- 更新日 : 2025年3月5日
テレワークにおける在宅勤務の問題点・課題とは?対策も紹介
テレワークの普及により、多くの企業が在宅勤務を導入しました。
しかし、「コミュニケーションが不足しがち」「業務の進捗が見えにくい」「セキュリティリスクが高まる」など、現状では新たな課題も浮き彫りになっています。
在宅勤務で生じる問題を解決し、業務を円滑に進めるためには、適切な対策が必要です。
本記事では、テレワークの課題を克服する5つのポイントを詳しく解説します。
在宅勤務に向いている業務の分類方法、業務フローの標準化、効率化ツールの活用、人事評価制度の見直し、セキュリティ対策など、企業がすぐに実践できる施策を紹介します。
テレワーク環境をより快適で生産的なものにするために、ぜひ参考にしてください。
目次
テレワークにおける現在の在宅勤務の導入状況
テレワークの導入は企業規模や業界によって大きく異なります。とくにIT業界や大手企業では導入が進んでいる一方で、中小企業では依然として課題が残っていることでしょう。
テレワーク導入の背景には以下の要因があります。
- コロナ禍による急速な導入
- コスト削減と生産性向上
- ワークライフバランスの改善
2020年の感染拡大を受け、多くの企業がテレワークを導入しました。また、オフィス費用の削減や通勤時間の削減による生産性向上が期待され、現在でも多くの企業がテレワークを導入しています。
結果として、とくに育児や介護を抱える社員にとってメリットが大きく、従業員の満足度向上にもつながりました。
今後は、中小企業でもクラウドツールやフレキシブルな勤務制度の導入が鍵となり、適応できるかが競争力の分かれ目となるでしょう。
テレワーク導入後の企業の問題点
テレワークの導入により企業の業務効率や柔軟性が向上した一方で、新たな課題も生じています。
とくにコミュニケーション不足やマネジメントの困難さ、セキュリティ対策の難しさが大きな問題として挙げられるでしょう。
コミュニケーション不足になりやすい
テレワークではオンライン会議やチャットツールが普及しましたが、雑談などのカジュアルなコミュニケーションが減少する傾向にあります。
コミュニケーション不足により、チームの連携が取りにくくなると、以下のような問題が発生します。
- 意思決定のスピード低下:対面での即時相談が難しく、メールやチャットでのやり取りが増加し、意思決定が遅れる
- 業務の属人化:メンバー間の情報共有が減り、特定の人しか対応できない業務が増える
- 相互理解の不足:文章中心のコミュニケーションでは、感情やニュアンスが伝わりにくく、誤解が生じやすくなる
仮想オフィスツールの活用や定期的な1on1ミーティングを導入することで、コミュニケーションの機会を意図的に増やすことが主な対策になるでしょう。
マネジメントが難しい
テレワーク環境では進捗管理が困難になり、タスクの遅延や認識のズレが発生しやすくなります。
主なマネジメントの課題は以下の通りです。
課題カテゴリ | 課題内容 | 詳細 | 影響 |
---|---|---|---|
業務管理 | 業務の見える化が不十分 | 進捗状況がリアルタイムで把握しにくく、上司と部下の間で認識のズレが生じる |
|
評価制度 | 適切な評価が難しい | 成果物だけでなく、業務プロセスや取り組み姿勢も評価する必要があるが、直接把握できないため判断しにくい |
|
モチベーション管理 | 部下のモチベーション管理が難しい | 直接の声掛けができないため、メンタル面のサポートが不足しがち |
|
対策として、タスク管理ツールを活用し業務の透明性を高めるとともに、目標設定を明確にし、評価基準を細かく定めることが求められます。
セキュリティ対策が難しい
テレワークでは、個人端末の利用やフリーWi-Fiの使用によるリスクが増大し、情報漏洩の懸念が高まっています。
主なリスクは以下の通りです。
- 個人端末のセキュリティが不十分:業務用PCと異なり、セキュリティソフトの更新が適切に行われていない場合がある
- フリーWi-Fi経由のアクセス:カフェやコワーキングスペースのWi-Fiを利用することで、第三者による不正アクセスのリスクが発生しやすい
- 社員のセキュリティ意識のバラつき:パスワード管理の甘さや、不適切なデータの持ち出しが発生しやすい
