- 更新日 : 2024年10月30日
キャリア教育とは?定義や背景、習得できる能力、具体的な施策について解説!
キャリア教育は子供や若者の成長過程で行われる、キャリア形成にまつわる教育です。人間関係形成・社会形成能力、自己理解・自己管理能力、課題対応能力、キャリアプランニング能力が習得できます。技術発展・グローバル化・多様化・長寿命化を背景に注目され、注意するポイントは自主性を大切にして押し付けとしないことです。
目次
キャリア教育とは?
キャリア教育とは職業や進路の選択・決定に必要な、知識や技能を身につける教育を意味します。子供や若者の成長過程で行われる、自分の希望するキャリア形成をしていくための教育を指す言葉です。自己理解や職業理解、キャリア計画などが含まれます。
キャリア教育の定義
キャリア教育はさまざまな定義づけがされていますが、最も代表的なものは「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通してキャリア発達を促す教育」です。
「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(中央教育審議会キャリア教育・職業教育特別部会 第二次審議経過報告)」によるものであり、この定義づけを行われた理由については「キャリア教育の必要性や意義の理解は学校教育の中で高まっており、実際の成果も徐々に上がってはいる。しかしながら、『新しい教育活動を指すものではない』としてきたことにより、従来の教育活動のままでよいと誤解されたり、「体験活動が重要」という側面のみをとらえて、職場体験活動の実施をもってキャリア教育を行ったものとみなしたりする傾向が指摘されるなど一人一人の教員の受け止め方や実践の内容・水準には、ばらつきのあることも課題としてうかがえる。このような状況の背景にはキャリア教育の捉え方が変化してきた背景が十分に整理されなかったことも一因となっていることが考えられる。今後、キャリア教育の本来の理念に立ち返った理解を共有していくことは重要である」と述べられています。
キャリア教育と職業教育の違い
キャリア教育はキャリア形成に必要な知識やスキルを学ぶ教育を指します。希望するキャリアを形成するため、自発的に考え、計画し、行動に移すための教育をいいます。
これに対し、職業教育は特定の仕事に就くために必要な知識や技術を習得するための教育を意味します。IT業界で働くため、マネジメントの仕事をするため、といった希望する職に就くために必要な知識やスキルについて受ける教育が、職業教育に該当します。
キャリア教育と職業教育は目的・内容ともに異なってはいるもののお互いに関連し合い、どちらもキャリア形成において重要な役割を担っています。
キャリア教育が推進される背景は?
キャリア教育が推進される背景には技術の発展やグローバル化、多様化が進み、社会が急激に、大きく変わってきていることが挙げられます。技術の発展によって単純作業はAIが行うようになり、さらにグローバル化や多様化によっても人間が行うべき仕事の質・内容は大きく変化しています。
こうした変化に対応するためにキャリア教育の必要性が認識され、推進されるようになりました。
また、長寿命化により働く期間が長期化し、多くの人がキャリアチェンジをするようになったり、高齢期に至っても働き続けられるよう、キャリア形成を支援する必要が高まったりしたことも、キャリア教育推進の背景とされます。
キャリア教育で習得できる主な能力は?
キャリア教育ではどのような能力を身につけられるのでしょうか?キャリア教育により習得できる能力を説明します。
人間関係形成・社会形成能力
キャリア教育で習得できる能力には、まず人間関係形成・社会形成能力が挙げられます。社会に対して他人と協力・協働しながら参画し、積極的に形成していく能力が、人間関係形成・社会形成能力です。この能力には他人の考えや立場を理解し、相手の意見を聞いたうえで自分の意見を正確に伝え、自分の置かれている状況を把握して、役割を果たしていくことが求められます。
人間関係形成・社会形成能力の具体的要素としては、以下のものが挙げられます。
- 他人の個性を理解する力
- 他人に働きかける力
- コミュニケーションスキル
- チームワーク
- リーダーシップ
人間関係形成・社会形成能力はさまざまな対人経験にともなって培われます。キャリア教育で教師や他生徒の交流・集団活動をするうえで、習得が図れます。
自己理解・自己管理能力
自己理解・自己管理能力もキャリア教育で習得できます。自分について深く知り、また自分の感情や思考を律せられる能力が、自己理解・自己管理能力です。自分ができること・したいこと・意義を感じることと社会との関係を適切に保ちながら主体的に行動し、自分を律して成長していくことが、この能力には必要です。
自己理解・自己管理能力の具体的要素としては、以下のものが挙げられるでしょう。
- 自己の役割への理解
- 前向きに考える力
- 自己の動機づけ
- 忍耐力
- ストレスマネジメント
- 主体的行動
キャリア教育においては自主的な行動により、自己理解・自己管理能力が育まれます。
課題対応能力
さまざまな課題に気づき、正確な分析の結果、解決に導く課題対応能力も、キャリア教育で習得できる能力に含まれます。従来の考え方や方法にとらわれずに物事を前に進めていくために必要な力として、現代社会でとくに求められている能力です。
課題対応能力の具体的要素としては、以下のものが挙げられます。
- 情報の理解、選択、処理
- 本質の理解
- 原因の追及
- 課題発見
- 計画立案
- 実行力
学校生活でのさまざまな問題解決に生徒に自ら取り組ませることが、課題対応能力の習得につながります。
キャリアプランニング能力
キャリアプランニング能力とは、自らの適性や価値観、環境などを踏まえて、将来のキャリアについて主体的に考え、計画を立て、実行に移す能力のことです。
キャリアプランニング能力の具体的な要素としては、以下のものを挙げることができるでしょう。
- 学ぶことや働くことへの意義や役割の理解
- 多様性への理解
- 将来設計
さまざまな社会人との交流や主体的な職業体験の企画・立案などが、キャリアプランニング能力の育成に役立ちます。
キャリア教育の具体的な施策は?
キャリア教育の具体的な施策には、以下のものが挙げられます。
小学校
- 勤労体験
- 生産体験
- ボランティア
中学校・高等学校
- 職業や進路に関わる啓発的な体験
- 学校生活の充実や改善を図る活動
大学
- 自己理解を深めるためのワークショップ
- 職業理解を支援するための職業体験
- キャリア形成を支援するためのキャリアカウンセリング
キャリア教育で注意すべきポイントは?
キャリア教育では一方的にならないよう、細やかな配慮が必要となることに注意が必要です。上から指導したり、価値観を押し付けたりすることなく、自己決定を支援するようにしなければなりません。また、さまざまなキャリアパスを提示して、1つの成功事例に固執しないようにすることも注意すべきポイントとなっています。
キャリア教育の視点も採用活動や人事評価に取り入れよう
キャリア教育は子供や若者の成長過程で行われる、キャリア形成にまつわる教育です。技術の発展や社会のグローバル化・多様化、寿命の延伸から生じるキャリアチェンジの増加を背景に、近年、注目されています。
人間関係形成・社会形成能力、自己理解・自己管理能力、課題対応能力、キャリアプランニング能力が、キャリア教育で習得できます。採用活動や人事評価に活かせるよう、キャリア教育について十分な知識を身につけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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