- 更新日 : 2025年1月28日
労働移動支援助成金は早期再就職支援等助成金に!雇用でいくらもらえるか解説
労働移動支援助成金は、労働者の早期再就職、そして企業の人材確保をサポートする国の助成制度です。
現在は「早期再就職支援等助成金」に名称変更になっており、採用・人材育成の費用軽減に繋がる4つのコースが用意されています。
この記事では各コースの概要やメリット、申請方法を詳しく解説します。
目次
労働移動支援助成金とは?
労働移動支援助成金は、企業が労働者の再就職や新たな人材採用を支援する際に活用できる助成制度です。
労働移動支援助成金(早期再就職支援等助成金)には以下の4つのコースがあります。
- 再就職支援コース
- 雇入れ支援コース
- 中途採用拡大コース
- UIJターンコース
国から助成金が支給されることで、労働者は転職や再就職がしやすい環境となり、企業側の採用コストも軽減されます。
労働移動支援助成金は早期再就職支援等助成金に名称変更
労働移動支援助成金は、令和6年4月より「早期再就職支援等助成金」という名称に変更されました。
これは、制度の目的である「早期再就職支援」や「企業による人材活用の促進」をより明確にし、利用を促進するための変更です。
新名称の下で、助成金制度は4つのコースに分かれ、企業の状況や人材ニーズに応じた柔軟な支援が可能になりました。
早期再就職支援等助成金の4つのコース
早期再就職支援等助成金には、企業のニーズに応じた4つのコースが用意されています。
コース | 対象企業 | 対象労働者 | 助成内容 |
---|---|---|---|
再就職支援コース | 離職予定者の早期再就職を支援する企業 | 離職予定者 | 再就職支援プログラムの実施費用 |
雇入れ支援コース | 離職者や転職者を新たに雇用する企業 | 離職者・転職者 | 雇用にかかる費用の一部 |
中途採用拡大コース | 中途採用枠を拡大し、特定の条件を満たす労働者を雇用する企業 | 中途採用枠の拡大に応じた労働者 | 採用活動にかかる費用 |
UIJターンコース | 地方移住を伴う労働者を雇用する企業 | 地方移住を伴う労働者 | UIJターンを支援するための費用 |
それぞれのコースは目的に応じて助成金の使途が明確化されており、効率的に利用できます。
離職者の再就職支援や地方移住を伴う雇用促進に力を入れている企業、人材確保が課題となっている企業には大きな助けとなるでしょう。
企業の状況や計画に応じて、最適なコースを選択しましょう。
早期再就職支援等助成金を利用するメリット
早期再就職支援等助成金は、企業の採用や人材育成を支援しながら、費用負担を軽減できる制度です。
スムーズに運用を進めるため、具体的にどんなメリットがあるのかを把握しておきましょう。
助成金を受けながら人材を確保できる
早期再就職支援等助成金を利用するメリットの1つは、助成金を受けながら必要な人材を確保できる点です。
この制度では、企業が離職予定者や転職希望者に対して再就職支援を行う際、その取り組みに対して助成金が支給されます。
なお、再就職支援とは、離職予定者の再就職支援を職業紹介事業者に委託したり、求職活動のための休暇の付与・再就職のための訓練を教育訓練施設等に委託したりすることです。
再就職支援を提供することで、労働者が新しい職場環境に適応しやすくなるほか、企業は即戦力となる人材を確保することが可能です。
さらに、雇用活動にかかるコストを抑えながら、自社に必要なスキルや経験を持つ労働者を採用でき、採用活動全体の効率化にもつながります。
採用や人材育成の費用が軽減される
早期再就職支援等助成金を活用することで、採用活動や人材育成の費用負担を軽減できます。
たとえば、企業が新たに雇用した従業員に対して研修やスキルアップの機会を提供する場合、その費用の一部を助成金が補助します。
また、雇用者の採用活動に関する費用も対象となるケースがあり、企業の採用コスト削減につながります。
このように、助成金を活用することで、企業はコストを最小限に抑えつつ、効果的な採用や育成活動を進めることが可能です。
職業訓練を実施した費用が助成される
早期再就職支援等助成金では、職業訓練を実施した際にかかる費用も助成の対象となります。
採用した従業員に対して必要なスキルを身に付けさせるために行う研修や、特定の職務に必要な資格取得支援などにかかる費用を補助することで、労働者の早期戦力化を目指すことが可能です。
この仕組みにより、企業は訓練や教育にかかる経済的な負担を軽減しつつ、労働者を即戦力として育成することができます。
特に専門スキルを必要とする職種では、職業訓練の費用負担が大きくなるため、この助成制度は有効です。
職歴のブランクを防げる
早期再就職支援等助成金は、離職者が長期間無職の状態に陥ることを防ぎ、同時に新たな職場に適用しやすい環境を整える効果があります。
また、再就職支援を通じて職業訓練やスキルアップの機会が提供されるため、離職期間中のスキル低下も防止できます。
企業にとっても、ブランクが少ない即戦力の人材を採用できるため、採用後の教育コストや適応期間を削減する効果が期待できます。
助成金制度は、労働者と企業双方にとってメリットの大きい仕組みです。
早期再就職支援等助成金①再就職支援コース
