• 更新日 : 2025年2月21日

テレワーク勤務導入で場合によって就業規則は必要!作成手順やポイントを解説

働く環境や働き方が多様化する現代において、職場のルールを明文化した「就業規則」の重要性はますます高まっています。

とくに、テレワークやフレックスタイム制、副業解禁などの新しい働き方が普及する中で、労働条件や職場内のルールを明確にすることは、企業と従業員の双方にとって必要不可欠です。

本記事では、テレワーク導入時の就業規則の作成手順、就業規則作成に押さえておきたい4つのポイントをわかりやすく解説します。

紹介する内容を参考に、トラブルを防ぎながら効率的なテレワーク環境を整えましょう。

テレワーク勤務導入でも場合によって就業規則は必要

テレワーク勤務を導入する際、必ずしも就業規則の変更が必要になるわけではありません。既存の就業規則の範囲内で対応できるケースも多いからです。

しかし、テレワーク特有の勤務条件が発生する場合、就業規則の変更が必要になります。たとえば、以下のケースが考えられます。

  • 通信費の負担:従業員に通信費を自己負担させる場合、ルールを明確にする必要がある
  • 労働時間の管理:オフィス勤務と異なり、労働時間の把握が難しくなるため、適切な管理ルールを定める必要がある
  • 業務遂行のルール:情報漏洩対策や勤務中の適正な業務環境の確保が求められる

通常勤務では発生しない要素が絡む場合は、トラブルを防ぐためにも就業規則の見直しが重要です。厚生労働省のガイドラインも参考にしつつ、自社の状況に応じた規則を整備しましょう。

参考:テレワークモデル就業規則~作成の手引き|厚生労働省

就業規則の定義

就業規則とは、企業が従業員に対して定める労働条件や職場のルールを明文化したものです。職場の秩序を維持し、労使間のトラブルを防ぐ役割を持ちます。労働基準法では、常時10人以上の従業員がいる企業は就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務があります。

就業規則には、以下のような内容を含まなければなりません。

含むべき内容概要
労働時間・休憩・休日勤務時間や休暇の取得ルール
賃金の決定・支払い方法給与体系や支払日、残業手当の計算方法
退職・解雇の規定退職手続きや解雇事由

明確に定めることで、企業と従業員双方が適正な労働環境のもとで働けるようになります。

とくに、近年はテレワークの普及により、従業員の勤務形態が多様化しているため、最新の労働環境に合わせた就業規則の見直しが重要です。

参考:1 就業規則に記載する事項 2 就業規則の効力|厚生労働省

テレワーク導入時の就業規則を作成する5つの手順

テレワークを導入する際、適切な就業規則の作成が必要です。明確なルールがないと、労働時間の管理や費用負担の問題が発生し、トラブルにつながる可能性があります。

1. 現行の就業規則を確認する

テレワークを導入する前に、まず現在の就業規則を確認し、テレワークに関する規定が含まれているかをチェックすることが重要です。就業規則の見直しを怠ると、労働時間の管理や費用負担のトラブルが発生する可能性があります。

確認すべき主な項目は以下の通りです。

項目概要
労働時間・勤務場所在宅勤務時の勤務時間の管理方法や、オフィス勤務との違いを明確化
費用負担通信費や電気代、作業用機器の費用を会社が負担するのか、従業員負担とするのかを規定
安全衛生適切なデスク・使用すべき椅子などテレワーク環境の整備に関する指針

上記の項目をチェックし、不足があれば修正を検討しましょう。現行の規則を十分に確認することで、スムーズなテレワーク導入が可能になります。

2. テレワークの目的・対象者などの基本方針を決める

テレワークの就業規則を策定するには、目的や対象者を明確にすることが不可欠です。目的が曖昧なままだと、運用時に混乱が生じる可能性があります。

主な検討事項は以下の通りです。

検討事項概要
テレワークの目的業務効率向上・従業員のワークライフバランス改善・感染症対策など
対象者の選定全従業員に適用するのか、特定の部署や業務に限定するのかを決定
業務範囲と就業場所どの業務がテレワーク可能か、在宅勤務のみか、サテライトオフィス利用も含めるかを明確化

