- 更新日 : 2025年2月21日
半休を取っても残業代はもらえない?残業代の取り扱いや計算方法、注意点を解説
半休時の残業代を取り扱う際は法定時間を超えていないかなど、明確なルールを就業規則に定めておく必要があります。
本記事では、半休取得時の残業代の取り扱いや計算方法、注意点について解説します。半休についての理解を深めて、より働きやすい職場環境をつくりましょう。
目次
半休取得時の残業代の取り扱い
半休を取得した日の残業代は、勤務した時間が法定内の労働時間であるかがポイントです。取扱方法を確認し、適切な賃金を従業員に支給しましょう。
- 法定内時間であれば残業代の割増はなし
- 時間外労働の分は割増賃金で支払う
法定内時間であれば残業代の割増はなし
残業時間と半休取得日の勤務時間が法定内時間であれば、残業代は通常の賃金額で支給します。法定内時間は1日8時間・1週間40時間と規定されており、超えていなければ賃金の割増はありません。
たとえば、勤務時間が8〜17時の会社に勤める人が4時間の半休を取得し、13時から8時間を働いたとしましょう。仮に退勤時間が21時であっても、勤務時間は法で定められた1日8時間の範囲内となります。そのため、残業代は通常の賃金額と同じです。
ただし、出勤から退勤までが法定時間内でも、勤務した時間帯が22時〜翌朝5時までにおよぶ場合は深夜割増が適用されます。深夜割増は通常賃金額の1.25倍です。退勤時間に着目すると賃金計算をしやすいでしょう。
時間外労働の分は割増賃金で支払う
法定内時間を超えて残業した場合は、割増賃金を支払います。1日に8時間を超えて勤務した場合は、超えた時間の分の賃金を1.25倍に割増します。
たとえば、勤務時間が8〜17時の会社に勤める人が4時間の半休を取得し、13時から働いたとしましょう。21時までであれば前述のように残業代は通常の賃金額です。
しかし、21時を超えて働いていた場合、以降の賃金は「時間外業務手当」として通常の1.25倍となります。22時を超えると深夜割増も適用されるため、22時以降も働いていた場合の賃金は通常の1.5倍となるのです。
法定内時間を超えて勤務している場合は、最終的な勤務時間と働いた時間帯の両方に着目すると計算しやすくなります。
半休はどのように取り扱う?
半休を午前・午後で区切るか、勤務時間を半分に区切る場合が一般的です。半休の取り扱いについて、以下の2点に絞って解説します。
- 有給休暇との違い
- 休憩時間の扱い
有給休暇との違い
半休は会社が独自に決められる休暇です。運用する際は、就業規則で半休についての規定が必要となります。
一方、有給休暇は労働基準法第39条により定められている休暇制度です。年10日以上の有給が付与される従業員に対しては、必ず年5日は取得させなければなりません。1日単位での取得が認められており、時間単位での取得は認められていないためです。
しかし、半休を一般的に「時間休の有給休暇」として処理します。使用者と労働者間で労使協定が締結されているためです。労働基準法第39条4項では、労使協定を締結した場合は時間単位での有給休暇取得を認めるとしています。そのため、半休の取得は実質的に時間単位での有給休暇取得となるのです。
休憩時間の扱い
半休を取得した場合の、休憩時間は通常どおりです。
| 6時間を超える勤務 | 8時間を超える勤務 |
|---|---|
| 45分 | 1時間 |
使用者は、労働者が半休後に6時間を超えて働くのであれば45分、8時間を超えて働くなら1時間の休憩を取らせなければなりません。
午前中が休みであっても、休憩なしで6時間を超えて働かせるのは違法です。必ず適切な休憩時間を設けるようにしましょう。
半休取得日の残業代を計算する方法
半休取得日の残業代は、「勤務した時間が法定内時間か」と「割増の割合はいくらになるか」をおさえておくとスムーズです。以下を例に、実際に残業代を計算してみましょう。
- 勤務時間:9時〜18時
- 時給:2,000円
- 半休の仕組み:勤務時間を半分に区切った4時間休暇
- 勤務時間:14時〜22時・14時〜24時の2パターン
まずは、14時〜22時まで働いたパターンを計算します。14〜22時であれば勤務時間は8時間となり、法定内時間です。残業代は通常の賃金である時給2,000円で計算します。定時は18時となり、残業時間は18時〜22時までの4時間になります。
次に、14時〜24時まで働いたパターンを計算してみましょう。24時まで働くと、勤務時間が10時間となり、法定内時間を超えてしまいます。また、22時〜24時までの勤務となるため、2時間分の深夜割増が適用されます。
よって、支払う賃金額は22時までを通常の賃金、22時〜24時までは時間外労働手当と深夜割増が適用されます。深夜割増分の残業代は通常の1.5倍です。
2,000円×4時間=8,000円
2,000円×1.5×2時間=6,000円
8,000円+6,000円=残業代14,000円
時間外手当と深夜割増は、それぞれ支給要件が異なります。勤務時間や退勤時間をよく確認し、適切に計算しましょう。
半休を導入する際のポイント
半休の導入によって従業員がより働きやすくなり、モチベーションの向上につながります。導入を検討する際は、以下のポイントをおさえておきましょう。
- 明確な運用ルールを決める
- 従業員への周知を積極的に行う
明確な運用ルールを決める
半休は会社で規定するものです。明確なルールを設定し、従業員にとって利用しやすい制度にする必要があります。就業規則に以下のような内容を記載しておきましょう。
- 半休の取得を認めてよいか
- 半休は午前・午後で区切るのか
- 勤務時間を前半・後半で区切るのか
