- 更新日 : 2025年11月20日
パワハラ加害者のよくある言い訳は?パワハラの判断基準や対応方法を解説
パワハラの加害者は、自分の行為が全て正しいと思っている傾向があり、その意思表示と強気な態度がパワハラ行為の言い訳につながる可能性があるでしょう。
本記事では、パワハラ加害者のよくある言い訳について解説します。パワハラの判断基準や対応方法も紹介するので参考にしてください。
目次
パワハラ加害者のよくある言い訳は?
社内のパワハラ問題が発生した際に、パワハラにつながる行為をした加害者に対し、事情聴取の対応が求められるでしょう。ここでは、パワハラ加害者のよくある言い訳のパターンについて解説します。
指導のつもりだった
パワハラ加害者は、パワハラ行為を「指導のつもりだった」と言い訳する場合が考えられます。厚生労働省の実態調査によると、職場でパワハラを行う人の65.7%は、役員以外の上司となっています。そのため、上司による行き過ぎた指導が考えられるかもしれません。パワハラ加害者としては、「作業中の事故を防ぎ、安全を守るためには厳しい注意が必要」という考えがあるため、叱責(しっせき)や大声で怒鳴る場合もあるでしょう。
一方で、叱責や大声による注意に対して、受け手となる部下は指導を超えた精神的攻撃と捉えてしまう可能性があります。言動の受け止め方は、人それぞれ異なるため、指導のつもりで発言した言葉を暴言と捉える可能性もあるでしょう。
コミュニケーションの一環だと思っていた
パワハラ加害者となる上司や同僚によくある言い訳として、コミュニケーションの一環だと主張することです。同じ職場の仲間として、気心が知れているからという判断で、「多少きつい言い方をしても許される」という発想による行為も考えられます。
特に、上司の勘違いで考えられるケースは、部下による「冗談を言ってもいつも笑顔で接してくれる」や「指示を出せば何でも応じてくれる」などを好意的な態度と思い込むことです。部下にとって、優位な立場の上司に従順な態度で対応するのは、目上の立場に対しての配慮でしょう。部下の本意に気づかずに、上司が横暴な振る舞いをすると、コミュニケーションの一環といえどもパワハラ行為と判断されるでしょう。
被害者側に落ち度があるから自分は悪くない
パワハラ加害者のよくある言い訳の中でも面倒なケースは、加害者自身が被害者だと思い込んでいることです。要するに、被害者側に落ち度があるから自分は悪くないという状態が考えられます。このように自分の落ち度を認めずにパワハラ被害者の相手を責める状況は、パワハラ問題の中でも解決が難しいケースです。例えば、パワハラ加害者が上司の場合は、「何度教えてもすぐに忘れる」や「いくら言っても仕事を覚えようとしない」など指導上の課題が原因にもなるでしょう。仕事に対しての部下の態度に上司が腹を立てた結果、パワハラ行為と判断されるケースです。
このようなケースでは、パワハラ加害者と被害者がお互いに譲らないことが考えられるため、問題解決は難航するでしょう。
言い訳をするパワハラの加害者の特徴
言い訳をするパワハラ加害者には、共通する特徴があります。前項で解説したパワハラ加害者の言い訳パターンは、次に挙げるような考え方や境遇の人に共通する言動ではないでしょうか。
自分のやり方や価値観が正しいと思い込んでいる
言い訳をするパワハラ加害者は、自分のやり方や価値観が正しいと思い込む特徴を持っています。要するに、自分の考えを曲げないタイプの人です。入社して上司や先輩社員から学び、現在の地位を築き上げてきたことに誇りを持っていることが考えられるでしょう。
また、自分のやり方に自信を持っている人は、会社の中で自分が教えられた方法が最も正しいと思い込んでいる傾向があります。そのため、周囲の人が他の効率的なやり方を提案しても、耳を傾けないでしょう。このような人は、価値観が固定しているため、周りが反論すると逆効果になる可能性があります。時には、自分の価値観に合わない部下の意見に対して、徹底的に反論するケースも発生することでしょう。
自分のやり方を貫く姿勢は、上司として必要かもしれません。ただし、部下に自分の価値観を強要したり、例外を認めなかったりする姿勢では、部下との溝が深まるだけでなく、ストレスがさらに増すでしょう。
時代の変化に合わせたコミュニケーションができない
言い訳をするパワハラ加害者は、コミュニケーションも主観的になりやすい傾向が見られるでしょう。極端に言うと、パワハラ加害者が経験したことや、知っていること以外を、コミュニケーションに取り入れようとしない考え方を持っています。つまり、柔軟性に欠けるとも言えます。
時代の変化や年代の違いによって、コミュニケーションの方法も異なります。しかし、パワハラ加害者は、自分の見識以外の情報をコミュニケーションに取り入れない傾向があり、コミュニケーションが一方通行になりがちです。
自分自身もパワハラやモラハラを受けてきた
言い訳するパワハラ加害者には、自我の強いタイプの人が該当します。自分の力を注いでいた取り組みを部下にも同じように求める点が、大きな特徴です。そのため、パワハラ加害者自身が新入社員の頃に受けてきた上司による指導も、そのまま部下への指導方法として繰り返す傾向があると言われています。このような押しつけの要素がある指導が、時代と職場のニーズに合っている場合であれば、一定の成果を収めることができるでしょう。