VPNの利用を義務化し、ゼロトラストセキュリティの導入や社員向けのセキュリティ研修を定期的に実施することが不可欠です。
適切な評価が難しい
テレワークでは、仕事の実感が湧きにくいことや評価基準が不明確になりやすいことが課題です。従業員は自身の貢献度が見えにくくなり、モチベーション低下につながる可能性も少なくありません。
対面でのフィードバックが少なく、成果を認識しにくいため、仕事をしている実感が湧かない従業員もいるでしょう。また、目に見える結果だけが評価されやすく、長期的なスキル向上や業務改善が軽視される傾向があるため、短期成果に偏ってしまう場合も考えられます。
そのため、KPI(重要業績評価指標)やOKR(目標と成果指標)を導入し、プロセスを評価する仕組みを整えることで、公平な評価を実現できるでしょう。
業務効率が低下しやすい
作業環境や周囲の影響が業務効率に悪影響を与えることがあります。とくに、自宅の設備や生活環境によって生産性が大きく左右されるため、注意が必要です。
業務効率が低下する要因は以下が挙げられます。
問題 | 内容 | 詳細 |
---|---|---|
作業環境 | 作業環境の不備 | 通信環境の不安定さや作業スペースの狭さにより、業務がスムーズに進まない |
集中力 | 生活音による集中力の低下 | 同居家族の会話や近隣の騒音が気になり、集中しにくい |
メリハリ | メリハリの欠如 | 仕事とプライベートの境界が曖昧になり、ダラダラと作業してしまう |
企業側がリモートワーク手当を支給し、適切な作業環境を整える支援を行うほか、ノイズキャンセリング機器の活用や時間管理ツールの導入が有効です。
在宅勤務の課題を克服する5つのポイント
テレワークの利便性を最大限活かすためには、在宅勤務の課題を適切に克服することが重要です。とくに業務の選別やマニュアル整備、コミュニケーション強化、評価基準の明確化、作業環境の最適化が重要となります。
在宅勤務に向いている業務にわける
すべての業務を在宅勤務に適用するのではなく、リモートに適した業務とオフィスで行うべき業務を適切に分類することが重要です。
とくに密なコミュニケーションが必要な業務と個人で完結できる業務を明確にわけることで、生産性の向上が期待できます。
【在宅勤務に適した業務】
- データ入力・ライティング:個人作業が中心でオンラインでのやり取りが容易
- プログラミング・システム開発:タスクベースで進行し成果物で評価可能
- カスタマーサポート(メール・チャット対応):電話やビデオ会議を活用すればリモートでも対応可能
【オフィス勤務が望ましい業務】
- 機密情報を扱う業務:セキュリティリスクが高いため、社内ネットワークでの作業が必須
- 対面対応が必要な業務(営業・接客など):顧客との直接的なやり取りが必要
企業は、業務の性質を考慮し、ハイブリッドな働き方を導入することで、効率的なテレワーク環境を構築できます。
業務をわけて、在宅にすべきかどうか判断しておきましょう。
マニュアルを整備する
テレワーク環境では業務フローが不明確になりやすく、属人化のリスクが高まるため、標準化されたマニュアルの整備が不可欠です。
マニュアルが整っていれば、新入社員や異動者もスムーズに業務を開始できるため、企業全体の業務効率が向上するでしょう。
【マニュアルを整備するメリット】
- 業務の属人化を防ぐ:誰でも同じ手順で業務を遂行でき、特定の担当者がいなくても仕事が回る
- 教育・引き継ぎがスムーズに:新入社員や異動者がすぐに業務を把握できる
- 業務品質の均一化:作業手順が統一され、ミスの防止や業務の効率化につながる
【具体的なマニュアル整備の流れ】
- 動画や図解を活用し、わかりやすいマニュアルを作成する
- クラウド上に保存し、全社員がいつでもアクセスできるようにする
- 定期的にアップデートし、業務の変化に対応する
マニュアルの整備によって、在宅勤務の課題を減らし、よりスムーズな業務遂行が可能になります。
セキュリティ性の高い通信回線を導入する
在宅勤務では、社内ネットワークではなく個人のインターネット環境を使用するため、セキュリティリスクが高まる点が大きな課題です。
とくに、一般的なWi-Fi回線では不正アクセスや情報漏洩のリスクが発生しやすく、安全な通信環境の整備が不可欠です。
