- 更新日 : 2025年8月28日
年末調整とアルバイト・パートの関係
会社によっては、年末調整の対象を正社員のみとし、アルバイト、パートに対してはこれを行わないことがあります。
しかし、アルバイトやパートとして働いていても、労働に対して支払われる給与が発生しているため、会社側は年末調整を行う必要があります。
このアルバイトやパートとして勤務する際の年末調整について、年税額(1年間に支払う納税の合計額)を調べるために活用する「源泉徴収票」の見方とあわせて説明します。
目次
そもそも、「アルバイト」「パート」とは?
「アルバイト」、「パート」の正式名称は「パートタイム労働者」です。
これらの労働者を保障の目的として制定された「パートタイム労働法」では、パートタイム労働者を「1週間に働く所定労働時間が、同じ事業所で働く正規労働者に比べて、短い労働者」と定義しています。
つまり、アルバイト、パートといったように、正社員以外の雇用形態を取る場合の呼び名は、会社によって異なりますが正社員より短い労働時間で働く場合はすべて「パートタイム労働者」となります。
パートタイム労働法によれば、アルバイト・パートとして扱われる条件は、正社員より働く時間が短いということのみです。それ以外は、すべて正社員と同じ扱いを受ける権利があります。
アルバイト・パートも、正社員のように福利厚生の利用ができますし、有給休暇も取得できます。もちろん、年末調整の対象にもなるのです。
ただし、年末調整の対象者は会社に「扶養控除等(異動)申告書」を提出した人です。そのため、会社で年末調整を行ってくれない場合や、複数の会社で働く人(乙欄の該当者)は、確定申告を行う必要があるため、この点は注意しましょう。
この乙欄の該当者を除き、会社で年末調整を行ってもらえないアルバイト・パートの場合は、納めるべき税金の金額と、源泉徴収された金額との差が、非常に気になることでしょう。
もし払いすぎていたとしたら、非常にもったいない話です。
「源泉徴収票」は、納税金額の把握ツール
自分が実際に納めなければいけない税金の額を把握するためには「源泉徴収票」を利用するという方法があります。
源泉徴収票とは、年末年始の時期に会社が発行する、手のひらサイズの用紙です。
もし、会社からもらえない場合は、自分から請求しましょう。源泉徴収票は、法律により毎年1月末までの発行が義務づけられているため、堂々と請求することができます。
それでも発行されない場合は、税務署に発行手続きを依頼できます。
この源泉徴収票には、労働者にとって非常に重要な情報が記載されています。
特に注目すべき金額が、2行目に記載されている「支払金額」「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」「源泉徴収税額」の4つです。
「支払金額」一年間にどのくらい稼いだのか
源泉徴収票2行目の「支払金額」に記載された額が、年間の収入の合計金額です。
転職をした人で、前職で発行された源泉徴収票を新しい勤務先に出した場合、以前の勤務先で得た収入もあわせて記載されます。その際、「摘要」欄に、前職の会社名・住所・支払金額・源泉徴収税額・納めた社会保険料が記載されているので、確認しましょう。
「給与所得控除後の金額」稼ぐためにかかった費用を控除
給与を得るためにかかると予想される経費を控除することを「給与所得控除」といいます。実際の金額は国税庁で定められた計算式を用いて算出します。
また、給与所得控除を差し引いた金額が、「給与所得控除後の金額」に記載されます。
「所得控除の額の合計額」扶養控除・保険料控除
源泉徴収票の3行目以降に、扶養親族や障害をもつ扶養親族(自身を含める)の人数と、加入している保険の種類と、その条件に応じた控除額が記載されています。これらの内容に間違いがないのか確認しましょう。また、記載の控除額の合計が、「所得控除の額の合計額」に記載されます。
「源泉徴収税額」自分が納めるべき税金はいくらか
「給与所得控除後の金額」から、「所得控除の額の合計額」を差し引いた額が、所得税の課税対象となる「課税所得金額」です。
課税所得に一定の税率(復興特別所得税を含む)をかけた金額が、「源泉徴収税額」に記載されます。これが実際に自分が納めるべき税金の金額です。
確定申告は年収103万円以下なら不要
会社で年末調整が行われなかった人や、乙欄に該当するパートタイム労働者は所得税の金額を確定するために、自身で税務署に確定申告の手続きをする必要があります。
年収が103万円を超えない人は、所得税の支払い義務がないため、確定申告を行う必要はありません。けれども、源泉徴収税額に金額が書き込まれている場合、確定申告を行うことにより、この金額の還付を受けられます。
まとめ
アルバイト・パートは、労働時間が短いだけで、その他の待遇は正社員と同じです。
そのため、パートタイム労働者も年末調整や確定申告の対象になります。なかには年末調整を行ってくれない会社もあるので、まずは源泉徴収票で自分が納めるべき金額をチェックしてみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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