• 作成日 : 2015年9月3日
  • 更新日 : 2018年7月19日
  • 社会保険

2カ所以上の会社で雇用されるようになった場合、社会保険の取り扱いについて

一般に、会社勤めの方は勤め先の会社(適用事業所)で社会保険に加入します(※1)。
社会保険には「健康保険」(※2)と「厚生年金保険」があり、従業員のみならず会社の社長や役員の方でも加入できます。

通常、社会保険の加入手続きは、入社と同時に会社が行います。
しかし、すでに会社勤めをしていながら、新たに別の会社に勤める(別の仕事を始める)という例も少なくありません。

本業の傍ら副業でアルバイトすることがひとつにあげられます。
また、会社の代表者が新たに別の会社を設立して、両方から報酬を受ける場合もこれに該当します。

このように2ヶ所以上の会社で雇用されるようになった場合、社会保険の加入はどうすれば良いのでしょうか?

今回はその2カ所以上の会社で雇用されるようになった場合の社会保険の加入について解説します。

※1 なかには、社会保険が適用されない会社もあります。法人ではない個人経営で、従業員が常時5人未満の場合、または農林水産業、サービス業など特定の業種に属する会社については、社会保険の適用が任意とされています。
※2 健康保険加入者のうち、40歳以上の方は介護保険にも加入することになります。

社会保険の加入要件

まず、社会保険の加入要件について見ていきましょう。

そもそも社会保険は「国民皆保険・国民皆年金」という日本の社会保障制度を成り立たせる前提として、強制加入を原則としています。

そして、社会保険が適用されている会社(適用事業所)と使用関係にあり、労働の対価として賃金を得ている人なら、国籍、年齢、賃金の多寡などに関係なく被保険者となります。

主な例外には「短時間労働者」があげられます。これはいわゆるパートタイマーやアルバイトとして働く人々のことです。
ただし、短時間労働者が一定の条件を両方満たす場合は、社会保険加入の対象となります。

その条件とは以下のようなものです。

・1週間の所定労働時間……同一の事業所に使用される通常の労働者の3/4以上
・1カ月の所定労働日数……同一の事業所に使用される通常の労働者の3/4以上

通常の労働者というのは一般的にフルタイムの正社員を指します。フルタイムの目安は、その会社の就業規則などに定められた勤務時間に基づいて考えます。
一般的には「1日8時間、1週40時間」が基準となっていることが多く、この原則は労働基準法のなかで定められている法定労働時間に基づいたものです。

パートやアルバイト社員の場合、この労働時間が保険加入の可否を左右します。

例えば、1週間の平均労働時間を40時間として、40×3/4=30、つまりその人の労働時間が週30時間以上か否か、これがひとつの基準となります。

「有期契約の従業員は社会保険に加入する必要がない」と考えている人が居るかもしれません。
しかし、契約期間の定めの有無は、社会保険の加入に直接影響しません。

例えば、無期契約の従業員であっても、1日4時間で週5日勤務なら計20時間で加入要件を満たしません。これとは逆に、有期契約の場合でも、1日8時間で週4日勤務なら、計32時間となるため社会保険に加入する必要があります。

では、2ヶ所以上の会社で雇用される場合、どのように社会保険加入の要件が該当するかを見ていきましょう。

2ヶ所とも要件を満たさない場合

それぞれの勤め先が短時間勤務で、週30時間以上の要件を満たさない場合、原則どちらの会社の社会保険にも加入対象外です。※つまり、短時間勤務の職場をいくつ掛け持ちしようと、社会保険には原則加入対象外となります。

※平成28年10月から従業員501人以上の会社で週20時間以上働く方などにも社会保険の加入対象が広がりました。さらに、平成29年4月からは、従業員500人以下の会社で働く方も、労使で合意すれば社会保険に加入できるようになりました。

その場合は、従業員が個人で国民健康保険に加入する必要があります。

健康保険はサラリーマンとその家族を対象とする医療保険ですが、国民健康保険は、健康保険加入者以外の人(すでに退職した75歳までの高齢者や無職者、自営業者など)を対象としています。このため、社会保険の加入要件を満たさない従業員も、国民健康保険の加入者には該当します。
運営する保険者が市町村(または同業の自営業者による国保組合)ということになるため、加入者自らが加入手続きをする必要があるのです。

なお、年金は自動的に国民年金となり、被保険者自身が毎月月末に前月分の保険料を納付します(口座振替も可能)。

1ヵ所で要件を満たす場合

所属する2ヶ所以上の会社のうち、1ヶ所のみが社会保険の加入要件を満たす場合は、その会社で社会保険に加入します。
手続きや保険料、給付の取り扱いなどは1社勤務の場合と同様です。

2ヵ所とも要件を満たす場合

所属している2ヵ所以上の会社がいずれも社会保険の加入要件を満たす場合、それぞれの会社で資格取得手続きを行う必要があります。その手続きは以下のようになります。

1.要件を満たした日の翌日から10日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・2以上事業所勤務届」を提出する。

2.該当する会社でのすべての賃金の合算額をもとに標準報酬月額が決められ、保険料は各社ごとの賃金で按分される。

1は、健康保険の保険者や厚生年金保険の管轄年金事務所が、それぞれの会社で異なる場合です。

ここでは、いずれか一つの保険者または管轄年金事務所を選択し、被保険者本人が届出を行います。実際には選択した会社を経由する形になります。

つまり、選択した会社(選択事業所)を管轄する保険者が保険関連業務を一括して行ってくれるのです。
なお、健康保険組合を選択した場合でも、厚生年金保険の事務は年金事務所が行います。

2の具体例として、A社から20万円、B社から10万円の賃金を得ていた場合、合算した30万円で標準報酬月額(この場合は30万円)が決定されます。
この標準報酬月額に対応する保険料が3万円だと仮定します。

すると、A社とB社の賃金は2:1であるため、保険料3万円も2:1に按分されて、A社で2万円、B社で1万円をそれぞれ納めることになります。

この方法で、健康保険(および介護保険)、厚生年金保険の保険料をそれぞれ計算します。

まとめ

以上のように、2カ所以上の会社に雇用される場合でいずれも社会保険の加入要件を満たす場合は、それぞれの会社で資格取得届を提出する必要があります。この場合いずれか一つの会社を選択事業所として届出を提出し、選択する会社の管轄する保険者によって一括して業務が取り扱われます。
多様な働き方に合わせた適切な社会保険の取り扱いについて理解を深めておきましょう。

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HRプラス社会保険労務士法人 監修

HRプラス社会保険労務士法人
東京都渋谷区恵比寿を拠点に、HR(人事部)に安心、情報、ソリューションをプラスしていくというコンセプトのもと、全国の顧問先に対し、人事労務に関するコンサルティングを行っている。企業が元気にならないと雇用は生まれない、賃上げはできないとの思いから「人事労務で疲弊する日本中の経営者・人事マンを元気にする!」をミッションに掲げ、人事労務担当者の立場に立った人事労務相談、就業規則や諸規程の整備、IPO支援、海外進出支援、社会保険事務のアウトソーシングなどを展開。



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