• 更新日 : 2025年7月14日

離職防止の成功事例10選!具体的な取り組みや社員が離職する理由も解説

近年、人手不足が深刻化する中で優秀な人材の離職を防止することは、企業経営の大きな課題です。本記事では、離職防止に成功した10社の成功事例をご紹介します。あわせて、社員が離職する理由や、企業が取るべき施策などを解説しています。

業種や課題の異なる企業がどのように問題を捉え、施策を実行し離職防止に成功したのか知り、自社の取り組みに活かしてみてください。

離職防止が企業にとって重要な理由

離職防止が企業にとって重要な課題である理由を、ここでは3点解説します。

新たな人材確保の難しさがあるから

少子高齢化の影響により、労働人口の減少が続く中、企業にとって新たな人材を確保することは年々難易度が高くなっています。また、採用活動には選考プロセスの実施や入社後の研修といった、多くの時間とコストが必要です。加えて、新入社員が戦力になるまでには、相応の期間を見込む必要があるでしょう。

仮に入社後すぐに退職された場合、その投資は回収できず、企業にとっては大きな損失となります。今いる従業員の離職を防ぎ定着率を高めることは、新たな人材採用をするよりも効率的かつ戦略的な選択肢であり、安定した組織運営に直結すると言えるでしょう。

参考:総務省|令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少

企業の社会的信頼を損なわないため

社員の離職が相次ぐ企業は、外部から見た際に「働きにくい職場」として映ります。近年は転職サイトや口コミプラットフォームで企業の評判が広まりやすく、高い離職率は「労働環境に問題があるのでは」といった疑念を招くことにもつながるでしょう。

こうしたマイナスイメージは、優秀な人材の応募を遠ざけるだけでなく、既存の取引先や顧客からの信頼低下にもつながる恐れがあります。一方で、定着率の高い企業は「安心して働ける環境」としてポジティブな評価を得やすく、企業イメージやブランド力の向上にも貢献します。離職防止は、信頼を築く土台と言えるでしょう。

採用コストを圧縮するため

社員の離職が続くと、企業はその都度、新たな人材の採用・育成に時間と費用を投じる必要があります。たとえば、新卒1人を採用するには約90万円程度のコストがかかるとされ、加えて、入社後の研修やOJTにも多大なリソースを割くことは避けられません。早期に退職されればこれらコストは無駄となり、それが常態化すれば経営を圧迫する要因にもなります。

離職防止は単なる人事課題ではなく、経営効率を高める有効なコスト戦略と言えるでしょう。

参考:就職白書2020

社員の離職につながる4つの不満

社員が離職する代表的な理由を、ここでは4つ解説します。

給与や福利厚生への不満

社員が離職を考える大きな理由のひとつが、給与や福利厚生に対する不満です。どれだけやりがいのある仕事でも、報酬が労働量に見合っていなければ、働き続けるモチベーションは維持しにくいです。

さらに、同業他社と比較して明らかに待遇が劣っている場合や、知人がより好条件の会社へ転職したという話を聞けば、不満は加速し転職意欲は高まります。また、福利厚生も重要な要素です。休暇の取りやすさや、育児・介護支援制度の充実度は、働きやすさに直結します。

企業が待遇面で他社から後れを取ると、社員は「ここで頑張っても報われない」と感じ、転職を検討するようになるでしょう。

業務内容や残業量への不満

過重な業務負担や慢性的な残業も、離職を招く要因です。特に人手不足の企業では、1人あたりの業務量が増えがちで、定時で終業できない日々が続くと、心身に大きなストレスがかかります。

働き方改革が進む中で、社員の労働時間や負荷に対する意識も変化しており、長時間労働が当たり前という職場は敬遠されがちです。企業として、業務内容や残業量の見直しを怠ると、優秀な人材の流出につながる可能性があります。

人間関係・職場環境の不満

職場での人間関係がうまくいかないことは、離職理由として根強いものがあるでしょう。上司との意思疎通が取れない、同僚との関係にストレスを感じる、誰にも相談できないなどが挙げられます。

職場環境への不満が募れば、やりがいを感じる業務も苦しいものに変わっていくかもしれません。特に入社して間もない社員にとっては、精神的な居場所があるかどうかは、その後の職場定着を大きく左右します。

職場の雰囲気づくりや上司のマネジメント力は、働きやすさの土台となる点を覚えておきましょう。

人事評価やキャリアへの不満

自分の努力や成果が正当に評価されていないと感じると、社員のやる気は低下します。評価基準が曖昧だったり、上司の主観に依存した評価体制だったりすると、不公平感が募りやすくなるでしょう。また、企業におけるキャリアパスが見えにくい場合、今後どのような成長ができるか不透明に感じ、将来への期待感を抱けなくなります。

