- 更新日 : 2025年1月29日
育休申請(育児休業申請)の会社の手続きまとめ!申出から給付金申請まで
少子化対策の一環として、男女にかかわらず、仕事と育児を両立できるように従業員が育児休業を取得することが権利として保障されています。
この記事では、育休申請に関して会社が行う手続きの流れや、育休申請における手続き・必要書類、育児休業申請書(育児休業申出書)の書き方・記入例などについて解説していきます。
目次 [非表示にする]
育休申請(育児休業申請)で会社が行う手続きの流れ
まずは事業主側が、育児休業申請書に関して行わなければならない手続きについてみていきましょう。
①育休取得の意向を確認する
育児・介護休業法が改正され、2022年4月からは、事業主は、本人または配偶者の出産等を申し出た従業員に対し、育児休業制度に関する周知とともに、育児休業取得の意向確認を個別に行うことが義務化されました。
個別の周知については、次の事項が挙げられます。
個別の意向確認については、育児休業を取得するか、取得する意向がないか、だけでなく、出生時育児休業(産後パパ育休)を取得するのか、育児休業・出生時育児休業の取得を検討中なのかについても意向を確認することが大切です。
育児休業を取得する意向の従業員については、あわせて現時点でわかっている育児休業申請書に記載すべき事項も確認するとよいでしょう。
なお、個別周知と意向確認の方法としては、面談(オンライン含む)、書面交付のいずれかが基本とされています。ただし、従業員本人が希望した場合は、ファックス、電子メールなどの方法でも可能です。
②育児休業申請書を提出してもらう
以上の個別の周知と意向確認を経て、従業員に育児休業申請書を提出してもらいます。
育児休業申請書のほか、事業主は従業員に対して申し出に係る子の出生等を証明する書類の提出を求めることができます(施行規則第5条第7項)。
③育児休業申請書受理の通知をする
育児休業申請書が提出された場合は、事業主は速やかに従業員に対して、次の事項を通知する必要があります。
①育児休業の申し出を受けた旨
②育児休業の開始予定日・終了予定日
なお、事業主は、育児休業申し出があったときは、育児休業の申し出を拒むことができません。
ただし、労使協定で引き続き雇用された期間が1年に満たない従業員などについては、育児休業の申し出を拒むことができるとされており(法第6条第1項但書)、この場合は、育児休業の申し出を拒む旨とその理由を通知しなければなりません。
育休申請における手続き・必要書類
育休申請における手続き・必要書類について解説します。主な手続きとしては、次のようなものが挙げられます。
- 育児休業の手続き
- 育児休業給付金の手続き
- 育休中の社会保険料免除手続き
- 出生時育児休業給付金の手続き(産後パパ育休取得時)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
育児休業の手続き(育児休業申請書)
育児休業申請書は、育児・介護休業法に基づいて労働者が事業主に提出する書類です。原則1歳に満たない子を養育するために育児休業を取得する際に提出します。
申請は、原則として書面の提出とされています(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則(以下、施行規則)第7条第2項第1号)。両親ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2か月に達するまで育休期間を延長可能です(パパ・ママ育休プラス)。
さらに、保育所に入所を希望しているものの、保育所へ入所できないなど特定の状況の場合は、育児休業の期間を子が1歳6か月に達するまで、その後も入所できない場合は子が2歳に達するまで延長できます。
育児休業の申請タイミングや期限、申請先は次のとおりです。
申請タイミング | 1歳までの育児休業は、育児休業を始める予定日の1ヶ月前まで |
---|---|
申請先 | 所属部署や人事部など、事業主が指定した窓口 |
