- 更新日 : 2025年8月26日
KJ法とは?やり方や活用方法をわかりやすく解説!
KJ法とは、アイデアの言語化と可視化を通じて分析を効果的に行う手法です。複数のメンバーで自由に多くのアイデアを出し合うブレインストーミングで得られたアイデアを、KJ法により整理し、問題解決につなげることで、新しい視点の発見やサービスの創出につながることもあります。
ここでは、KJ法のやり方とポイントについて紹介します。
目次
KJ法とは?
KJ法とは、カードや付箋を用いて、情報やアイデアを効率的に整理する手法のことです。たとえば、付箋に一つ一つの情報やアイデアを記載し、最初に情報の言語化と可視化を行います。そして、付箋を並び替えたりグループ化(グルーピング)したりすることで、それらの情報やアイデアを理論的に整理し、問題解決のための方法を解明していきます。このように、アイデアの言語化と可視化を通じて、分析を効果的に行うことで、問題解決や新たな発見につなげることができます。
KJ法は川喜田二郎の書籍で有名に
KJ法が広く知られるようになったのは、文化人類学者である川喜田 二郎氏の著書によるものです。1967年に発売された『発想法』で、「効果的な研究・研修方法である」と紹介され、学問の場で広まりました。
KJ法は、文化人類学のフィールドワークで得た膨大な情報を効率的に整理するために生み出されたものです。実際に使用されるなかで、アイデアの整理だけではなく、本質的な問題の特定や課題の発見、新たなアイデアの創出につながることがわかり、分析手法・発想手法として、ビジネスシーンでも支持されています。
ブレインストーミングにも活用できる
KJ法のポイントとなるのが、ブレインストーミングとの親和性です。ブレインストーミングでは、グループのメンバーで自由な発想でいくつものアイデアを出し合います。基本的には10人以下の少人数で行うことが望ましいといわれていますが、その際、立場や役職が異なるメンバーが集まると、多様な意見やアイデアを出し合うことができます。
ブレインストーミングは、テーマを決めて、いくつものアイデアや問題点をメンバーで自由に出し合うことを目的としています。効果的に行うには、以下のポイントを押さえて行うのが良いでしょう。
- 事前に時間を設定する。時間内に終えるようにすることで、高い効果を発揮できる。
- 司会、書記の役割を決める。
- ホワイトボード、付箋、ペンなどの備品をそろえておく。
- ブレインストーミングの時間は、長くとりすぎないのが理想的。テーマに応じて20〜30分が適切、長くても1時間といわれます。
- 設定した時間の中で、アイデアを発想・量産する作業と、量産してきたアイデアをまとめる作業にプロセスを分けて行う。
ブレインストーミングに慣れていないと、ついつい長い時間ミーティングのように行ってしまいますが、途中でメンバーの集中力が切れてしまう恐れがあります。延長する場合は、適宜休憩を挟みましょう。
KJ法のやり方・ルール・手順
KJ法は、下記の手順で行います。アイデアを書き出す時間と、グルーピングをして整理するステップが分けてあることがポイントです。
- アイデアを書き出す
- アイデアをグルーピング
- 関係性を図解化
- 文章化(叙述化)
各ステップを順番に解説します。
アイデアを書き出す
アイデアをカードや付箋に書き出すステップであり、カード作りとも呼ばれます。
KJ法を実施する前に、テーマを参加者に伝え、テーマに沿ってブレインストーミングを行い、多くのアイデアを出し合うのが良いでしょう。なるべくたくさんの意見が参加者から出るように、他人のアイデアを否定しないことと、これまでの発想にない新たなアイデアを歓迎するムードを作るのがポイントです。
アイデアは、1枚のカード(付箋)に1つ書き出すようにします。そうすることで、後のステップのグルーピングがしやすくなります。
アイデアをグルーピング
グルーピングでは、カードを整理し分類します。まずは無造作にカードを並べ、どんなことが書かれているかをよく読み、そのなかで、まず印象が似ているアイデアや同じような意見を集めて小さなグループを作ります。
その後、小グループをよく観察し、カードのアイデアのなかで、共通して表現していることを小グループの見出しとします。小グループの見出しを見て、親近性のある小グループ同士を中グループにまとめます。さらに作業を繰り返し、数個の大きなグループができたら、グルーピングは終了です。
関係性を図解化
その後、各アイデアの関係性を見出しながら論理的整序を行い、図解化していきます。
論理的整序のポイントは、以下の通りです。
- 各カードのグループごとに関連性があるもの同士を近くに配置する(空間配置)
- 線でカード同士をつないだり、囲んだりして関係性を可視化する
- 対立、因果関係、原因・結果などの関係性を矢印などで書き表す