ほかにも、半休を取得できる労働者の範囲や半休の付与回数、申請時の方法・申請期限・届出先などもあわせて記載しておくのが一般的です。いずれも労働基準法の範囲内とし、法令違反となるルール設定をしないように注意しましょう。
また、時間単位での休暇には労使協定の締結が必要です。労働条件に関する内容は、就業規則に記載していなければ有効となりません。現行の労使協定の効力や内容なども確かめておくとよいでしょう。
従業員への周知を積極的に行う
半休制度を設けたあとは、従業員へ積極的に周知しましょう。常時10人以上の従業員を雇用している場合は、就業規則の変更前に以下3点を確認しておきましょう。手続きをしておかなければ就業規則が有効になりません。
- 変更した規則を労働基準監督署へ届け出る
- 労働者代表や労働組合の代表から意見を聴く
- 従業員へ周知する
すべての従業員に就業規則が変わったことを知ってもらい、半休取得しやすい環境をつくることが大切です。掲示板・グループウェア・朝礼・定期ミーティングなどで、周知するとよいでしょう。
半休制度の導入を外部へ発信するのも有効です。社外にアピールすることで企業イメージの向上につながります。Webサイトへの掲載やSNS発信などで工夫してみましょう。
半休制度を運用する上で気をつけること
半休制度の運用で気をつける点は以下の2点です。法令違反とならないようにし、適切な運用環境を心がけましょう。
- 有給の付与義務である「年5日」に算入してよい
- 遅刻・早退時に半休を取得させるのは望ましくない
有給の付与義務である「年5日」にカウントしてよい
有給休暇の取得義務となる半休は、年5日にカウントして問題ありません。1回の取得で0.5日分の休暇、2回取得で休暇1日分の扱いになります。
しかし、1時間や2時間のような時間休の場合は、有給の取得義務となる年5日にはカウントできません。時間休暇のみで5日分の休暇を与えても、取得義務を達成したことにはならないためです。
半休を強制的に有給取得させることは労働基準法違反になります。強制させないように注意しましょう。
遅刻・早退時に半休を取得させるのは望ましくない
遅刻や早退時にも、半休を取得させることは望ましくありません。1分の遅刻でも、1回分の休暇を取得しなければならなくなるためです。
半休の取得が常態化してしまうと、「遅刻しても半休を使えばいいか」と従業員が思い込んでしまい、モラルやモチベーションの低下を招くおそれがあります。また、強制的に休暇を取得させる行為は違法です。半休とは別に就業規則に規定しておきましょう。
半休取得日に残業しない仕組みづくり
半休を取得日は、当日に残業をせずに帰宅できるような仕組みをつくりましょう。明確なルールを設けることで、計画的に半休を取得しやすい環境になります。
- 半休取得日の前に、業務の申し送り事項を職場内で共有する
- ノー残業デーに「半休取得日」を加える
- 残業を完全申請制にし、申請の徹底を呼びかける
半休日の残業は、休暇本来の目的であるリフレッシュや疲労の蓄積防止も果たせません。従業員がしっかりと休めるように半休の取得日に残業をさせない配慮をしましょう。
半休取得時の残業代は適切な取り扱いを
半休時の残業代の取り扱いは、勤務した時間が法定時間内を超えたかで決まります。割増となるタイミングは、仕組みや労働時間によって異なります。残業代の取り扱いのほかに、制度運用や周知なども重要です。誰もが利用しやすい制度を導入し、従業員が気持ちよく働ける職場環境をつくりましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
副業禁止は法律的にOK?解禁されない理由や就業規則との関係についても解説!
経済が不安定な中、副業を検討されている方も多いかもしれません。しかし、副業OKの企業も増えている一方、就業規則で労働時間外の副業や兼業を制限する会社も多いのが現状です。公務員の副業は禁止されてますが、民間企業における制限は法律的に許されるも…
詳しくみる自宅待機とは?給与は発生する?出勤停止との違いも解説!
自宅待機とは、会社が従業員の出勤を禁止し自宅で待機させることです。自宅待機は従業員の働く権利を制限することになるため指示するときは注意が必要です。 本記事では、自宅待機の意味と具体的なケースについて解説します。待機中に給与が発生するかどうか…
詳しくみる裁量労働制における「みなし労働時間」とは?
働き方改革が進む中、多様な労働形態への関心が高まっています。その中でも「裁量労働制」は、専門性の高い業務に従事する労働者にとって、時間に縛られない自由度の高い働き方を実現する制度として注目されています。 しかし、裁量労働制について「定額働か…
詳しくみる公休とは?有給との違いや給料の発生有無について解説!
会社員には休日や休暇など仕事を休める日があり、その種類は多岐にわたります。 土曜日・日曜日や祝日、年末年始、夏季休暇、慶弔休暇、年次有給休暇などがありますが、「公休」はどれに該当するのでしょうか。 今回は公休について、その意味や他の休日との…
詳しくみる労働時間に必要な休憩時間は何分?ルールや労働基準法から解説!
休憩は労働時間6時間で45分、労働時間8時間で1時間が必要です。労働基準法は休憩について勤務時間に対して与えなければならない時間の他にも時間外に労働させる場合は36協定が必要なことを定めています。 また「休憩の3原則」とされる「途中付与・一…
詳しくみる「法定休日」とは?「振替休日」と「代休」の違いを正しく理解しよう
「法定休日」とは、労働基準法に定められている休日のことをいいます。休日には、この法定休日以外にも、「法定外休日(所定休日)」「有給休暇」「振替休日」「代休」などの休日があり、それぞれの名称については皆さんも聞いたことがあると思います。今回は…
詳しくみる