申請期限 | 1歳までの育児休業:原則として1ヶ月前まで 1歳から1歳6ヶ月までの育児休業および1歳6ヶ月から2歳までの育児休業:休業開始予定日(1歳の誕生日またはパパ・ママ育休プラスの終了予定日の翌日)の2週間前まで ※一定の事由がある場合(出産予定日前に子が出生した場合など)は、1週間前の提出でもOK |
育児休業給付金の手続き
育児休業給付金とは、育児休業中労働者に支給される給付金のことです。一定の受給条件を満たしていれば、夫婦どちらも受給できます。受給期間は次のとおりです。
- 母親:産後休業期間(産後8週間以内)が終了した翌日から子どもの1歳の誕生日前日まで
- 父親:子どもの出生当日から1歳の誕生日の前日まで
育児休業給付金の手続きを行うのは、原則事業主です。支給申請手続きは、事業所を管轄するハローワークで行います(電子申請も可能)。育児休業給付金の申請手続きで必要な書類や手続き期間は次のとおりです。
申請タイミング | 育児休業に入るとき |
---|---|
申請先 | ハローワーク |
申請期限 | 育児休業を開始する日から4ヶ月が経過する日が属する月の末日まで |
※育児休業を開始した日とは、産休を取得中の女性が育休を取得する場合は出産日から起算して58日目
2回目以降は、2ヶ月に1回(被保険者が希望する場合は1ヶ月に1回の申請も可能)申請を行います。
育休中の社会保険料免除手続き
育休期間中は、社会保険料が免除されます。社会保険料免除の手続きも忘れずに行いましょう。社会保険料免除の手続きは、従業員から育休の申し出があったら企業側が「育児休業等取得者申出書」に必要事項を記入し、年金事務所に申請書を提出します。
なお、免除期間中も社会保険料を支払ったものとみなされます。社会保険料の免除期間は、育休開始月から終了予定月の前月まで(育休終了日が末日の場合は育休終了月まで)です。
申請タイミング | 育児休業に入るとき |
---|---|
申請先 | 年金事務所 |
申請期限 | 育休等開始日から育休等終了後1ヶ月以内 |
出生時育児休業給付金の手続き(産後パパ育休取得時)
産後パパ育休を取得したら「出生時育児休業給付金」の支給対象となります。企業側が手続きを行います。申請タイミングや申請先、申請期限は次のとおりです。
申請タイミング | 産後パパ育休を取得した場合 |
---|---|
申請先 | ハローワーク |
申請期限 | 子の出生日(出産予定日前に子が出生した場合は出産予定日)から8週間を経過する日の翌日から、その2ヶ月後の月末まで |
育児休業申請書(育児休業申出書)の書き方・記入例
育児休業申請書には、どのような事項を記載すればよいのでしょうか。施行規則では、次に掲げる事項は必ず明記しなければならないとされています。
① 申し出の年月日
② 労働者の氏名
③ 申し出に係る子の氏名、生年月日及び労働者との続柄(子が出生していない場合は、出産予定者の氏名、出産予定日及び労働者との続柄)
④ 休業を開始しようとする日及び休業を終了しようとする日
一般的には、事業所で育児休業申請書の様式は用意されているものと思われます。一例を示すと次のような様式と記載例を挙げることができます。
なお、上記の記載事項のほか、特定の場合は、次の事項も記載する必要があります。
⑤ 申し出に係る子以外に1歳未満の子を有する場合には、その子の氏名、生年月日及び労働者との続柄
⑥ 申し出に係る子が養子である場合には、養子縁組の効力発生日
⑦ 一度休業した後に再度の申し出を行う場合、休業開始日までの期間が短い申し出の場合又は一度撤回した後に再度の申し出を行う場合には、それぞれの申し出が許される事情
⑧ 1歳までの育児休業をしている労働者が、1歳以降の育児休業の申し出を行う場合には、申し出が許される事情
⑨ 配偶者が1歳までの育児休業をしている労働者が、1歳以降の育児休業の申し出を行う場合には、配偶者が育児休業をしていること及び申し出が許される事情
⑩ パパ・ママ育休プラスの特例によって1歳に達する日の翌日以後の育児休業をする場合には、労働者の育児休業の開始予定日が、配偶者がしている育児休業期間の初日以後であること
育児休業申請書(育児休業申出書)に変更があった場合
