- 更新日 : 2025年1月20日
アルバイトにも労働基準法が適用!労働条件や違反となる事例を解説
人手不足の昨今において、アルバイトは貴重な労働力となります。アルバイトは好きな時間や曜日に働けるため、労働者側にとってもメリットのある形態です。しかし、アルバイトを雇用する企業のなかには、知らぬ間に労働基準法に違反している場合も少なくありません。当記事では、アルバイトと労働基準法の関係を解説します。
目次
アルバイトにも労働基準法は適用される
労働基準法は、アルバイトにも適用されます。労働基準法は、労働条件の最低基準を設けることによって、労働者の生活を守るための法律であり、対象となる労働者の雇用形態は問いません。正社員はもちろん、パートやアルバイトといった非正規雇用の労働者にも等しく適用されます。
たとえば、労働基準法第7条が規定する公民権行使の保障は当然、アルバイトにも適用されます。アルバイトが投票に行くための時間を請求した場合、企業は認めなくてはなりません。「アルバイトだからそのような権利はない」といった理屈は通用しないため、注意しましょう。
また、労働基準法第3条では、国籍や社会的身分などに基づく差別的取り扱いを禁止しており、この規定はアルバイトにも当然に適用されます。しかし、この社会的身分とは、人種や門地等の生来的な地位を意味します。そのため、正社員とアルバイトを異なる取り扱いとしていても、それは職制上の地位に基づくものであり、第3条に違反するものではありません。アルバイトの労働条件が労働基準法違反となる事例は、次項において詳述します。
アルバイトの労働条件が労働基準法違反となる事例
アルバイトを雇用する場合には、雇用契約において定めた労働条件が、労働基準法をはじめとした法令に違反していないか確認する必要があります。ここでは、アルバイトの労働条件が法違反となる事例を紹介します。
アルバイトの労働時間が1日8時間を超えている
労働基準法では、1日8時間および週40時間を法定労働時間として定めています。36協定を締結して労働基準監督署に届け出た場合や、災害等の臨時の必要性がある場合でなければ、法定労働時間を超える労働は原則認められません。
この規定は、アルバイトにも等しく適用されるため、アルバイトの労働時間が1日8時間または週40時間を超えているような場合には、労働基準法違反となります。
アルバイトの労働時間が1日6時間を超えても休憩を取れない
労働基準法では、1日6時間を超える労働に対しては45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩を付与することを義務付けています。この休憩の規定はアルバイトにも適用されるため、労働時間が6時間を超えているにもかかわらず、休憩を与えないことは労働基準法違反です。
なお、6時間を「超える」場合に休憩の付与が必要なため、6時間「以内」であれば付与は不要です。ただし、この場合でも適度な休憩時間を設定したほうが、十分なパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう。
アルバイトの時給が最低賃金を下回っている
アルバイトに対しては、労働基準法だけでなく、最低賃金法も適用されます。アルバイトの時給が最低賃金を下回る状態であれば、最低賃金法違反です。たとえば、2024年における東京都の最低賃金は1,163円のため、東京都の企業であれば、この額以上の時給を設定しなければなりません。
最低賃金額は毎年見直されるため、契約時点で最低賃金を上回っていても、改定によって最低賃金を下回る場合もあります。余裕を持った時給を設定するように心掛けましょう。
アルバイトの残業代を支給していない
法定労働時間は1日8時間、週40時間ですが、36協定を締結し届け出た場合には、この時間を超えた残業も可能となります。36協定はアルバイトも対象となるため、協定を締結し届け出れば、アルバイトでも残業は可能です。しかし、その場合には、残業時間に対して、25%以上の割増率で計算した残業代を支払わなければなりません。
また、アルバイトを午後10時から翌午前5時までに労働させる場合には、25%以上の割増率で計算した深夜手当の支払いが必要です。36協定を締結すれば、休日出勤も可能となりますが、割増率は35%以上となります。なお、残業時間が月に60時間を超える場合には、その超過分に対する割増率が50%以上まで引き上げられます。
アルバイトの有給申請を認めない
雇い入れから6か月間継続勤務し、労働義務のある全労働日の8割以上出勤した労働者には、年次有給休暇が付与されます。年次有給休暇は、雇用形態を問わず付与される権利であり、アルバイトでも条件を満たせば取得可能です。アルバイトの有給休暇申請を認めないことは、労働基準法に違反する行為となります。
ただし、アルバイトのような短時間有期雇用労働者は、正社員と異なり、週の勤務日数等に応じた日数が付与される「比例付与」の対象となることが多いです。
アルバイトのシフトを一方的に変更する
