのハローワークに行っても、再発行の手続きが可能です。手続きには、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類が必要なため、事前に用意しておきましょう。
また、ハローワークの窓口に行かなくても、郵送で再発行の申請が可能です。ただし、郵送の場合は発行までに2週間ほどかかるため、すぐに必要な場合は窓口での申請をおすすめします。
雇用保険被保険者証が必要になるタイミング
雇用保険被保険者証は、転職時や雇用保険の給付を受ける際に必要な書類です。ここでは、雇用保険被保険者証が必要になるタイミングについて解説します。
必要なときに慌てないように、どのような場面で求められるのかを把握しておきましょう。
従業員の場合
雇用保険被保険者証がもっとも必要とされるのは、転職時です。転職先で新たに雇用保険へ加入する際に、これまでの雇用保険の加入履歴を引き継ぐ目的で、雇用保険被保険者証の提出を求められます。
雇用保険は、一度加入すると「雇用保険被保険者番号」が付与され、転職をしても変わりません。
転職時に新しい職場で雇用保険の手続きを行う際に、被保険者証を提出することでスムーズに加入手続きを進められるでしょう。
事業者の場合
事業者にとっても、雇用保険被保険者証は必要な書類のひとつです。新たに労働者を雇い入れる際、雇用保険の加入手続きを行う必要があります。
新卒社員を雇用する場合は、雇用保険被保険者証がはじめて発行されるケースが多い傾向があります。そのため、ハローワークで「雇用保険被保険者資格取得届」を提出し、適切な手続きを進めましょう。
一方、転職者を採用する際は、従業員が前の勤務先から受け取った雇用保険被保険者証を提出すれば、スムーズに雇用保険の加入手続きを行えます。
また、雇用保険を利用した給付制度を申請する際にも、雇用保険被保険者証が必要です。たとえば、教育訓練給付金制度を活用する際は、雇用保険に一定期間加入している証明に、被保険者証の提出が必要です。
教育訓練給付金は、職業能力の向上を目的とした制度で、条件を満たせば、国から一定の費用が補助されます。
なお、労働者が複数の会社で働いているケースでは、それぞれの会社で雇用保険の加入条件を満たしている可能性があります。該当する労働者は「主たる賃金を得ている会社でのみ加入する必要がある」ため、注意しましょう。
雇用保険の加入に必要な手続き
雇用保険の適用を受けるためには、事業主が行う手続きについて、解説します。
1. 従業員をはじめて雇い入れる場合
事業所ではじめて雇用保険の適用対象となる従業員を雇う場合は、労働保険の成立手続きを行う必要があります。
労働保険とは「労災保険」と「雇用保険」を総称したものです。事業主は労働者を1人でも雇ったら、適用事業として労働保険に加入しなければなりません。
労災保険・雇用保険の特徴は、下記のとおりです。
- 労災保険:労働者が業務上の負傷や疾病に対する補償を行う制度
- 雇用保険:失業時の給付や再就職支援を目的とした制度
事業主は、まず 「労働保険関係成立届」 を所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。これにより、労働保険の適用を受けられます。
次に、雇用保険に該当する従業員を雇ったら「雇用保険適用事業所設置届」 を管轄のハローワークに提出しましょう。事業所が雇用保険適用事業所であることを届け出ます。
労働基準監督署やハローワークに必要書類を提出し、従業員の雇用保険加入手続きを進めることで、企業としての責務を果たせるでしょう。
2. 新たに従業員を雇い入れる場合
新たに労働者を雇い入れる場合も、その都度、事業所を管轄するハローワークへ「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する必要があります。ハローワークから交付された「雇用保険被保険者証」は、事業主から従業員に渡しましょう。
新卒の従業員については、雇用保険に加入するのがはじめてのケースが多いため、適切に手続きを進めることが重要です。雇用保険被保険者資格取得届の提出によって、はじめて雇用保険被保険者証が発行されます。
また、雇用保険適用下での勤務から7年以上経っていない中途社員は、雇用保険の被保険者番号を引き継ぐ必要があります。雇用保険被保険者証を受け取ったら、雇用保険被保険者資格取得届の「2. 被保険者番号」に記入しましょう。
もし従業員が証書を紛失している場合でも、前職の企業名をハローワークに伝えれば、過去の雇用履歴を照会して手続きを行えます。新規採用者と転職者では、手続きの進め方が異なるため、それぞれの状況にあわせて対応しましょう。
従業員の雇用手続きについては、以下の記事で詳しく解説しているため、あわせて参考にしてください。
3. 従業員が離職した場合
従業員が退職する場合も、事業主はハローワークへ適切な手続きを行う必要があります。具体的には、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」の提出が求められます。
雇用保険被保険者資格喪失届は、退職者が雇用保険の資格を喪失したことを証明するための書類です。一方で離職証明書は、退職理由や勤続年数を記載するもので、離職者が失業保険(基本手当)を受給する際に必要です。
なお、離職証明書に記載される理由が、事業主と離職者の間で食い違う場合は、ハローワークが事実関係の調査を行います。調査したうえで、最終的な離職理由を判定する流れです。
このため、事業主は離職証明書を作成する際に、正確な情報を記載する必要があります。
以下の記事では、退職する従業員の社会保険手続きについて解説していますので、あわせてご覧ください。
雇用保険被保険者証について理解し、スムーズに入社準備をしよう
新卒の場合、入社時点で雇用保険被保険者証を持っていない方が大半です。雇用保険に加入することで、雇用保険被保険者証が発行されます。
しかし、受け取るタイミングは会社によって異なるため、注意が必要です。万が一受け取れていない場合は、会社へ確認するか、必要に応じてハローワークで再発行手続きを行いましょう。
また、学生時代に雇用保険の適用を受けるアルバイトをしていた方は、すでに雇用保険被保険者番号が付与されている可能性があります。自分の雇用保険への加入状況を確認し、必要な手続きを適切に行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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