一方で、過去にパワハラやモラハラを受けてきた上司は、自身が受けた同様の行為を部下に対して繰り返す可能性が高いとされています。このような加害者は相手への配慮に欠けていることが問題点として挙げられています。
加害者の主張が言い訳なのか判断する基準
企業は、言い訳するパワハラ加害者に対して弁明の機会となる事実確認をしなければなりません。事実確認の段階では、次の判断が必要になります。
- パワハラ加害者の主張が正当な言い分なのか
- パワハラ加害者の主張が言い訳なのか
パワハラ加害者の主張は、厚生労働省が定めるパワハラの定義を基準にした判断が求められます。詳細は以下の通りです。
| 正当な言い分の基準 | 言い訳に当たる基準 |
|---|---|
| 業務上明らかに必要 | 業務上明らかに必要ではない |
| 業務の目的に当てはまる | 業務の目的から大きく逸脱している |
| 業務を遂行する手段として適当 | 業務を遂行する手段として不適当 |
| 発言の内容が社会常識的に許される範囲 | 発言の内容が社会常識的に許されない |
正当な言い分と判断できる主張は、業務上の取り決めから外れていないことや、社会常識的に許される範囲などを基準に見極めます。例えば、パワハラ加害者の主張が次の発言だとしましょう。
「部下○○が返事をしないから、無視されていると思って大声で注意しました」
この主張の場合は、上司の思い込み(無視されている)も含まれているため、正当な言い分として判断しにくいことが考えられます。そのため、言い訳と判断できるかもしれません。
「部下○○の返事が聞こえなかったため、本人の近くで声をかけましたが、私の顔を見ようともしません。仕方がないのではっきりと聞こえるように注意をしました」
この主張の場合は、上司の行動(近くに寄る)が部下への配慮とも受け取れます。その状況の中で最適な対応を試みたうえでの行為とも受け取れるでしょう。そのため、正当な言い分になる可能性があります。
加害者による主張に限らず、主張の正当性は判断が難しい面もあるため、事情聴取の際は、できる限りていねいに聞き取ることが必要です。
パワハラ認定後、言い訳をする加害者にどう対応する?
パワハラ加害者の行為がパワハラと認定された場合は、加害者も行為について認めなければなりません。しかし、加害者がパワハラ認定の判断に納得していない場合は、言い訳をする可能性があります。企業は、このような加害者に次の対応が有効です。
事実を振り返る教育や研修に参加してもらう
言い訳をするパワハラ加害者は、自分の非を認める状況ではありません。このような加害者への対応は、事実を振り返る教育や研修に参加させて更生を促すことが望まれます。
パワハラ加害者を更生させるための教育は、パワハラ行為について理解してもらうことです。パワハラ行為は、3つの要素を満たすことで認定されます。
優越的な関係を背景とした言動
業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
労働者の就業環境が害される行為
言い訳をするパワハラ加害者は、パワハラの概念から学ぶ必要があります。また、企業は指導をする立場の加害者に対し、パワハラ防止の取り組みを教育しなければなりません。
加害者自身が振り返るためのカウンセリングを行う
言い訳をするパワハラ加害者は、自分のパワハラ行為を振り返るためのカウンセリングが必要です。カウンセリングでは、自分の行為に対して「相手がどのように受け取るか」を考えられるように事実を振り返ります。
パワハラ加害者の自己主張が強い状態では、パワハラ行為を部分的に捉えたままになるでしょう。加害者自身が振り返りながら気づくことで、パワハラ行為の全体像が見えてくる可能性があります。
カウンセリングは加害者の固定化した考え方に変化を与え、客観的に捉えられるスキル習得に役立つでしょう。パワハラ加害者の行為に改善の余地がある場合は、事実の振り返りによる更生も考えましょう。
パワハラ加害者が言い訳をしない組織体制を整備しよう
言い訳をするパワハラ加害者は、自己主張が強く他の価値観を受け入れないタイプと言われています。自分が正しいと思い込んでいるため、部下にも強要してしまう行為がパワハラへと発展し、問題解決に向けた具体的な対応策を見いだせないことがあるでしょう。その結果、企業としても適切な処分を判断しづらい状況が続く可能性があります。
労働施策総合推進法(パワハラ防止法)は、企業の取り組みとしてパワハラ防止を義務化しています。まずは、企業全体がパワハラ行為の概念や対応について正しく理解することが求められます。そのうえで、パワハラ防止について就業規則で定め、本記事で紹介したパワハラ行為の理解と防止策を理解する教育や研修が必要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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