- 更新日 : 2024年10月30日
モンスター社員とは?対応方法や放置するリスクを解説
モンスター社員とは、仕事の取り組み姿勢や言動などに大きな問題があり、様々な悪影響を及ぼす従業員のことです。この問題行動により職場環境の悪化による生産性低下等のリスクがあるため、モンスター社員の放置は決して許されません。この記事ではモンスター社員の特徴や対応方法等を紹介しますので、適切な対応に向けての参考にしてください。
目次
モンスター社員とは?
モンスター社員とは、職場での言動、態度などに大きな問題があり、職場の人間関係や業務遂行に悪影響を及ぼす従業員のことです。
モンスター社員を早期発見し、適切な対処をしなければ、職場の雰囲気を悪化させ、生産性低下を招きかねません。
モンスター社員の特徴
モンスター社員には、具体的にどのような特徴があるのでしょうか。以下では代表的なものを7つ紹介します。
自己中心的な考えを持っている
モンスター社員は自己中心的な考えを持っており、職場の同僚等が仕事上困っている場合に協力を拒否したり、独善的な考えから他の従業員の意見やアドバイスを無視したりします。
また、会議などの場でも自分の意見を押し付けようとするなど、様々な場面で職場の和を乱します。
スキルや知識不足
スキルや知識が不足しているモンスター社員も見られます。仕事に必要な知識、経験、スキルが不足していることで、モンスター社員本人がタスクの期限を守れない結果、チームの他のメンバーの仕事の進捗にも影響します。その結果、チーム全体として遅れが生じるなどの悪影響を及ぼすことがあるでしょう。
また、モンスター社員のスキル、知識不足などで、他の従業員がそれをフォローしなければならないこともあり、負担が増えてしまいます。
協調性に欠けている
モンスター社員は自己中心的な考えを持っているため、職場内の他のメンバーと協調して仕事を進めることができず、職場の雰囲気や士気に悪影響を与えます。
具体的には、以下のような行動が挙げられるでしょう。
- モンスター社員自身の持つ情報や知識などを他のメンバーに提供しない
- チーム内の意思決定の場で意見を表明しない
- 他のメンバーの意見に対して批判的な態度に終始する
遅刻や無断欠勤などを繰り返す
規律を守らない素行不良タイプのモンスター社員も存在します。仕事をサボったり、遅刻や無断欠勤を繰り返したりするため、業務遂行上悪影響を与えます。
セクハラやパワハラを繰り返す
素行不良タイプのモンスター社員は、セクハラやパワハラなど、他の従業員への嫌がらせ行為を繰り返します。同僚や上司に対する暴言、暴力なども見られることもあり、職場の雰囲気や士気を著しく悪化させるでしょう。
またセクハラやパワハラは他の従業員の心身に対しても著しい被害をもたらし、生産性を大きく低下させることにつながります。
家族や親族が職場に介入してくる
モンスター社員の家族や親族が、仕事や職場の人間関係、人事などに意見をするケースもあります。モンスター社員の家族や親族の介入により、職場の不和の原因が形成され、業務を進める上で悪影響を与えることもあるでしょう。
逆パワハラを行う
逆パワハラとは典型的なパワハラとは逆で、部下から上司に対するパワーハラスメントです。
素行不良タイプのモンスター社員は上司に対しても暴言を吐くなどの問題行動を取ることがあります。上司が逆パワハラにより心身に支障をきたすと、職場のマネジメント不全を引き起こすことにつながり、放置できない問題です。
モンスター社員が生まれる原因
モンスター社員が生まれる主な原因について、2点紹介します。
モンスター社員の性格や性質が起因
モンスター社員が生まれる原因として、モンスター社員とされる従業員自身の性格や性質が起因していることが挙げられます。
具体的には先に紹介したモンスター社員の特徴に該当する、自己中心的、協調性のなさ、ルールなどを守れない素行の悪さなどの性格のことです。
また、自らの能力不足にコンプレックスを持ち、他人に対して攻撃的になったり、仕事やプライベートで大きなストレスを抱えて感情をうまくコントロールできなくなったりすることで、問題行動に出るようなケースもあります。
職場環境に問題がある
従業員自身の能力不足がモンスター社員を生む可能性がありますが、能力不足に陥るのは従業員自身の基本的な能力が不足していることだけが原因ではありません。
職場内の業務が非常に集中している等の理由で、上司や先輩による指導教育が不足していることがあります。従業員を育む職場環境でないことも、モンスター社員を生む原因になり得るでしょう。
モンスター社員をそのままにしておくリスク
