知っておけば安心!労基署調査の対処法

労基署の調査と役割とは?

労働基準監督署(以下、労基署)は、厚生労働省の第一線機関であり全国に321署あります。いわゆる立ち入り調査を行う部署は「方面」(監督課)となり、労働基準法などの関係法令に関する各種届出の受付や、相談対応、監督指導を行います。
労基署の調査には、労働基準法などの法律に基づいて、計画を立てて業種や規模を任意に選び行われる場合(定期監督)や、労働者からの申告に基づいて行われる調査(申告監督)があります。事業所(工場や事務所など)に立ち入り、機械・設備や帳簿などを調査して関係労働者の労働条件について確認を行います。その結果、法違反が認められた 場合には事業主などに対しその是正を指導します。また、危険性の高い機械・設備などについては、その場で使用停止などを命ずる行政処分を行います。

さらに、労働基準監督官には調査の権限が労基法101条等にて与えられていますので、事業所は監督官の調査を拒否することはできません。監督官に与えられている権限は主に以下です。

  1. 事業所等の建設物への臨検
  2. 帳簿、書類の提出を求めること
  3. 使用者、労働者に対して尋問できること

くわえて、監督官は労基法102条にて「刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う」ともされています。つまり監督官は、労基法違反の内用によっては逮捕する権限を持っている、ということです。

インターネットの書き込みサイトからも労基署の調査につながる!?

厚生労働省は直近の労基法違反による賃金不払による是正結果をHPにて公表しています。これは、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果を公表しているものです。

平成29年度における、支払額が1企業あたり100万円以上となった事案をまとめた結果は以下の通りです。 

(1) 是正企業数  1,870企業(前年度比 521企業の増)

うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、262企業(前年度比 78企業の増)
(2) 対象労働者数 20万5,235人(同 107,257人の増)
(3) 支払われた割増賃金合計額 446億4,195万円(同 319億1,868万円の増)
(4) 支払われた割増賃金の平均額1企業当たり2,387万円、労働者1人当たり22万円

こちらは年々増加傾向にありますので、「うちは大丈夫だろう」という安心は決してできません。さらに28年度の是正結果発表の資料の中に「※ 厚生労働省は、平成27年度から委託事業により、インター ネット上の賃金不払残業などの書き込み等の情報を監視、収集する取組を実施している。労基署は、当該情報に基づき必要な調査等を行うこととしている。」という記載があります。つまり、社内の誰かが労基署に申告するケースに限らず、退職者や友人知人がインターネット上に書き込みを行い、そこから調査に発展するケースがあるということです。

労基署調査の流れから報告書提出まで

労基署調査は突然予告なしに訪問してくる調査と、事前に通知をした上で訪問する調査があります。または個別案件を確認したい場合や帳簿書類を確認する程度の軽度の調査の為に会社側が労基署に訪問して調査を受ける場合もあります。
前述の通り、基本的に調査を拒むことはできません。また、虚偽の陳述や帳簿書類を提出しない場合、虚偽の帳簿書類の提出には30万円の罰金を科せられています(労基法120条)。(臨検監督の一般的な流れ)

事前通知を受けて調査となる場合は、会社側は十分な準備をできますし、監督官側も必要書類を漏れなく確認することが可能となります。事前通知無しで調査をする場合は、企業のありのままの実態を調査するという目的があるのでしょう。
労基署調査により何らかの労基法違反等が見つかった場合は、「是正勧告書」または「指導票」を交付されることとなります。是正勧告書は調査の結果明確な法令違反の事実が確認された場合は交付されます。指導票は明確な法令違反とまではいえなくとも、改善の必要があると判断された時に交付されます。

交付を受けたら、指定された期日までに是正・改善したことを報告することとなります。

労基署調査で準備すべき書類はなにか。手書きの勤怠記録は危ない!?

調査の際に提出する書類は調査の目的によって異なりますが、事前通知の上で行う調査の場合には準備しておく書類も明記されていることがほとんどです。必要書類としては、概ね、組織図、労働者名簿、就業規則、雇用契約書、賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、36協定(他労使協定)、安全衛生関係書類(検診個人票、安全・衛生員会資料、等)などです。
申告調査で多いのは残業手当不払いであったり不当解雇である場合が多く、これらの書類で就業規則や出勤簿、賃金台帳等の書類は非常に重要となります。もっとも案件が多い残業手当不払いについて、出退勤の履歴が正しいかがポイントとなります。特に従業員に自ら手書きで出退勤の記録をつけさせるような自己申告制で管理している場合、監督官は以下のことをポイントに調査をします。

  • 自己申告を行う労働者や、労働時間を管理する者に対しても自己申告制の適正な運用について十分な説明を行うこと。
  • 自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がないか。
  • 会社は労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻害する措置や習慣等がないか 。

監督官は客観的な記録を基に調査をしますので、自己申告制の出勤簿は疑わしい前提で調査をしてくるかもしれません。まだ自己申告制を用いている企業のかたには、リスク管理や管理工数削減等の意味合いでも勤怠管理システム等の導入をおすすめします。

労基署調査が会社にもたらすもの。働きやすい会社に変えるきっかけに

労基署調査について、普段から意識をして注意をしている企業は少ないと思います。しかし、調査によりたとえば上述のように残業不払いが発覚すると、その代償はとても大きなものとなってしまいます。また労基署調査により法違反が発覚したという情報は、労働者にとっても不信感を芽生えさせる内用です。調査のために準備をするのではなく、勤怠管理を例にとっても、適正な運用を日頃から行う様にし、リスクを最小限に抑えた仕組みを作っておくことが必要だと考えられます。労基諸調査の対策を前向きにとらえ、働きやすい会社作りにつなげられることを願います。

【執筆協力】川名伸明(かわな のぶあき) 労働問題アドバイザー

大手企業の人事労務マネージャー。労働問題アドバイザー。

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