- 更新日 : 2024年12月2日
共働きの場合の定額減税はどうなる?手取りはいくら?
定額減税では、同一生計配偶者や扶養親族の分について、納税者本人の納める所得税から控除される仕組みです。では、共働きの夫婦の場合、定額減税はどのように考えればよいのでしょうか。
共働きの定額減税がどのように手続きされるのか、注意しなければいけないポイントや具体的に手取り額がどうなるのか、などについて解説します。
目次
共働きの場合、定額減税はどうなる?両者の給料から引かれる?
定額減税は、共働きの配偶者であっても要件を満たせば納税者本人が配偶者の分の定額減税を受けることができます。その場合には、配偶者は自身で定額減税を受けることはできません。
夫婦共働きの場合は、令和6年6月1日までに提出する扶養控除等申告書により下記について確認します。
- 配偶者が国内居住者でかつ同一生計配偶者であるかどうか
- 配偶者の合計所得金額が48万円以下であるかどうか
この要件に該当するかしないかで、納税者本人の定額減税の対象になるかどうかが変わってきます。

引用:給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた|国税庁
共働きしている配偶者の年間の合計所得金額が48万円以下の範囲内であれば、「同一生計配偶者」として納税者本人の定額減税の対象に含めることが可能です。よって、納税者本人の給与の中で配偶者の定額減税も行われます。
共働きしている配偶者の年間の合計所得金額が48万円を超える場合には、納税者本人の定額減税の対象からは外れます。配偶者自身の定額減税として控除を受けられるため、納税者本人、配偶者それぞれの給与において定額減税が行われます。
共働きの場合に定額減税が重複してしまうことはある?
共働きしている夫婦の場合、定額減税が重複してしまう可能性があります。通常、納税者本人は、令和6年6月1日までに会社に「扶養控除等申告書」を提出します。扶養控除等申告書に配偶者を同一生計配偶者として記載していて、合計所得金額が48万円以下(給与等の収入金額が103万円以下)であれば、定額減税は配偶者の分も合わせて納税者本人のほうで行われます。
配偶者が同一生計配偶者であっても、合計所得金額が48万円を超える場合には、納税者本人が定額減税を行うことはできません。したがって、配偶者自身の給与で定額減税を受けることになります。合計所得金額が48万円以下か48万円超かによって、誰の給与から定額減税を受けるかが変わってきます。
これらの理解が不十分な場合、重複して定額減税が手続きされる可能性があるため、間違いのないように注意が必要です。
共働きの場合の定額減税による手取り額- – 具体例を用いて解説
共働きの会社員で、配偶者は共働きで非扶養、子供2人を自分が扶養家族にしているAさんの場合で手取り額を計算してみましょう。
まず、Aさんは扶養家族が2人いるため、本人分と合わせて、所得税が3万円/人×3人=9万円、住民税が1万円/人×3人=3万円、合わせて12万円が定額減税額として減税されます。
Aさんの配偶者は、本人分だけが対象になりますので、所得税が3万円、住民税が1万円減税されます。
Aさんの手取額
Aさんは、6月に給与が50万円、賞与が100万円支給されました。給与が先に支給されるとすると、まず先に支給される給与から減税が行われます。
- 給与 50万円
- 社会保険料 7.5万円
- 所得税 0万円(本来は1.2万円、定額減税により0円)
- 住民税 0円
- 差引支給額 42.5万円
Aさんの定額減税の減税上限額は9万円のため、1.2万円の減税を受けて減税の残額が7.8万円になります。
次に賞与が支給され、減税が行われます。
- 給与 100万円
- 社会保険料 8.4万円
- 所得税 0万円(本来は5.8万円、定額減税により0円)
- 住民税 0円
- 差引支給額 91.6万円
Aさんの定額減税の残額が7.8万円のため、5.8万円の減税を受けて減税の残額が2.0万円になります。この2万円は、この後の7月以降に支給される給与または賞与の先に控除される所得税から順番に減税されます。
住民税については、6月分の納税額は徴収されないため0円です。7月からは、3万円の定額減税を反映させた年間の納税額を7月から翌年5月までの11ヶ月に分割して納税することになります。
Aさんの配偶者の手取額
Aさんの配偶者は、給与が20万円支給されました。
- 給与 20万円
- 社会保険料 3.1万円
- 所得税 0万円(本来は0.4万円、定額減税により0円)
- 住民税 0円
- 差引支給額 16.9万円