育児休業申請書を提出した後でも休業開始日の繰上げ、繰下げの変更ができます。変更が認められる場合と必要な手続きについて確認していきます。
育児休業の申し出の変更ができる場合
育児休業申請書を提出後、育児休業を開始しようとした日の前日までに、出産予定日よりも早く子が出生することもあります。
また、配偶者が病気にかかったり、負傷したりすることも考えられます。場合によっては死亡というケースもありえるでしょう。
こうした場合、育児・介護休業法では、従業員は育児休業を開始する日の繰上げ変更をすることができるとしています(法第7条第1項、施行規則第13条)。
変更するためには、変更後休業を開始しようとする日の1週間前までに変更の申し出をしなければなりません。
申し出が遅れた場合、事業主は従業員が変更後に休業を開始しようとする日以後の変更の申し出日の翌日から起算して1週間を経過する日までの間で休業を開始する日を指定できます。
例えば、従業員が4月1日に「5月1日に育児休業を開始する」旨の休業の申し出をした後、出産予定日よりも早く子が生まれ、「4月10日から育児休業を開始する」旨の変更の申し出を4月9日にしたとします。
この場合、事業主は、変更の申し出日の翌日である4月10日から起算して1週間を経過する日(変更の申し出日の属する週の翌週の応当日)である4月16日までの間で休業開始日を指定できます。
ただし、事業主は、原則として変更の申し出があった日の翌日から起算して3日を経過する日までに、従業員に指定日を通知する必要があります。変更の申し出が遅い場合でも変更後の休業開始日までには指定日の通知が必要です。
また、繰上げ変更ではなく、従業員の子が1歳になる前に育児休業を終了したいというケースもあるでしょう。この場合は、当初、育児休業終了日としていた日の1か月前までに変更の申し出をすることになります。
変更の申し出の手続き
育児休業開始日の繰上げ変更・繰下げ変更は、所定の事項を事業主に書面で申し出ることが原則となっています。
申し出事項には、次のものが挙げられます。
① 変更の申し出の年月日② 変更の申し出をする労働者の氏名
③ 変更後休業を開始(終了)しようとする日
④ 変更の申し出の事由(育児休業を開始する日の繰上げ変更の場合のみ)
ただし、事業主が適当と認める場合にはファックスのほか、電子メール、企業内LANによることもできますが、電子メール、企業内LANを使用する場合は送信する情報が書面で印刷できることが必要とされています。
育児休業申請書のテンプレート
育児休業申請書のテンプレートが必要な場合、汎用的に使えるテンプレートがあります。
以下リンクから、フォームへ入力すれば無料でダウンロードできます。ぜひご活用ください。
育児休業等取得者申出書との違い
育児休業等取得者申出書の正式な名称は「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」です。
この書類は、健康保険・厚生年金保険の被保険者が育児休業の申し出をした場合に、事業主が事業所の所在地を管轄する年金事務所に提出するものです。
これによって、育児休業等を開始した日の属する月から育児休業等が終了する日の翌日が属する前月までの期間の、毎月の報酬にかかる保険料が免除されます。
育児休業申請書について知っておこう!
育児休業申請書について、基本的な知識、記載事項、記載例のほか事業主に求められる手続きなどについて解説してきました。
育児休業の取得率は、男性についてはまだ低いとはいえ、確実に増加傾向にあります。
事業主にも取得率向上に向けた取り組みが求められており、育児休業申請書について知っておくことが大切です。
よくある質問
育児休業申請書(育児休業申出書)とは何ですか?
育児休業を取得することを申し出る場合に事業主に提出する書類です。詳しくはこちらをご覧ください。
育児休業申請書に変更があった場合の手続き方法について教えてください
所定の事項を事業主に書面で申し出ることが原則となっています。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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