- 更新日 : 2021年11月29日
介護保険制度の概要
日本では急速な高齢化が進み、「介護保険制度」への関心が高まりつつあります。
総務省統計局の資料によれば、2017年9月15日時点で、65歳以上と定義される高齢者の人口は3,514万人で、総人口に占める高齢者人口の割合が27.7%と過去最高となりました。
総務省の予測では、人口の高齢化は今後も右肩上がりで増加するとされており、「介護保険」がますます重要になっています。
このページでは「介護保険制度」の概略について解説します。
介護保険とは何か
介護保険制度は、認知症や病気などで常に介護を必要とする要介護状態の人、身の回りの家事といった日常生活において助けが必要な要支援状態の人を援助するために存在しています。
具体的な一例を以下に挙げてみます。
残念なことに、あなたのお父さんは老齢で亡くなってしまいました。そこで、残されたお母さんと一緒に暮らすことにしたのですが、お母さんも高齢のため、階段の上り下りや自力で着替えをするのが難しい状態です。
あなたが普段の生活を手助けしてあげられればいいのですが、あなたも仕事をしなければいけません。あなたの子どもはまだ小さく、両親の手助けはできません。
こんなときに役立つのが、介護保険制度なのです。
介護保険制度を活用する
要介護・要支援認定の条件
介護保険制度で定められている介護サービスを利用する場合には、事前に「要介護認定」「要支援認定」として認められる必要があります。
認定を受けるには、介護サービスを希望している高齢者が住む市区町村および特別区に申請します。申請後は、市区町村の認定調査員による状況調査、主治医の意見書および介護認定審査会による判定を行い、要介護・要支援と判断された場合にのみ介護サービスを利用することができます。
要介護・要支援の認定申請を出すにはいくつかの条件があります。
65歳以上の人は要介護・要支援状態の理由を問わず申請できますが、40歳以上65歳未満の医療保険加入者は、老化が原因となる認知症や回復が見込めないがんなど政令で定められている特定疾病(16種類)と認められた人しか申請を出すことができません。
市区町村に要介護認定の申請を出すと、「要介護」、「要支援」、「非該当」のいずれかの区分に分類されます。
「要介護」と「要支援」
「要介護」は、入浴・排せつ、食事などの日常生活を送るために、常時又は部分的な介護が必要だと判断される場合を指します。
「要介護」状態と認定された人は、「介護給付」という介護サービスの提供を受けることができます。また、「要介護」はその状態について「要介護1」から「要介護5」までにレベル分けされ、数字が大きい方がより深刻な状態であり、手厚い介護を必要とすることを表しています。
「要支援」は、日常生活において援助が必要な状態で、「要介護」状態になる恐れがある場合を指します。「要支援」に認定された人は、「予防給付」という介護サービスを受けることができます。
また、支援が必要な度合によって「要支援1」と「要支援2」にレベル分けされ、要支援2の方がより手厚い介護サービスを受けることができます。
「非該当」の場合
「非該当」とは、「介護も支援も必要ない」と判断された場合です。
そのため、原則として「非該当」の方が介護保険制度によるサービスを受けることはできません。
ただし、申請した時点では「非該当」の場合であっても、要介護や要支援の状態になる恐れのある人には、市区町村が独自に提供しているサービスや「介護予防事業」などが適用される場合があります。
介護サービスを受ける
要介護の方が受ける「介護給付」と要支援の方が受ける「予防給付」を合わせて介護サービスといいます。
介護給付や予防給付は生命保険などの「給付金」とは違い、現金で支給されるわけではありません。
要介護および要支援状態にある人は平成29年7月現在、「指定事業者」から1割又は2割の自己負担額で介護サービスを受けることができます。
指定事業者とは、あらかじめ介護保険の対象となるサービスを提供することを地方自治体から認定された企業です。
介護サービスは、自宅に訪問をしてくれるサービス(入浴を手伝ってくれたり、おむつの交換をしてくれたりします)や高齢者介護施設やグループホームなどさまざまです。受けられるサービスの内容は、要介護または要支援のレベルよって変化します。
介護保険料は40歳から
日本に住んでいる40歳以上の者は、介護保険料を納めることを義務付けられています。
介護保険制度は、介護保険料と税金で賄われています。
まとめ
このように、介護保険制度は高齢化が進む日本の社会の中で非常に重要な保険制度です。
年をとって介護で困ったことがあっても本来の価格の1割又は2割で介護サービスを受けられ、要支援や要介護などその人の状態に合わせた介護サービスを提供してくれます。
関連記事:
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
社会保険料の変更に伴う手続きを解説!随時改定の意味など
社会保険料は、月々の給与額ではなく、標準報酬月額をもとに算出されます。毎年1回、7月に算定基礎届を提出することにより決定され、固定的賃金に変動があった場合は月額変更届による随時改定を行います。 今回は、社会保険料の決定方法と変更が必要なタイ…
詳しくみる社会保険料率・社会保険料額の決定方法
社会保険料率の水準は、物価や賃金水準をふまえ、財政のなかで給付と負担を調整できるよう、計画して決められていました。しかし、現在では急激な少子高齢化が進み、社会補償と負担する社会保険料額の見直しが行われ、厚生年金保険料は平成29年度に1000…
詳しくみる労災の申請に必要な書類 – 作成および提出方法について解説
労働者が業務上または通勤により負傷した場合、労災保険の申請を行い労働基準監督署長の認定を経て労災給付を受けることができます。労災給付には療養や休業など、さまざまな給付がありますが、その種類によって労災の書類である申請書も異なります。 今回は…
詳しくみる介護保険で医療費控除の対象になるものとは?
介護保険制度では、訪問介護や訪問入浴介護など、さまざまなサービスを受けることができます。利用できるサービスのなかには、自己負担分を医療費控除として申告できるものがあり、医療費控除を申告することによって、所得税の節税もしくは還付につながります…
詳しくみる厚生年金保険は20年加入するとお得?受給額はいくら増える?
現行制度では、厚生年金は10年以上かけると65歳以降に老齢年金を受給することが可能です。さらに、20年以上かけると加給年金が加算され、支給額が増額されます。厚生年金に20年加入した場合と20年未満では、いくらくらい受給額に差が出るのでしょう…
詳しくみるマイナ保険証はいつから義務化する?必要な準備や、人事労務担当者の注意点を解説
2024年12月2日から、現行の健康保険証が廃止され、マイナ保険証への移行が本格化しました。しかし、「マイナ保険証って何?」「いつから義務化されるの?」「マイナンバーカードを持っていないと病院に行けなくなるの?」といった疑問や不安を持つ方も…
詳しくみる