優秀な人材ほど、自分の能力を高められる環境を求めており、成長実感が得られない会社からは、早々に離れてしまう傾向があります。評価制度やキャリア支援の仕組みが整っていないことは、企業にとって見えにくい離職リスクを抱えていることになるのです。

離職防止に効果的な施策4つ

離職防止に効果的な取り組みはいくつか存在します。ここでは有効とされる施策を4つご紹介します。

多様な働き方を推進する

多様な働き方の推進は、社員のライフスタイルや価値観に柔軟に対応できる職場づくりにつながり、離職防止に効果的です。たとえば、リモートワークやフレックス制度、副業の容認などです。これら制度を通じて、社員が自分らしく働ける環境を整えることで、仕事への満足度が向上します。

また、出産・育児・介護といったライフイベントにも対応できる制度があると、キャリアの中断を防ぎやすくなります。企業が社員の働き方を尊重する姿勢を示すことは、定着率の向上と人材の多様性確保につながる重要な戦略と言えるでしょう。

人事評価制度を見直す

人事評価に対する不満は、離職につながる要因です。評価制度を見直す際には、成果や行動を客観的に判断できる基準を設けることが重要です。たとえば、360度評価や目標管理制度(MBO)を導入すれば、納得感のあるフィードバックを提供できます。

評価に透明性と公平性があれば、社員の信頼を得られ、キャリア形成への意欲を高める効果が期待できるでしょう。

職場・労働環境の見直し

快適な職場環境の整備は、社員の満足度や健康を支える基盤です。長時間労働や物理的に整っていないオフィス環境は社員の不満となり、離職を招く原因になりかねません。具体的な改善策には、ノー残業デーの導入や業務の見える化による負荷の平準化、リフレッシュスペースの整備などが、社員のストレス軽減に直結します。

働く環境を成果が出しやすい場に変えられれば、社員の定着とパフォーマンスの向上につながるでしょう。

離職防止ツールの導入

デジタルツールを活用することで、離職予兆の早期発見と対応が可能になります。たとえば、組織への満足度や問題を可視化する「エンゲージメントサーベイ」や、従業員のモチベーションを見える化する「モチベーション管理ツール」を導入すれば、社員の心理的な状態や組織への満足度を定期的に可視化できます。

こうしたツールを活用すれば、不満や悩みを早期に察知し、個別フォローや部署間の課題修正につなげることが可能です。

離職防止の成功事例

離職防止策を実施し、人材定着やモチベーションを向上した成功事例を解説します。自社の今後の取り組みの参考程度にしてください。

サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社では「100人100通りのマッチング」という考え方のもと、社員1人ひとりの価値観やライフスタイルにあわせた働き方の実現を目指しています。

勤務時間や勤務場所の柔軟な選択、複業の自由、誰でも取得できる「プロアクティブ休暇」や「ケア休暇」など、制度面での多様性を推進中です。また、社内公募制度や他部署での体験入部、自主学習支援制度などにより、キャリア支援も充実しています。

個人の希望と組織のニーズを丁寧に調整するこの仕組みにより、離職率の大幅な改善に成功しました。

参考:人事ポリシー | サイボウズ株式会社

SOMPOひまわり生命保険株式会社

SOMPOひまわり生命保険株式会社では、「健康応援企業」を掲げる中で、自律的にキャリアを築ける社員の育成を重視しました。その一環として導入されたのが、社員自身の働く意義や目的を明確にした「MYパーパス」にもとづく異動制度です。

「MYパーパス」は、社員は自身のパーパスやスキルを開示し、共感した部署からオファーを受け取る仕組みです。これにより、自分に合った部署への異動が可能になり、キャリアの納得感が高まります。こうした取り組みで従業員エンゲージメントが向上したことで、同社では離職率も10〜12%にまで改善し安定しています。

参考:
業界初!パーパスで自律的なキャリア形成を実現する人事施策の導入
ESGデータ | SOMPOホールディングス

オタフクソース株式会社

オタフクソース株式会社は、「オタフクソース」のブランドで知られる、調味料の開発・ 製造・販売を手掛ける食品製造のパイオニアです。オタフクソースでは社員のキャリア形成に力を入れ、仕事へのやりがいを高める施策を講じています。

具体的には、「全員総合職」という方針のもと、職種を超えた経験を積ませるキャリア設計を導入しました。加えて、10段階の役割グレード制度や学びを促す研修体制も整備しています。