再就職支援コースは、企業が離職予定者や希望退職者に対し、再就職を支援する取り組みを行った際に助成金を受け取れる制度です。
外部の再就職支援事業者を活用する場合や、独自の再就職プログラムを実施する際に適用されます。
これにより、労働者がスムーズに新たな職場に移行できる環境を整えつつ、企業側の負担を軽減します。
対象の労働者
再就職支援コースの支給対象となる労働者は、以下の要件を満たす必要があります。
- 計画対象被保険者または支援対象被保険者のいずれかに該当している
- 申請事業主が実施する再就職支援を受ける意思がある
- 申請事業主において、一般被保険者などとして継続して1年以上雇用されている
- 申請事業主の関連事業所への復帰見込みがない
- 再就職支援を受ける時点で再就職先が未定である
- 職業紹介事業者の支援が、労働者に「退職強要」と受け止められていない
- 職業紹介事業者などに委託して支援を行う場合、労働者が支援に承諾している
これらの条件を満たした場合、企業は助成金申請の対象者として認められます。
企業が離職後の再就職支援を行うことで、労働者のキャリア継続をサポートします。
助成金はいくらか
再就職支援コースで支給される助成金の金額は、企業の支援活動の規模や内容に応じて異なります。
中小企業事業主 | 中小企業事業主以外 | ||
---|---|---|---|
① | 通常 | 委託費用×1/2(2/3) | 委託費用×1/4(1/3) |
特例 | 委託費用(×2/3(4/5) | 委託費用×1/3(2/5) | |
② | 10時間以上100時間未満の訓練加算 | 訓練実施にかかる委託費用×2/3(上限15万円) | 訓練実施にかかる委託費用×2/3(上限10万円) |
100時間以上200時間未満の訓練加算 | 訓練実施にかかる委託費用×2/3(上限30万円) | 訓練実施にかかる委託費用×2/3(上限20万円) | |
200時間以上の訓練加算 | 訓練実施にかかる委託費用×2/3(上限50万円) | 訓練実施にかかる委託費用×2/3(上限30万円) | |
③ | グループワーク加算 | 3回以上実施で1万円 |
※()は45歳以上の者の助成割合
また、求職活動のための休暇を付与する場合、下記の助成金を受け取れます。
中小企業事業主 | 中小企業事業主以外 | |
---|---|---|
通常 | 休暇付与1日あたり8,000円(上限 180 日分) | 休暇付与1日あたり5,000円(上限 180 日分) |
再就職加算(※) | 1人につき10万円 |
※支給対象者の離職の日の翌日から起算して1か月以内に再就職が実現した場合
職業訓練職業訓練実施支援の助成額は「訓練実施にかかる委託費用×3/4」で、下記のように訓練時間数に応じた上限が定められています。
中小企業事業主 | 中小企業事業主以外 | |
---|---|---|
10時間以上100時間未満の訓練加算 | 15万円 | 10万円 |
100時間以上200時間未満の訓練加算 | 30万円 | 20万円 |
200時間以上の訓練加算 | 50万円 | 30万円 |
賃金助成 | 960円/時間 | 480円/時間 |
申請方法
再就職支援コースの申請は、以下のステップで行います。
- 事前計画の提出
- 支援の実施
- 実施報告と申請書の提出
- 審査後の支給
申請手続きには時間がかかる場合があるため、計画的に進めるのが必須です。
実施報告・申請書を提出する際は、領収書や委託契約書などの書類を添付する必要があるので把握しておいてください。
書類の不備を防ぐため、必要に応じて専門家の支援を受けるのも有効です。
早期再就職支援等助成金②雇入れ支援コース
雇入れ支援コースは、離職者や転職者を新たに雇用する企業に対し、採用活動や雇用にかかる費用を支援する制度です。
このコースでは、早期再就職を促進しながら、企業の採用コストを軽減することを目的としています。
特に、再就職が困難な労働者の雇用に対する支援が充実しており、企業が積極的に人材を確保できるよう助成金が提供されます。
対象の労働者
雇入れ支援コースの対象となる労働者は、以下の条件を満たす必要があります。
- 雇用保険の適用事業所における一般被保険者、または短時間労働被保険者である
- 労働契約が無期雇用、または一定期間以上の有期雇用である
- 申請事業主の関連事業所での雇用履歴がない
- 再就職の際に、労働者が早期再就職支援等助成金の対象である旨を承諾している
また、高齢者・障碍者・地方移住者など特定の条件を満たす労働者は、優先的に支援対象となる場合があります。
助成金はいくらか
雇入れ支援コースは、「早期雇入れ支援」と「人材育成支援」の2種類があり、それぞれ助成金額が異なります。
通常助成 | 優遇助成 | |||
---|---|---|---|---|
OFFーJT | 賃金助成 | 960円(480円)/時間 | 1,060円(580円)/時間 | |
経費助成 | 10時間以上100時間未満 | 15万円(10万円) | 25万円(20万円) | |
100時間以上200時間満 | 30万円(20万円) | 40万円(30万円) | ||
200時間以上 | 50万円(30万円) | 60万円(40万円) | ||
OJT | 実施助成 | 20万円(11万円) |