目的と基本方針を定めることで、会社の方針に沿ったテレワーク規則を作成しやすくなります。

3. 費用負担・設備・安全衛生などに関するルールを設定する

テレワークでは、通信費や作業環境の整備に関する費用負担のルールを明確にする必要があります。会社と従業員のどちらが負担するか決めておかないと、不公平感を生む原因になります。

主なルール設定のポイントは以下の通りです。

ルールポイント
通信費・光熱費会社が一部または全額負担するのか、従業員が自己負担するのかを明確化する
機器の支給・貸与基準PC・ソフトウェア・デスクなど、会社が用意するものを定める
労働災害対策在宅勤務中の事故や健康管理のルールを設定し、適切な作業環境を整備する

とくに、労働災害の適用範囲については、就業時間内の業務中に発生した事故のみ適用されるなどの基準を明文化することが重要です。

労働基準法の内容を踏まえてまとめる必要あり

在宅勤務の就業規則を策定する際は、労働基準法の規定に沿ったルールを設けることが必須です。企業が適切な対応をしないと、労働時間の管理不備や未払い残業代などのトラブルにつながる可能性があります。以下のポイントを意識しなければなりません。

ポイント概要
法定労働時間1日8時間、週40時間以内(原則)
休憩時間の確保6時間以上45分・8時間以上1時間
時間外労働25%以上の割増賃金を支給
深夜労働(22時~翌5時)25%以上の割増賃金適用
休日労働35%以上の割増賃金が必要 など

企業は、労働基準法に準拠したルールを明文化し、従業員が適正な労働環境のもとで業務を行えるよう整備することが重要です。

参考:テレワークモデル就業規則~作成の手引き|厚生労働省

4. 就業規則改定の手続きをする

テレワーク導入に伴い就業規則を改定する場合、労働基準監督署への届け出と従業員への周知が必須です。手続きを適切に行わないと、法的な問題が生じる可能性があります。

就業規則改定の主な流れは以下の通りです。

  1. 労働組合または従業員代表の意見を聴取
  2. 労働基準監督署へ届け出る
  3. 従業員へ周知し、適用開始

事業場の過半数を代表する労働組合、または労働者の代表者から意見をもらい、意見書を作成します。そして、改定した就業規則を労働基準監督署に提出し、正式に受理され、従業員へ周知して改定の手続き終了です。

従業員への周知が不十分だとトラブルにつながるため、わかりやすい説明を心がけましょう。

5. 就業規則をもとに運用しながら定期的に見直す

就業規則は一度作成すれば終わりではなく、定期的に見直しを行うことが重要です。テレワークの実施状況を確認し、運用上の課題を把握することで、より適切な制度に改善できます。

主な見直しのポイントは以下の通りです。

  • 労働時間の管理が適切に行われているか
  • 費用負担や労働環境に問題が発生していないか
  • テレワークの制度が働きやすさに貢献しているか
  • 定期的なアンケートやヒアリングをし不満や改善点があるかどうか
  • 労働基準法の変更や社内環境の変化に合わせて調整できるかどうか

就業規則を柔軟に見直し、企業と従業員双方にとって最適な形にアップデートしていくことが、持続可能なテレワーク運用の鍵となります。

テレワーク導入時に就業規則を作成する際の4つのポイント

テレワークを導入する際、適切な就業規則を策定することが重要です。不明確なルールのまま運用を開始すると、労働時間の管理や費用負担、情報漏洩のリスクが高まります。

1. テレワークの定義を曖昧にしない

テレワークの定義を明確にしないと、従業員がどのような働き方をすればよいのかわからず、制度が形だけのものになったりトラブルの原因になったりします。そのため、就業規則に具体的なテレワークの定義を記載することが重要です。

就業規則に盛り込むべきポイントは以下の通りです。

  • どの業務がテレワーク可能なのか明確にする
  • 全社員が対象なのか、一部の部署や職種に限定するのかを決定する
  • 業務効率化、柔軟な働き方の実現、感染症対策などの目的を明記する

上記を明確にすることで、制度が形だけにならず実効性のあるテレワーク運用が可能になります。

2. 労働時間の管理を徹底する

テレワークでは労働時間が曖昧になりやすく、長時間労働や勤務状況の不透明化が問題となることがあります。そのため、就業規則で労働時間管理のルールを明確にすることが重要です。