【主なセキュリティリスク】
- 不正アクセス:パブリックWi-Fiを使用すると、通信を傍受される可能性がある
- データの漏洩:自宅のWi-Fiルーターが適切に設定されていない場合、外部からの侵入が容易になる
- マルウェア感染:不正なウェブサイトや添付ファイルを開くことで、企業データが危険にさらされる
対策として、以下の導入を検討してみてください。
- VPN(仮想プライベートネットワーク)の利用で、通信の暗号化を徹底
- ゼロトラストセキュリティの導入で、不正アクセスを防止
- 企業専用回線の提供により、安全なネットワーク環境を整備
安全な通信環境の確保により、情報漏洩リスクを最小限に抑えられるでしょう。
人事評価制度を見なおす
在宅勤務では、勤務態度や業務プロセスが見えにくく、従来の評価制度が機能しにくい問題が発生します。
成果ベースの評価になりがちですが、成果以外のプロセスや定性的な観点での適切な評価が難しくなります。
そのため、いくつかの評価方法を軸に人事評価を行うのがよいでしょう。
導入すべき評価制度の例は以下の通りです。
- OKR(目標と成果指標):チーム・個人の目標を数値化し、達成度を明確化
- 360度評価:上司だけでなく同僚や部下からのフィードバックも反映
- 行動評価の導入:成果だけでなく、業務プロセスやチーム貢献度も評価
適切な評価制度を整えることで、従業員のモチベーションを維持し、公平な評価につながります。
業務効率化ツールを導入する
在宅勤務では、対面でのやり取りが減るため、業務効率を高めるツールの導入が重要です。
業務の種類ごとに適したツールを活用することで、コミュニケーション不足やタスク管理の問題を解決できます。
業務別の主な効率化ツールは以下の通りです。
ツールカテゴリ | 代表的なツール | 用途・特徴 |
---|---|---|
コミュニケーションツール | Slack、Microsoft Teams | チャットやビデオ通話でのリアルタイムコミュニケーション |
タスク管理ツール | Trello、Asana、Notion、Googleカレンダー | タスクの整理や進捗管理、チームでの共有 |
ドキュメント共有ツール | Google Drive、Dropbox | ファイルをクラウド上で保存・共有、共同編集 |
時間管理ツール | Toggl、RescueTime | 作業時間の記録や分析 |
業務効率化ツールの導入により、スムーズな業務進行と生産性向上が期待できます。徐々にツールを導入し、業務効率化を進めていきましょう。
テレワーク導入で成功した企業事例
テレワークの導入に成功した企業の事例を紹介します。各社は独自の取り組みを通じて、柔軟な働き方を実現しています。
株式会社ベネッセホールディングス
株式会社ベネッセホールディングスは、2017年から在宅勤務を導入し、コロナ禍を機に本格運用へと移行しました。
結果として、業務効率の向上や従業員のワークライフバランス改善を実現しています。
具体的には以下を実践しました。
- 出社率の適正化:2020年以降、出社率5割以下を目標に、業務内容に応じたハイブリッドワークを導入
- 社内ツールの活用:独自の勤怠管理システムを開発し、業務の可視化と円滑なコミュニケーションを実現
- 業務のデジタル化:紙資料を削減し、クラウドストレージを活用することで情報共有を効率化
企業がテレワークを成功させるには、適切な出社と在宅勤務のバランスを取りつつ、デジタルツールを活用することが重要です。
株式会社キャスター
株式会社キャスターは、創業時から全社員がフルリモートワークを実践し、テレワークの成功を収めています。
独自の取り組みにより、優秀な人材の確保と業務効率の向上を実現しています。
実践した項目は以下の通りです。
- フルリモートワークの導入:全社員が場所にとらわれない働き方を実践し、全国から多様な人材を採用
- オンラインアシスタントサービスの提供:自社サービス「CASTER BIZ」を活用し、業務効率化を推進
- コミュニケーションツールの活用:チャットやビデオ会議を積極的に利用し、情報共有を円滑化
リモートワークにより、地理的制約を超えて優秀な人材を採用することに成功しました。
