- 更新日 : 2025年2月21日
勤怠控除(欠勤控除)とは?計算方法を分かりやすく解説!
勤怠控除とは、給与から差し引かれる項目のひとつです。端的にいうと、働かなかった時間分の賃金を給与から差し引くことで、「欠勤控除」と呼ばれることもあります。この記事では、勤怠控除の考え方や計算方法などを解説します。
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勤怠控除(欠勤控除)とは?
勤怠控除は「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、働かなかった分の賃金を差し引くシステムのことです。ここでは、勤怠控除の概要について解説します。
働かなかった分の賃金を差し引くシステム
従業員が欠勤や遅刻、早退などで働かなかった時間分の賃金を給与から差し引くことを、勤怠控除または欠勤控除といいます。
欠勤とは、あらかじめ決められている労働日に、従業員が自己都合で休むことです。たとえば突然の体調不調で、有給休暇を使わずに休んだ場合は、欠勤に該当します。
「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づく考え方
勤怠控除は「ノーワーク・ノーペイの原則」にのっとって考えられます。
「ノーワーク・ノーペイの原則」とは言葉どおり、働かなければ支払わないとする、給与計算上の考え方のことです。
「ノーワーク・ノーペイの原則」については、法律で明確に定められてはいないものの、労働基準法第24条や民法第624条などが根拠とされています。
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(以下、略)
引用:労働基準法第24条
労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
引用:民法第624条
従業員が労働を提供しなかった場合は、給与を支払う義務がないと捉えられます。
勤怠控除(欠勤控除)はどんなときに適用される?
勤怠控除は、「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、働かなかった時間分の賃金を差し引くものであり、欠勤や遅刻、早退をしたときなどに適用されます。また、裁判員等に選ばれたときに適用されるケースもあります。
欠勤したとき
勤怠控除は、急な体調不良や感染症などで欠勤した場合に適用されます。
しかし、会社の就業規則に「有給休暇の事後申請を認める」旨が定められており、後日、欠勤した日を有給休暇として申請した場合は、勤怠控除は適用されません。勤怠控除を誤って適用しないように、自社の就業規則を確認しておきましょう。
ただし「有給休暇の事後申請を認める」旨が定められている場合でも、そもそも有給休暇を使い切っていれば欠勤扱いとなり、勤怠控除が適用されます。
遅刻や早退をしたとき
勤怠控除は、遅刻や早退をした場合にも適用されます。
しかし、労使協定(労働者と使用者が、労働条件や労働環境などについて交わした約束事を書面契約した協定)に有給休暇を時間単位で取得できる定めがあり、さらに会社の就業規則に「有給休暇の事後申請を認める」旨を定めている場合は、勤怠控除は適用されません。
ただし、欠勤したときと同じく、有給休暇を使い切っている場合は欠勤扱いになり、勤怠控除が適用されます。
裁判員等に選ばれたとき
従業員が裁判員等に選ばれた場合は、労働基準法第7条で認められているとおり、休暇を請求できます。しかし、その休暇を有給休暇とするか、無給休暇とするかは各社の判断に委ねられています。
そのため従業員が裁判員等に選ばれて、無給休暇を取得した場合は、勤怠控除の適用が可能です。裁判員等に選ばれた場合の休暇の扱いについては、会社によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
勤怠控除(欠勤控除)が適用されないケース
ここまで、勤怠控除が適用されるシチュエーションをご紹介しました。それでは反対に、勤怠控除が適用されないケースはあるのでしょうか? 勤怠控除が適用されないのは、有給休暇を使って休んだときや、会社の都合で休業したときなどです。
有給休暇を使って休んだとき
有給休暇を使用し休んだときは、勤怠控除の適用外になります。
勤怠控除は、そもそも欠勤や遅刻、早退などで働かなかった時間分の賃金を差し引くシステムです。しかし有給休暇を取得した日は、出勤したものとみなされるため、勤怠控除は適用されません。
会社の都合で休業したとき
会社の都合で休業した場合も、勤怠控除は適用されません。
会社の都合で従業員を休ませた場合は、従業員の自己都合による欠勤や遅刻、早退などで働かなかったことにはならないためです。また、休業期間中は従業員に「平均賃金の100分の60以上の手当」を支払う必要があります。
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