Aさんの定額減税の所得税の減税上限額は3万円のため、0.4万円の減税を受けて減税の残額が2.6万円になります。この2.6万円は、7月以降に支給される給与控除される所得税から順番に減税されます。
住民税については、6月分の納税額は徴収されないため0円です。7月からは、3万円の定額減税を反映させた年間の納税額を7月から翌年5月までの11ヶ月に分割して納税することになります。
共働きにおいて定額減税で注意するポイント
ここでは、共働きの夫婦が定額減税を受けるうえで、注意すべきポイントについて見ていきます。
配偶者が死亡した場合
共働きだった配偶者が令和6年中に死亡した場合、配偶者の死亡した日の状況が同一生計配偶者と判定されるのであれば、定額減税の計算に含めることになっています。
定額減税は、令和6年6月1日時点での扶養家族の状況で判定することになっています。ただし、令和6年6月1日よりも前に配偶者が死亡していた場合でも、配偶者の死亡日で判断します。
夫もしくは妻が他の所得者の扶養親族の場合
夫もしくは妻が他の所得者(妻もしくは夫)の扶養親族である場合、扶養親族でないほうの妻もしくは夫は、自身の給与から定額減税を受けとります。一方、扶養親族である夫もしくは妻は、扶養親族でないほうの妻もしくは夫の給与から定額減税を受けとることになります。
つまり、夫もしくは妻が配偶者の扶養親族の場合、扶養している配偶者は本人の給与から、扶養されている配偶者は扶養している配偶者の給与から定額減税を受け取る仕組みです。
子供が他の所得者の扶養親族の場合
夫婦が共働きの場合、同じ世帯でどちらが子供を扶養親族にするかという問題が発生します。このような場合は、どちらの扶養親族にするかを決めて扶養控除等申告書を提出して、扶養親族にしたほうの給与で定額減税を行います。
扶養親族にしなかったほうの人は、扶養控除等申告書のD欄「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」に氏名や続柄、生年月日など、必要事項を記入すると分かりやすいでしょう。
共働きの場合も定額減税の対象者を正しく判断しましょう
定額減税は制度の内容が難しい点があります。しかし、同一生計配偶者や扶養親族にあたる人数を正しく判断できれば正確な手続きを行うことが可能です。
共働きの場合においても同様で、同一生計配偶者にあたるかどうかが重要です。手続きを行う際には、きちんと確認して間違えないようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
時短勤務で給料は減る?減らない?制度や計算方法、2025年の新制度
近年ワークライフバランスの重要性が高まる中、時短勤務制度への注目が高まっています。しかし、時短勤務を導入する際に、給与への影響や制度の運用方法に不安を覚える企業も少なくありません。 本記事では、時短勤務に関する基本的な知識から給与計算方法、…
詳しくみる福島県の給与計算代行の料金相場・便利なガイド3選!代表的な社労士事務所も
福島県は農業や製造業が盛んで、特に米や自動車部品の生産が有名です。また、再生可能エネルギーや観光業も急速に発展しており、多様なビジネスが展開されています。こうした多岐にわたる業種では、給与計算の正確性と効率化が企業運営において重要ですが、中…
詳しくみる就業規則の退職金規定のポイントは?支給条件から計算方法、トラブル対処法まで解説
退職金は、長年勤続した従業員にとって将来の生活を支える大切な資金であり、企業にとっては従業員のモチベーションや定着率に関わる重要な人事制度の一つです。しかし、「自分の退職金はどうなっているのか?」「就業規則のどこを見ればいいのかわからない」…
詳しくみる有給休暇の保有日数は最大40日?35日?保有の条件を紹介
有給休暇は最大で40日保有可能だと聞いたことはないでしょうか。しかし、それは単純に付与された日数全てを繰り越せる場合に限られます。また、入社したら誰でも有給を使えるわけではなく、有給付与には2つの条件があります。 この記事では有給の最大保有…
詳しくみる東京都の給与計算代行の料金相場・便利なガイド3選!代表的な社労士事務所も
東京都は日本の首都として企業数が非常に多く、多様な業種が集中しています。そのため給与計算代行サービスの需要も高く、料金相場やサービス内容も幅広いのが特徴です。 しかし、多様な選択肢の中から最適なサービスを見つけるのは意外と難しいもの。今回は…
詳しくみる源泉徴収義務者になる基準とは?
源泉徴収とは、給与等を支払う側が、受け取る側の所得税額を計算し、あらかじめ給与等から差し引いて(天引きして)国に前払いすることをいいます。 では、源泉徴収の義務は誰に発生するのでしょうか。 源泉徴収は誰の義務? 給与等を受け取る者が、対象と…
詳しくみる