- 更新日 : 2024年10月30日
コーチングとは?内容や活用できる場面はある?
人材育成や目標達成の手法として取り入れる企業が増えている「コーチング」ですが、コーチングとは何であるのか、いざ聞かれると分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで本記事ではコーチングの概要から注目されるようになった背景、活用できる場面、学べる場所、必要な資格があるのか否かなど、順を追って解説します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
コーチングとは?
コーチングとは質問・傾聴・観察・提案などをしながら、相手が本来持っている力や可能性を最大限発揮できるようにサポートするためのコミュニケーション技術です。「答えはその人の中にある」という考えに基づいて「外から与えられた答えは情報」「自分の中にある答えは納得感」と位置付けており、後者の自分の納得感を重視しています。コーチングは「答えを与える」ものではなく、あくまで「答えを創り出すサポートをする」ものなのです。
コーチングの定義と三原則とは
- コーチングの定義
コーチングとは自発的行動を促進するコミュニケーションを意味します。個々人に合わせたコミュニケーションを通じて、目標達成に必要な知識、スキル、ツールが何であるかを棚卸しし、それらをクライアント(コーチングを受ける側)に備えさせるプロセスのことを指します。
- コーチングの三原則
- インタラクティブ(双方向)クライアントの育成を促すために、コーチング内でのインタラクティブなアプローチは必須条件です。コーチングを行う側が答えを与え、クライアントは与えられた答え通りに実行するという一方的なコミュニケーションでは、自発的に行動する力が養われません。
自ら考えて対応できるように促すためには、答えや指示を与えるのではなく、クライアントにも意見などを言ってもらうインタラクティブなアプローチが必要不可欠です。このようなアプローチは一見手間や時間がかかるように見えますが、長期的にみるとクライアントの自発的行動を促進し、育成に繋げることができます。
- オンゴーイング(現在進行形)コーチングは一度受けたら終わりではなく、クライアントが自走できるようになるまで継続的に行われます。重要なのは、コーチングを受けた後に現場へ戻って実践し、その後再びコーチングを受けてまた現場で実践するという繰り返しをすることです。
一度コーチングを受けただけで行動変容をするというのは難しとされています。コーチングセッションの内容をもとに実践し、フィードバックを得て結果を確認して改善。また実践して……というオンゴーイングな関わりによってクライアントが成長し、結果的に目標達成や問題解決に繋がるのです。
- テーラーメイド(個別対応)
コーチングは基本的に1対1で行います。従来行われていた人材開発手法は、全員に対して一括の方法をとることが主流でした。しかし、人は本来多様性のある生き物です。価値観や受け取り方、コミュニケーションタイプ、強みなど全てが違います。そのためコーチングでは、一人ひとりの型に合わせて洋服を仕立てるテーラーメイドのようにセッションを行います。クライアント一人一人に合わせた受け取りやすい方法で質問やフィードバックをし、テーラーメイドなコミュニケーションをするのです。
- インタラクティブ(双方向)クライアントの育成を促すために、コーチング内でのインタラクティブなアプローチは必須条件です。コーチングを行う側が答えを与え、クライアントは与えられた答え通りに実行するという一方的なコミュニケーションでは、自発的に行動する力が養われません。
コーチングの歴史
コーチングの起源は、1500年代に生まれた「Coach=馬車」という言葉に由来します。馬車の役割である「その人が望むところへ送り届ける」という意味が転じて、コーチングという言葉は「人の目標達成を支援する」という意味で使われるようになりました。
ビジネスにおけるコミュニケーション技術として使われ始めたのは1950年代です。当時ハーバード大学助教授であったマイルズ・メイズ氏の著書『The Growth and Development of Executives』(1959 年)の中で「マネジメントにはコーチングが重要なスキルである」と明記されたことがきっかけになりました。以降、1980年代になるとコーチングに関する出版物が多く登場したのです。
日本では、1997年にコーチ・エィ(当時コーチ・トゥエンティワン)が国内初のコーチング学習プログラムの提供を開始。これを機に企業やスポーツ、教育など、さまざまな分野でコーチングが活用されるようになりました。現在では「組織のマネジメントにおける人材開発手法」として認知度が高まり、多くの企業や組織が人材開発・リーダー育成・風土改革を目的にコーチングを導入しています。
コーチングとコンサルティングの違い
コーチングとコンサルティングの違いは大きく2つあります。
- 目的
コーチングは目標達成や課題解決をすることよりも、クライアントが自身の強みや悩みを自覚して成長を促すことを目的としています。一方コンサルティングはクライアントが抱えている課題を解決することや目標達成をすることが目的です。そのため、コーチングでは目標達成や課題解決に対する答えを持っているのはクライアント自身であると考え、コンサルティングでは答えを持っているのはコンサルタントであると考えます。
- アドバイスの有無上記のような背景から、アドバイスを行うか否かもコーチングとコンサルティングの違いの1つです。コーチングはクライアントの主体的な行動や成長を促すことが目的なので、アドバイスは行いません。一方コンサルティングは目標達成や課題解決が目的なので、コンサルタントの豊かな知識・経験をもとに具体的なアドバイスを行います。
コーチングとセラピーの違い
コーチングとセラピーの違いは大きく2つあります。
- 目的コーチングの目的はクライアントが自身の内側から見つけた目標達成案・課題解決策を実行して前進でききるように、学びや小さなステップを作り出すことを目的としています。一方でセラピーは過去を理解して心の傷を癒すことを目的としています。そのため、コーチングではクライアントの現在を見てクライアントが求める未来を築く支援をし、セラピーではクライアントの過去を見て現在を管理する支援をします。