申請方法
雇入れ支援コースの申請は以下のステップで行います:
- 中途採用計画の提出
- 雇用契約の締結
- 雇用後の申請
- 審査と支給
必要書類には、雇用契約書・労働者の同意書・雇用保険加入の証明書類などが含まれます。
早期再就職支援等助成金③中途採用拡大コース
中途採用拡大コースは、企業が中途採用の機会を拡大し、経験豊富な労働者を積極的に採用する取り組みを支援する制度です。
35歳以上の求職者や長期間失業中の労働者を採用する企業に対し、採用活動や人材育成にかかる費用を助成します。
このコースは、企業の人材不足解消や求職者の雇用機会増加を目的としており、採用対象の条件を満たせば助成金を受け取ることが可能です。
対象の労働者
中途採用拡大コースの対象労働者は、以下の条件を満たす必要があります。
- 申請事業主に中途採用により雇い入れられた方であること
- 雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れられた方であること
- 期間の定めのない労働者(パートタイムを除く)として雇い入れられた方であること
- 雇入れ日の前日から起算してその日以前1年間において、雇用関係、出向、派遣、請負または委任により申請事業主の事業所において就労したことがない方であること
- 雇入れ日の前日から起算してその日以前1年間において、申請事業主との関係が親子会社等に該当する事業主に雇用されていた方でないこと(「45歳以上の中途採用率の拡大」のみの要件)
- 雇入れ時の年齢が45歳以上であること
また、地方移住や特定分野のスキルを持つ求職者も対象に含まれる場合があります。
対象者を雇用することで、企業は助成金を受ける条件を満たすことになります。
助成金はいくらか
中途採用拡大コースの助成金額は、対象者が45歳未満の場合は50万円、45歳以上の場合が100万円です。
申請方法
中途採用拡大コースの申請は、以下の手順で進めます。
- 事前計画の提出
- 採用活動の実施
- 継続雇用の確認
- 助成金の申請
採用計画や雇用条件を明確にし、事前に労働局へ相談しておくと、その後の手続きがスムーズに進むはずです。
また、助成金の申請時には雇用契約書・給与明細・労働保険料の納付証明などが必要になります。
早期再就職支援等助成金④UIJターンコース
UIJターンコースは、地方での雇用促進を目的とし、都市部から地方に移住する労働者を雇用した企業を支援する助成金制度です。
地方の人材不足解消と、移住者の定住促進を同時に目指しています。
このコースでは、地方移住を伴う採用や、移住後の定着支援を行う企業が対象となり、雇用の継続を条件に助成金が支給されます。
企業は地方での優秀な人材確保のチャンスとなり、移住者にとっても生活基盤を整えやすくなる制度です。
対象の労働者
UIJターンコースの対象労働者は、以下の条件を満たす必要があります。
- 東京圏から地方(過疎地域など)に移住する者
- 地方公共団体が開設するマッチングサイトに掲載された当該事業主の求人に応募していること
- 雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れられること
- 65歳以上に達するまでに継続して雇用され、かつ雇用期間が継続して1年以上であること
対象地域や移住条件については、各都道府県の要件を確認する必要があります。
助成金はいくらか
UIJターンコースの助成金額は、下記のとおりです。
助成率 | 上限 | |
---|---|---|
中小企業 | 1/2 | 100万円 |
中小企業以外 | 1/3 | 100万円 |
下記のような採用活動に要した費用の総額が、助成の対象となります。
- 募集・採用パンフレット等の作成・印刷費
- 自社ホームページ・自社PR動画の作成・改修費
- 就職説明会・面接会・出張面接等の実施費用
- 採用担当者の宿泊費(1人1泊8,700円が上限)
- 採用担当者の交通費
- 外部専門家によるコンサルティング費用
なお、民間有料職業紹介事業の紹介手数料や求人サイト等の掲載料は対象にならないので、注意が必要です。
これらの費用に対する助成を適切に申請するため、領収書は大切に保管しておきましょう。
申請方法
UIJターンコースの申請手続きは、以下の手順で進めます。
- 採用計画書の提出
- 雇用契約の締結
- 移住後の雇用実績の確認
- 助成金申請
申請後、労働局の審査を経て助成金が支給されます。
申請時に必要な書類は、移住前後の居住証明・雇用契約書・給与明細などです。
早期再就職支援等助成金を計画的に活用しよう
早期再就職支援等助成金は、離職予定者の再就職支援や新たな人材採用に取り組む企業を支援する制度です。
「再就職支援コース」「雇入れ支援コース」「中途採用拡大コース」「UIJターンコース」の4つのコースがあり、それぞれの企業ニーズや労働者の状況に応じた助成が行われます。
これらの助成金を活用することで、企業は採用や育成にかかるコストを削減し、労働者は早期に新たなキャリアをスタートさせることが可能です。
各コースの要件や助成金額、申請方法を正確に把握し、計画的に活用していきましょう。
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