モンスター社員の言動などが、職場に様々な悪影響を与えるため、モンスター社員をそのままにしておくリスクについて留意しなければなりません。以下では代表的なリスクを5つ紹介します。
職場の雰囲気が悪くなる
モンスター社員の言動で職場の雰囲気が悪化することは必至です。規律を守らない、上司や同僚などへのハラスメント、自己中心的な行動、協調性のなさなど、いずれも他の従業員に悪影響を与えます。他の従業員が心身に支障をきたし、最悪の場合に休職に至ったり、職場の雰囲気の悪さから離職したりするなど、職場の貴重な戦力を失うリスクがあるでしょう。
人件費などのコスト面
モンスター社員は、自らの能力不足などで十分に仕事ができない場合もありますし、職場の他の従業員との協力などを拒否し、職場の生産性を低下させることもあります。モンスター社員を放置すると、人件費などのコスト面でマイナスの影響につながりかねません。
また、モンスター社員以外の優秀な従業員の離職を招くと、離職した従業員への教育コストなどの回収が難しくなるなどの問題もあります。さらに新たな従業員の採用、教育コストも無視できません。
訴訟問題になるリスク
モンスター社員は自己中心的であり、自分の考えが正しいと思っているため、他の従業員の業務上のアドバイスや注意指導であっても、パワハラであると主張し訴訟を起こそうとする場合もあります。
また、問題行動を繰り返す場合に、注意指導の末懲戒処分等を下すようなケースであっても、その処分に対して訴訟を起こすこともあり得ます。
訴訟に発展すると当事者の労力や訴訟費用はもちろん、明るみに出た場合には企業イメージの低下にもつながるため、リスクと言えるでしょう。
SNSなどでネガティブな発言をされる
モンスター社員はその自己中心的な考えに基づき、SNSなどで会社や経営者、経営陣などに関するネガティブな発言をする可能性もあります。SNSなどでのネガティブ発言が企業イメージ低下につながるリスクがあるでしょう。
他の職員から安全配慮義務違反で損害賠償を請求される可能性
モンスター社員によるハラスメントなどで精神的に支障をきたした他の従業員により、会社がモンスター社員を放置したことを安全配慮義務違反として損害賠償を請求される可能性があります。
実際に職場のハラスメントやいじめなどで、精神疾患や自殺に至った例で、会社が防止措置を講じなかったことをもって安全配慮義務違反と認定された裁判例もあります。
モンスター社員へどう対処したらよい?
モンスター社員を放置すると様々なリスクがあり、適切な対処が求められます。以下ではモンスター社員への代表的な対処方法を6つ紹介します。
事実確認・注意指導
モンスター社員の問題行動については、事実確認を十分に行った上で、注意指導を行います。注意指導を行っても問題行動が繰り返される場合も、繰り返し注意指導を行います。まずはモンスター社員の問題行動を本人に丁寧に説明し、また本人の言い分をしっかり聞く形で、理解を促すことが大切です。
モンスター社員の問題行動のレベルによっては、最終的に懲戒処分を行ったり、退職勧奨、解雇などを行ったりする場合もあります。そのような場合でも、事実確認や注意指導を行った実績や記録は解雇などの有効性判断の上でも重要になるため、確実に行うようにしましょう。
モンスター社員と定期的にコミュニケーションを取る
モンスター社員の問題行動につながる不満などを把握し、改善につなげるためにも定期的にコミュニケーションを取ることが大変重要です。
モンスター社員に限らず、従業員との間で定期的なコミュニケーションを取ることは、従業員の不満解消にもつながり、第二のモンスター社員を生み出さないことにもつながる可能性があります。
異動・配置転換を検討する
モンスター社員本人の適性や能力にマッチした業務に配置転換することが改善につながる可能性もあります。成功すれば、問題行動が改善するばかりか、本人の生産性やモチベーションを高めることにつながるでしょう。
成功に導くためには、十分なコミュニケーションを通じた指導やフォローが不可欠です。フォロー体制が十分な職場など、配置転換先を慎重に検討する必要があります。
改善しない場合は懲戒処分に付す
注意指導や配置転換を行っても問題行動が改善されない場合には、懲戒処分を検討します。ただし懲戒処分を不用意に行ってはなりません。不当な懲戒処分として訴訟を起こされる可能性があるためです。
注意指導や配置転換の実績、注意指導や配置転換により会社として改善を促したにも関わらず、改善できなかったことをしっかりと記録に残しておくことが重要です。