また、オンラインツールの活用で、業務プロセスの効率化を実現し、オフィス維持費用の削減にもつながりました。
企業がテレワークを成功させるには、業務内容に応じた適切なツールの導入と、社員間のコミュニケーション強化が重要と言えるでしょう。
カルビー株式会社
カルビー株式会社は、テレワークの導入により、従業員のワークライフバランス向上と業務効率化を実現しました。
同社の取り組みにより、社員の満足度向上と生産性の向上を達成しています。
- 在宅勤務の日数制限撤廃:従業員は在宅勤務の日数制限がなく、毎日でもリモート勤務が可能となり、柔軟な働き方を実現
- 多様な勤務場所の選択:自宅以外にもカフェやシェアオフィスなど、多様な場所での勤務を許可し、従業員のニーズに応じた働き方を推進
- フリーアドレス制の導入:オフィス内で固定席を持たないフリーアドレス制を導入しコミュニケーションの活性化とオフィススペースの有効活用に成功
在宅勤務の導入により、育児期間中の従業員が子どもの送り迎えをしやすくなるなど、ワークライフバランスの向上が見られました。
また、通勤時間の削減により、業務に充てる時間が増加し、生産性の向上にもつながりました。
企業がテレワークを成功させるためには、従業員の働き方に柔軟性を持たせ、適切な制度や環境を整備することが重要です。
従業員の意見を取り入れ、継続的に制度を改善していく姿勢が求められます。
テレワークにおける在宅勤務の課題克服にはツールを導入しよう
在宅勤務の課題として、コミュニケーション不足や業務効率の低下が挙げられます。
課題を解決するためには、適切なツールの導入が効果的です。
たとえば、チャットツールやオンライン会議システムを活用することで、円滑なコミュニケーションが可能になります。
また、タスク管理ツールやドキュメント共有ツールを導入することで、業務の進捗管理や情報共有がスムーズになります。
業務効率化ツールやコミュニケーションツールを導入して、テレワークの生産性向上につなげましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
お見舞いの手紙例文や書き方、ビジネスで使えるテンプレート付き
お見舞いの手紙を送る機会は、ビジネス・プライベートを問わず多くあります。書き方や文例を解説するので、ぜひ参考にしてください。また、無料でダウンロードできるテンプレートや、一筆箋で気軽に心のこもったメッセージを添える方法も紹介します。 お見舞…
詳しくみる在籍証明書とは?証明書が必要なケースやテンプレートを紹介!
在籍証明書とは、対象従業員が会社に在籍していることを証明する書面のことです。会社に発行の義務が課せられているわけではありませんが、クレジットカードや住宅ローンを始めとする各種借入、賃貸物件の入居契約などで提出が求められるため、従業員の求めに…
詳しくみるサードプレイスとは?場所はどこがよい?意味や定義も解説
サードプレイスとは、家庭や職場とは異なる「第三の場所」という意味です。日々のストレスから解消され、自分らしく過ごせる場として、家庭や職場以外でリラックスができる居場所が必要だという考え方もあって注目されています。 ここでは、サードプレイスの…
詳しくみるコミュニケーション能力とは?4つの構成要素や高い人の特徴、鍛える方法を解説!
コミュニケーション能力とは相手と円滑に意思疎通をし、情報や感情を効果的に伝えるスキルのことです。言語・非言語をうまく使いながら相手の立場を理解し共感を得ることで、信頼関係を築くための重要な手段となります。本記事ではコミュニケーション能力が高…
詳しくみるZ世代とは?どんな世代?年齢や特徴、働き方、育成方法
Z世代とは1990年代から2010年代前半に生まれた世代を指します。自分の価値観・考え方を大切にするという特徴から、物事の理由をきちんと伝えてモチベーションの維持・アップを図ると、仕事で十分な能力発揮が期待できます。安心感があり、多様な働き…
詳しくみるゼネラリストとは?スペシャリストとの違いや育成方法について解説
ゼネラリストとは幅広い知識を持ち、さまざまなことに対応できる能力を持つ人を指します。専門分野を持つスペシャリストが一点集中型とされるのに対し、ゼネラリストはオールラウンド型です。多角的な判断力があり、さまざまな業務をカバーできる、臨機応変さ…
詳しくみる