- 更新日 : 2021年6月24日
労働保険の一般拠出金とは
労働保険では、2007年4月1日から「一般拠出金」についての申告および納付を行うことになっています。この「一般拠出金」は、「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づいたものです。石綿はアスベストという名で知られており、アスベストを使用した建築物等による健康被害が報告されてきました。一般拠出金は、そういった場合の救済に利用されます。
目次
労働保険の一般拠出金の申告および納付について
事業主が労働保険の一般拠出金を申告および納付する際には、原則として労働保険料の申告および納付と同じ方法で行います。
事業主は、労働保険の一般拠出金の申告および納付に関して、労働局への新たな事務手続きが必要となることはありません。
労働保険の一般拠出金の対象
労働保険の一般拠出金は、原則として労災保険が適用される事業を営んでいるすべての事業主から徴収されます。石綿(アスベスト)の製造や販売に関係する事業に限りません。
これは、どの事業であっても業務を行う施設や設備、使用している機材において石綿(アスベスト)が広範囲にわたって使用されてきたことをふまえての措置です。
ただし、労災保険に特別加入している場合や、雇用保険のみの適用を受けている事業主は除きます。
労働保険の一般拠出金の申告および納付方法
労働保険の一般拠出金の申告は、労働保険の年度更新手続きに併せて行います。納付も同時に行います。口座振替で労働保険の確定保険料を納付している場合は、事務手続きを新たに行う必要はありません。事業が終了したり、事業を廃止した際の申告も、労働保険の申告と併せて行います。
なお、労働保険の一般拠出金の納付手続きは、確定納付のみになります。概算納付や、分割して延納する方法はありません。
労働保険の一般拠出金の料率
2014年4月1日より一般拠出金の料率が変更されました。該当時期によって料率が違うため、注意が必要です。2014年4月1日以降に事由が発生した場合の料率は0.02、2007年4月1日から2014年3月31日の場合には0.05となります。
労働保険の一般拠出金の料率は一律です。これは業種を問わず、すべて同じ料率となります。割増や割引を受けている事業(労災保険におけるメリット制適用対象事業場)の場合でも同じです。
労働保険の一般拠出金の申告および納付が必要な事業の期間
労働保険の一般拠出金の申告および納付における対象事業所は、まず、その事業開始が2007年4月1日以降である場合に該当します。有期事業も2007年4月1日以降に開始した事業(工事)の分を申告・納付します。
単独有期事業の場合
事業(工事)終了時に、労働保険の確定保険料と併せて申告・納付します。
一括有期事業の場合
2007年度の年度更新(確定保険料)は2007年3月31日までに終了した事業(工事)が対象となるため、一般拠出金の申告・納付の必要はありません。(2008年度の年度更新より申告・納付します。)
事業を廃止した場合
事業廃止が年度末でなかった場合には、その時点までに支払った賃金総額を基にして納付手続きを行います。なお、労働保険料において還付金が発生する場合には、希望すれば還付金を一般拠出金へ充当することができます。還付金の一般拠出金への充当は、労働保険料の「還付請求書」の提出時に行います。
労働保険の一般拠出金の算定方法
労働保険の一般拠出金の金額は、年度中に支払った千円未満を切り捨てた賃金総額に一般拠出金率を掛けて求めます。
賃金の総額が1,000万円の場合(2014年4月1日以降に発生した事由に関するもの)は、1,000万円×0.02/1,000=200円となります。
まとめ
「石綿による健康被害の救済に関する法律」が制定されるまでは、石綿(アスベスト)が原因とされる健康被害は特定が難しく、特殊であるとして、労災補償の対象が限られていました。
法律の施行によって救済の範囲が広がり、その財源として徴収されることになったのが、労働保険の「一般拠出金」です。「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づいて支給される医療費に必要な財源はこの「一般拠出金」のほか、国からの交付金、地方公共団体からの拠出金があてられています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
個人事業主は労災保険に加入できる?特別加入について解説
労災保険の対象者は労働者で、本来であれば労働者以外は労災保険に加入することはできません。しかし労働者と同様に保護することが妥当だとして、中小事業主や一人親方など、特定作業従事者などに対して認められているのが労災保険の特別加入です。近年は対象…
詳しくみる社会保険料とは?計算方法や負担額、法改正の内容をわかりやすく解説!
社会保険制度とは、病気やケガ、死亡、出産、老齢、失業、介護などに備えて、企業や被保険者が保険料を負担して保険給付を受けることができる公的な保険制度のことです。 今回は、社会保険料を決定する基準や負担額の計算方法を解説するとともに、法改正で注…
詳しくみる労災申請を本人が行うデメリットとは?弁護士に依頼するメリットも解説
労災保険は、仕事中や通勤中のケガ・病気など万が一のときに労働者を守る大切な制度です。しかし、手続きが複雑だったり、補償内容に制限があったりと、申請者本人には見えにくいデメリットも存在します。本記事では、労災保険の基本的な内容から、本人が申請…
詳しくみる社会保険は勤務期間の2ヵ月後から適用?令和4年10月の変更点
有期契約社員は、正社員とは社会保険の加入条件が異なります。旧制度では、契約期間が2ヵ月未満の方はその間の加入は不要でした。令和4年10月以降は更新の可能性がある場合、2ヵ月後からではなく契約時から加入が必須となります。3ヵ月目からの加入は違…
詳しくみる介護保険の利用限度額と負担軽減措置
介護サービスを利用した時の介護保険の自己負担額(注1)は、原則として1割(注2)となりますが、居宅サービスについては要介護度に応じた「支給限度基準額」が定められており、居宅サービス費用のうちこの基準額を超える部分については全額自己負担となり…
詳しくみる雇用保険の傷病手当について
健康保険には、傷病手当の制度が設けられています。私傷病により働くことができない被保険者の生活を守るために設けられた制度で、会社を休んでいる間に十分な賃金が受けられない場合に支給されます。 健康保険の傷病手当と同じように、雇用保険にも傷病手当…
詳しくみる