- 更新日 : 2023年7月21日
ピグマリオン効果とは?由来やビジネスにおける活用ついて紹介
教育現場では、周囲の大人の期待が児童の学力やパーソナリティの形成に及ぼす影響が大きいとされています。心理学においてはピグマリオン効果として知られています。この記事では、ピグマリオン効果の基礎知識のほか、ビジネスにおける活用などについて解説していきます。
目次
ピグマリオン効果とは?
ピグマリオン効果は、教師が生徒に対して期待を持つことで、生徒の成績が上昇する現象です。この効果は、1968年にアメリカの心理学者ローゼンタールとジェイコブソンによって発見されました。
ピグマリオン効果の由来・実験
ピグマリオン効果の由来は、ギリシャ神話に登場する彫刻家ピグマリオンからきています。彼は自分が作った美しい女性像に恋をし、神々の力でその像が実在の女性になるように願い、その願いが叶ったという話があります。
教師期待効果・ローゼンタール効果とも言われる
ローゼンタールとジェイコブソンは、ある学校で生徒たちにIQテストを行い、その結果からランダムに選んだ生徒たちを「成長が著しい」と教師たちに伝えました。しかし、実際にはランダムに選ばれた生徒たちであったにもかかわらず、「成長が著しい」と伝えられた生徒たちは、他の生徒たちよりも成績が上昇したことがわかりました。
ピグマリオン効果は、教師の期待が生徒の学力に影響を及ぼすことから教師期待効果、また、実験者の名前にちなんでローゼンタール効果とも呼ばれています。
ピグマリオン効果以外の似た効果と違い
心理学では、ピグマリオン効果以外にも「効果」の名がつく概念があります。ゴーレム効果、ハロー効果、ホーソン効果などを挙げることができますが、どのような違いがあるのでしょうか。
ゴーレム効果
ゴーレム効果とは、他人に対して期待できる要素がないと思うことで相手のパフォーマンスが低下する心理的効果を意味します。例えば、教師が生徒に対して「あなたは勉強ができない」と思っていると、生徒はその期待に応えて勉強ができなくなることがあります。
ピグマリオン効果とゴーレム効果は、どちらも他人の期待が自己成就的になる心理効果ですが、その期待が高い場合はピグマリオン効果、低い場合はゴーレム効果と呼ばれます。ピグマリオン効果は、相手に対して期待をすると、その期待通りになるという心理効果ですが、一方のゴーレム効果は、相手に対して期待できない、見込みがないと思っていると、本当にその通りの悪い結果になってしまうという逆の効果であるという違いがあります。
ハロー効果
ハロー効果とは、評価対象となる人物が持つ一部の特徴によってその他の部分に対する評価がゆがめられてしまう心理的誤差傾向の一つです。例えば、美人だから優秀だというように、外見や印象によって全体的な評価が左右されることなどが該当します。
ピグマリオン効果は相手に対して期待をすると、その期待通りになるという心理効果ですが、ハロー効果は情報を与えられた人が自分勝手にその対象に対してバイアスをかけて、全体評価をしてしまう心理的誤差傾向という違いがあります。
ホーソン効果
ホーソン効果とは、他人から注目されることでその期待に応えるために成果を発揮しようとする人の心理的効果を指します。例えば、社員が上司から「あなたの仕事は素晴らしい」と言われた場合、その社員は今後も素晴らしい仕事をすることなどを挙げることができるでしょう。
ピグマリオン効果とホーソン効果は、どちらも他人の期待が自己成就的になる心理効果です。しかし、ピグマリオン効果は教師のように上位にある者が生徒のような下位にある相手に対して期待をすると、その期待通りになるという心理効果である一方、ホーソン効果は第三者からの注目によって生じる心理現象であり、上下関係に依存しない点が異なります。
ピグマリオン効果は信頼できる?再現性はある?
では、ピグマリオン効果は、本当に効果があるのでしょうか。その信頼性、再現性についてみていきましょう。
ピグマリオン効果の信頼性
ピグマリオン効果については、その信頼性について議論されることもあります。例えば、期待を持たれた側が自分自身に対して期待を持ち、自己実現を図ろうとすれば、成績の向上にもつながります。単純に教師からの期待が高いことで、その期待に応えるというピグマリオン効果と同一視できないケースも考えられます。
また、ピグマリオン効果は期待をかけられた人が主体的に伸びるのではなく、期待をかける教師などが本来、公平に扱うべき生徒の一部の生徒にだけ無意識に期待通りになるように関わることでパフォーマンスが向上するという見方もあります。
ピグマリオン効果の再現性
研究における実験の再現性の有無はその理論の信頼性を大きく左右します。この点、心理学の研究論文は再現性が低いという指摘があります。画一性がある物質と異なり、人の心は変化しやすいため、実験の結果にはばらつきが生じやすいためです。
ピグマリオン効果についても再現性が低いという一部の批判がありますが、その後のローゼンタールの論文では多数の追試の結果、効果量を示す相関を中程度の0.30としています(“The Pygmalion effect and its mediating mechanisms.”Robert Rosenthal(2002))。また、日本の研究者の実験でも教師期待が学習成果に有意な正のパス係数が確認されたとするものもあります。
ピグマリオン効果をビジネスで活用するには?
学校という教育現場から見出されたピグマリオン効果ですが、ビジネスの現場でも活用することは可能です。活用方法としては、社員に対して期待を持ち、その期待に応えられるような環境を作ることが挙げられます。
ビジネスでの活用方法の具体例を整理すると、次のようになるでしょう。
- 上司が部下に対して「あなたはこの仕事をやれる」と期待を持ち、その仕事を任せる。
- 社員に裁量を与える。
- 社員に対して「あなたはこのプロジェクトを成功させられる」と期待を持ち、そのプロジェクトを任せる。
- 社員に対して「あなたはこの商品の販売数を伸ばせる」と期待を持ち、その商品の販売促進活動を任せる。
- 社員に対して「あなたはこの会議で発言できる」と期待を持ち、会議で発言させる。
以上のような方法でピグマリオン効果を活用することで、社員のモチベーション向上や業績向上が期待できます。
ピグマリオン効果の由来やビジネスにおける活用ついて知っておこう!
ピグマリオン効果の基礎知識のほか、ビジネスにおける活用などについて解説してきました。ピグマリオン効果の再現性については否定的な意見もありますが、肯定的な研究もあり、一部の批判ととらえる向きもあります。また、教育現場では検証のうえ、一定の効果も確認されています。ビジネスにおいては、若手社員の育成で活用する価値は十分にあると言えるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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