• 更新日 : 2025年2月21日

住民税の特別徴収とは?納付手続きの流れと効率化のポイントを解説

住民税特別徴収は、企業が従業員に代わって市区町村に住民税を納付する仕組みです。企業には法律で義務づけられており、適切に対応しないと延滞金などのリスクもあるため、注意が必要です。

本記事では、住民税の特別徴収の流れや特別徴収を効率化する方法を解説します。

住民税を特別徴収で納付する手順

住民税の特別徴収とは、会社が従業員の給与から住民税を引き、市区町村に代わりに納付する仕組みです。特別徴収は企業にとって負担がある一方で、従業員の納税が効率化されたり、滞納が防げたりするメリットがあります。

特別徴収は法律で定められた企業の義務であり、適切な対応が必要です。ここでは、特別徴収の流れを4つのステップに分けて説明します。

参考:個人住民税の特別徴収とは? 

1. 給与支払報告書を市区町村に提出

企業は、従業員の前年の給与をもとに「給与支払報告書」を市区町村に提出します。給与支払報告書は、従業員ごとの給与や住所が記載されており、住民税額を計算するために使用されます。提出期限は毎年1月31日で、期日をすぎると税額通知が遅れる可能性があるため注意が必要です。

給与支払報告書を正確に作成し、期限内に提出することが企業の責任です。市区町村は、給与支払報告書をもとに従業員ごとの住民税額を計算します。

もし報告書の誤りがあると住民税額に影響を与え、従業員の負担が増える恐れがあるため、提出前には内容を十分に確認し、ミスを防ぎましょう。

2. 特別徴収税額の通知

住民税の金額は「特別徴収税額の通知」に記載され、5月から6月頃に企業に送付されます。

特別徴収税額の通知には従業員ごとの毎月の住民税額が記載されており、企業はこれをもとに給与から控除します。特別徴収税額の通知の内容を確認し、金額に誤りがないか確認することが大切です。不明点がある場合は市区町村に早めに問い合わせて確認しましょう。

参考:給与計算における住民税とは?市町村によって計算方法が異なる?

3. 従業員の毎月の給与から住民税を特別徴収

企業は特別徴収税額の通知に記載された住民税額を、従業員の給与から毎月天引きします。特別徴収は、前年分の住民税を6月から翌年5月までの12ヶ月に分けて支払う仕組みです。

天引きされた住民税額は給与明細にも記載されるため、従業員は自分の支払い状況を確認でき、住民税の納付に関する誤解やトラブルを防げます。また、特別徴収により従業員は住民税を一括で支払う負担が軽減される点がメリットです。

一方で、控除金額に過不足があると問題が生じます。過少控除の場合、企業が不足分を負担しなければならなくなったり、過大控除の場合には従業員が多く支払いすぎてしまったりする可能性があります。

特別徴収税額の通知の内容や控除額のダブルチェックを行い、正確に管理しましょう。

4. 翌月10日までに市区町村に住民税を納付

企業は、従業員の給与から特別徴収した住民税を市区町村に納付します。納付期限は給与支払日の翌月10日までです。たとえば、6月分の給与から特別徴収した住民税は、7月10日までに納付しなければなりません。

納付が遅れると、税務調査の対象となったり、延滞金が発生したりするリスクがあります。期限を守るため、スケジュールを管理し、担当者間での連携を行いましょう。

住民税を特別徴収した場合の主な納付方法

住民税の納付方法には、主に銀行窓口かインターネットの2種類の手段があります。それぞれの納付方法について解説します。

銀行や郵便局の窓口で納付する

銀行や郵便局の窓口では、市町村から送られる納付書を使用して住民税を納付します。特別な準備が不要で、窓口に納付書を持参するだけで簡単に手続きが進められるのがメリットです。オンライン環境が整っていない場合や、対面で確認しながら手続きしたい場合に適しています。

