- 更新日 : 2025年7月14日
短期離職とは?一般的な期間や短期離職が転職活動に与える影響を解説
短期離職とは、就職してから短期間のうちに退職することです。一般的には、3年以内に退職すると短期離職と判断されるケースが大半です。
短期離職をした人の中には「短期離職をしたらどのような影響がある?」「短期離職した理由は面接時にどう伝えれば良い?」などと疑問に思っている人もいるでしょう。
そこで本記事では、短期離職の概要や転職活動に与える影響などを解説します。短期離職した理由の伝え方や短期離職を防ぐ方法などもまとめています。
目次
短期離職とは?
短期離職とは、会社に入社してから短期間で退職することを指し、一般的に短期離職と判断される期間は、3年以内とされています。
ただ、業種や職種によって短期離職と判断される期間は異なり、1年未満で離職した人を短期離職者として扱う会社もあります。
会社によっても短期離職の認識が異なるため、あくまで目安として捉えておきましょう。
短期離職をした人の割合
厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」によると、5年間の3年以内離職率は以下の通りです。
年代 | 中卒者 | 高卒者 | 大卒者 |
---|---|---|---|
令和元年 | 57.8% | 35.9% | 31.5% |
令和2年 | 52.9% | 37.0% | 32.3% |
令和3年 | 50.5% | 38.4% | 34.9% |
令和4年 (2年目まで) | 45.0% | 29.3% | 23.9% |
令和5年 (1年目まで) | 33.1% | 17.4% | 10.9% |
厚生労働省の調査を見ると、中卒を除き3年以内離職率は近年増加傾向にあることが分かります。新卒の短期離職者は今後も増え続ける可能性が高いです。
短期離職が増えている理由
短期離職を選択する人が増えている理由を2つ紹介します。
日本的雇用慣行が変化しているため
短期離職が増えている理由として「終身雇用」や「年功賃金」などの日本的雇用慣行が変化してきていることが考えられます。
日本経済の低迷により、人件費の負担が大きくなる終身雇用や年功賃金を維持するのが難しくなっているためです。
また、パート・派遣社員・フリーランスなどの正社員以外の働き方も増えてきており、離職や転職に対する心理的ハードルが低くなっていることも理由として挙げられます。
実際、総務省統計局の労働力調査では、非正規雇用を選択した理由のうち「自分の都合の良い時間に働きたいから」という理由に最も票が集まっていました。つまり、ワークライフバランスを重視したいために、正社員で働くよりもパートや派遣社員のような雇用形態で働きたい人が増えていることが分かります。
参照:労働力調査(詳細集計) 2024年(令和6年)平均結果の概要|総務省統計局
入社後のミスマッチが増加しているため
働きやすさや労働条件の良さを強調するあまり、入社後のミスマッチが増加していることも短期離職が増加している理由として挙げられます。
会社が実態とは異なる働きやすさや条件を強調するのは、人材競争が激化しているためです。少子高齢化により労働人口が減少し、以前よりも人材競争が激しくなっています。
少しでも多くの人材を獲得したいという思いから、働きやすさや労働条件をより良く見せようとする会社が増えているのでしょう。結果的に入社後のミスマッチが起こりやすくなってしまい、短期離職を選択する人も増加していると考えられます。
短期離職をしたとき転職活動にどのような影響がある?
