• 更新日 : 2025年2月21日

管理職に休日出勤の手当や代休はある?詳細なルールと業務負担の軽減策を解説

管理職としての責任が大きく、業務の負担も増えるなかで、休日出勤を避けられない状況も多いのではないでしょうか。会社の方針や業務の進行に応じて、管理職は柔軟に対応する必要があり、時には予期せぬ休日出勤を余儀なくされることもあるでしょう。

本記事では、管理職が知っておくべき休日出勤に関する基本的なルールや例外、休日出勤を減らすための具体的な対策についてわかりやすく解説します。

管理職と管理監督者の違い

企業内でよく耳にする「管理職」と「管理監督者」という言葉ですが、両者の違いを正確に理解していないと、労働条件に関するルールで混乱を招くことがあります。とくに管理職の休日出勤に関するルールを理解するためには、違いを把握することが欠かせません。

「管理職」とは、企業内で部門や課などの組織を統括し、部下の指導や管理を行う職位を指します。法律で明確に定義されておらず、課長職以上の従業員を管理職と扱うことが一般的です。

「管理監督者」とは、企業内で相応の地位と権限が与えられ、経営者と一体的な立場にある労働者を指します。

重要なのは、すべての管理職が「管理監督者」に該当するわけではなく、一定の基準を満たした場合にのみ、管理監督者として認定される点です。

本記事では「管理職」=「管理監督者に該当する管理職」と定義し、休日出勤や付随する規定について詳しく解説していきます。

管理監督者には4つの判断基準が設けられている

管理監督者として認定されるためには、労働基準法で定められた次の4つの判断基準を満たす必要があります。

労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること

労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること

現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること

賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

引用:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために|厚生労働省

上記4つの基準を満たし、管理監督者として認められた場合、労働基準法で定める労働時間、休憩、休日の規定が適用除外となります。

上記の基準を満たさない場合は、管理職であっても労働基準法の規定が適用されます。この場合、企業は一般の労働者と同様に、時間外手当や休日出勤手当を支払わなければなりません。

管理監督者の詳しい内容については、こちらの記事をご覧ください。

管理監督者とは?労働基準法における定義やトラブル、取り扱いについて解説!

管理職は休日出勤手当なしって本当?

管理職が休日出勤を行った場合、休日出勤手当が支払われないことが一般的です。ただし、一定の条件下では休日出勤手当を請求できる場合もあります。

ここでは、管理職の休日出勤手当に関する原則と例外をわかりやすく解説します。

原則:管理監督者には休日出勤手当が出ない

労働基準法において、管理監督者は「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」と位置づけられ、労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されない旨が明記されています。

理由は、管理監督者は経営に関与し、自分の裁量で業務を遂行できる立場にあると考えられているためです。そのため、原則として管理監督者には労働基準法に定められている割増賃金を含めた休日手当が支給されません。

参考:労働基準法第41条|e-GOV法令検索

例外:就業規則等に規定があれば休日出勤手当を請求できる

労働基準法は最低限の基準を定めた法律であるため、企業と労働者が合意のもとで、法的基準を上回る待遇を設定することは可能です。

つまり、会社の就業規則や個別の労働契約に休日出勤手当の支給が明記されている場合は、管理監督者であっても休日出勤手当の支給対象となります。

もし例外的な規定が設けられている場合は、就業規則等を確認し、自分の権利を正しく理解しておくことが重要です。

休日出勤手当の具体的な計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

休日出勤とは?割増賃金の発生ケースと計算方法を解説!

休日出勤手当とは?計算方法や割増率に関して解説!

管理職は休日出勤時に振替休日や代休を取れる?

振替休日とは、あらかじめ定められた休日を労働日に変更し、代わりに別の労働日を休日にする制度です。変更前の休日が労働日となり、振り替えた日が新たな休日となります。変更前の休日に働いた場合でも「休日労働」には該当しないため、休日労働に対する割増賃金(休日出勤手当)は支払われません。

代休とは、休日に働いた分の代わりとして、後日別の労働日を休日として設定する制度です。振替休日と異なり、事前に休日を振り替えたことにはならないため、休日に働いた分は法的に「休日労働」となり、休日出勤手当が支払われます。

法律上、管理監督者に該当する管理職には振替休日や代休の制度が原則として適用されません。しかし、具体的な取り決めは企業ごとに異なり、企業が任意で振替休日や代休を付与する場合もあります。

参考:振替休日と代休の違いは何か。|厚生労働省

原則:管理監督者は振替休日や代休を取得できない

管理監督者である管理職は、労働時間や休日に関して柔軟な対応が求められる立場であり、労働基準法の枠を超えて業務を遂行する責任を負います。

つまり、一般の労働者とは異なり、労働基準法の労働時間、休憩、休日の規定が適用されないため、休日出勤に対する振替休日や代休の取得が原則として認められません。

例外:就業規則等に規定があれば振替休日や代休を取得できる

労働安全衛生法の観点から、長時間労働が労働者の心身に悪影響を及ぼすことが懸念されており、労働者に適切な休息を与えることが推奨されています。そのため、就業規則や労使協定により、管理職に対して振替休日や代休の取得を認めている企業もあります。

業務の負担がとくに大きい期間に限り振替休日を認めるケースや、企業が独自に管理職向けの代休制度を導入するケースが、代表的な例です。

上記のような例外的な取り組みは、管理職が過労やストレスから健康を害するリスクを減らし、労働者全体の健康を守るための重要な取り組みです。管理職自身も、自社の就業規則を確認し、適切に休息を取得することが求められます。

振替休日や代休の詳細なルールについては、以下の記事をご確認ください。

振替休日とは?労働基準法上の代休との違いも解説!