文章化(叙述化)
ステップ3で図解化した関係を言語化します。言語化する際には、グループのカードに書かれている言葉(ワード)をできるだけ多く使うことがポイントです。
グループごとの関係性を図解化した後、グループの重要度に応じた優先順位を付けて参加者で議論・共有し、その結果を文章化します。
KJ法のポイント
KJ法では、ブレインストーミングなどを実施して、なるべく多くのアイデアを出すことが第一歩です。発想を妨げないために、以下のルールを守ることが重要です。
・自由に発言する
ブレインストーミングでは、アイデアの質にこだわらず、量を重視します。役に立つか、良いアイデアかを悩まず、活発な発言ができるようにメンバー同士が心がけます。
・アイデアを批判しない、判断や決断もしない
アイデアへの批判や判断を控えることで、自由な発想が生まれます。どのような意見でも、歓迎する雰囲気を作ることが理想的です。
・少数意見を活用する
会議などでは、発言力があるメンバーの意見ばかりが重視されると偏った結論に至るケースがあります。KJ法では少数意見もアイデアの1つとして取り入れることが重要です。
KJ法のメリット・デメリット
KJ法は、メンバーの頭のなかにあるアイデアを可視化し、情報整理できる点がメリットです。一方で、時間を効果的に活用するためには、場の雰囲気作りや論理的整理を意識して行う必要があります。
KJ法のメリット
・アイデアを可視化できる
カードに書き出すことで、メンバーの頭の中にある考えや意見が可視化されます。断片的であったアイデアを最終的には文章化するため、メンバー同士で各情報をまとめたグループごとの関連性を、同じ認識として共有することができます。
・論理的に情報整理ができる
アイデアの関係性や、近しいアイデアを組み合わせるなど、KJ法では論理的視点に基づいて情報を整理します。そのため、テーマに対して話題がそれることなく、議論を深めることができます。
・新たな問題の特定や意見を創造できる
さまざまな意見をまとめることで、新しい問題や可能性に気づくこともあります。論理的視点で状況を整理することで、問題の改善点が明らかになるなど、建設的な話し合いが可能です。
KJ法のデメリット
・準備に手間がかかる
参加者を集めるだけではなく、カードなどの備品の準備、事前のテーマ設定が重要です。さらに、司会や書記のように、KJ法を理解したメンバーがいなければ、議論をまとめることができません。
・参加者によってアイデアが変わる
ブレインストーミングで出されるアイデアは、参会者一人ひとりの特性に大きく関係します。メンバーの構成次第では、意見が出しにくい雰囲気が生まれることや情報が大きく偏る恐れがあります。こうした状況を防ぐために、多様な立場のメンバーを集めたり、事前にテーマを共有し、一人ひとりの発想の柔軟性を高めたりしておく必要があります。
KJ法が人事労務において活用できる場面
人事労務の業務でも、情報整理が必要となる場面があります。KJ法は、以下のようなケースで活用できます。
採用における人材要件定義
採用における人材要件定義は、企業にとって重要なテーマです。採用に関わる面接官一人ひとりの基準が異なっていては、自社にとって「優秀」な人材を獲得するのが難しくなります。また、欲しい人材の要件にしても、「スキル」「社風とのマッチ」など、さまざまな要素があり、レイヤーやポジションごとに優先するべき項目も異なるため、事前の情報整理が重要です。
KJ法を用いれば、人材に求める要件をブレインストーミングし、整理しながら優先順位をつけることができます。人材要件の優先順位が言語化されていれば、エージェントとの連携や社内での認識の共有の際に効果的です。
研修計画の立案
新入社員研修や管理職研修など、新しい研修の導入、研修内容の刷新の際にもKJ法が役立ちます。昨今では、外部の研修サービスも充実しており、さまざまなプログラムがあることから、アイデアを広く求め、整理することで、自社にとって必要な研修プログラムを見極めることができます。
情報を論理的に整理できるKJ法を活用しよう
KJ法は、アイデアの論理的な整理を通じて問題点を解決することや、新たな発想を生み出すことができる手法です。なにかのテーマに対して行き詰ったときや、会議をしてもなかなか意見がまとまらないときには、KJ法を用いることで、問題解決の方法や改善点が見つかることがあります。
KJ法を行う際には、活発な意見や考えが出し合える雰囲気作りが大切です。そのためにも、事前に備品の準備やテーマの選定、参加者の決定など、事前準備をしっかりと行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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