ただし、窓口に行くための移動や待ち時間が発生するため、時間がかかることがデメリットです。また、窓口の営業時間内に訪問しなければならないため、業務が忙しい時期や混雑しているタイミングでは不便に感じることもあるでしょう。時間に余裕がある場合に適した方法といえます。

インターネットで納付する

インターネットによる納付では、eLTAXを利用したクレジットカードやネットバンキング、ダイレクト納付などの支払方法が選択できます。

メリットは、時間や場所に縛られず、自宅やオフィスから手続きを進められる点です。窓口の営業時間を気にせずに対応できるため、忙しい業務中でも都合に合わせて手続きが行えます。また、手続きがデジタル化されるため、紙の書類のやり取りや管理が減り、業務の効率化にもつながります。

一方で、はじめて利用する場合には専用ソフトのインストールやアカウント登録などに、時間や手間がかかる点がデメリットです。一度システムを導入すれば、住民税の納付をスムーズに進められるようになるため、導入を検討してみてもよいでしょう。

住民税を特別徴収する場合の手続き

住民税を特別徴収する場合、従業員の入社時や退職時、税額変更時に必要な手続きがあります。

ここでは、それぞれに必要な手続きを解説します。

入社時の手続き

従業員の入社時に必要な手続きは、その従業員の前年の収入状況によって異なります。以下の4つのケースを確認し、適切に対応しましょう。

新入社員の状況入社時の手続き
新入社員が過去に所得のない場合手続きなし
前年に所得があり普通徴収だった場合「特別徴収切替届出(依頼)書」を従業員が居住する市区町村に提出
前職も特別徴収だった場合給与所得者異動届出書」を提出
前職も特別徴収で「給与所得者異動届出書」がない場合翌年1月31日までに「給与支払報告書」を提出

住民税は前年1月から12月の収入をもとに計算され、その翌年6月から課税が始まります。そのため、前年または過去に所得がない場合、入社時点では住民税が課税されません。この場合、翌年1月31日までに企業が「給与支払報告書」を市区町村に提出してください。

一方、前年に所得がある従業員の場合、普通徴収か特別徴収かによって手続きが異なります。普通徴収だった場合は「特別徴収切替届出(依頼)書」を速やかに提出します。手続きの期限は、異動した月の翌月10日までです。提出が遅れると従業員に普通徴収の納税通知書が届き、一度に多額の税額を支払わなければなりません。

退職時の手続き

従業員が退職した場合、住民税の特別徴収を正しく終了させるために手続きが必要です。「給与所得者異動届出書」を作成し、退職翌月10日までに市区町村に提出してください。従業員が転職先を決めていない場合は、普通徴収に変更する旨を届出書に記載します。

また、退職月によって、残りの住民税をどのように徴収するかが異なります。以下の表を参考に、適切な対応を行いましょう。

退職月徴収方法
6月から12月翌月から普通徴収、または一括徴収
1月から4月未徴収分を一括徴収
5月通常どおり

1月から4月に退職する場合、未徴収分を一括徴収するのが原則です。この期間に退職する場合、最終給与の天引き額が多くなる可能性があります。事前に従業員に通知し、トラブルを防ぐよう配慮しましょう。

eLTAX(エルタックス)を使った住民税の納付方法

eLTAX(エルタックス)は、インターネットを利用して地方税の申告や納付を行うシステムです。従来の紙の書類を使った手続きに比べ、作業の手間を大幅に減らせます。また、申告や納付をオンラインで完結できるため、時間や場所を選ばずに利用できる点もメリットです。

ここでは、eLTAXを使った納付手続きの流れを5つのステップに分けて解説します。

1. 電子証明書を準備する

eLTAXを利用するには、本人確認のための電子証明書が必要です。電子証明書は、特定の発行機関や認証局で取得します。電子証明書を発行することで、不正な手続きやデータ改ざんを防ぎ、安全に申告や納付を行えます。