休日出勤の代休は必ず取得すべき?ルールや賃金計算、振替時の注意点

管理職が知っておくべきその他の手当と休日

ここでは、管理職の「深夜手当」「割増手当」「年次有給休暇」のルールについて詳しく解説します。

深夜手当

深夜手当とは、労働基準法第37条で定められている深夜労働に対する割増賃金です。

午後10時から午前5時までの深夜帯に勤務した場合、通常の賃金に対して25%以上の割増賃金が支払われます。深夜労働に対する負担軽減が目的です。

管理職であっても深夜手当の特例はなく、一般の労働者と同様に深夜労働に対する割増賃金が支払われます。

割増手当

割増手当とは、法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)を超えて働いた場合や、法定休日、深夜に勤務した場合に支払われる賃金のことです。

管理職に関しては、深夜労働に対する割増手当は支払われますが、時間外労働や休日労働に対しては原則支払われません。ただし、就業規則等に別途定めがあれば、支給される場合もあります。

時間外労働の割増率や計算方法について知りたい方は、以下の記事を確認してみましょう。

時間外労働の割増率、割増賃金の計算方法を解説

年次有給休暇

年次有給休暇は、一定期間働いた労働者に与えられる休暇で、心身のリフレッシュやゆとりある生活の保障を目的としています。「有給」であるため、取得しても賃金が減額されることはありません。

年次有給休暇は、管理監督者を含むすべての労働者に与えられた法的権利であり、管理職であっても当然に取得できます。

しかし、管理職には部下の労務管理や業務の責任があるため、有給休暇を取得する際には配慮が求められます。たとえば、部下の休暇状況や業務の繁閑を考慮して、計画的に取得するなどです。

自分自身が長時間働きすぎないように定期的に休む一方で、部署全体で休暇を調整するなど、業務が滞らないように工夫が必要です。

有給休暇については、以下の記事で詳しく解説しています。

有給休暇とは?付与日数・タイミングは?法律上の定義を解説!

管理職が休日出勤を減らすための3つの対策

管理職は業務量が多く、休日出勤が常態化しやすい傾向にあります。しかし、適切な対策を講じることで負担を軽減し、休日出勤を減らすことが可能です。

ここでは、管理職が今すぐ実践できる具体的な対策を3つ紹介します。

1. 現在の勤怠状況を「見える化」する

休日出勤を減らすには、現在の勤怠状況を「見える化」することが非常に効果的です。

ここで、平成30年に厚生労働省が中心となって実施したある取り組みを紹介します。概要は下記のとおりです。

  • イベント名:【働き方改革】チャレンジ 時間外・休日労働削減大作戦!!
  • 実施の目的:時間外・休日労働の削減
  • 参加事業者:時間外・休日労働の削減に意欲的な101の事業場(企業数:12)

参加を表明した事業場は、削減目標と具体的な施策を設定し、1ヶ月間取り組みを実行しました。

取り組みの結果、勤怠の状況や時間外の業務内容の「見える化」が、不要・不急の時間外・休日労働の削減に一定の効果をもたらしたことがわかりました。「労働者の労働時間に対する意識が向上した」という声も、多くの事業場から寄せられています。

つまり、現在の勤怠状況を可視化することが、従業員の労働時間に対する意識を高め、生産性向上を実現します。その結果、管理職への業務の偏りや過負荷が軽減され、休日出勤の削減につながるのです。

参考:【働き方改革】チャレンジ 時間外・休日労働削減大作戦!!(実施結果)|厚生労働省

2. 業務フローを見直す

業務フローの見直しを通じて、労働時間のムダを削減できれば、休日出勤を減らすことにつながります。

たとえば、優先度の高い業務を最初に処理し、重要度の低い業務を後回しにするなど、業務の優先順位を明確にすることは非常に効果的です。重要度の低い業務や重複している業務については再評価し、効率化を図ることも検討しましょう。

業務に優先順位を付けることで、時間のムダを削減し、より重要なタスクにリソースを集中できるようになります。

効率化された業務フローにより、社員が定時内に業務を完結できるため、オーバーワークや休日出勤の負担が軽減されるのです。

3. チームの連携を強化する

休日出勤を減らすためには、管理職がひとりで業務を抱え込まず、部下との連携強化を図ることが重要です。

まずは、部下の強みや得意分野を把握し、業務を適切に割り振ることから始めましょう。部下が自分の得意な仕事に時間や労力を集中できれば、チーム全体の生産性が向上します。管理職の負担も軽減され、休日出勤の削減が期待できます。

また、部下の育成に力を入れることも効果的です。OJTやメンタリングを活用して部下のスキル向上を図ることで、業務の負担を分担できるようになります。部下が成長すれば、管理職の負担が軽くなり、休日出勤の削減につながります。

管理職が知っておくべき休日出勤のルールを理解し、実務に役立てましょう

管理職の休日出勤には、一般的な労働者とは異なるルールや取り決めがあるため、正しく理解することが重要です。

手当や代休についてのルールを把握し、業務の効率化や負担軽減策もあわせて検討することが、仕事の質や働きやすさの向上につながります。適切な対策を実行して、充実した働き方を実現しましょう。


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