主な管理ルールのポイントは以下の通りです。

  • みなし労働時間の適用条件
  • 深夜労働の申請・承認手続き
  • 休憩時間の確保

労働基準法を遵守しながら、柔軟かつ適正な労働時間管理を行える仕組みを整えましょう。

3. 手当支給に関するルールについても触れる

テレワークでは、通信費や光熱費などの追加費用が発生するため、手当の支給ルールを明確に定める必要があります。支給基準が不明確だと、従業員の不満につながる可能性があるため注意が必要です。

就業規則には、手当の対象となる従業員の範囲(全従業員か特定の勤務形態か)や、支給額の種類(固定額か実費精算か)、申請・承認プロセスと支給頻度について明確に記載しましょう。

明文化することで、費用負担のトラブルを防ぎ、スムーズなテレワーク運用が可能になります。

なお、「テレワーク手当」等の固定的な手当であれば「賃金」に該当し、時間外手当や社会保険料などの算定に含まれます。しかし、都度実費精算する場合は「経費」であり「賃金」には該当しないため、その説明を従業員向けにできればより丁寧な対応です。

4. 業務上の情報のセキュリティ対策を強化しておく

テレワークでは、社外での業務遂行により情報漏洩のリスクが高まるため、セキュリティ対策を強化することが不可欠です。就業規則に具体的な対策を盛り込むことで、安全な業務環境を確保できます。

セキュリティ対策の主なポイントは以下の通りです。

  • 機密情報の管理:社外での印刷やUSBメモリの使用を制限
  • データ保護の基準:VPNの利用やパスワードの設定を義務化
  • 業務端末の管理:業務用PC・スマホの貸与基準と使用ルールを明確化

ルールを就業規則に記載し、従業員に周知することで、情報漏洩リスクを低減し、安全なテレワーク環境を構築できます。

テレワーク導入時の就業規則に関するよくある疑問

テレワーク導入時によくある質問をまとめたので、参考にしてみてください。

テレワーク導入時の就業規則のひな形は?

テレワーク導入時に就業規則を新たに作成する際、一般的なひな形にもとづいて構成することが重要です。以下は、一般的なテレワーク就業規則の主な構成例になります。

項目内容のポイント
適用範囲対象となる従業員や業務を明記
勤務時間始業・終業時間や休憩時間、みなし労働時間制の適用有無
手当・費用負担通信費や光熱費の負担ルール
セキュリティ情報漏洩対策、使用機器のルール
評価・報告業務遂行状況の確認・報告方法

項目を明確にすることで、企業と従業員の双方にとって公平なルールを確立できます。厚生労働省のサンプル規則も参考にしながら、自社の状況に適した内容を作成しましょう。

参考:在宅勤務規程例(ワード版)|厚生労働省

テレワーク導入で就業規則を変更しなくてもいいケースは?

テレワークを導入する際、必ずしも就業規則の変更が必要とは限りません。既存の就業規則がテレワークに対応している場合や、臨時的な導入である場合は、変更しないまま進めてもよいときもあります。

変更が不要な具体例は以下の通りです。

  • 既存の規則で労働時間や勤務場所のルールが明確に規定されている場合
  • 臨時的・短期的なテレワークの場合(例:災害時や緊急対応)
  • テレワークでも業務内容や評価基準が変わらない場合

ただし、通信費の負担やセキュリティ対策など、オフィス勤務と異なる点が発生する場合は、就業規則の改定を検討する必要があります。

テレワークの就業場所はどこになる?

テレワークでは、どこで勤務するのかを明確に定めることが重要です。就業規則に勤務可能な場所を明記することで、業務効率とセキュリティを両立できます。

就業場所特徴
自宅安定した通信環境の確保ができる
サテライトオフィスセキュリティが確保されやすい
コワーキングスペース情報漏洩対策が必要になる
カフェなど機密情報の管理が困難になりやすい

また、労働基準法上、企業には従業員の労働環境を適正に管理する義務があるため、就業場所に関するガイドラインを定めることが望ましいです。

テレワーク導入時は就業規則についても見直そう

テレワーク導入に伴い、就業規則の見直しは必須です。とくに、勤務時間、手当、就業場所、セキュリティ対策などの重要ポイントを明確にし、企業と従業員双方が納得できるルールを策定しましょう。

また、テレワークの運用開始後も、実際の働き方に応じて適宜就業規則を見直すことが重要です。ルールの明確化と適切な運用により、テレワーク環境をより快適で生産的なものにしていきましょう。


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