評価基準には理念や行動指針を取り入れ、業績以外の成長も重視。社員は自らのキャリアを描きやすくなり、やりがいと成長の両立を支援する環境が整いました。その結果、離職率の低下に寄与しています。

参考:実践事例 変化する時代のキャリア開発の取組み

積水ハウス株式会社

積水ハウスでは「キャリア自律」をテーマに、社員が自分で成長や異動を設計できる制度を整備しています。研修受講やスキル可視化ツール、資格取得支援などを通じて、社員の自律的な挑戦を後押ししています。

また職群転換制度により、一般職から総合職へキャリアアップするチャンスも明確化。こうした多面的な支援体制によって、社員の定着率と挑戦意欲がともに向上しています。

参考:人的資本

大津建設株式会社

地方の建設業界で労働時間と属人化が課題だった大津建設は、ICT(情報通信技術)を活用した建機や多能工化を導入しました。これにより作業工数を4〜5割削減し、年間休日も増加させることに成功したと言います。

属人化していた作業を標準化することで、誰でも対応できる仕組みが生まれ、業務効率と安全性が向上しています。従業員の負担軽減が実現し、離職を防ぐだけでなく、採用面でも「働きやすい職場」として魅力が高まっているようです。

参考:大津建設株式会社 | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省

株式会社EVENTOS

地産地消を追い求め、広島県を中心にケータリングや飲食店を展開する株式会社EVENTOSでは、女性社員の離職防止と若手社員の定着に向けて、多様な制度とコミュニケーション機会を整備しました。

産休・育休取得から復職までを支援する三者面談や、時間短縮社員制度の導入により、妊娠・育児中でも働き続けられる環境を実現させています。また、有給休暇と組み合わせて最長1ヶ月の連休が取れる「チャレンジ休日」も導入。心身のリフレッシュやスキルアップに活用されています。

若手社員の交流の場「新鮮組」も、悩みの解消や成長の場として機能しており、さまざまな取り組みが離職率の改善に寄与しています。

参考:社員の定着に向けて、女性が働きつづけやすい制度や若手社員のコミュニケーションの場を導入- 事例を探す(事例ナビ)|経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus

株式会社コスモスイニシア

株式会社コスモスイニシアでは、育児・介護といった時間的制約を抱える社員の増加を見据え、2015年より「Work Style Innovation」と題した全社的な働き方改革に着手しました。残業抑制や有給取得の促進に加え、会議効率化や業務フローの見直しなどを段階的に実施中です。

さらにフリーアドレスやモバイル環境の整備により、柔軟な働き方を可能にしました。制度導入後は時間外労働が約30%減少、有給取得率は96%に達し、社員の働きがい向上と離職防止に貢献しています。

参考:若者が定着する職場づくり 取り組み事例集

五稜会病院

五稜会病院では、院内保育園の設置や夜勤の免除など、ライフステージに応じた柔軟な勤務制度を導入しました。看護師向けに段階別研修制度や評価制度も整備し、キャリアアップの支援を行っています。

さらに、職員のメンタルケアやオンラインイベントによるコミュニケーション活性化など、多角的な取り組みを実施しました。その結果、離職率は7.22%まで改善し、働きやすさと成長環境の両立が評価されています。

参考:五稜会病院における離職防止対策の取り組み

株式会社ホットランド

株式会社ホットランドでは、急速な店舗拡大に伴う人材不足と早期離職の課題に対応するため、出店計画にもとづく採用戦略と新人フォロー体制の強化を同時に進めました。スーパーバイザーの能力要件と登用基準を明確化し、教育体制も整備しました。

新入社員には個別面談や集合研修を実施し、孤立を防いで帰属意識を高められるよう働きかけたそうです。その結果、2016年度は17人中5人が退職したのに対し、翌年度は15人中わずか1人にまで離職者が減少。施策の効果が着実に表れています。

参考:若者が定着する職場づくり 取り組み事例集

スフィンクス株式会社(伸栄学習会)

浦安地域で学習塾を展開するスフィンクス株式会社(伸栄学習会)では、人材確保が難しい若手講師の定着と育成を目的に、メンター制度を導入しました。

制度導入にあたっては、外部講習を受講したベテラン社員がメンターとなり、マンツーマンでの丁寧なフォローを実施しました。直属の上司とは別に、業務の相談や精神的サポートを行うメンターを配置することで、若手社員の不安が軽減され、仕事への姿勢にも前向きな変化が見られるようになったそうです。

職場の信頼関係や風通しも改善し、離職防止につながっています。

参考:若者が定着する職場づくり 取り組み事例集


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