懲戒処分で改善しない場合は退職勧奨を行う
懲戒処分を行ってもモンスター社員の問題行動が改善しない場合には、退職勧奨を行うことになります。退職勧奨は、あくまで従業員側の自然な合意に基づく退職を勧めることであり、当然ながら強要することはできません。
これまでのモンスター社員の問題行動の内容や、会社として改善の機会を与えるための取り組み内容、会社の取り組みにも関わらず十分に改善しなかったことなどを丁寧に説明した上で、退職を求める理由に納得できるようにします。
最終的には解雇を行う
合意退職にも至らず、問題行動の改善が見られない場合には解雇を選ばざるを得ないことになります。これまで述べてきたような、注意指導、改善の機会の付与(配置転換など)を十分に行った上で判断するようにしましょう。
解雇について争う訴訟が提起された場合も、これらの実績が大変重要な意味を持ちます。実績が不十分な場合には不当解雇と判断される可能性があるため、弁護士に相談しながら慎重に進めることをおすすめします。
モンスター社員へ指導を行う上での注意点
モンスター社員へ指導を行う上での注意点を2つ紹介します。
指導においてはすべて記録に取る
モンスター社員の指導にあたり、問題行動について指摘することになりますが、その内容については5W1Hを明らかにする形で客観的な事実として記録に残すことが大変重要です。問題行動の内容だけでなく、注意指導した内容、注意指導の結果なども同様です。
懲戒処分や解雇の手続きを進める際に、会社として注意指導や配置転換などを通じて改善を促したことの証になり、万一訴訟になった場合にも活かされます。
モンスター社員への指導後は業務体制の見直しを検討する
モンスター社員への指導では、会社としての改善の取り組みも求められます。モンスター社員の改善を促すためにも、業務体制の見直しが必要な場合には、速やかに検討し、実行に移すことが必要です。
モンスター社員自身の改善につながればベストですが、問題行動を繰り返して処分をしなければならない場合でも、会社として必要な対応を行ったことの証拠になります。
モンスター社員への対応・訴訟事例
モンスター社員への対応にあたって、注意点で述べた内容を裏付ける裁判例を紹介します。
解雇の有効性についての判例(東京高裁平成30年1月25日)
女性上司に対する逆パワハラを理由に、社会福祉法人の男性従業員を解雇したことについて、その有効性が争われています。
1審では、解雇は有効と判断されましたが、2審では、解雇無効と判断されました。男性従業員の女性上司に対する態度は問題視されたものの、女性上司への不満に起因していることに対し、会社が解雇前に男性従業員を配置転換して他の上司のもとで働かせる機会を与えるなど改善を促す取り組みがなされていなかったことを理由としています。
解雇の有効性についての判例(前橋地裁平成29年10月4日)
国立大学法人の大学教授による部下へのパワーハラスメントについて、当該大学教授を懲戒解雇としたことの有効性が争われています。
教授による部下に対する𠮟責や不適切な指導はパワーハラスメントにあたるものの、懲戒解雇は処分としては重すぎるとして解雇は不当と判断されました。
安全配慮義務違反に関する判例(東京地裁平成27年3月27日)
逆パワハラの被害を受けた従業員が会社にその旨を申告したにも関わらず、会社が適切に対応しなかったため、当該従業員が精神的な損害を被った結果、退職を余儀なくされたことについて、会社側の安全配慮義務違反を訴えたものです。
会社が当該従業員の業務実態や、逆パワハラによる精神的苦痛を受けていることを認識しながら、配置転換や業務体制の見直しなど適切な対応を行わなかったことに過失があるため、会社側の損害賠償責任を認める判断がなされました。
モンスター社員を放置するのは企業にとってのリスク
モンスター社員は職場の雰囲気や従業員に悪影響を及ぼし、生産性や業績の低下にもつながりかねないため、決して放置してはなりません。
モンスター社員の問題行動は本人に起因する面もありますが、仕事や職場環境が本人に合っていないことなどが理由の場合もあります。まずは本人の問題行動の改善を促すために、丁寧にコミュニケーションを取ることが重要です。会社が適切に対処しても問題行動を繰り返す場合には、懲戒処分などの厳しい対応も必要ですが、この記事で紹介したように段階を踏んだ慎重な対応を心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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