短期離職をしたときに転職活動に与える影響をいくつか紹介します。
書類選考に通過しにくくなる可能性がある
短期間で退職した職歴があると、書類選考に通過しにくくなる可能性があります。
その理由は、「再び短期離職されてしまうのでは」「ストレス耐性がないのでは」と採用担当者に懸念されるためです。また、採用活動を行っている会社の中には、求人票に「◯年以上の経験」と記載して短期離職者の応募を控えてもらうような応募資格を設けている会社もあります。
短期離職の職歴があることで、必ずしも書類選考を通過できないわけではないものの、短期離職の職歴がない人と比較すると書類選考の通過率は低くなることが予想されます。
短期離職の理由について深掘りされる可能性がある
書類選考を通過したあとの面接で、短期離職をした理由について深掘りされる可能性もあります。採用担当者の中には「なぜ短期離職をしたのか」「正当性のある理由なのか」などを気にして離職理由について質問を重ねる人もいるためです。
怪我や病気のようなやむを得ない事情であったり、パワハラや違法な労働条件など以前の職場に落ち度がある場合は、離職理由に納得してもらいやすいでしょう。
ただ、人間関係や業務内容などが理由だと判明すると、ストレス耐性がないと思われて面接で不採用となることも考えられます。
よって、短期離職した理由について深掘りされることを想定して、理由の伝え方を考えておきましょう。面接で上手く理由を伝える方法について本記事の「短期離職をした理由の伝え方」で詳しく解説しているため、良ければご参照ください。
実績や専門性が足りないと思われる可能性がある
短期離職の職歴があると、実績やスキルなどを書類に記載しても「記載されているスキルが本当にあるのか」「短期間で習得できるのか」と不審に思われる可能性があります。
もしくは、面接で実績や業務内容について話しても「弊社が求めているレベルまで達していない」「現場で活かせるのか疑わしい」と判断される場合もあるでしょう。
1年以上は実務経験を積まないと、十分なスキルを習得したと判断しない会社もあります。業界や職種によっては2年もしくは3年以上の実績を求められることもあるため、短期離職の職歴は実績やスキルを証明する点でも不利になりやすいです。
短期離職をした理由の伝え方
面接や面談などで短期離職の理由を伝えるときのポイントを紹介します。
- 嘘をつかない
- 志望動機と絡めてポジティブな内容に変換する
- 前職への一方的な批判は避ける
離職理由を伝えるときは、嘘をついたり誤魔化したりするのは避けてください。その理由として、他の質問に答えているときに嘘が発覚して、信頼を失ってしまったり悪い印象を持たれてしまったりすることが予想されるからです。そのため、短期離職した理由は正直に話すようにしましょう。
また、志望動機と絡めてポジティブな内容に変換することもポイントです。具体的には、「人間関係があまり良くなかった」と伝えるよりも「これまでよりもさらにチームのメンバーと切磋琢磨し合って、お互いに成長できる環境で働きたいと思った」というように志望動機と絡めた内容に言い換えると好印象です。
他にも、短期離職した理由を話す際は、前職への一方的な批判をするのはやめましょう。一方的な批判ばかり話すと、不満が溜まりやすい人として見られる可能性があるためです。前職の不満だったところを伝えるときは、自分で試行錯誤したことも一緒に伝えることを意識してみてください。
短期離職を防ぐ3つのコツ
短期離職を防ぐためのコツを3つ紹介します。
1. 自己分析や企業分析を十分に行う
1つ目のコツは、自己分析や企業分析を十分に行うことです。
自分にはどのような仕事が向いているのか、どのような仕事にやりがいを感じるのか、など事前に自己分析をしっかり行いましょう。
もし自分のやりたいことや適性などをあまり理解しないまま就職すると、入社後に「思っていたのと違う」という状態になりやすいです。入社後のギャップを減らすためにも、自己分析はしっかり時間をかけて行ってください。
転職活動を行う際に転職支援サービスを利用すると、応募先に合わせた自己分析のアドバイスをエージェントからもらえます。他にも、ハローワークで自己分析や職務経歴書の作成について相談が可能です。求人応募に向けたサポートを希望する人は、転職支援サービスやハローワークの利用を検討してみましょう。
ただ、自己分析をしっかり行っても、違法性のある企業を選んでしまって短期離職をする可能性もあります。よって、自己分析だけでなく企業分析もしっかり行うことが大切です。具体的には、離職率や口コミなどを調べて働きやすいかどうかを確認してみてください。
2. 問題解決力を鍛える
2つ目のコツは、問題解決力を鍛えることです。
どの職場でも問題やトラブルは発生するものですが、自分では解決できず、結果として逃げるように短期離職を選択する人もいるでしょう。
問題やトラブルから逃げるために退職してしまうと、他の会社で再び別のトラブルが起こった場合も逃げるためにまた退職をすることになってしまいます。
よって、すぐ退職に踏み切るのではなく、一度は解決できるように努力してみましょう。自分で解決できなさそうであれば、仲の良い同僚に相談したり社内人事の担当者と面談したりするという方法もあります。