電子証明書の発行には数日かかることがあるため、早めに準備をはじめるとよいでしょう。また、電子証明書には有効期限があるため、期限が切れる前に更新手続きを行うことを忘れないようにしてください。

2. 利用者IDを取得する

eLTAXの公式サイトに会社名や住所、電話番号などを登録し、利用者IDを取得します。利用者IDは、eLTAXにログインする際に必要な情報です。

利用者IDは「PCdesk(Web版)」から利用届出(新規)を行うことで発行されます。

3. PCdesk(DL版)を取得する

eLTAXを利用するための専用ソフトウェア「PCdesk(DL版)」をパソコンにインストールします。PCdesk(DL版)はeLTAXの公式サイトから無料でダウンロード可能です。

インストール時には、推奨されるパソコンのスペックやOSのバージョンを事前に確認してください。

4. 電子申告を行う

PCdesk(DL版)を利用して、住民税の電子申告を行います。必要な情報を入力して申告書を作成し、システムを通じて市区町村に送信します。

電子申告のメリットは、書類を郵送する手間が省けることです。また、データとして保存されるため、過去の申告内容を簡単に確認できるようになります。

5. 納税の手続きを行う

最後に、eLTAXにログインし、住民税の納付手続きを進めます。納付方法には、インターネットバンキング、クレジットカード、ダイレクト納付など複数の選択肢があります。

操作に慣れるまでは時間に余裕を持って申告や納税を進めましょう。

住民税を特別徴収するときの注意点

住民税の特別徴収では、事業主が法律にもとづいて従業員の住民税を市区町村に納める義務があります。特別徴収を怠ると延滞金や罰則が科せられる場合もあるため、ルールを理解することが大切です。

ここでは、特別徴収における重要なポイントを解説します。

特別徴収は事業主に納入義務がある

特別徴収では、事業主が従業員に代わって住民税を納める責任を負います。法律で定められているため、企業として必ず守らなければならない義務です。

万が一、計算ミスや入力エラーで正しい住民税額が納付されていない場合や、納付が遅れた場合には延滞金が発生します。さらに、長期間の未納が続くと、企業の信用にも影響を及ぼす可能性があります。

そのため、税額計算や納付スケジュールを正確に管理することが大切です。

原則として普通徴収への切り替えはできない

特別徴収は、短期雇用者やアルバイト、パート、役員を含むすべての従業員が対象です。法律で義務化されているため、基本的に普通徴収への切り替えは認められません。

従業員が「自分で税金を納めたい」と希望した場合でも、特別徴収で対応する必要があります。ただし、一部の条件を満たす場合には、例外として普通徴収が認められることがあります。

普通徴収への切り替えが可能かどうかは、企業が独自に判断せず、市区町村の担当窓口に必ず確認しましょう。また、条件や手続き方法は市区町村ごとに異なる場合があるため、問い合わせを通じて正確な情報を把握することが大切です。

退職金も特別徴収の対象になる

従業員が退職する際に支給される退職金も、住民税の特別徴収の対象です。退職金は給与の一部とみなされるため、企業は退職金を支払う際に住民税を控除し、市区町村に納付する必要があります。

たとえば、3月末で退職する従業員がいる場合、退職金に対する住民税を最終給与から天引きします。また、退職月によっては未徴収分の住民税を天引きする必要があるため、給与や退職金を含めた合計額を正確に計算することが大切です。

参考:退職金の住民税・所得税は優遇されている!?

住民税の特別徴収は納付方法を見直して効率化しよう

住民税の特別徴収は、企業が従業員の住民税を管理し、市区町村に納付する重要な役割を担う仕組みです。特別徴収の手続きでは、給与支払報告書の正確な作成や正確な天引き、スケジュール管理が大切です。

また、eLTAXを活用することで、書類の管理や窓口での手続きが不要になります。

オンラインで完結するシステムを使用し、業務効率化を図りましょう。


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