- 関係性コーチングではクライアントとコーチは対等と考えられており、上下関係や知識の優劣などは存在しません。一方セラピーは医者と患者という関係性でなりたっています。そのため、コーチはクライアントに対して質問を投げかけることで内側から答えをみつけるという思考プロセスの「共同創作」をし、セラピストは障害を「診断」して心の傷に対処します。
コーチングとカウンセリングの違い
コーチングとカウンセリングの違いは大きく2つあります。
- アプローチ
コーチングではクライアントがありたい姿になることを目標に「ゼロからプラスに向かって支援をする」アプローチをします。一方カウンセリングでは、精神的な悩みを抱えた人を対象とした援助のため「マイナスをゼロに戻す支援をする」アプローチをします。そのため、セラピーと同様に、カウンセリングでもクライアントの過去に焦点をあてて、クライアントの気持ちを整理し現在をゼロの状態まで導きます。
- 重視するポイントコーチングでは、クライアントに「考えてもらうこと」を重視します。抱えている問題に対してクライアント自ら考えて答えを出せるように、コーチは最適な質問を考えて問いかけます。一方カウンセリングでは、クライアントに「話してもらうこと」を重視します。内に抱えていることを言葉にできるように傾聴して、頭の中や気持ちを整理しやすくなるようにガイドするのです。
コーチングとティーチングの違い
コーチングとティーチングの違いは大きく2つあります。
- 関係性コーチングではコーチとクライアントが対等な関係でコミュニケーションを進めます。クライアントが希望する未来に向かって、どのような行動を取りたいのかなどを質問や傾聴、観察をしながら意見交換をします。一方ティーチングでは先生と生徒という上下関係が前提でコミュニケーションを進めます。あくまで、知識や経験が豊富な先生から生徒へ指導が行われる、というスタンスなのが特徴です。
- アプローチコーチングでは、クライアント自身で課題解決や目標達成に向けた答えをみつけられるように、コーチが質問を投げかけたり提案をするというアプローチをすることでサポートをします。一方ティーチングでは、先生が持っている課題解決や目標達成に向けた答えを、生徒に与える・教えるというアプローチで指示・指導を行います。
コーチングが注目される背景
コーチングが注目される背景は大きく2つあります。
1つ目は、ビジネスシーンにおける世代間ギャップの拡大や価値観の多様化により、従来の指示命令がメインの指導では人が意欲的に動かなくなったということです。現在ではより個人にコミットした指導が求められており、それがコーチングの特徴とマッチしたため、マネジメントスキルの一環として注目されています。
2つ目に、変化の激しいビジネス社会において、自主的に判断して行動できる人材が求められていることが挙げられます。コーチングセッションを繰り返すことで、自分自身が持っている能力や可能性を最大限に発揮できる「自律型人材」を育成できることも、今コーチングが注目されている理由の1つです。
コーチングが活用できる場面
それでは、コーチングは具体的にどのような場面で活用できるのでしょうか。続いて、コーチングが活用できる場面を解説します。
会社でのマネジメント・リーダーシップ発揮
コーチングが活用できる場面として、まず、会社でのマネジメント・リーダシップの発揮が挙げられます。部下が抱える課題解決や掲げている目標達成に向けて、コーチングを通じてサポートすることができます。また、コーチングを用いたコミュニケーションを繰り返すことで、部下自ら考えて答えを出し行動できる人材へと育成することもできるのです。
個人の成長
コーチングは上記のようなビジネスシーンだけではなく、個人の成長を目的としても活用することができます。この場合のように、自分個人に向けてコーチングを行うことを「セルフコーチング」と言います。今の自分と理想の自分に差があると感じている時、セルフコーチングを行うことで目標が明確になり、納得感を持って行動できるようになるのです。
コーチングはどこで学べる?
コーチングは民間のコーチングスクールで学ぶことができます。現在ではさまざまなコーチングスクールが開講されています。コーチングスクールを選ぶ際は、まずコーチングの資格を保有した講師が在籍しているかを必ず確認するようにしましょう。そのうえで、自身がコーチングを学ぶ理由とカリキュラムがマッチしているスクールを選びましょう。
コーチングに必要な資格はある?
コーチングには国家資格はありません。しかし、その専門性の高さから、民間の資格がいくつかあります。続いて、代表的なコーチングの資格3つについて解説します。
- 国際コーチ連盟認定のコーチ資格国際コーチ連盟(ICF)から認定を受けている国際的なコーチング資格です。国内では一般社団法人 国際コーチ連盟日本支部が運営をしています。
- 一般財団法人生涯学習開発財団の認定コーチ資格日本で初めてのコーチ認定制度です。株式会社コーチ・エィによるプログラムを履修して実戦経験を積むなどの複数条件を満たすことで取得できます。
- 一般社団法人日本コーチ連盟(JCF)の認定コーチ資格
日本コーチ連盟ではコーチとして活躍するための資格と、コーチング技能をレクチャーするインストラクターとしての資格を発行しているため、目的に合わせた資格取得ができます。
これからはコーチング力が求められる
今回はコーチングの概要や注目されるようになった背景、活用できる場面・学べる場所、必要な資格があるのか否かなどを解説してきました。仕事においてもプライベートにおいても、コーチングの技術は活かせるスキルであることを、ご理解いただけたのではないでしょうか。仕事においてはマネジメントやリーダシップが求められる立場の方であれば、部下とコミュニケーションをとるうえで身につけておいて損はないスキルです。コーチングのスキル習得に興味がある方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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