問題解決力を鍛えて、社内で発生したトラブルや問題を時には周囲のサポートも得て解決できるようになるのが望ましいです。
3. 完璧主義から離れる
3つ目のコツは、完璧主義から離れることです。
「自分に合った職場があるはず」「自分のやりたい仕事をしたい」などと理想を追い求めすぎると、短期離職に繋がります。
従って、理想と現実のギャップを受け入れる意識を持ちましょう。また、最初から自身の理想通りの職場は存在しません。1~2年ほど働いて慣れてきたら、理想の職場と思えるようになったり自分に合った仕事を見つけられたりする場合もあります。
完璧主義から離れて、一旦は自分がすべき仕事に集中してみてください。仕事に慣れてきた今、改めて自身の仕事に集中することで今まで気づかなかったやりがいが見つかるかもしれません。
短期離職を検討した方が良いケース
短期離職は転職活動に影響を与えてしまう可能性がありますが、以下のように短期離職を検討した方が良いケースもあります。
- 入社前に提示された条件と実際の条件が異なっていた場合
- ハラスメントにあっている場合
- 法外な残業を強いられる場合
入社前と入社後で提示された条件が異なっていた場合は、入社1年未満でも退職するのが賢明な判断となることがほとんどです。たとえば、正社員の枠で応募したが実際は契約社員だったというケースは、かなり悪質であり今後他にも不利な状況を強いられる可能性が大いにあります。
また、ハラスメントにあっている場合、その解消が見込まれないのであれば早期に離職を検討することが最善の選択となることもあります。ハラスメントに耐え続けていると、精神的なストレスが溜まって適応障害やうつ病などになってしまうケースも少なくありません。一度心の病気になってしまうと長期的に就労できなくなる可能性もあるため、無理に我慢せず退職を検討しましょう。
そして、法外な残業を強いられる場合も、短期離職を選択することをおすすめします。あまりにも働きすぎると、体を壊したり重い病気になったりしてしまうことも考えられます。月に80時間や100時間も残業させられるのは、いわゆるブラック会社である可能性が高いため、なるべく早めに退職を検討しましょう。
短期離職に関するよくある質問
最後に、短期離職に関するよくある質問をいくつか紹介します。
短期離職の職歴は履歴書に書かなくても問題ない?
職歴は基本的に全て書かなければならないため、短期離職した場合も履歴書に書く必要があります。
もし短期離職の職歴を書かないと、空白期間ができて採用担当者に不審に思われてしまいます。面接で空白期間中に何をしていたか聞かれる場合もあるでしょう。
面接で聞かれないように短期離職を誤魔化して別の職歴を偽って書くと、経歴詐称をしていることになります。経歴詐称が発覚したら、内定取り消しになったり損害賠償を請求されたりすることもあるため、短期離職の職歴は必ず履歴書に書いてください。
短期離職をした場合でも失業手当はもらえる?
短期離職をしたとしても、条件を満たせば失業手当を受給できます。
失業手当を受給できる条件は以下の通りです。
- 再就職を希望しいつでも就職できる能力があり、ハローワークで求職の申し込みを行って転職活動を実施している
- 離職する前の2年間で、長期の欠勤等なく雇用保険に加入していた期間が通算で12ヶ月以上あった
上記の条件をどちらも満たしている場合は、短期離職者でも失業手当を受給できます。
ただ、失業手当を受け取ると雇用保険に加入していた期間がリセットされるため、失業給付を受給した後に就職した会社での加入期間、勤務状況が上記の条件に該当していなければ、失業手当は受給できません。
たとえば、2023年7月から短期離職を繰り返しており、2025年6月末で退職した人がいるとします。
2023年7月1日 ~2024年1月31日 | 2024年3月1日 ~2024年12月31日 | 2025年3月1日 ~2025年6月30日 |
---|---|---|
雇用保険の加入期間:7ヶ月 | 雇用保険の加入期間:10ヶ月 | 雇用保険の加入期間:4ヶ月 |
上記のケースでこの間1度も失業手当を受給していなければ今回の退職で手当を受給できる可能性が高いです。
しかし、2024年12月末に退職したタイミングで失業手当をもらった場合は、雇用保険の加入期間がリセットされているため、今回の退職で2025年7月以降に再び手当をもらうことはできません。
短期離職を繰り返すとどのような影響がある?
短期離職を繰り返すと、書類選考に通過しにくくなったり面接で離職理由について深掘りされたりと、転職活動で不利になることが予想されます。
また、複数の職場を転々としていると、実績やスキルを十分に身につけられません。結果として、キャリアアップの機会を逃してしまうことも考えられます。生涯年収が他の人より少なくなってしまう人もいるでしょう。
もしくは、収入が安定していないという理由でローンの審査に落ちたり、勤続年数が短いという理由で賃貸の入居審査に通らなかったりする場合もあります。
何度も短期離職をすると、自身のキャリアだけでなくプライベートにも影響を及ぼす可能性があります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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