シフト制で勤務するアルバイトも多いですが、契約時に定めたシフトを企業が一方的に変更することは、労働契約法に違反する行為です。労働契約法では、シフトを含めた労働条件を変更する場合には、労働者の合意が必要であるとしています。シフトを変更する必要が生じた場合には、変更の必要性などを十分に説明し、アルバイトの合意を得たうえで行うようにしましょう。
18歳未満のアルバイトに22時以降に働かせている
アルバイトとして働く労働者は、未成年である場合も少なくありません。ただし、18歳未満の年少者を深夜帯である午後10時から翌午前5時までに働かせることは、労働基準法違反となります。労働基準法では、18歳未満の年少者を深夜帯に使用してはならないと定めているからです。
なお、この規定には例外が設けられており、災害等で臨時の必要性がある場合や、年少者が従事する事業が農業や水産業等の事業である場合などには、深夜帯に労働させることが可能です。
18歳未満のアルバイトに休日労働をさせている
36協定を締結し、届け出た場合であれば、アルバイトでも正社員と同様に休日出勤が可能となります。ただし、これはアルバイトが18歳以上である場合です。労働基準法では、18歳未満の年少者に残業や休日出勤を命じることを禁止しており、これらを命じた場合には労働基準法違反となります。
なお、アルバイト本人が希望した場合であっても同様ですが、災害や公務のために必要な場合などには、年少者でも残業や休日出勤が可能です。深夜帯の労働と違い、公務の場合も認められることに注意してください。
賃金の支払いの5原則を守っていない
労働基準法では、賃金支払いの5原則として、「通貨」で、「直接」労働者に対して、「全額」の賃金を、「毎月1回以上」、「一定の期日」を定めたうえで支払うことを要求しています。この原則はアルバイトに対しても適用されるため、アルバイトの代理人等に賃金を支払うことなどは、労働基準法違反となります。
アルバイトの労働基準法で注意すべきポイント
アルバイトの労働条件が法違反となる事例以外にも、注意すべきポイントはあります。本項では、項目ごとに解説します。
学生アルバイトを雇用する場合
18歳未満の年少者である学生をアルバイトとして雇用する場合には、その年齢を証する戸籍証明書の事業場への備え付けが義務付けられています。また、年少者には1か月単位の変形労働時間制やフレックスタイム制といった変形労働時間制の適用がありません。同様に年少者には、残業や休日出勤、深夜業などが原則禁止となるため、併せて注意しておきましょう。
アルバイトが仕事中にけがをした場合
労働者災害補償保険法(労災保険法)は、労働者の業務中や通勤中の事故によるけがや病気に対して、必要な保険給付を行う公的保険制度です。アルバイトも労働者である以上は、当然に労災保険法の適用を受けます。アルバイトを雇用した場合には、労災保険の手続きを忘れずに行いましょう。
また、アルバイトが業務中にけがを負った場合には、本人が労災の手続きを行います。しかし、知識がないことが多いため企業のサポートが必要でしょう。間違っても労災隠しなどを行わないようにしてください。
アルバイトが退職を申し出た場合
期間の定めのない労働者は、いつでも自由に退職できます。有期雇用契約でも、病気やけがなどの止むを得ない事情があれば、契約期間中の退職も可能です。
これはアルバイトであっても変わりはないため、アルバイトが退職を申し出た場合には、原則として企業は申し出を拒むことはできません。説得をする程度であれば問題ありませんが、過度な引き止めとならないように注意しましょう。
アルバイトやパートを掛け持ちしている場合
アルバイトやパートが、複数のアルバイト先やパート先を掛け持ちしていることも珍しくありません。ただし、このような場合には、掛け持ち先を含めて労働時間を通算する必要があります。原則として後に雇用契約を交わした企業が、残業代を支払う義務を負うため、雇い入れの際には、アルバイトやパートを掛け持ちしていないか確認しておきましょう。
アルバイトの労働基準法について相談できる窓口
残業代を支払わなかったり、シフトを強引かつ一方的に変更したりするなど、いわゆる「ブラックバイト」と呼ばれるような職場も存在します。そのような労働基準法や労働関係法令に触れるような職場に勤務している場合には、全国の労働局や労働基準監督署に設置された「総合労働相談センター」に相談することが可能です。
自分の勤務先が法違反の状態ではないかと感じた場合には、最寄りの相談コーナーに相談してください。また、弁護士や社労士といった専門家に相談することも有効です。通常は費用が掛かりますが、無料相談を行っている場合もあるため活用しましょう。
労働基準法はアルバイトを含むすべての労働者が対象
労働基準法の適用対象は、正社員などの正規雇用労働者だけではありません。労働基準法は、アルバイトやパートなどの非正規雇用労働者を含めたすべての労働者を保護するための法律です。当記事の解説を参考に、労働基準法への理解を深め、労働基準法に違反したアルバイトの労働条件を設定しないようにしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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