引用:労働基準法第26条
ただし、地震や災害といった不可抗力によって休業した場合は除きます。
参考:厚生労働省|労働基準法に関するQ&A「会社の都合で仕事を休まされている。休んでいる分の補償はないのか。」
勤怠控除(欠勤控除)の計算方法
勤怠控除の計算方法は、勤務形態や給与形態などによって異なります。ここでは一般的な「月給制」を例に挙げ、勤怠控除の計算方法を解説します。
欠勤した場合の計算方法
はじめに1日あたりの給与額を計算しましょう。そして1日あたりの給与額に、欠勤日数を乗じて求めます。具体的な計算式は、以下のとおりです。
なお、1ヶ月の所定労働日数は月によって異なります。そのため控除額は、年間を通して一律ではなく、月ごとに変動する点に注意しましょう。
なお、月ごとに1日あたりの控除額を変動させたくない場合には、年間における平均所定労働日数を用いて計算する方法も存在します。平均所定労働日数の計算式は以下のとおりです。
遅刻や早退をした場合の計算方法
遅刻や早退をした場合は、その時間分だけ勤怠控除をします。まずは1時間あたりの給与額を計算し、それに遅刻や早退した時間を乗じて求めましょう。具体的な計算式は以下のとおりです。
なお、遅刻や早退をした場合の勤怠控除を計算する際は、小数点以下を切り捨てにしなければならない点に注意しましょう。
月平均所定労働時間の計算式は以下のとおりです。
変形労働時間制やフレックスタイム制の勤怠控除(欠勤控除)の計算方法
変形労働時間やフレックスタイム制を導入している場合は、勤怠控除の計算方法が、月給制とは異なります。
変形労働時間制とは、業務の繁閑に応じて、労使(労働者と使用者)が労働時間の配分などを行う制度のことです。フレックスタイム制とは、労働者自らが、労働時間を決められる制度のことです。
変形労働時間制を導入している場合の勤怠控除は、各社の就業規則に定められている1日あたりの労働時間を差し引いて求めます。
一方フレックスタイム制の場合は、基本的に勤怠控除は適用されません。しかし、不就労分は控除の対象です。コアタイムの有無に関係なく、一定期間の総労働時間を満たさない場合は欠勤とみなし、控除額を計算します。
勤怠控除(欠勤控除)を適用する際の注意点
勤怠控除を適用する際は、その旨を就業規則に明記したり、「各種手当」の扱いを定めたりする必要があります。また、最低賃金を下回ることや、労働基準法に抵触しないかどうかに注意しなければなりません。
就業規則に明記する
勤怠控除は「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づく考え方であり、法律で明確に定められているものではありません。そのため、何の定めもなく勤怠控除を行うと、従業員とトラブルになる恐れがあります。
勤怠控除を適用する際は、就業規則にその旨を明記するとともに、従業員にきちんと周知しましょう。
「各種手当」の扱いを定める
勤怠控除は欠勤や遅刻、早退で働かなかった時間分の賃金を差し引くシステムです。基本給に含まれない「各種手当」を控除対象にするかどうかは、各社の判断に委ねられているため、あらかじめ自社における「各種手当」の扱い方を決めておく必要があるでしょう。
一般的に控除の対象になることが多い手当は、通勤に必要な費用を支給する通勤手当や、業務に役立つ資格を取得している従業員に支給する資格手当などです。これらの手当は、労働と連動しているため、控除の対象になるケースが多いといわれています。
最低賃金を下回らない
勤怠控除を適用する際は、最低賃金を下回らないようにします。
とくに所定労働日数に対して、出勤日数が極端に少ない月に、欠勤日数に応じて勤怠控除額を計算すると、最低賃金を下回る恐れがあるため要注意です。その場合は「1日あたりの給与に出勤日数を乗じた額」を支給しましょう。
また、所定労働日数に対し出勤日数が極端に少ない場合は、1日あたりの給与に出勤日数を乗じた額を支給する旨を就業規則に明記しておくことも大切です。
労働基準法に違反しないようにする
勤怠控除で差し引けるのは、働かなかった時間分の賃金のみになります。
欠勤したことへのペナルティを科すために、働かなかった時間分以上の賃金を差し引くことは、労働基準法違反とみなされます。
とくに遅刻や早退に対し、時間単位で勤怠控除をする際は、小数点以下を切り捨てにし、遅刻や早退をした時間分以上の賃金を控除しないように注意しましょう。
勤怠控除(欠勤控除)は就業規則に明記したうえで運用しよう
勤怠控除については、法律で決められているわけではないため、曖昧に適用してしまうとトラブルに発展しかねません。就業規則にきちんと明記したうえで運用しましょう。
また、勤怠控除の計算方法が複雑で困っている場合は、勤怠管理システムを導入するのもひとつの方法です。この機会にぜひ、勤怠管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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